戦国異伝
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第二百三十四話 燃え落ちる寺その六
「そうしたものじゃ、それにじゃ」
「さらにじゃな」
「この者達の具足の色」
「青ではない」
織田家の色ではないというのだ。
「闇の色じゃ」
「確かにな」
「これはじゃ」
まさにというのだ。
「これはおかしいな」
「何か見えてきたな」
「上様のお言葉通りじゃな」
「その様じゃな」
二人で話すのだった、そしてだった。
煉獄は周りの敵、闇の具足を着けた足軽達を次から次にと斬り捨てつつだった。城の方を見て慶次達に言った。
「結構戦ったけれどな」
「もうか」
「ああ、もうちょっとしたらな」
「城の中の火薬に火が点いてじゃな」
「派手に爆発するぜ」
そうなるというのだ。
「火の勢いを見るとな」
「そうか、ではな」
「慶次殿達はこれからどうするんだ?」
「知れたこと、退く」
「馬で敵を越えてか」
「うむ、そうする」
まさにというのだ。
「その時はな」
「そうか、じゃあまた会おうな」
「御主達は御主達でじゃな」
「下がるさ、見たところ連中の中に今は忍はいないしな」
不敵な笑みを浮かべてだ、煉獄は慶次に言った。
「楽に逃げられるぜ」
「御主達ならばか」
「相手はこっちがどうするかまでは読んでいなかったな」
「相手の動きを読むことも兵法じゃがな」
「それを怒ったな、ならな」
それならとも言う煉獄だった。
「逃げるのは手助けするぜ」
「済まぬな」
「何、こうした時はお互い様さ」
笑ってこうも言った煉獄だった。
「一緒に都を出ような」
「ではな」
こうした話をしてだ、それからだった。
慶次は可児と飛騨者達にだ、あらためて言った。
「ではそろそろな」
「うむ、ではな」
可児もその慶次に応えて言う。
「行くか」
「これからな」
「そうするか。しかしな」
「しかし。どうしたのじゃ」
「今回は思う存分戦えた」
表情は満ち足りたものであった。
しかしだ、可児はそれでいてその顔に不満なものも含ませてだった。慶次にこうしたことも言ったのだった。
「敵に笹を咥えさせられなかった」
「それが残念か」
「いささかな」
可児の流儀であるそれが出来なかったというのだ。
「暴れられたのはよかったが」
「どれだけ倒した」
「それもわからぬ、百は倒したが」
それでもというのだ。
「そこから先は覚えておらぬわ」
「わしと同じか」
「いちいち覚えておらぬか」
「あまりにも激しい戦じゃったからな」
倒した敵の数を数え覚えている余裕はなかったというのだ。
「そこまではな」
「そういうことじゃな」
「そろそろだよ」
今度は萌が一行に言って来た。
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