FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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イルズィオーン
前書き
今さらだけど『妖精たちの罰ゲーム』って何巻の特装版で出るのかな?
私はてっきり52巻についてくると思ってたのに予想大外れだったからかなりショックを受けている。
一応構想は2通り決まっているけど、細かい部分はOAD見ないと書けないんですよねぇ・・・
大魔闘演舞編終わるまでに出なかったらもしかしたら見切り発進するかもしれません。
その時は申し訳ないです。
『こ・・・これは一体!?シリルたんとソフィアの前に現れたのはなんと!!妖精の尻尾のウェンディたん!!』
まさかの人物の登場にチャパティさんも驚きと嬉しさとでさっきよりも実況の声に力が入っている気がする。たぶんドムス・フラウにいるマスターたちは何が起きているのかわからずに困惑しているだろうな。
「シリル!!大丈夫!?」
「う・・・うん」
俺の方を見て心配そうにそう言うウェンディ。俺は混乱している頭を整理しながら彼女に声をかける。
「な・・・なんでここにいるの?」
ウェンディは今はお城にいっているはずだからこんなところにいるはずないんだ。なのにここにいるっていうのは2通り考えられる。1つはお城に行く途中でナツさんたちとはぐれてしまって偶然ここにやって来たか・・・
「シリルがソフィアさんにあんなことされてるから見てられなくて・・・」
偽物か、だ。
ウェンディは両手の人差し指をツンツンとさせながら顔を赤らめてそう言う。これだけだと彼女が本物かよくわからないし、もう少し聞いてみるか。
「ウェンディはナツさ・・・」
そこまで言葉を言いかけてあることを思い出す。「ナツさんとお城に行ったんじゃなかったの?」なんて聞いたらこの試合を見ているであろう国防大臣さんに俺たちの計画がバレてしまう。そうなってはすべてが水の泡だ。
「どうしたの?」
首をかしげて俺の方を見つめるウェンディ。ナツさん・・・ここから何を繋げて誤魔化せば・・・
「な・・・ナツさんの看病してたはずだよね?食あたり起こした」
「え!?」
咄嗟に思い付いたウソを言ってみた俺。魔力欠乏症とかいうと観客たちがなんでそんなことになったのかと言ってくるだろうからそれはやめておいて、そうなるとこれくらいしか今の俺には思い付かない。頼む、騙されてくれ・・・
『な・・・なんと!!本日の大魔闘演舞に欠場したナツ・ドラグニル選手は食あたりを起こしたために参加できなかった模様です!!』
『1位のお祝いに何かおかしなものでも食べたんですかね?カボ』
『ナツくんらしいと言えばらしいね』
どうやら実況席の3人は騙せたみたい。彼らがこう言ってくれれば観客たちも自然とそう言う雰囲気になってくれるだろうし、とりあえず一安心かな?
「ナツさんって、食べ物に当たったりするんだ。いが~い」
俺の話を聞いていたソフィアがそう言う。確かにナツさんはあんまり食べ物とかは当たらなそうな気はするね。
「道端の雑草とか食べても平気そうなのに」
「ソフィア・・・それは言い過ぎ・・・」
さすがに道に生えてる雑草なんかいくら何でも食べないだろうし、食べたらきっと次の日は起きられないと思う。ソフィアの中でのナツさんのイメージが気になってしょうがない。
俺がソフィアを白い目で見ていると俺の話を受けたウェンディが答える。
「ナツさんがね、ちょっとずつ回復してきたの。そしたら「試合の様子見てきて」って言われて、それでビジョンを見てたらシリルがソフィアさんに捕まってたからつい・・・」
「ほぅ・・・」
今のウェンディの言葉で確信を持った。こいつはウェンディじゃない、偽物だ。
ウェンディはウソをつくのがすごい苦手だから、俺にナツさんが食あたりとか言われたら「え?ナツさんが!?」とか驚いた後に、取り繕うように誤魔化すと思ってたけど、今の言葉にはそんな様子は一切なかった。
だけど今はそれを指摘するわけにはいかないよな。だってそんなこと言ったらじゃあなんでナツさんいないの?って思われちゃうもん。
「さてさてどうするかな・・・」
今目の前にいる偽ウェンディと俺がずっと見てきた本物のウェンディの違いを一生懸命に探す。
