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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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妖精軍師

 
前書き
第二期のシェリアってなんだか第一期より所々胸が大きくなってる気がするのは私だけですか?
いや、どこ見てんだよ!!とか言われそうですけどなんかアニメ見ててどこか違和感を覚えまして・・・
一応ルーシィ、ジュビア世代と2つしか変わらないからあれくらいでもおかしくないのかな?
まぁ気のせいだとか言われたらそれまでなんですが・・・ 

 
「各自散開!!次の目的地まで向かってください!!」
「しょ・・・初代?」
「目的地ってなんだ?」
「わかんね」

突然どこかに向かって走り出すシリルたち6人。初代マスターメイビスが指示を出している姿を見たマカロフたちは唖然としていた。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)が動いたぁ!!』
『これも何かの作戦だったのかね?』
『それでも今からポイントを奪取するのは厳しすぎると思うカボ』

今の状況で残っている魔導士はシリルたちも含めて26人。この広い街の中で遭遇する人数としてはかなり少ないため、なかなか出会うことはないと思われる。

「この時点で97%の確率でルーファスが動きます」

この初代の読み通り、動き出したシリルたちを見たルーファスは建物の上から彼らの魔力を探り当てる。

「見えた。フフッ、私の策的能力を侮ってもらっては困るね。まとめて片付けて差し上げよう」

ルーファスは片手をこめかみに当て、自身の魔力を記憶にある形へと変貌させる。

記憶造形(メモリーメイク)・・・星降ル夜ニ」

ルーファスの体から放たれた6つの光。それは上空から彼の狙う獲物へと向かって多方向に飛んでいく。

『この魔法は・・・』
『初日に敵を全滅させた魔法だね』
『綺麗カボ』

その光が向かっていく先は先ほど動き始めたばかりの6人の魔導士たち。だが、彼らはすでにこの魔法の対策を教えられている。

「上空に光を目視してから、2秒以内に緊急回避で交わせます」

メイビスの言葉通り、シリルたちは自分に飛んでくる光を確認すると、その落下地点から横へとジャンプして回避する。

「同じ手を何度も喰らうかよ!!」

初日にこの魔法にやられてしまったグレイは特に注意していたらしく、かなり余裕を持って交わしていた。

「この魔法の属性は雷。ラクサスだけはこれをガード」

ラクサスを直撃するルーファスの魔法。しかし、ラクサスはメイビスの読み通りまったくダメージを受けている様子がない。

「フン。痛くも痒くもねぇな」
「何!?受け止めた!?」

ルーファスは自信の魔法を喰らっても平然としているラクサスを見て動揺している。

「敵は動揺し、思考が乱れます。この思考の乱れによりルーファスは68%の確率で我々への接近を試みます。32%の確率で現位置にて待機。しかし、その場合も私たちの作戦にさほどの影響はありません」
「何言ってんだ?初代は」
「さぁな」

