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陸軍兵士が誤って海軍鎮守府に移籍させられてしまったようです

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模擬戦準備と武器強化!?

 
前書き
どうも皆さまご無沙汰しております夜桜デビルと申すものです。大変お待たせしましたorzいや~庭連続投稿しようと頑張ったんですが流石に二万時近くのを二つとなると凄い時間かかっちゃいました。これを投稿した後すぐ次の話を投稿しますのでよかったら覗いてみてください!

それではどうぞ!! 

 
「…悠…退し…今の…は…だ!」

「こ…で追い…ん…だ全員…ろ!」

「了…!い…ぞ!突…だ!」

「馬……ろ!!」

「(この光景は…)」

鳴り響く銃声、もがき苦しむ味方兵と敵兵、怒鳴り散らすような大声。僕と暗闇がいることからいつかの貸出先の軍事基地殲滅の依頼を受けた時の夢だろうか?まぁ、空中に浮いているし昔の僕がいる時点で夢だってわかるよね

「(しかしまた変な夢を…馬鹿止まれ!)」

辺りをキョロキョロと見渡していると味方兵が突撃していく進路の先に大量のクレイモアが張り巡らされているのが見える。夢の中だ声が届く筈もないが叫ばずにはいられない

「(思い出した…四年前僕の判断ミスで自ら相手の罠に飛び込ませてしまったあの軍事基地殲滅依頼の時の…うぅ)」

ズキズキと頭に激痛が走り膝をついてしまう。早く夢ここから出させてくれ…

「(そろそろ起きないと本当に寝坊してしまうよ)」

「(この声は響ちゃん?)」

ズキズキと痛む頭に響ちゃんの声が響く。多分中々起きない僕を起こそうと声をかけてくれているのだろう。現実の声が聞こえるってことはそろそろ目が覚める筈…それまで何とか



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「ん…んぅ…」

「やっと起きたかい…何だか魘うなされていたみたいだが大丈夫…いきなりはやめてくれと言っただろう?」

パチパチと瞬きを何度か繰り返すとやっと起きたと言った様な顔で隣に座っている響ちゃんが苦笑いを浮かべる。しかしそんなことは後回しだ。バタリと響ちゃんに倒れ込むようにして体を密着する。全身から汗が吹き出し体の震えが止まらない…頭の中で爆発に巻き込まれた味方兵の悲鳴や苦痛の叫びがグルグルと回り離れない。

「…怖い夢でも見たのかい?」

「昔の夢を見たんだ…俺がこの人生で一番後悔している夢を…」

「(言葉遣いがいつもと違う?)それは辛い夢を見たね。少しこのままでいていい」

響ちゃんは優しい声でそう言うと自らギュッと抱きつき体を密着させてくると暖かな体温が伝わる。

「…やっぱりいい匂いだ」

「んっ擽ったいからやめてくれと言っただろ?」

抱きついた際に近づいた響ちゃんの襟足に顔を近づけスンスンと匂いを嗅ぐと昨日より少し優しく甘い香りが強く鼻腔を擽る。鼻息が擽ったかったのか響ちゃんがびくりと体をびくつかせる。

「…ごめん。でも、もう少しだけお願い」

「…このままでいいと言っただろう?ただ驚くから一声かけてからしてくれると助かる」

「分かった…」

「んぁ…だ、だからいきなりはやめてくれと言ったばかりじゃないか」

何だかんだで許してくれる響ちゃんに感謝しながらもう一度匂いを嗅ぐ。響ちゃん男ってのはやめてって言われちゃうと逆にやりたくなっちゃうから気をつけないとダメだよ



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「…ふぅ、いいお湯だった〜」

「お帰り。ちょうど朝食ができたところ…ってな、何で裸なんだい!?」

「え?暑いから?」

汗を流し浴室から部屋に戻ると簡易的なキッチンルームからひょっこりと響ちゃんが顔を出し朝食が出来たことを告げてきた。しかし僕の姿を見ると顔を赤くして顔を逸らす。裸と言っても上半身だけ、流石の僕でも全裸で女の子がいる部屋に入ることはしない。

「い、いいから早くなにか着てくれそっちを向けないじゃないか」

「別にそんなに気にしなくてもいいと思うけど~?海とか行けば男なんて皆上半身裸なんだし~」

「それとこれとは話が別だ…いいから早くしてくれ料理が冷めてしまう」

「しょうがないな〜…これでいっか」

お風呂上がりで正直少し暑いが服を着ることにする。折角作ってもらった料理を冷めさせても悪いしね

「はい、これでいい〜?」

「あ、あぁ。それじゃあ持っていくから先に座っていてくれ」

「は~い」

手早く着替え、響ちゃんの了承を得た所で部屋の中央にあるテーブルに向かう。どんな朝食か楽しみだ

「わぁ美味しそう~」

「簡単なもので申し訳ないね」

「ううん、十分過ぎるよ。いや~何年ぶりかな〜ちゃんとした朝食を食べるのって」

コトリと置かれた皿にはトーストが二枚と目玉焼き、ウインナー等のおかずが乗せられていた。響ちゃんは簡単なものと言うが僕からしたら十分過ぎるものだ。

「李悠は朝食は食べないのかい?」

「う~ん食べないというより食べられないの方があってるかな?」

基本的に朝は珈琲だけだったり依頼中は味気ない携帯食料だったりとまともな朝食を食べた覚えはない。貸出兵に休息なんてものはないに等しく、いつでも依頼先に向かえるようにしておkなければならないのでのんびりと朝食を作って食べている時間がないんだよね

「さ、そんなことは置いといて食べよ~。折角の料理が冷めちゃうよ~」

「そうだね。話は食べながらもできるし食べようか。それじゃあ」

「いただきます」

「いただきます~…うん思ってた通りすっごく美味しいよ~」

「く、口にあったならよかったよ」

見た目からも美味しいだろうとは思っていたが予想していたよりも美味しく頬が緩む。そのまま素直な感想を響ちゃんに伝えると少し頬を赤く染めて俯きながらトーストを頬張り始めた。褒められたのが恥ずかしかったのかな?



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「ごちそうさまでした」

「お粗末さま」

パンっと手を合わせて食事終了を告げる。感想はとっても美味しかった一択だね。味も僕好みの薄目の味付けだったのもポイント高いね!

