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真田十勇士

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巻ノ二十二 徳川家康という男その十

「拙者のこの旅はな」
「我等とで出会ったことも」
「そして多くのものを見てきたことも」
「そうしたことも」
「うむ、全てな」
 それこそというのだ。
「拙者が御主達と会い多くのものを見聞きしたことも」
「そうしたことが全て」
「殿にとってですな」
「運命であったと」
「そうだったのですか」
「そうやもな」
 幸村も考えている、そしてだった。
 その話をしてだった、それからだった。
 幸村はあらためてだった、家臣達に言った。
「ではさらに東に行くとしようぞ」
「ですな、箱根ですか」
「西国と東国を分けている」
「あそこに行きますか」
「いよいよ」
「うむ、あそここそがじゃ」
 その箱根こそがというのだ。
「天下の嶮じゃ」
「その箱根に向かい」
「あの山を越えてですな」
「東国に入る」
「そうしますか」
「うむ、そうしようぞ」
 こう家臣達に言うのだった。
「是非な、しかし」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「あの山は確かに険しいが」
 幸村が今言うのはこのことだった。
「皆で越えるぞ」
「はい、では」
「例え箱根がどれだけ険しくあろうとも」
「それでもですな」
「皆で越えましょう」
「この十一人で」
「是非共」
「越えましょうぞ」
 こう話してだ、そしてだった。
 幸村主従は家臣達と共にだ、駿府を後にしてだった。そして。
 さらに東に向かった、その彼等をだ。
 物陰からだ、ある者達がその彼等を見て言った。
「あれが真田幸村か」
「そして十人の家臣ですか」
「半蔵殿が言っていた」
「その者達ですな」
「どの者もいい顔をしている」
 中で最も風格のある者がこう言った。
「天下の豪傑達じゃな」
「ですな、まさに」
「真田家にあの者達が入りますか」
「天下の豪傑達が」
「そうなりますか」
「うむ、しかしな」
 その風格のある者は周りにここでこう言った。
「あの者達は是非じゃ」
「はい、味方にですな」
「組み入れますか」
「そうしますか」
「是非共」
「真田家自体をな」
 こう言うのだった。
「何とか当家に組み入れたい」
「しかしです」
 ここでだ、周りの中でとりわけ年配の者が言って来た。
「真田家はです」
「こちらが何を言ってもじゃな」
「かなりいい条件を出していますが」
「首を縦に振らぬか」
「どうしても」
 こう苦い声で言うのだった。 
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