ブツブツと何かを言い始めるメイビスを見てワカバとマカオがそう言う。

「妖精の星作戦・・・?」
「勝利するための作戦ってのは分かるけどね」

リサーナとカナはメイビスの作戦に対してそう言う。

「エルザはこの時点で北西に進むことで敵と接触」







タッタッタッタッ

「え?やだ・・・ちょっと・・・」

青い天馬(ブルーペガサス)のジェニーが近づいてくる足音を聞き、青ざめながら後方を振り向く。

「初代の言った通りだな」
「げぇ!?エルザ!?」
「恐ろしいお方だ」

ジェニーはエルザを発見すると自分では勝てないと素早く判断し、後ろを向いて逃げ出す。

「逃げるが勝ち勝ち~!!」

わりと綺麗なフォームで走り去るジェニー。しかし、それさえもメイビスの思惑通りである。

「逃げる(ジェニー)を待機しているシリルが撃破」
水竜の斬撃(ウォータースライサー)!!」
「なんでシリルがぁぁぁ!?」

水の剣と化したシリルの右腕によって簡単にノックアウトされるジェニー。

「よくやった、シリル」
「はい!!」

シリルはその後ろから駆けてきたエルザとハイタッチすると、すぐさま別々の方向へと走り出す。

「ガジルは南方の敵を撃破」








「くっ・・・待ち伏せなんて聞いてないよ・・・」
「悪いな、兄ちゃん」

すでに地面に傷だらけで倒れているイヴ。ガジルは彼を横目で見た後、次なる標的を見据える。

「さぁてと、順番か?同時に来るか?どっちでも構わねぇぜ」

肩をコキコキと回しながらレンとヒビキを挑発するガジル。レンは自分の後ろにいるヒビキを守るように右手を横に伸ばす。

「ヒビキ、お前だけでも逃げろ」
「レン!!」
「こいつは俺が止める!!」

レンは知能派タイプのヒビキではガジルに太刀打ちできないと考え、1対1の勝負を彼に挑む。が!!

「止まるかよ!!」
「ぐはっ!!」

ガジルの鉄竜棍にて一撃で粉砕されてしまった。それを見て婚約者のシェリーは悲しんだとかガッカリしたとか・・・

妖精の尻尾(フェアリーテイル)には僕の古文書(アーカイブ)の計算を越えるものがいるのか!?」

レンの犠牲を無駄にしないよう、ガジルから必死に離れるヒビキ。だがその彼の向かった先にはこれまたそれを待ち構えているものがいた。

「そういうこった」
「また待ち伏せ!?うわぁぁぁ!!」
「噴水広場に逃げてきた敵をグレイが撃破した後、そのままポイントB-4に直行」

グレイの氷欠泉(アイスゲイザー)によって氷漬けにされるヒビキ。グレイはそれを確認するとすぐさま次なる場所へと駆けていく。そして青い天馬(ブルーペガサス)のサブリーダーのヒビキとノーマル3人を倒したことにより計6ポイントが追加される。

『おおっと!!ポイント連続奪取でまたもや首位に並んだ!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!』
『すごい勢いカボ!!』

51ポイント獲得したことにより1位の剣咬の虎(セイバートゥース)に追い付いた妖精の尻尾(フェアリーテイル)を見た観客たちはあまりの素早さに驚きつつも歓声をあげていた。

「初代の作戦がことごとく的中してる!!」
「うぉーー!!マジですげぇ!!」
「ジュビアは索敵しつつ後方支援。ラクサスはそのままF-8へ。シリルはK-3へ。エルザはS-5へ。この辺で敵に動きがあります」

テキパキと指示を出し続けるメイビス。その様子を見ていたマカロフはあることを思い出す。

「思い出したぞ、初代の異名・・・その天才的な戦略眼を持って数々の戦に勝利をもたらした・・・




















妖精軍師メイビス!!」


「できる子だ・・・」
「ただの癒し系じゃなかった・・・」

マカオとワカバは大変可愛らしい容姿をしているメイビスがここまでの力を発揮するとは思ってなかったらしく、涙ぐんだり頬を赤くして彼女を見つめたりしている。

「ああ見えて一応、妖精の尻尾(フェアリーテイル)作った人だし」
「まぁ、今となっては幽霊なんだけどね」

リサーナとカナがそう言う。彼らが喜んだり感動している間にも、最終戦はヒートアップしていく。

「一夜さ~ん、申し訳ありませ~ん」

噴水広場で氷の中に閉じ込められているヒビキは通りがかった一夜に謝罪している。

「メェーン。案ずるな、後は私とタクトに―――」

ゴォーン

「任せプゴォッ!!」

まったく周りを警戒せずにいた一夜は後ろからやった来ていたジュラに一撃で地面に伏せられてしまった。

「隙あり」
『聖十のジュラだぁ!!天馬のリーダー一夜を破って5ポイント獲得!!』
『さすが、今大会最強候補筆頭格ですねカボ』

ジュラに注目が集まっていた頃、また別の場所では彼の仲間が敵をポヨ~ンと倒していた。

『そして!!我らがシェリアたんがマーメイドのリズリーを破り、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)も51ポイント!!1位に並んだ!!さすがシェリアた~ん!!』
『シェリアたんとは・・・』