「それじゃ皿を片付けてくるよ」

「あ、いいよいいよ〜片付けは僕がやるから」

「これもお礼のうちさ。李悠はゆっくりしていてくれ」

「そっか、それじゃあお言葉に甘えちゃうね~」

微笑を浮かべながらまたキッチンに入っていく響ちゃんにお礼を告げる。さて、僕は明日の模擬戦闘の作戦と武器を考えておかないとね

「洗い終わったよ。…何してるんだい?」

「ありがとう響ちゃん。ちょっと次の依頼について纏めてたんだよ〜」

タブレット型の小型パソコンに今回の作戦と武器を考えながら纏めていると洗い物が終わったのだろう響ちゃんがキッチンから出てきた。

「ちょっと失礼するよ?…これって今回の模擬戦の…」

「うん。作戦はちゃんと立てて置かないと次の行動が遅れちゃうからね〜」

横からのぞき込むようにしてパソコン画面を見やる響ちゃん。煌びやかな銀の髪がサラリと揺れる甘い香りが鼻腔を擽る。おっと危ない危ない

「なら、私はあまり見ない方がいいね。うっかり情報を漏らしてしまい兼ねない」

「響ちゃんは今回の模擬戦闘には出るの?」

「いや、提督から話が来ていないから今回の模擬戦闘には参加しないよ」

少し寂し気に僕の質問に答える響ちゃん。駆逐艦だけあって戦いに参戦できないのは少し寂しく思えるのかな?

「そっか~それならさ、少し今回の模擬戦について聞いてもいいかな~?」

「それじゃあ情報を横流ししているじゃないか。それは「先に情報を得るのは基本でしょ~?」そ、それはそうだが」

核心をつくと図星とばかりに苦笑いを浮かべる響ちゃん。どんな凄腕のスナイパーや優秀な軍人がいたとしても情報がなければ敵の人数、敵の動き、警備の配置などが全く把握も予想できていない為攻めるに攻めれず撃つにも撃てない状態で動けなくなることが多々ある。その為戦いで必要なのは情報とそれを随時把握しておける頭と冷静さだ。武器も優秀な軍人も必要ではあるが有力で確実性のある情報があればナイフと少し頭が良く冷静さのある軍人が数人いれば敵の基地丸ごと陥落させることもできる。現に何度か陥落させたしね。

「戦場ではこんなこと言えないけどしってる?今回の模擬戦のルールって艦娘の子達がぜーんぶ決めたんだよ〜?」

「それは初耳だがそれがどうかしたのかい?」

一気に態度が変わったのになにか違和感を持ったのか少し何かを探り出そうという意味合いを含んだ返しが帰ってきた。まぁ、正直に話すけどね

「結論から言うと響ちゃん君から情報をもらうくらいのハンデはもう艦娘の子達には前払いで支払ってるって事なんだよね~」

「…」

「僕達は鎮守府に移籍したてっていうのに模擬戦までの時間はたったの三日、更に模擬戦の場所は海、更に更に模擬戦で実弾を使用しろってこれはちょ~っとやりすぎだと思わない〜?」

「…それは一理あるかもしれないね」

少しはこちらの意見に対して参道はいてくれたがまだ足りないみたいだね。ん~もう少し押してみようかな?

「でしょ?それでね響ちゃんから少しでも情報がもらえれば相手側にばれずに情報が手に入ってこっちとしては助かるんだけどな~」

「…それに関しても同感だ。敵にばれてしまっては情報の内容を変えられて手に入れた情報が役に立たなくなってしまうこともあるからね。だが、それだと一つ問題が起きてしまうんだ」

「問題が起きる?それはどんな問題~?」

「その問題は情報を教えた際に私にどんな利益があるのかってことだ」

「あはは、案外現金なんだね響ちゃんって」

「流石の私もそこまで虫がいいわけじゃない。利益のないことをするのはあまり好きではないしね」

ふっと少し口元を上げながら言う響ちゃん。確かに利益のないことをするよりも利益のあることをしたほうが何倍もいいに決まっているし、利益のある話の方が話も進みやすい。

「…なら、今度質問しに来た時に黙秘を一回だけなくせるってのはどうかな~?もちろん僕限定だけでね。暗闇たちに迷惑はかけられないからね」

「…それは中々面白い取引だね。いいよそれで情報を提供しようじゃないか」

「ほんと?助かるよ~。じゃあ、今質問してもらっていい?暗闇たち、特に暗闇がいるときは結構こういったことで口外するなって怒られちゃうからさ~」

案外簡単に情報提供してもらえることになった。さて、どんな質問が来るかな~

「いきなりだね。…それじゃあ前に質問したが君の歳を教えてもらってもいいかい」

「おお、流石響ちゃん前に黙秘した質問をしっかり上げてきたね。歳は今年で十八歳だよ~」

「じゅ、十八歳!?た、確かにすごく若く見えるけど…それじゃあ貸出兵に配属された当初は…」

「計算から行くと九~十歳辺りだね~いや~ほんとあのころは子供だったと今更思うね~」

驚いている響ちゃんには悪いが当時の貸出兵には年齢制限は全くなく武器を扱え、敵を殺し、情報を手に入れられればはいれたのだ。まぁ、入ってからが幼い体にとっての地獄が始まるんだけど。いろんな意味でね

「それはまた凄い年齢で軍事に入ったものだね。聞いていいかわからないはが何か訳があったのかい?」

「ん~その質問もおまけで教えてあげる~当時幼かった僕と暗闇には生きていく為の財力も社会を生き抜く社交性ってものがなくてね~一つの依頼で大金が入ってそれで言って世の中の事や社交性を身に着けるとなるとこの貸出兵の仕事が一番向いていたってことだね。それに貸出兵は年齢も前科も何もかも関係なく入ることができたし」

「…今の話で少し気になったんだが今前科のある者もっていったね。それって君も隊長である彼も何か法を犯したってことかい?」

「流石響ちゃん鋭いね~でも黙秘なしでの質問はここまでだよ。その答えが聞きたいならまた僕に黙秘を使わせないようにしないと教えられない~」

危ない危ないま~た口を滑らしてしまった。でも黙秘なしで話したことはすべて本当のことだ。最後におまけで話したことはすこ~しだけねつ造してあるけど

「さ、それじゃあ今度は響ちゃんが答える番だよ~できるだけこと細やかな説明でお願いね~」

「もちろん作戦のことは話すよ。だがこれはあくまで少し前の作戦の状態でのことだから本番では違った作戦だったとしても私を恨まないでくれよ?」

「もちろんそんなことはしないよ~流石に一度見直されるから補正はされると思うからね」

「それならいいが。…それじゃあ説明していくね」

胸ポケットに入っているメモ帳と小型マルチツールに搭載されているボールペンを引き抜き響ちゃんの説明を聞く準備に入る。さて、この情報はどれだけ役に立つだろうか



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「…っとこんなところだね」

「ふむ…なーる程よくよく書き起こして見るとよくわかる、この作戦誰か他の艦娘の子が考えたみたいだね~」

「どうしてわかるんだい。申し訳ないが誰が考えたのかは私にもわからないが」

「この作戦の所々に兄さんでは絶対やらない動きがいくつかあるからだよ。例えばここの『敵を見つけ次第即無線で連絡』ってところ兄さんだったら『発泡してそのまま交戦しろ』って言うよ。それとこの『敵の攻撃を受けた際ただちに後退し仲間の援護を受けよ』って所だと『敵との距離を保ちつつ発砲、敵が諦めるまで逃げ続けろ』っていう筈。もちろんそういうのには理由があるんだけどね~」