といっても、見た感じは全然別人なようには見えない。目はパッチリとしていて可愛らしいし、ツインテールの結っている位置もいつも通りだと思う。強いて言えば朝と服装が違うけど、「さっき着替えたの」とか言われてしまえばそれまでだし・・・
「う~ん・・・」
じっと偽ウェンディの方を見つめながら考える。すると、そこであることに気づいた。
「お前・・・ウェンディじゃないよな?」
「えぇ!?何言ってるのシリル!!私はウェンディだよ!!」
手をバタバタさせて自分が本物だという偽ウェンディ。確かに見た目は完璧にコピーしていると言っていいだろう。今の二正面作戦とか大魔闘演舞という状況じゃなければ何も疑問に思うことなく近づいていただろう。だけど、ある一点だけは本物のウェンディと違うことにようやく気づく。
本物のウェンディとの違い、それは・・・
「お前は本物のウェンディと匂いが違う!!」
指をさして堂々と偽物にいうと、そいつは顔を真っ赤にさせて怒鳴る。
「シリル!!女の子の匂い嗅ぐなんて何考えてるの!?」
「え!?」
偽ウェンディの言葉を聞いてよく考えてみる。頭をフル回転させて今自分の言った発言を振り返ってみる。
「い・・・いや・・・ちが・・・」
次第に俺があげた本物と偽物の違いが少し・・・いや、かなりヤバイ人間のような気がしてくる。俺たち滅竜魔導士は嗅覚などの五感が人より優れている。だから他人の匂いなども把握しているところがあり、それにより判別しているときもある。ナツさんなんかその典型的な例だと俺は思う。だけどこと今の状況においては誤った見極め方だった気がする。しかもこの様子を見ている観客たちもたくさんいるのだ。もしかしたら俺のことをソフィアと同類と判断した人もいるかもしれない。
「あわわわ・・・」
頭を抱えて偽ウェンディと顔を合わせないようにする。これは恥ずかしい。たぶん今俺顔真っ赤だわ。
「それで?あなたは一体誰なの?」
俺が1人で恥ずかしさに悶えているとその様子を見ていたソフィアがウェンディの方に問いかける。
「何言ってるんですか?ソフィアさん。私はウェン―――」
「ウェンディちゃんはもうソフィアをさん付けじゃ呼ばないよ?」
3日目の夜のリュウゼツランドでソフィアがウェンディに呼び捨てで呼んでほしいということを言い、ウェンディもそれを了承したため、今はウェンディはソフィアのことを呼び捨てで呼ぶしタメ口で話している。だからこの偽ウェンディが敬語で話しているのはおかしいのだが・・・
「こ・・・ごめん!!つい癖で・・・」
ソフィアに手を合わせて謝罪するウェンディ。こう返されてしまうと思ったから俺はさっきあえて言わなかったんだよ。
「それと、ウェンディちゃんはいくらシリルちゃんが心配でも、ルールを破ってまで助けに行くような子じゃないと思うなぁ」
「あ・・・」
それだぁ!!そうだよそういえばよかったんだよ!!ウェンディが大会のルールに違反するようなことするわけないじゃん。そういえば丸く修まったのに・・・なんで最初に匂いが違うとか思い付いちゃったのかな・・・後で皆さんにウェンディに言わないようにお願いしておこう。特にカナさんには念入りにね。あの人面白がってすぐ話しちゃうだろうから。
「チッ」
ソフィアにもっともなことを言われてしまった偽ウェンディは舌打ちをして不機嫌そうな表情を浮かべる。すると額に手を当てながら大笑いし始めた。
「ははははははっ!!なんだ、てっきりお前は女の子なら後先構わず飛び付いてくると思ってたが、案外冷静にものを見ることもできるんだな!!」
ウェンディの声と姿のまま男口調で話す偽物。そして化けている必要がなくなったからなのか、彼は目を閉じ魔法を解除する。
小さな体躯が成人男性並みの大きさまでなると、長かった髪の毛も徐々に短くなり、紫色のオールバックヘアの男性が現れる。
「作戦Aは失敗だな」
俺とソフィアを見据えてそう言ったのは剣咬の虎の誇る三大竜の1人、グラシアンさんだった。
『おおっと!!ウェンディたんの姿で現れたのはグラシアンだぁ!!』
『これも1種の幻覚魔法なのかね?』
チャパティさんとヤジマさんもウェンディに化けていたグラシアンさんの魔法に驚いている様子。だけど、姿だけを変えるなら彼なら楽勝にできるだろうけど、最初にソフィアを吹き飛ばした時はウェンディと同じようなブレスを使っていたような気がする。あれはどう説明するのだろうか?