チャパティのロリコンぶりに会場は大笑い。思わず地が出てしまったチャパティは取り繕うように実況を再開する。

『い・・・いやそれはともかく!!1位に3チームが並ぶ熱い展開になってきましたね!!』
『これで天馬はタクト君1人になったか』
『大分人数が絞られてきたカボ』

初めは36人もいた選ばれし魔導士たち。しかし今は20人とおよそ半数になっていた。

「ここからはかなりの激戦が予想されます」
「ねぇ初代。これ・・・最終的にジュラはどうするの?」
「ちゃんと考えてあるんですか?」

カナとリサーナはジュラという今大会の最強魔導士にして聖十大魔導という大陸(イシュガル)の上位10人に数えられるとんでもない男なのである。彼を倒さない限り優勝の二文字は遠いものとなってしまう。

「考えてはありますが、対処法が見つかりません。それほどケタ外れに強いのです。ジュラというもの」

一夜を倒したジュラは風に吹かれながらその場をゆっくりと後にする。

「オババの命令で出てはみたが、なかなかに血がたぎる」

ジュラは様々な敵と戦えるとあって、楽しそうに頬を緩ませた。
そしてその頃、ルーシィ救出に向かったウェンディたちは彼女たちが捕らわれている牢に無事にたどり着き、救出を成功させていた・・・かに思えたが、フィオーレ王国の王女、ヒスイ・E・フィオーレの策略により、奈落宮といわれるクロッカスの街の地下にある場所に落とされてしまっていた。



















『息詰まる攻防が続く大魔闘演舞!!ここからはさらなる熱戦が予想されます!!』

クロッカスの王立図書館。その場所にはメイビスの計算により1位に返り咲いた妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士、グレイ・フルバスターがある男と戦うためにやって来ていた。

「ここに来ればあんたに会えるって聞いてたが、流石初代」

本を読み、椅子に足を組み腰かけていたその男は、本からグレイへと視線を移す。

「これはこれは・・・記憶は君を忘れかけていた。思い出させてくれるかな?」
「無理して思い出すことはねぇや。お前はここで終わりだから」
『ああっと!! 図書館エリアで妖精の尻尾(フェアリーテイル)のグレイと剣咬の虎(セイバートゥース)のルーファスが激突だぁ!!』

1日目の競技パート『隠密(ヒドゥン)』にて両チームの明暗を分けた2人の造形魔導士。その2人が今再び対峙する。

「造形魔法対造形魔法か・・・」
「グレイの奴、前に痛い目見てっからな。大丈夫かよ」
「これも計算通りなのか?初代」
「はい」

ロメオの問いをメイビスが肯定すると、応援席から安堵の声が漏れる。

「じゃ、グレイが勝つんだな。この勝負」
「どんな作戦与えたんだ?」

グレイがいかにして勝つのか気になったマックスがメイビスに問うが、彼女はそれにグレイが勝つかはわからないと伝える。

「わからないって・・・」
「じゃあどこに勝算があるってんだ!?」
「わかりませんが、しかし勝たねばなりません。ルーファスというものは剣咬の虎(セイバートゥース)攻略のキーなのです」

昨日の夜、マカロフからのニ正面作戦の話を聞き解散した酒場にもう一度集められたシリルたち。彼らはメイビスからあることを告げられていた。
それはルーファスが彼らの位置を把握しているというものだった。そのため、ルーファスを早々に脱落させることが何よりも重要視するべきだとメイビスは考えた。
その作戦に名乗りをあげたのはグレイだった。しかし、メイビスの計算ではグレイとルーファスの相性は最悪。勝てる見込みなどほとんどなかった。
しかしグレイはそんなことはどうでもいいと、ルーシィを助けるため、また、やられた借りを返すため、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士として戦わせてくれるように頼んだのだ。

「時に想いは計算を越える。見せてください、あなたの想いを」

他を寄せ付けないほどの頭脳で策略を考えていたメイビス。しかし彼女はこの時、彼の真っ直ぐな眼差しに、そしてその強い想いに賭けたのだ。

「行くぞ!!仮面野郎!!」

攻撃体勢に入るグレイ。ルーファスはそれを見て本を閉じる。彼は余裕があるのか、僅かに口角を上げているように見える。

「アイスメイク・・・氷創騎兵(フリーズランサー)!!」

氷の槍がルーファスが元々いた場所を一斉に襲う。しかし彼は素早い反応でジャンプをし、その攻撃を回避していた。

「記憶」
「逃がすかよ!!氷撃の鎚(アイスインパクト)!!」

グレイは巨大な槍のような形をしたハンマーでルーファスを強襲しようとするがいとも容易く交わされてしまう。

「記憶」
「何をモゴモゴ言ってやがる」

グレイはルーファスが自分の魔法を見る度に何かを言っているのが気になり、着地した彼に質問をぶつける。

「記憶は武器になる」
「ああ?」
「私は見たことのある魔法を記憶し、その記憶を基に新たな魔法を造形できる」
「なんだそりゃ?」
「君の記憶、氷の魔法。オルガの記憶、雷の魔法」
「オルガ・・・」