「申し訳ないがその理由を教えてもらってもいいかい?」

「うん、いいよ。えっと敵を見つけた際連絡する前に発砲するのは敵を威嚇するのはもちろんその発砲音を聞けばおのずと敵も味方も戦闘しているってことに気が付くでしょ?そうなればいちいち連絡する必要もないしもしかしたら奇襲もかけられるかもしれない。でも連絡していたら運悪く敵を見失ったり逆にこっちが奇襲を受ける可能性が生まれてくるから兄さんはこの形の作戦はあまりとらないんだよ~次に敵の攻撃を受けた際逃げず発砲するのはもしかしたら相手に打ち勝てる可能性があるし逃げた際相手に味方の位置を教えてしまうことになるからだね。それに先に発砲回数や信号弾なんかでサインを決めておけば仲間に自分が攻撃を受けどんな状態なのかを伝えることもできるからこの作戦も兄さんはあんまり指示しないよ~」

「なるほど、私は作戦を考えたことはないけど理にかなった作戦だと思うよ」

納得とこくりこくりと頷く響ちゃん。机においていたまだ温かい珈琲を一口飲み話を続ける

「でしょ?中々こんな作戦を考え付く人はいないよ~いや、考えていても実行に移せないの方があってるかもね」

「実行に移せない?どうしてだい?」

「言葉にしてみると簡単そうに見えるけど人間の本能っていうのは敏感でねどうしてもここぞという時に恐怖や緊張で頭の中が真っ白になっちゃう人が多いんだよ~だから実行できる人は少ない、今の作戦はどれも人間の恐怖と緊張なんかを全部ない物として考えてるものだからね~」

考えてみると分かる。もし自分が一人で敵の索敵をしていた場合に敵を発見した瞬間発砲し後は一人でその敵を相手しなくてはいけなくなる。もちろん相手が何人であろうと見つけた場合は構わず発砲し後は仲間がこちらに来るのをひたすら耐え抜き待つしかない。それがもし傷を負い負傷した場合でも関係ない仲間がいない方角に逃げながら敵を排除していく。ただ誰しも死にたくはないはずだ。仲間の元へ助けを求めたいはずだ、だが僕達貸出兵だけはその作戦を実行し続けてきた…仲間よりも自分のことを信用しどんな時も仲間に頼らず自分でその場を凌ぐ。ただ勘違いしてえほしくないのは貸出兵が薄情で仲間より自分のことが大切だと言うことは絶対にないということだ。どんな時も仲間を思い、発砲回数や信号弾が見え聞こえた際はいち早くその場に向かう。どの軍隊や軍事基地より仲間思いで仲間を信用しているのは貸出兵以外にありはしないと自負しているくらいだよ。

「よくよく考えてみるとその通りだ。しかしなぜ態々そんなことをするんだい?もっと安全な方法があるはずだろう?」

「それがそうでもないんだよ~僕達貸出兵にとってはこっちの作戦の方が都合がいいんだよ。もちろん安全ではないけど昔からこんな内容の作戦ばかりやってたから暗闇と僕はこんな様な作戦の方が慣れてるしやりやすいんだよ〜」

「確かに慣れている作戦の方がやりやすいからね。さて、そろそろ私はお暇するとするよ。皆が心配しているかもしれないからね」

「うん、昨日は付き合ってくれてありがとう〜」

「あぁ、それじゃあまた質問がある時に来るよ」

ガチャりとドアを開け響ちゃんは部屋を出ていった。やっぱり興味深いね響ちゃん

「さて、未浪いるんでしょ~?」

「…やっと出られます。僕もいるんですからここでイチャイチャしないでくださいよ…」

視線を二段ベッドへと移し声をかけると若干苦笑いを浮かべながら未浪が出てきた。

「ゴメンゴメンちょっと声をかけるタイミングがなくてさ〜暗闇も無線で話聞いてると思うけど相手の作戦はあらかた確認出来たしこっちの作戦も立て終えたから後で確認しておいて端末に全部入ってる筈だから~」

「了解したと暗闇さんから。端末って言っても僕持ってないですよ?」

「それは前もって暗闇に頼んでおいたから後で貰って置いて~僕は少し工廠の方に行ってくるから未浪は部屋で待機して置いて〜」

「了解した。暗闇さんも工廠に向かうとの事ですので合流して下さい」

「了解~それじゃ行ってくるね〜」

ドアを開け工廠に向かい歩き始める。さ~てどんな風に変化してるのか楽しみだな〜



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「…早いな李悠」

「ううん、僕も今来た所。作戦の方はもう確認した?」

「あぁ。俺はあの作戦で大丈夫だが優と未浪が作戦通り動けるかが少し気になるな」

「大丈夫だとは思うよ〜?未浪は突撃兵だったのもあるし優もある意味度胸も突然の事での動揺も感じないと思うし~」

突撃兵だった未浪は必然的に僕達よりも過酷な銃撃戦の中に突っ込む何てことはザラだった筈だ。優の方も整備兵ではあるがあの堂々とした態度は開発での失敗を恐れず実行する度胸や突然の誤作動なども冷静に対処してきたと言う紛れもない証拠だ。

「それを願うしかないな。どちらか片方でも動けなくなればこの作戦は水の泡だ」

「そうだね~今回は四人がちゃんと動けないとちょっと厳しいからそこは二人を信用するしかないね〜」

「お、暗闇に李悠じゃねぇか。丁度呼びに行こうとしてたところだ。今最終調整が終わった所で微調整すっからちょいと時間をもらえるか?」

「あ、優。もう出来上がってたんだ、丁度取りに来たところだから時間は大丈夫だよ~」

「俺も大丈夫だ」

「そりゃ良かった。んじゃ行くぞ」



「SRの方は対物した分威力も射程距離も大きく上がったが代わりに重量も全長も重く長くなった。その分反動も大きくなっちまって支持状態でないと正確な射撃は難しくなった。SMGの方は内部のバネを少し短くして連射性を上げてバレルはロングバレルに変更して射程距離も伸ばした。極めつけに拡張マガジンで段数も上げてある。欠点としてはバネを短くしてある分反動が少し大きくなってる点とマガジンを無理矢理大きくしてある分少し抜きにくくなってる点だな」

