戦国異伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二百三十五話 動かぬ者達その四
「三河と尾張の境には人をやれ」
「そして、ですな」
「我等はですな」
「今は政ですな」
「政にあたるのですな」
「そうするしかない、ではこのままな」
報を聞く前と同じ様にというのだ。
「政を続けるとしよう」
「では」
「その様に」
周りの者達も応えてだった、そのうえで。
信康達も政を続けた、だが。
家康は違った、その報を聞いてだった。共にいた利休に言われた。
「ここはすぐにです」
「うむ、堺を去りじゃな」
「駿府まで戻られますよう」
「わかりました、それでは」
「すぐに」
「殿、では」
「これよりです」
そしてだった、徳川の家臣達がだった。すぐに言って来たのだった。
「我等がお供します」
「周りはご安心下さい」
「殿には指一本誰にも触れさせませぬ」
「何があろうとも」
「済まぬ、ではな」
それではとだ、家康も応えて述べた。
「皆で駿府まで帰ろうと」
「殿、ではです」
服部もだ、家康の傍に来て控えて言って来た。
「これより」
「駿府で言っていたことか」
「はい、堺から駿府の道は既に用意していますので」
「その道を通ってじゃな」
「我等伊賀者、それもです」
服部は家康にさらに言った。
「我等服部家の者達だけが知っている道なので」
「他の者にはか」
「襲われることはありませぬ」
「だからですな」
「はい、その道を通っていきましょう」
「では徳川殿」
利休がまた家康に言った。
「堺のことは私にお任せを」
「我等が堺を去ったこともか」
「内密にしておきますので」
そのこともというのだ。
「今のうちに密かに」
「堺を発ってじゃな」
「駿府にお向かい下さい」
「その様にしよう、では半蔵」
「はい」
服部はまた家康に応えた。
「まずは変装しましょう」
「変装か」
「その服ではばれます」
それで、というのだ。
「服も換えましょう」
「では我等も」
「服を着替え」
「そしてか」
「駿府に向かうのか」
「殿をお守りしつつ」
「そうして頂ければ」
服部は他の徳川の家臣達にも述べた、そのうえで。
そしてだった、彼等はだった。
まずはだ、宿に戻ってすぐにその辺りの旅の一座の服になった。家康も旅芸人の格好になっている。その姿を見てだった。
家康はぷっと笑ってだ、こう言った。
「似合っておるな」
「はい、確かに」
「我等も存外です」
「似合っていますな」
「では旅芸人として」
「そしてですな」
「行きまするか」
家臣達も自分の姿を見て話す、服部も変装している。徳川家の者達は何処からどう見ても旅の一座であった。
ページ上へ戻る