グレイはルーファスの仲間である黒雷の魔導士、オルガのことを思い出す。1日目にウォークライを一撃で倒し、MPF(マジックパワーファインダー)でも高い数値を記録したあの男を。

「覚えている。記憶造形(メモリーメイク)・・・凍エル黒雷ノ剣!!」

ルーファスが右腕を掲げるとその手から光が放出される。そしてそこから現れた黒い雷と地面を這うようにグレイに迫ってくる氷。2つの属性のコンビネーションが後方へと飛びながら交わすグレイを捉えた。

「うおっ!!」
「なんだよありゃ!?」
「あいつ、いくらでもオリジナルの魔法を作れるってのか!?」
「それが記憶の造形魔法!!」
「便利すぎんだろそれ!!」

ウォーレンたちはルーファスの魔法の真の力を目の当たりにし、驚愕せずにはいられない。

「荒ブル風牙ノ社」

ルーファスは続けて記憶にある風を使い、数本のハリケーンを造形する。

「アイスメイク・・・(シールド)!!」

グレイは身を守るために氷の盾を作り出し、ハリケーンに備える。

「シールド・・・記憶・・・そして忘却」

ルーファスがグレイの盾を記憶し、そう言うと彼の前にできていた氷の盾がかき消されてしまった。

「うわぁぁぁ!!」

グレイは自身を守る盾を失ってしまったが故にルーファスの魔法を防ぐすべがなく、襲ってきた風をもろに受けてしまい飛ばされる。

「盾が消えた!?」

なぜか消えてしまったグレイの魔法。グレイは空中から図書館の床へと叩き付けられる。
















「ハッ!!」

魔導士たちが動き回るフィオーレ王国の首都クロッカス。そこには選手たちが互いの状況を把握できるように魔水晶(ラクリマ)ビジョンが設置されている。
ジュビアは現在一番激しい戦いをしている想い人、グレイが映るその映像を見て忙しなく動かしていた足を止めていた。

『グレイ選手、ルーファス選手の猛攻に押されている!!』

倒されたかに見えたグレイ。しかし、彼は諦めることなど絶対にしない。仲間のために、そして自身のために。

「フフフッ。どうしたのかな?私がここで終わるのではなかったのかな?」

余裕綽々な様子でグレイに歩み寄ってくるルーファス。それもそのはず、彼はグレイに負けることなどないと完全に確信しているのである。
ルーファスはグレイの魔法や過去の記憶によりいくらでも魔法を作り出すことができる。
対してグレイはルーファスに記憶されてしまうと、彼の忘れさせる魔法により同じ魔法が使えなくなってしまうため、一度使った魔法は使えなくなる。
誰の目から見てもルーファスの優勢は明らかだった。

「ん?これは・・・」

ルーファスはグレイの前に散乱している一冊の本を魔力で浮かせ、読書を始める。

「ほう、魔導大慶『天の書』ではないか」

ルーファスはグレイと一緒に落ちてきた魔法書をすべて宙に浮かせると、得意の記憶を始める。

「『深遠なる冷徹書』、『闇の高等魔術』・・・うむ、『式井帰化における覚醒至宝』、『古代妖術書』・・・フフッ、これは良いものを見つけた」
「この野郎・・・呑気に読書なんかしてんじゃねぇ」

グレイは戦いの最中に本を読み始めたルーファスに苛立っている。彼はそんなことなど気にすることなく、本の文章の記憶を終わらせていた。
グレイはダメージを受けた体にムチを打ち、なんとか立ち上がる。