「…確かに重くなってるしロングバレルをつけた時より長くなってる…けどそこまで違和感はないかな?そこまで重くもないし〜」

「…少し抜きにくいがこれで全弾約四十数発…代償がこれくらいなら全く問題ない」

ガチャガチャと改造された長年使ってきた愛銃の変化を事細かに確認して行く。優の言った通り重量と長さは元の長さの約1.5倍近く変化しているがこれくらいの重量と長さなら全く問題ない。暗闇の方も少し変化は感じるようだが問題ないみたいだ。

「これで少しは対抗できるね~早速試し打ちしに行こうか~」

「そうしたいが試し打ちする場所がない。模擬戦に出る艦娘達にはあまり見られたくはないし」

「それについても抜かりはねぇ。工廠長に頼んでこの奥に小さいが射撃情を作ってもらった。許可はもうもらってあるから行ってみてくれ」

「それは助かる。早速だが使わせてもらおう。っと先にこれを渡しておかないとな」

ポケットをまさぐり何かを取り出す。出てきたのは二台の小型端末。あぁ、まだ渡してなかったのか

「ん?こりゃ小型端末じゃねぇか。調子でも悪ぃのか?」

「いや、違う。この端末の中に今回の模擬戦についての作戦が書き込まれているから確認しておいてもらいたい。もう一台は貸部屋にいる新メンバーの未浪という男に渡しておいてくれ」

「僕たちは少し射撃してから行くから先に顔合わせしておいて~」

「お、また新しい仲間が増えたのか。気を使わない奴だといいんだがな」

嬉しそうにニカッと笑う優。気が合うとは思うが敬語を使う為優にとっては少し扱いづらいかもしれないね

「いい子だけど少し優は苦手かもしれないね~でも、仲良くしないとだめだからね~」

「それは確かに言えてるな俺も少し苦手だが悪い奴ではないのは確かだ」

「少しくらいなら全く問題ないぜ。そんじゃ早速その未浪って奴にあってくる」

楽しみなのだろうニコニコと笑顔のまま部屋へと向かって歩いて行った。

「さて、僕たちは改造した銃の制度を確かめに行こっか~」

「あぁ、優たちのことも気になるしな」



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side change‐暗闇

「…どうだった李悠」

「大丈夫、今僕も驚いてるところだから」

役三十分ほど打ち続けたが予想以上に性能が上がっていて驚きで声が出なくなった。たった一日でここまで強化できるものなのだろうか?

「凄いね五cm以上ある鉄板を軽々貫通できる威力もあるし反動もそこまで酷くない…最高だね」

「俺の方も反動はあるが連射性も射程距離もほかのSMGを大きく上回っている」

とりあえず貸部屋に向かいながら自身が感じた銃の性能を伝え合う。今まで李湯が使っていたSRで貫通できたのは精々数mmの鉄板だったのだが今回の改造で五cm以上の鉄板を貫通できるようになったようだ。これはいい武器になるな

「これだけ武器が強化されてるなら今回の作戦は少し変えてもいいかもしれないね~」

「そうだな…まぁ、作戦の見直しは部屋に戻ってからやるぞ。今変えたとしても二度手間になるからな」

「それもそうだね。なら、早く戻ろうか~作戦の見直ししたら少し仮眠取りたいし…」

「昨日大分遅くまで起きていたみたいだな。まぁ、依頼が入ったら俺と優たちで行ってきてやるからお前は休んでていい」

未浪の無線から聞こえていた声が聞こえなくなってからほんのほんの5時間程で声が聞こえ始めたからあまり寝れていないのは確実だ。まぁ、俺もそんなに寝れてないが…

「依頼が入らないことを祈るけどその時は任せるよ〜」

「あぁ、任せとけ」


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「ただいま~」

「遅くなってすまないな」

「お、戻ってきたか」

「おかえりなさい。暗闇さん李悠さん」

数分かけて部屋に戻ると優と未浪が声をかけてくれた。どうやら二人とも気はあったようだな

「早速だが撃ってみてどうだった?出来るだけ反動も重さも抑えてみたが」

「この反動と重さであれだけ連射性と射程距離が上がれば文句のつけようは無いさ」

「僕も同じ意見だよ〜威力が倍以上に上がってて驚いたけど」

「そりゃ良かった。こんだけ喜んでもらえりゃ頑張った甲斐があったってもんだ」

素直に自身が感じた予想以上の性能を答えると優はニッと笑った。全く何度見てもいい笑顔を浮かべる奴だ。

「なんだか私だけ蚊帳の外なんですけど…」

「おぉ、悪ぃ悪ぃ。ちょいと暗闇たちの銃を対物用に改造したばかりでな性能を確認してもらってたんだ。んで、今結果を教えてもらったんだ」

「そう言えば未浪ってどんな武器を使うの~?」

「私は前衛も後衛も任されることがあったので前衛ではHGとタクティカルナイフを、後衛ではLMG(ライトマシンガン)と二種類の武器に分けて使ってます」

突撃兵だったからAR(アサルトライフル)をぶっぱなしながら突っ込んで行っていると思ったが案外軽装備で前衛を、弾数も射程距離も多く長い重装備で後衛援護を行っていたみたいだ。一般の突撃兵とはやはり一味違うか

「前衛での攻め方は俺たちと同じだが後衛援護はLMGか…SRの方が良くないか?」

「恥ずかしながらSRが全く扱えないのです。性格上もあると思いますが一撃で急所を狙う精密射撃ができないみたいで…」

確かに突撃兵に所属していたこともあり未浪の性格は後衛ではなく前衛で攻めていく方があっている。その為遠くからスコープを覗いて敵を撃ち抜くよりも遠距離も近距離も戦えるLMGで後ろから攻めて来る敵から見方スナイパーを援護する方があっているだろう。

「それは仕方ないよ〜僕もフルオート銃は全く扱えないからね。でも、暗闇はどんな武器でも使いこなせるよね~?」

「近距離用も遠距離用も使えることは使えるが…完璧に使いこなせる訳じゃない」

超近距離のSGショットガンや重装備のLMGに軽装備のHGに近中距離遠距離のSMGやAR、遠距離のSRやMMRマークスマンライフルあらゆる武器を扱うことは出来るがSMGとHG以外はそこまで上手く使える訳ではない。

