戦国異伝
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第二百三十三話 本能寺の変その四
「他の方々にもな」
「さすれば」
穴山も北西の方を見つつ言う。
「明け方から大仕事じゃな」
「二条城にもお知らせせねば」
伊佐は信忠の方に注意を向けた。
「既に飛騨の方々も察しておられるかも知れませぬが」
「それがよいな」
由利は伊佐のその言葉に頷いた。
「ではわしが二条城の方に行く、すぐに戻る」
「ではわしは北西を見て来る」
霧隠も言って来た。
「これよりな」
「ではわしも行こう」
根津も言って来た。
「一人より二人の方がいいであろう」
「うむ、では我等で見て来る」
「さて、わしも少し見に行く」
望月も物見を申し出た。
「北西でなくとも気になるところがあるからな」
「高田卿の家か、ではわしもあそこに行こう」
筧は望月と共にと言った。
「そうして調べよう」
「共にな」
「さて、明日の朝には戦か」
清海はその手にもう巨大な金棒を持っている、それを今にも振り回さんばかりにして言う。
「これまでで一番激しい戦になるな」
「見に行く者達はすぐに戻る様にな」
物見に出てもとだ、猿飛が言った。
「これからのことを考えるとな」
「わかっておる、すぐに戻る」
「明日が正念場だからな」
「すぐに戻り殿にお伝えしてな」
そのうえでというのだ。
「大戦の用意じゃ」
「これよりな」
「それにかかろうぞ」
十勇士の他の者達も猿飛に応えた、そうした話をしてそのうえでだった。皆物見に出たり警護を固めて明日の朝に備えた。
物見の者達も二条城に行った者も戻って来た、そしてだった。
ことの次第を幸村に述べた、その報には流石の幸村も驚いた。
「それはまことか」
「はい、軍勢の旗は出しておらず具足の色は闇」
「それ故わかりませんでしたが」
どの家の軍勢かとだ、霧隠と望月が述べる。
「その数一万」
「それ程でした」
「一万か」
その数を聞いてだ、幸村も目を鋭くさせた。
「それだけおるか」
「左様です」
「それだけの軍勢が北西からじゃな」
「来られています」
「そうか、若しや」
そこまで聞いてだ、幸村は言った。
「その軍勢は」
「何か」
「いや、まさかな」
幸村は言いつつだ、自分の言葉を打ち消した。
そしてだ、十勇士達に話した。
「幾ら何でもその様なことが」
「?殿」
「何かお気付きにならましたか」
「それは一体」
「何でしょうか」
「軍勢の旗、具足の色はわかったか」
幸村は霧隠達にあらためて問うた。
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