「まだ動けるのか、まぁそうでなくてはね。せっかくだから君には古より伝わりし古代魔法を味わってもらうとしよう」

ルーファスが片手をこめかみに当てると、2人を囲うように魔法の和が出来上がる。

「ただし、記憶した魔法と私の新たな解釈を加え、複数の魔法を組み合わせることにより、まったく新しい魔法を生み出す。すなわち、“新訳・古代魔法”!!」

ルーファスはこめかみに当てていた手を前方へと出す。

「列ヲ成ス古ノ剣旌」

ルーファスの前にまるで隊列を組んでいるかのように並んで出てきたのは氷で作られた騎士たち。

「見よ、素晴らしき古代魔法!!漂うエレメントで魂なき兵士を作り出せるとは・・・だがこれは新訳。君の氷の造形魔法がこの夢の魔法を結実させているのだ」

ルーファスによって作られた兵士たちに囲まれてしまったグレイ。グレイはいつでも造形ができるように両手を合わせておく。
ルーファスはグレイを指さすと、氷の騎士たちは彼へと突進を開始する。

「ざっけんな!!本の請け負いなんかしてんじゃねーよ!!」

グレイが氷のブーメランを連射し兵士たちを一掃しようとする。だがあまりに数が多すぎてすべてを捌ききることができず、破壊できなかったものたちがグレイを強襲した。

「うおっ!!」

グレイは兵士たちの猛攻に膝をついてしまったが、すぐさま立ち上がろうと体に力を入れる。

「なんてこた・・・ねぇよ・・・こんなもん」

グレイはやられながらも対処はしていたらしく、ルーファスの兵士たちは粉々になって消え失せていた。だが彼にはまったく動揺がない。

「なるほど。もう少し攻撃に重きをおいた組み合わせの方が良いようだな。記憶した」

ルーファスは先程の反省点を踏まえ、新たなる造形を発動させる。

「キラメク雷ノ刄!!」

氷の土台にケンタウロスの上半身をした大男が現れ、その男は雷を纏った大剣を降り下ろす。

ドガァッ

『これは凄まじい一撃!!グレイ選手、立ち上がれるが!?』

なんとか立ち上がったもののすぐさま地面に落とされるグレイ。一連の出来事を見ていたこの女性は心配で気が気じゃなかった。

「グレイ様・・・できることなら今すぐ駆けつけて・・・でも・・・」

ジュビアは昨夜、メイビスの言葉を押し退けてまでルーファスに挑もうとしたグレイの想いを踏みにじりたくないと思い、その考えを頭から消し去る。

「ジュビアはグレイ様を信じて、初代の作戦通りに動きます!!」

ジュビアは見上げていた魔水晶(ラクリマ)ビジョンに背を向けて、妖精軍師メイビスに指示された目的地へと急いだ。






「ほう、この解釈は面白いね。記憶」

ルーファスはグレイのことなどほとんど警戒することなどなく、彼が立ち上がるまでの時間を先程見つけた本の解読に当てていた。

「おいてめぇ・・・ここは図書館だろ?読んだ本は元の場所に返しやがれ!!」

グレイは床に手をつけると、辺りの本棚の前に巨大な氷の壁を作り出す。

「ついでにカンニングは禁止だ」
「それは残念。だがすでに記憶済みだ」

ルーファスの手元に赤と黄色の魔力が出現する。

「彩ル雷撃ノ焔!!」

炎と雷の合わせ技でグレイを飲み込む。グレイはそのあまりの威力に耐えきることができず吹き飛ばされ、王立図書館は大爆発を起こしていた。

「この戦いは私が君に送る鎮魂歌(レクイエム)。記憶しておきたまえ、君は私に勝てない」
「くっ・・・」

本棚にめり込み忌々しそうにルーファスを睨むグレイ。だが彼には今、全く反撃に出るための得策が思い付かない。

『これは圧倒的!!造形魔法対決、ルーファス選手の勝ちとなるのか!?』

敵の魔法の組み合わせは無限大、対してこちらは一度使った手段は使えない。かなり不利・・・というより絶対にひっくり返すことができないのではないかと思ってしまうほどの相性の悪さ。だがグレイはそれを承知でルーファスに挑んでいた。“必ず勝つ”その想いがこの勝負の反撃の鍵となる。
その同時刻、奈落宮に落とされたウェンディたちは脱出するために妙な作戦を取っていた。が、それが意味を成すことはなかった。

