「ほぉ、どんな武器にも少なからず癖があるがそれを全部使えるとは貸出兵の隊長は伊達じゃねぇな」

「一般並にだがな。さ、取り敢えずこの話は一旦終わりにして…優と未浪は今回の作戦は頭に入ってるか?」

「はい、大丈夫です」

「俺も大丈夫だ」

既に作戦を頭に入れているのは非常に助かる。しかしこの短時間で覚えられるとは流石だな

「突然だがその作戦の一部を変更したい。思った以上に武器の威力と射程を伸ばすことができたからな。もう少し攻めの方向に変更しようと思うがどうだ?」

「そうですね…確かにこの作戦だと主力がC4と手榴弾の二つに絞られてしまってますからもう少し攻撃に力を入れもいいと思います」

「俺も未浪の意見に賛成だ。後方の俺と李悠はこのままでいいとしても前衛の暗闇、未浪が撹乱させてC4と手榴弾だけで攻撃するのは時間もかかるし何より集中砲火を受けちまう可能性が高いしな」

「多少の銃撃は覚悟してるがな。これを見てくれ」

「これは海図…いや、この辺りの地図ですね?」

「あぁ。昨日兄貴から借りてきた。この地図で待機ポイントとその後の行動について説明する」

卓袱台を囲むようにして座り、兄貴に借りてきた地図を広げる。まずは各自の待機ポイントとその後の動きの確認だ。

「まず李悠、お前には作戦通りこの孤島から遠距離攻撃と援護をしてもらう。ただ、射撃ポイントは少し変更する。変更した射撃ポイントは端末にマークしてあるから迷うことは無い筈だ」

「了解~ポイントは後で確認しておくね」

「頼む。次に優、お前は確か中距離のARを使う筈だな?」

「おう。よく知ってたな」

「少し調べさせてもらったからな。それでARとなるとSRの射程距離から的に当てるのは難しい、それを考慮して孤島付近の岩場から李悠の援護を頼みたい、当てなくても牽制だけでもいい出来るだけ李悠の居場所を掴ませないようにしてくれ」

昨日下調べしてきた位置を指で指しながら話を進めていく。ARはSMGとSRのちょうど間辺りの射程距離を持つ武器だが連射速度を考えるとSRより少し前辺りが絶好のポイントだ。しかも優はARを愛用しているとなればこの位置に配置するのが得策。責めに行かせてやれないのが心苦しいがこれも作戦割り切ってもらうしかない

「わかった。もし李悠の居場所が絞られたら無線で李悠に伝えればいいか?」

「あぁ。出来るだけ早めに無線で伝えてくれ。移動するにも時間がかかるからな。そして最後未浪は俺と共に最前線で真っ向から戦ってもらう。引くことは許されないとにかく相手の動きを制限して李悠と優が狙いやすくしつつ攻撃もすることになるが行けるか?」

「…難しいかもしれませんが可能な限り誘導してみます」

流石長年軍事をやってきただけあって優は的を絞られた後のことまで考えていたみたいだ。しかし、優の牽制よりも俺と共に最前線に出る未浪の方が何倍も厳しい条件下での戦闘を強いられる。最前線に出るということは絶対に引くことは許されないという事に繋がる。俺達の後ろには近距離では部の悪い武器を使っている仲間が二人いるのだ俺達が引いてしまっては近距離戦に持ち込まれ殺られる可能性が高い

「よし、簡単にだが作戦の確認は終わりだ。各自再度作戦内容の確認と武器の整備をしておいてくれ。後は依頼が入らない限り自由にしてくれていい」

「了解~僕は少し仮眠をとるよ〜眠くてしょうがない…」

「俺はもう少し工廠の設備を確認してくるぜ」

「僕は少し模擬戦を行う場所を見てきます」

「あぁ、了解した。俺も少し寝るから何かあったら無線に連絡してくれ…そんじゃおやすみ」

「おう、おやすみ」

「おやすみなさい暗闇さん李悠さん」

各自やることは決まったようで優と未浪は部屋を出ていった。さ、本格的に眠くなってきたし早々と寝るとしよう




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「…んぅ…無線に連絡か…誰だ?…はい、暗闇です」

着信音の様な音が耳に届き目を覚ます。李悠はこの部屋にいるから優か未浪のどちらかからの連絡か?取り敢えず無線に複数あるボタンの一つを押し通話に出る

「暗闇か。…寝てたみたいだが大丈夫か?」

「大丈夫だが何か用か?兄貴」

「あぁ、任務だ。お前らにとっては簡単なものだと思うが今から行けるか?」

「…何度も言うが俺達貸出兵に断ると言う選択肢はない。それで何をすればいい」

この時間に兄貴から連絡が来た時薄々は依頼だと思ったが本当に依頼だったとはな。取り敢えず依頼内容を聞かなければ何もできない

「ある鎮守府から艦娘を奪還してくれ」

「奪還?…誘拐か?」

「纏めちまえばそうだが一応家の艦娘だ。ある理由でその鎮守府に期間付きで艦娘を一人配属したんだが期間を過ぎても全く音沙汰がねぇってことでちょいと強引に取り戻そうって訳だ」

「…最後に一つ…どんな手段、被害を出しても奪還できればいいのか?」

「あぁ、大丈夫だ。目的は艦娘の奪還だからな。その艦娘さえ無事であれば後はどうなろうがこちらに被害はないから好きにやってくれ。場所と情報は端末の方に送っておく」

「了解した。…はぁ」

通話を終了し溜息を漏らす。久々に休息が取れると思っていたらまた依頼だ…ん?なんで知らない筈の俺の端末に兄貴が情報を送れるのか?そんなの決まってる昨日司令官室に行ったときに教えておいたからからなさて、

「(鬱憤も溜まったことだし…ちょいと暴れるか…)」

かちゃりと顔を隠すように目元より上のない仮面を取り付ける。前に金剛たちが俺達の顔は世に出回っていると言っていたしバレると面倒な事になりかねないからな



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「最低限の装備は持ってきたが…ここに潜入するのか…」

端末に記されたポイントの少し手前でバイクを止め辺りを双眼鏡で見渡してみると北西の方向、約二百mの位置にデカイ建物を発見した。簡単に見渡しただけでも十数人の海軍兵を確認できる。

「しかし、ホントに場所しか教えてくれないとはな…跡形もなく消せってことか?」

端末を取り出し送られてきた位置情報を確認してみるが本当にポイントが記された地図が表示されるだけで目的の建物の名前は表示されていない。この建物を無かったことにしろってことか?と言ってもこの規模でしかも数十人の見張りがいる中で建物を破壊することは困難となればだ。

「…隠密潜入するしか無さそうだが…あそこから入れるか?」

兄貴から依頼されたのはある艦娘の奪還。この人数を相手にするより艦娘だけを奪還知る方が数倍簡単だ。ゆっくりと辺りを見渡すと見張りが一人だけの扉を見つけた。何人も見張っていないことから考えるとあそこから入られたとしてもさほど問題がないと言うことになるがまずは建物の中に入ることが先決だ。

