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真田十勇士

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巻ノ二十三 箱根八里その十二

「ですから我等は勝てました」
「そういうことですか」
「あの凶暴な鮫達にもですか」
「その二つがあれば」
「あの様に勝てますか」
「そういうことじゃ、とにかく鮫達は倒した」
 海野も満足している顔で漁師達に話す。
「これで安心して漁が出来るな」
「はい、有り難うございます」
「全てお武家様達のお陰です」
「それでお礼はよいとのことですが」
「せめてお武家様達のお名前を聞きたいのですが」
「我等の名前か」
「はい」
 幸村にも答えた。
「宜しいでしょうか」
「うむ、ではな」
 幸村も名乗りならと頷いてだ、そしてまずは家臣達に言った。
「それぞれ名乗るのじゃ」
「畏まりました」
 まずは十人が名乗ってだった、そのうえで。
 最後に幸村が名乗った、漁師達はその名を聞いてから言った。
「真田幸村様ですか」
「そうじゃ、覚えてくれたか」
「はい、今しがた」
「はっきり覚えました」
「そのお名前忘れませぬ」
「決して」
 こう言って約束するのだった。
「我等を助けて下さいましたし」
「それに鮫達を瞬く間に倒したそのお強さ」
「決して忘れませぬ」
「何があろうとも」
「そうか、ではまた機会があれば会おうぞ」
 幸村は彼等のその言葉に微笑んで応えてだった、そのうえで。
 漁師達と別れ村を後にして鎌倉に向かう、十人の家臣達はその道中で主に対して満ち足りた笑顔で言った。
「よかったですな、漁師達を助けられて」
「やはりこうした行いはよいものですな」
「民の笑顔が見られますし」
「務めを果たしたと感じます」
「武士は民を守るもの」
 こう言うのだった。
「だからな」
「ですな、これは当然のこと」
「その当然のことを果たしたこと」
「それで笑顔が見られる」
「まさに本懐ですな」
「そう思う、ではこの満ち足りた気持ちのままでな」
 幸村も笑顔である、その顔で十人の家臣達に言うのだ。
「鎌倉に向かおうぞ」
「頼朝公の町に」
「これより」
 家臣達も応えてだった、そのうえで。
 一行はその鎌倉に向かっていた、東国の旅も続けていた。


巻ノ二十三   完


                    2015・9・8 
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