鳴り響く爆発音。それは2人の造形魔導士が相対している王立図書館からだった。

『ああっと!!凄まじい追い討ち!!グレイ選手成す統べなく床を舐めるだけなのか!?』

反撃を許さないルーファスの猛攻を見て剣咬の虎(セイバートゥース)を応援しているものたちは沸き上がっていた。

「少々君を見くびっていたことは認めよう。ここまでしぶといとはねぇ」

2階部分にある手すりに腰掛け1階に倒れているグレイを見下ろすルーファス。

「そして感謝しよう。本日覚えた古代魔法の実験台になってくれることを!!」

うつ伏せで倒れているグレイ。その上に、見たこともないような魔法陣が展開される。

「降リ注グ古ノ叡智!!」
「ぐわぁぁぁ!!」

重力変化の魔法なのか、グレイはその魔法を受けたことにより押し潰されそうになり、床も少しずつ凹んでいく。

「古代の人々は恐ろしいことを考え付くものだ。魔法にできぬことはない。身をもって感じるだろう?重力さえ制御できる。君はこのまま光に押し潰される。逃げることはできない」

動くことさえ許されない魔法。

『グレイ選手立ち上がれない!!氷の造形魔法は記憶の造形魔法に破れてしまうのか!?』

すべての魔水晶(ラクリマ)ビジョンに映し出されている2人の対決。当然バトルフィールドであるクロッカスにもその映像は流れているが、グレイのことが大好きなジュビアはその様子を見向きもせずにただひたすらに駆けていく。

(グレイ様、ジュビアはグレイ様を信じています。グレイ様の強さを、想いの強さを。だからジュビアは振り向きません。心配しません!! )

ジュビアの想いが通じたのかはわからない。しかし、重力の光に押し潰されていたグレイが徐々に徐々に体を起こす。

「ったく・・・冗談じゃねぇ!!」
「まだ動けるというのか!?」
「負けるかっての。造形魔法は自由の魔法・・・そうだよな?ウル」

グレイは今は亡き自分の師であるウルの言葉を胸に、重力に負けることなく立ち上がった。

「それに、俺の記憶・・・ウル、あんたの魔法で勝ち取った戦いとそこで得たもの、そこで感じた想い」

彼の頭の中には今までの記憶が甦ってきていた。ガルナ島で兄弟子のリオンと再会したこと、幽鬼の支配者(ファントムロード)でジュビアと戦ったこと。リオンと共闘しレーサーを討伐したこと、そしてウルの娘ウルティアと出会ったこと。

『おいグレイ!!ちんたらやってんじゃねぇよ!!さっさと片付けてこいっつーの』

ここにいるはずのない自身の最大のライバルの声が聞こえてくる。その声が彼に力を与える。

「うるせぇっての、今やるとこだ」

グレイは氷の波で上階にいるルーファスを仕留めようとする。それも回避されてしまうが、ルーファスは驚きの表情を浮かべている。

『おおっと!!グレイ・フルバスター、ついに反撃開始か!?』

ジュビアは実況の声で安心したように微笑んでいた。

「もっと痛め付けてほしいと見える」
「もう十分味わったつーんだよ」

ルーファスはグレイのしぶとさに、グレイはルーファスの実力に感心し、こんな相手と戦えるとあってどこか楽しそうだった。

記憶造形(メモリーメイク)、大したもんだぜ。だがなぁ、こっちも記憶ってのがでけぇ力になるんだよ」
「面白いことを言う。君は何を記憶していると?」

グレイの作り出した氷が消える。2人は互いをまっすぐ見据えるように立ち直る。

「てめぇにはわかんねぇだろうがな。受けた痛みも・・・負けた悔しさも・・・勝った喜びも、全部だ!!この体と拳と頭に叩き込んである。それが次の戦いの力になる。今までの戦いすべてが、その記憶が、俺の力のすべてだ!!
お前をぶちのめす力が・・・俺の記憶だ!!」

グレイは自身の服に手を伸ばすと、上着を脱ぎ捨てる。

『脱いだ脱いだ!!脱いだぁ!!』

上半身裸になったグレイを見た女性客は鍛え上げられたその肉体を見て嬉しいような、恥ずかしいような声をを出していた。

「グレイ様ぁ!!ああ~ん!!/////」

ジュビアもグレイが服を脱いだところを見て顔を赤くしながら隠している。だがすぐに正気を取り戻し、目的地へとグレイが映る魔水晶(ラクリマ)ビジョンをチラチラと見ながら走り出した。