「考えも纏まったしさっさと侵入するか」



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「二箇所の見張り台に各一人ずつ…タイミングよく動かないと見つかるな」

先程見つけた扉から数メートル離れた岩場にベレッタを構え、身を隠しながら辺りを見渡す。この付近には全くと言って巡回兵はいないが、六つある見張り台のうち二つはこちらを視界に入れられる位置にある。さっさと扉前の奴を撃ち殺したいが姿を見られる可能性が高い。見張り台の兵が他の方向に視線を向けてくれれるまでしばらく動かない方がいいだろう

「…優か?俺だ」

「おぉ、暗闇。別れてからそんな経ってないがどうした?」

「ちょいと厄介ごとを頼まれて今ある海軍基地に居るんだが、少し面倒な所みたいで先に頼み事をしておきたいんだがいいか?」

「それは不運だな。それで頼みごとってのはなんだ?」

「あぁ、それは…」

見張りの動きを覗き見ながら優に無線を入れ頼みごとを伝える。用心に越したことは無いし、もしもの時の予防線だ

「ってことなんだが頼めるか?」

「それに関しては問題ねぇすぐやっておく。それより単独潜入なんて大丈夫なのか?」

「正直わからないな。建物の大きさからしても少なからず有名所ではありそうだが警備も少ない方だしな」

「模擬戦も明日に控えてんだ、無理だけはすんじゃねぇぞ?」

「善処する。…悪い優切るぞ」

見張り兵が他の方向を向いた。すぐさま無線を切り扉前の見張り兵に照準を合わせ発泡。ベレッタには持参した簡易的なサイレンサーを取り付けてある為発泡音が見張り台の兵士に聞こえることは無いだろう。もう一度見張り台の兵士の位置を確認し気づかれないように扉へと向かう。

「さて、ようやく内部に侵入できるが…ん?これは」

扉の前にいた兵士を見張り台からは見えない死角へと運び装備品を漁ると腰辺りに光に反射するものを見つけ、取り出してみるとサバイバルナイフだった。しかしそのナイフの光沢は一般のものとは少し変わって見える。

「銀製のサバイバルナイフか」

ナイフには多種多様の金属が使われるがこの独特な光沢は銀だ。確か銀のナイフは大分昔の軍隊で使われていた代物だ。しかし数年後突然使われなくなる。使われなくなった理由としては錆びにくく切れ味もあるステンレス製のナイフが出てきたからだ。しかしこんな昔に使われていたものを見た目的に若いこの兵士が大分昔から使っていたものとは考えづらい、ここから出てくる答えは

「誰かからの贈り物か遺品だろうな。…丁度いい少しの間借りるとするか」

腰につけている何も入っていないホルダーに抜き取ったナイフをしまう。急遽依頼されたからナイフを入れてくるのを忘れていたからちょうど良かった

「ナイフも手に入れたし本格的に潜入するとするか」




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「…比較的大きい基地だと思ってたがやっぱり多いな」

扉近くのある部屋に身を隠しながら小さく溜息をつく。先程の扉を通り内部に侵入できたのはいいが辺りをうろつく兵士の数が多過ぎ一旦近くにあった部屋に隠れた。

「見つかると騒がれるしな…丁度いいあの兵士にちょいと聞いてみるか」

再度通路に少しだけ顔を出すと一人の兵士が歩いてきた。背後に人影もないし丁度いい

「…よっと…声を出すな。俺の質問にだけ答えろ」

「…」

タイミングよく兵士を捕まえ部屋に引きずり込む。騒がれるのは困るので首元に先程手に入れたナイフを突き立て脅す。何が起こったか整理がついてないようだが首元に置かれたナイフを見て兵士はコクコクと激しく頷く。

「よし、単刀直入に聞くこの基地に囚われている艦娘はどこだ」

「お、俺は知らない。ちゅ、中尉殿なら何か知っている筈だ」

「…そうか、その中尉はどこにいる」

「二階の真ん中辺りの部屋だ。これでいいだろ早く離せ」

「…本当に残念だがそれはできない相談だ」

ジタバタともがく兵士の喉元を掻き切る。このまま逃せば潜入した事をバラされかねないからな俺に捕まった自分の不運を呪ってくれ。さて、服に血が付着してしまったが情報は手に入れた。まずは二階の中尉がいるという部屋に向かわないといけないな

「…ここが一階だとすればどこかに上に上がる手段があると思うが…探すしかないな」

捕まえた兵士は殺してしまった為上に上がる手段がどこにあるのか聞くことは出来ない。ちょいと殺すのが早過ぎたか




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「…やっと見つけた」

初めの兵士を合わせ三人の兵士から情報を入手しようやく上に上がる為の階段を見つけた。中尉がいる部屋の目星も情報から導き出せたしあとはさっさと艦娘がどこにいるかを中尉から聞き出すだけだ

「っても警備はしっかりしてるしどうするか…」

階段を上がり通路に出る手前から覗き込むように二階の通路を見ると先程の兵士からの情報通りある一つの扉の前に武装した兵士が二人見張りをしていた。強行突破という手もあるが騒がれると兵士が集まるだろうし…

「発泡音に気づかれるかもしれないが仕方ないか」

少し悩んだが排除することに決めベレッタを構え照準を合わせる。正直に言えば簡易的なサイレンサーを取り付けたベレッタよりも音の小さいサイレンサー内蔵の隠密用武器を所持していない為少し危険ではあるがそんなことは言ってられない

「…見張り兵もいなくなったことだしさっさと中尉に艦娘の居場所を聞きに行くか…っとその前に」

連続して引き金を引く。狙い通り見張り兵二人の頭部に弾丸が命中直後バタリバタリと倒れる。警報もなにも聞こえないことを確認し早足で殺した兵士に接近、使えそうな装備品を漁るとC4と手榴弾を所持していたので回収。武器のARはSMGも持ってきているのでもらう必要は無いだろう。

「それじゃあ、失礼しますか」

近場の部屋に殺した二人の死体を隠し中尉室のドアノブを捻る。鍵はかかっていないしこのまま行くか

「…両手を上げろ」

「な、なにごと…き、貴様は誰だ! 」

バンっと勢いよく扉を開けベレッタを構える。いきなりの物音に机に向かって座っていた中尉が驚いた様子でこちらを見るとここの軍人ではないことに気づいたのだろう俺が誰かを問うてくる。