第三者side
「グラシアン・・・ついにあの魔法を解放するんだね」
ここはクロッカスに位置する王立図書館。その中で傷だらけで倒れているのは先程グレイによって戦闘不能に追い込まれたルーファスだった。
ルーファスは微かに聞こえてくる魔水晶ビジョンの音声から現在対戦しようとしているグラシアンの魔法を推測していたようだった。
「私の記憶の造形魔法・・・しかし、彼のあの魔法は私では再現することができない。奴は如何なる魔導士の魔法も1度見ただけでおおよそ真似することができる。そして、彼の幻影魔法を合わせることにより、より完璧な物真似を見せることができる。その名も・・・
イルズィオーン!!三大竜でもっとも怖い男だ」
シリルside
「イルズィオーン・・・」
「変幻自在の物真似・・・ね」
俺とソフィアがグラシアンさんの魔法についてそう言う。
「そうだ。俺のイルズィオーンは如何なる魔導士の魔法も真似することができる。もっとも、自分の魔力の範囲内で、だがな」
グラシアンは肩をすくめながらそう言う。ルーシィさんの星霊のジェミニみたいなものだろうか?ジェミニは触れた相手の容姿、能力、思考をコピーして戦うことができる。ストックが2体ということと制限時間が5分というのもあるけど、その辺はたぶん違うんだろうな。
「ソフィアならウェンディ辺りにイルズィオーンしておけばてっきり大喜びで飛び付いてくると思ってたんだがな。こんなことならシェリアなりエルザなりになっておくべきだった」
グラシアンは足場を軽くならしながらそう言う。そういう手段も彼の頭の中にはあったのだろうが、2人とも今は別の場所で戦闘中だから不審に思われると考えて変身しなかったんだろう。まぁ、なんでその結果ウェンディになったのかはいまいち理解できないが。
「ふふん♪ソフィアくらいの女の子になると触るだけじゃなく見るだけでもその子が偽物かわかっちゃうんだよ」
得意気な表情でそう言うソフィア。たぶん女の子というよりもソフィアだからこそ見ただけで分かるような気がする。けれど今は突っ込まない。
「そうか・・・だが、俺のイルズィオーンを使えばお前程度の魔導士は軽く捻り潰せる。正体を見破られていようがいまいが・・・な」
「ふ~ん。だったらやってみなよ」
突如上がる2人のプレッシャー。さっきのエルザさんやカグラさんたちと同様に魔力が一点に集中しており、一番近くにいる俺にはその緊張感が伝わってくる。
「よし!!なら俺も・・・」
2人負けじと魔力を高めていく俺。3人の魔力がそれぞれ最高到達点に達し、駆け出そうとしたその時、
「あ、ちょっと待て」
勝負を吹っ掛けてきたはずのグラシアンさんがストップをかけてきた。そのせいで俺とソフィアは思わずズッコケ、緊張感が薄れてしまう。
「もう!!何なの!?今すっごくいいところだったじゃん!!」
「あれか!?そうやって俺らの緊張感解いてから攻めてくる悪質な戦法か!?」
ソフィアと俺はあまりのことに激怒している。そんな俺らを見てグラシアンさんは片手で謝罪してくる。
「悪ぃ・・・そんなつもりじゃないんだ。ただ・・・」
グラシアンさんはそう言うとイルズィオーンをする。そして現れたのは俺たちがよく知っている茶髪のかなりイケメンのホストのようにスーツを着こなすこの男。
「僕の古文書の計算によれば、来るはずなんだよ、もう1人。それもこの舞台にふさわしい男が」
「「ヒビキさん!?」」
青い天馬の頭脳、ヒビキさんだった。ヒビキさんは前髪をいじりながらある通路へと視線を向ける。俺たちも彼のいう人物が誰なのか気になり、同じようにそちらを向く。
カッカッカッカッカッ
ヒビキさんの宣言通り、何者かの足音が次第に近づいてくる。初代の計算がここまで狂うなんて・・・いや、違うか。俺がソフィアから逃げてきたせいで今現在の位置がほとんど把握できていない。ラクサスさんやガジルさんといった今の段階では勝負に入っていない仲間たちに遭遇していないことを踏まえると、彼らがいるポイントからは外れた位置にいることだけは想像できる。
「ふぅ~・・・最初に遭遇したっきり誰とも会わなくなっちまったな」
その少年は何かをブツブツと言いながら歩みを進め、辺りに注意を振りながら、さらには寝不足で眠たい目を時おり擦り、眠気を誤魔化しながらこちらに近づいてくるのか見える。
「というか、ここどこ・・・」
通路から完全に姿を現した魔導士レオン。彼は俺たちと目が合うと一瞬固まったのち、長めの金髪の頭を掻くと、
「誰とも遭遇しねぇなぁ」
踵を返して元来た道をUターンし始めた。
「「「おい!!」」」
