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真田十勇士

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巻ノ二十二 徳川家康という男その十一

「当家には入らぬと」
「石高をそのままだと言ってもか」
「それを誓って言ってもです」
「当家は約束は守る」
 男は確かな声で言った。
「わしにしてもじゃ」
「はい、殿の律儀は天下に知られています」
「そのことは真田殿も知っている筈ですが」
「しかしです」
「まさか」
 ここでだ、男はその目を険しくさせて言った。
「既にな」
「何処かの家についている」
「そうなっていますか」
「上杉か北条か」
 まずはこの家々を挙げた。
「それかな」
「まさか」
「羽柴家ですか」
「あの家にですか」
「ついていますか」
「真田家は機を見るに敏じゃ」
 このことは天下で知られだしている、蝙蝠よりもあちこちの家につくとだ。そうした話が出て来ているのだ。
「だからな」
「羽柴家についてですか」
「家の安泰を計っている」
「だからですか」
「当家にはつきませぬか」
「そうなのですか」
「そうやもな、それならな」
 男は覚悟した顔で言った。
「戦じゃ」
「ですか、真田家と」
「そうしますか」
「上田まで、ですか」
「兵を進めますか」
「そうするしかない」
 あくまでだ、真田家が従わないのならというのだ。
「当家につかぬならな」
「ですか、では」
「その時は我等もですな」
「攻めてそのうえで」
「無理に従わせますか」
「そうする」
 こう言うのだった。
「是非な」
「そうですか、それでは」
「あの者達ともですな」
「戦いますか」
「そうする、しかし当家が勝つ」
 男は確かな声でこうも言った。
「兵の数が違うからな」
「ですな、力で押し潰す」
「そうしましょう」
「是非共」
「戦の時は」
「そのうえで信濃を全て手に入れる」
 真田家の領地である上田も含めてというのだ。
「勝ってな」
「そしてあの御仁達もですか」
「全て手に入れる」
「そうされますか」
「あの者。まだ若いがな」
 それでもというのだ。
「しかし既に大器、しかもさらに大きくなる」
「さらにですか」
「大器がさらにですか」
「大きくなる」
「そうなりますか」
「だからこそじゃ。味方にするか家臣にするか」
 強い決意に満ちた声での言葉だった。
「どっちにしても敵にすることは避けねばな」
「敵としてはこのうえない敵」
「そうなりますか」
「どうも当家は赤備えと因縁がある」
 男は顔を強張らせてこうも言った。 
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