「ユニークな理屈だね。だが不愉快だ。典型的だね、弱い犬ほどよく吠える、とかってね」
「お気に召さなかったか?知ったこっちゃねぇけど」
「記憶するとは学ぶことだ。感情を差し込むものではない。君の記憶は感情ばかりだ。経緯がない」
「お前のその記憶が、お前自信を滅ぼす」
「何?」

グレイの言葉にルーファスは目を細める。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の紋章刻んでるからには、同じ相手に2度はやられねぇ」
「ほう?何か策でもあるのかな?」

グレイの体から冷気が溢れ出す。彼は目の前の敵を倒すために今までにないほどに意識を集中させていた。

「アイスメイク・・・」
「記憶」

ルーファスはいつでもグレイの魔法を記憶し、忘却させるためにと準備をしておく。だが、この一撃は彼の予想を遥かに越える一撃だった。

限界突破(アンリミテッド)!!」
「!?」

グレイの手元が一瞬光ったかと思うと、みるみる内に様々な種類の剣ができていく。

「これは・・・」

螺旋階段のように天井へと伸びていく氷の造形。そしてその至るところに何種類もの剣や槍を装着させていた。

「なんだこの造形の早さは!?」

あまりのグレイの速度にルーファスは驚愕している。

「覚えたかい?」
「記憶が・・・追い付かない!!」

一度にこれだけ多くの造形を、それもものの数秒のうちにやってのけたグレイ。彼の魔法の早さがルーファスの記憶のそれを越えたのだった。

「うおおおおおおお!!一勢乱舞!!」
「くぅ・・・」

グレイは螺旋の造形を発射台とし、ルーファスに大量の武器を叩き込む。ルーファスは記憶し切れなかったためにその氷を消すこともできず、氷漬けにされてしまう。

「しかし、氷属性だけなのが惜しい!!私はその氷を滅する炎を覚えている」

ルーファスは氷の中で体を動かし、造形魔法の体勢に入る。するとこれの足元がオレンジ色に輝き始める。

記憶造形(メモリーメイク)・・・燃ユル大地ノ業!!」

自分を捕らえている氷を溶かし、なおかつグレイを飲み込む炎の力。ルーファスは勝利を確信し帽子の唾を持つ。
しかし、その炎の中から飛び出し、自分のすぐ手前にやって来た男を見て驚きの表情を見せる。

「俺はもっと熱い炎を覚えてる!!」

クロスさせた両手に魔力を集中させ、現れた剣でルーファスを切り裂く。

氷魔剣(アイスプリンガー)!!」
「ぐああああああ!!」

宙を舞い、地面に叩きつけられるルーファス。彼の目は白目を向いており、完全に気絶していた。
メイビスはそれを見てホッと胸を撫で下ろす。

「見せてもらいました。あなたの想いの力を、その強さを」

グレイは自分の元に飛んできた対戦者の帽子をキャッチすると、戦利品と言わんばかりに被ってみせる。

『グレイだぁ!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)の勝利!!ルーファス破れるぅ!!』
「お見事ですわ!!グレイ様!!」

1日目のリベンジを果たしたグレイ。彼は満足そうな表情を浮かべ、倒れているルーファスを見下ろしていた。







 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
この2人の対決は制作者の悪意を感じるのは私だけですかね?
皆さんお気付きでしょうか、この2人の声優。
グレイ←中村悠一
ルーファス←代永翼
これ見て私は思いました。『おおきく振りかぶって』じゃね?と
いつでも怒る阿部隆也(中村悠一)とそれを恐れている三橋廉(代永翼)
今回は始めはルーファス(代永翼)が圧倒していたが結局はグレイ(中村悠一)に破れる。
なんか2人の声優の力関係を見せつけられたような・・・いや、他の作品だとどうかはわかりませんけどね。私見るアニメは数は少なくドップリ派なので。
これで弱虫ペダルの新開悠人の声優中村悠一だったらマジ受けるわ。真波山岳(代永翼)が弄られる4コマ漫画とか出てきそう(笑) 
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