「そんなことはどうでもいい。無駄な殺生はしたくないさっさと手を上げて前に出てこい」

「…」

少しの沈黙のあと大人しく両手を上げて机の前に出てきた。余計なことはされたくないし、発泡音が聞かれ他の兵士達にここに来られたら正直逃げられる気がしなかったしな

「よし、そこでいい。聞きたいことは一つだ、ここに一時的に配属された艦娘がどこにいるかだ」

「やはり、その為か」

「ほぉ、来るとわかっていて何もしないとはな。まぁ、そんなことはどうでもいい早く答えろ」

「…地下二階の隔離室だ鍵はここにある」

相手に時間を与えてもこちらには何も利益はない為ベレッタを構え直して脅すが、中尉は動揺した様子もなく答え、上げていた右手を懐に入れると鍵を取り出した。

「…何のつもりだ?」

「君は貸出兵の隊長さんだろう?」

「…」

「驚く事は無い。軍人でその銀のベレッタを使っているのは貸出兵の隊長-暗闇さんだけだ。ここまで言えば分かる筈だ」

スっと少し口元を上げて微笑む中尉。しかし驚いたまさか拳銃で貸出兵であることしかも隊長ということまで見抜かれるとは流石は中尉クラスになるとそんじょそこらの兵士とは観察眼のレベルが違うか…

「流石中尉殿並の洞察力ではないが、私が貸出兵の隊長-暗闇だとしてその行動の説明にはならない」

「…考えれば簡単だ。この状況で私が君を殺せる確率は一%もない」

「素直に艦娘の場所を教え命だけでも助けてもらおうってか?」

「ははは、それはない。腐っても海軍中尉だ。いつでも死ぬ覚悟くらいは出来ている」

命乞いでもするかと思ったが腐っても海軍中尉。海軍の名に泥を塗るようなことはしないようだ。しかし何故笑っていられる?

「この状況で笑えるとは随分とこんな状況になれている様だな」

「いやいや、こんな状況は今回が初めてだが、世界でたった数人しかいない貸出兵、しかも隊長である暗闇さんに殺されるのなら本望だ」

「…そんなに死にたいのか?」

「違うと言えば嘘になるが本当と言っても嘘になる。…私はこの海軍基地にこの基地の大尉に嫌気が差した。…仲間も戦友も皆死んでしまった…この海軍基地大尉の無茶苦茶な任務に行かされてな」

「…」

上がっていた口元は元に戻り目は怒りが込められたように細められ中尉は語る。しかしながら俺は貸出兵、敵に対して同情の念は…ない

「送ってもらえるか…戦友の元に」

「…」

また少し中尉が口元を上げ笑う。一つ息を吐きベレッタの照準を中尉の額に合わせ、引き金を引く。簡易サプレッサーにより小さくなった発泡音が一度だけ静かな部屋に響き渡る

「…何故外した」

「…」

ベレッタから発射された弾丸は中尉の頭の上を通過し後ろの壁にめり込んでいた。自分を殺さなかった疑問や殺してもらえなかった嫌悪感もあるのだろう先程と同じく中尉は目を細め俺を見ているが俺の心情で殺すか殺さないは選択できる筈だろ?

「…残念ながら中尉殿にはもう少し生きてもらわなきゃいけなくなった」

「…私を殺さなければこの鍵は奪えない。それとも殺さずに奪えるとでも思っているのか」

「そんなもの初めから必要ない。鍵があるなら壊せばいいだけだ。依頼者からは艦娘が無事であれば他はどうなろうといいと言われているからな」

俺の依頼は見つからないよう潜入することでも殺さずに潜入することでもない…無事に艦娘を奪還し依頼元に届けること。敵地の兵士がいくら死のうが敵の基地が崩壊しようが全く関係ない。

「…一つ忠告しておくがこの基地内からさっさと離れた方がいい。死にたいのなら残ればいいが離れれば多少はいい光景が見れるかもしれないぞ?」

「それはどういうことだ」

「それは逃げてからのお楽しみだ。…もう中尉殿貴方に用はない、増援を呼ぶなり侵入者が侵入したことを知らせるなり好きにしろ。俺はもう行く時間が無いしな」

「あ、おい」

中尉の返答を待たず、来た道を戻る。現在午後三時、戦闘を考慮すると急がなければ明日の模擬戦に間に合わなくなってしまう



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「さて、ここまで来たのはいいが隔離室の場所なんて知らないしな…」

来た道を少し戻り上がってきた階段を今度は下に降り現在は地下二階階段の通路から死角の位置に身を隠している。場所すらわからないのに闇雲に動くのは危険過ぎるしまずは巡回している兵がいるか確認しているところだ

「…巡回してるのは二三人で巡回ルートは約二三十m辺りこちらに来る巡回兵はなしとなると」

頭の中で考えを巡らす。先程居た二階の構造からすると二三十m長方形型の造り、また通路が少し広めで見通しがいい為隠密行動は厳しいが曲がり角などの死角からなら見つかることなく巡回兵を処理できる

「取り敢えず隔離室の場所がどこなのかまた適当に捕まえて聞き出すか…」

ふぅと息を吐きこの場所から一番近い通路の壁際に身を隠す。あとは足音を聴いて…

「来た…暴れんな殺すぞ」

「…」

タイミングよくこちらに戻ってきた巡回兵を捕まえ通路の死角へと引きずり込み先程と同じように首元にナイフを突き立て黙らせる

「悪いが時間が無い。単刀直入に聞く隔離室はどこにある」

「…残念だが貴様に教えることは無い。早く殺せ」

「…ほぉ、自身の命よりこの基地を守るか…中々の忠誠心だ、だがお前が今喋らなければここにいる奴らを皆殺して全ての部屋を探すことになるがいいのか?」

「はは、我らがたかが一人の軍人に遅れをとるとでも言うのか」

ケラケラと笑う兵士。信頼し合っているようだが吐いてもらわなければ巡回兵を全て排除して艦娘を回収することになる。隠れながら一つ一つの部屋を探すのは面倒くさいしな…あ、そう言えば基地ごと崩壊させるから関係ないか

「冥土の土産ってやつだ俺の顔を見せてやる…わかるかは知らないがな」

「お、お前いや、あんたは貸出兵の暗闇」

「ほぉ、知ってるとは意外だな」

仮面を外すと予想外のことに驚いたように男が声を吃らせる。この辺りでは知られていないと思っていたが案外貸出兵を知っている軍人は多いようだ

「な、なんであんたがこんな所に…」

「依頼があればどこにでも行くのが貸出兵だ。俺の事を知っているのならそのことも知っている筈だ」

「確かにそれはそうだが…ここには何も…」

「言った筈だ隔離室は何処だとな」

別にここに何があろうと眼中にない。俺の目的は隔離室に囚われている艦娘を救出することだけ、それ以外のものに興味もない

「隔離室…あんたここに囚われている艦娘を救出しに来たのか?」

「あぁ」

「そうか。…なぁ信じてもらおうなんて思わねぇけどちょいと話を聞いてもらえないか?もちろん暴れたり、逃げたりなんかしねぇ」

「いいだろう…手短にな」

「わかってる。すぐ終わる」

男の首元からナイフを退け数歩離れる。これも冥土の土産ってことで話くらいなら聞いてやっても罰は当たらないだろう

「…それで話というのはなんだ」

「あぁ、今隔離室に囚えている艦娘について少しな。期限を過ぎているのは知っている…だがクソ大尉の奴がその期限を過ぎても返すことをしなかったんだ」

「ほぉ、大尉殿がな」

「あぁ、俺達も大尉を期限を守るよう言いに行こうとしたんだ…だが、俺達は大尉に口を出せる立場にいない。中尉も何とかしようとしていたんだ、だが大尉は首を縦に振らなかった。そしてとうとう暗闇さんあんたが出てきてしまう程の大事になってしまっただけなんだ」