自然な流れで俺たちとの戦いを避けようとするレオンに思わず怒ってしまう俺たち3人。レオンはその声を聞いて逃れられない現実とようやく向き合う気になったのか、こちらに体を向き直る。
「あれ?みんなこんなところにいたんだ。全然気づか・・・」
あくまでシラを切るつもりのレオン。だが彼は俺を見るとそこで視線を止める。
「シリル・・・なんだその格好・・・」
「えぇ!?」
思わず服を見えないようにと腕を体の前でクロスさせて身を屈める俺。そうだった、今の俺はソフィアのせいでロリータファッションになってたんだった。バトルに集中するあまり忘れてたぜ。
「魔水晶ビジョン見てなかったのかよお前」
「魔水晶ビジョン?」
俺が街中にセッティングされている魔水晶ビジョンを指さすと、レオンは初めてそれに気がついたようで驚いた表情をしている。たぶん眠気が強すぎて周りに注意を配るというのが疎かになっているんだろうな。
「それにしても・・・」
今俺が一番驚いているのはグラシアンさんのことだ。ヒビキさんに変化したのはいいとしても、彼の魔法『古文書』を完璧に使いこなし、レオンがここにやってくることを計算していた。
ウェンディの時みたいに技を覚えるだけでなく、細かいところまで再現することができるのか。それに、ジェミニとは違ってストックもまだあるはずだ。
ウェンディとヒビキさん、ジェミニだったらそれでおしまいだけど、さすがにこんな大事な場面で戦闘に不向きな2人だけで挑んでくるということは考えられない。おまけにこの人は一昨日、俺に、しかもスティングさんとローグさんと一緒の3対1の状況で完敗している。
普通に考えて王者の誇りやら威厳やらを考えると何が何でも勝ちたいはずだ。ならなおさらウェンディたちだけしか変化できないとは思えない。
『おおっと!!エルザ、カグラ、ミネルバの三つ巴に続いて、こちらでは4人の魔導士の戦いとなった!!安定の力を見せるシリルか!?はたまた三大竜グラシアンが一昨日のリベンジを果たすのか!?それともソフィアがここを切り抜けこの後も観客を楽しませてくれるのか!?それとも大穴、レオン・バスティアが大金星を上げるのか!?』
実況席も俺たちの戦いに注目をしているらしく、声に力が入っている。
「よーし!!レオンとグラシアンさんをすぐ倒してシリルちゃんとラブラブするぞぉ!!」
ソフィアの発言を聞いて俺の背筋が凍る。願わくばソフィアに一番最初に退場してほしいところだな。返し魔法なんか使ってるからかなり難しいとは思うけれど。
「お前なんか目じゃねぇ。俺は・・・シリルを倒すためにここにいる」
グラシアンさんは俺の方を睨みながらそう言い、かなり燃えていることが伝わってくる。
「面倒なところに来ちゃったなぁ・・・シェリアたちで優勝なんかなんとかしてくれるからどうでもいいんだけどなぁ」
レオンはいつも通りやる気がないようで、クマが色濃く残っている目を擦り、集中力を維持しようとしている。
3人のうち2人の矛先に俺に向いている状況。だけど、俺はソフィアやレオンといった年齢の近い魔導士たちと対戦したいと思っていた。
それに、グラシアンさんは多数の人間に変化することができる。リュウゼツランドの時のソフィアの言葉を借りるなら「1度で2度おいしい」といったところだろうか。
「ヤッバイな」
妙に体が震える。恐怖とかじゃない。武者震いって奴だ。俺はバトルとかはあんまり好きじゃない。そう言うのはナツさんとかグレイさんとかにお任せだ。なんだけど・・・今の俺はこの戦いが楽しみで仕方ない。今まで対戦したことのないタイプの魔導士が2人。そして入場前に知り合った魔導士が1人。
ナツさんじゃないけどこの状況・・・
「燃えてきた!!」
4人の人間それぞれが敵である3人を見据える。今まで感じたことのない緊張感と威圧感がこれを見ているすべての人間たちに伝わっていくのをひしひしと感じていた。
後書き
いかがだったでしょうか。
グラシアンの魔法はイメージとしてはテニプリの仁王の必殺技『イリュージョン』です。
グラシアンを作るに当たってこの『イリュージョン』はずっとやりたいと思っていたのですが、そのままの名前にするのは芸がないと思い技名を変えてみました。ちなみに意味はどちらも一緒だったりします。
というかあと2、3話で出ると言ってたグラシアンの策がいまだに出てこないという・・・
さらに問題は4人での戦いということです。
俺の文章能力で書けるのかな?
不安と心配でいっぱいの次回もよろしくお願いします。
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