「…」

成程、上の奴がクズ過ぎたということか。中尉も大尉の事は良く言っていなかったし、こんな状況で嘘を吐ける訳もない。だが、俺達は貸出兵…逆らえない状況で仕方なかったと言われて同情することは出来ない

「…話はそれで終わりか?」

「あぁ…終わりだ。こんな話をした後だが命乞いをするつもりは無い。こんな基地に未練も糞もないしな殺すなら殺してくれ」

「…二階の部屋に中尉がいる。ここから離れろとは言っておいたがまだいる筈だここから連れ出せ」

「どういうことだ?何故殺さない」

「俺は無実の奴を殺す趣味はないだけだ。まぁ、死にたいなら止めはしないがな」

俺には同情の心はないが無駄な殺生はしないに越したことはない。貸出兵だとしても無実の人間を殺すのは立派な殺人に違いはないしな

「俺の話を信用してくれるってか?証拠もないってのに」

「中尉も大尉の事は良く言っていなかった。しかもこの状況で嘘を吐く奴が死ぬ覚悟がある筈ないだろ」

「…流石は貸出兵の隊長、説得力のある説明だ。…それじゃあ悪いが行かせてもらうぞ」

「…逃がしてやるんだちゃんと逃げ出せよ」

俺の言葉にもちろんだと答え男は階段の方へと駆け足で駆けていった。さて、あとは艦娘を救出して基地を崩壊させれば依頼は完了だ




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「…巡回ルートが分かっていれば容易いもんだな」

空になったベレッタのマガジンを引き抜き補充しておいた予備のマガジンを差し込む。巡回していた兵士は全て撃ち殺したがマガジン一個分の弾と簡易サプレッサーを失った為こちらにとっても結構な痛手だ。

「…ここだな。おい、誰かいるか?」

「そ、その声は暗闇さんなのですか!?私です電なのです」

「電だな。横須賀鎮守府の司令官の依頼で救出に来た。体調と体の状態を教えてくれ」

強めに鉄製の扉を叩くと中から少女の声が聞こえる。確か鎮守府で会った特三型駆逐艦の姉妹の中にいた筈…確証はないが。取り敢えず体の状態を確認する。囚われていたのだ状態によってどう脱出するかが変わってくるしな

「体調は大丈夫なのですけど足を痛めてしまって歩けないのです」

「(足か…)了解した。扉を開けるから出来るだけ離れていてくれ」

差し込み式の鍵穴に小型マルチツールのナイフを突き刺しガチャガチャと動かしていく。この式の鍵なら奥まで入れば

「っし空いた。…なんだお前だったのか」

「…本当に暗闇さんなのですか?」

力ずくでナイフを奥まで差し込み、思いっ切り捻るとガチャりと音を立て鍵が空いた。すぐ様隔離室の中に入るとペタリと床に座り込む少女が一人こちらを見ていた。あ〜こいつだったのか。

「疑うのはいいが今はそれどころじゃない。今の所侵入したのはバレてないが時間の問題だ。急ぐぞ」

「でも私は歩けないのですよ?」

「そんなことは分かってる。…っと」

「はわわ!?」

足と肩辺りに手を当て抱き上げる。俗に言うお姫様抱っこってやつだ。背負うよりも電に負担は少ないし電が軽く小柄な為ベレッタを構えることは出来るが一瞬遅れが生じてしまうのが少し心配だ。

「大人しくしてくれ、そんなに暴れてられると落としてしまう」

「ご、ごめんなさいです。ちょっとびっくりしてしまって、もう大丈夫なのです」

「そうか。…それじゃあ行くぞ」

やっと動きが止まりゆっくりと歩き出す。行き道で粗方の兵は殺しておいたしここから脱出してしまえばもう依頼は完了と言ってもいい



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「足の状態はどうだ?」

「はい。手当はしてもらったので少し痛みが残っているだけなのです」

先に殺しておいた甲斐があったのか敵兵に見つかることなく基地を脱出しバイクを止めた地点まで連れてくることができた。

「…少し見せて診させてもらってもいいか?」

「あ、はい大丈夫なのです」

二人乗り用のバイクの上に電を座らせ、了承を得てから包帯が巻かれている左足の包帯を外していく。

「治療はされたようだが応急処置程度だな。腫れもそこまで酷いものでない…少し触るぞ」

「っ!?」

「痛むか?」

「少しだけなので大丈夫なのです」

包帯を外すと足が青黒く腫れ上がった。骨に異常はないと思うが軽く押しただけで顔を歪めているのを見ると痛みは相当なものだ。取り敢えず痛みを緩和してやらないとな

「…少し我慢してくれ」

「んっ…」

右ポケットのボタンを外し鉄製の小箱を取り出す。中身は小さな注射器と液体の入った透明なカプセルが二つ、手早くカプセルに注射針を突き刺し液体を吸い取り、液体の入ったまま足の一番酷く腫れ上がっている箇所に中身を注入していく

「安心しろ今打ったのは即効性の止痛薬だ。…どうだ?少しは痛みが無くなったと思うが」

「はい、段々と痛みが無くなってきたのです…けど、今度はなんだか足に感覚が無くなってきたような気がするのです」

「神経を麻痺させてるからな、これでしばらくは痛まない筈だ」

今打ち込んだのは簡単に言ってしまえば麻酔のような薬品の為神経が麻痺し感覚が無くなる。その代わり一時的に痛みを完全に感じなくなる。なぜそんなものを持っているのかと言えば仕事の為としか答えようがない

「さて、悪いがここで待ってくれ無線は渡しておくから誰かから無線が入ったら俺は依頼中だと伝えておいてくれ」

「了解したのです。あの…気をつけてくださいね?」

「あぁ」

「ん…」

無線を渡すと心配だと言う表情の電に大丈夫だという思いを込め軽く頭を撫でてやり、先程脱出してきたばかりの海軍基地へと歩き出す。人数的に無傷とはいかないだろうがな 
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