戦国異伝
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第二百三十三話 本能寺の変その三
「やはり」
「そうでなければな」
「上様が尾張一国を治めだした頃から仕掛けてはきませぬな」
「それが何故かまではまだわからぬが」
「それでもですな」
「手は討てるだけ打った、ならばな」
それならというのだ。
「後は敵に手を打たせて」
「その後で、ですな」
「次の手を打つ、では今日の話はこれで終わりじゃ」
こう三人に告げた。
「よく寝るのじゃ、よいな」
「はい、では」
「これより」
「休ませて頂きます」
三人も信長の言葉に頷いてだ、そしてだった。
この日はそれぞれ枕元武具を全て置いて寝た、それは信長も同じで。
帰蝶のいる部屋に入って己の武具を見てだ、満足して言った。
「これでよい」
「用心をされてですね」
「うむ、何かあればな」
その時にはというのだ。
「これを着てじゃ」
「戦われますか」
「よいか、戦いきりのいいところでな」
「上様はですね」
「御主もじゃ」
帰蝶にも言うのだった。
「共にまずはじゃ」
「難を逃れて」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「逆に仕掛けるぞ」
「その相手に」
「よいな」
「では」
帰蝶は信長の言葉に静かな声で答えた、そしてだった。
そうしてだ、自身の夫にこう言った。
「今宵は共に寝ましょう」
「うむ、これからな」
「明日も早いですね」
「それはいつも通りじゃ」
信長の朝は早い、まさに日の出と共に起きるが明日もだというのだ。
「だから御主もな」
「はい、私も上様と同じく」
「早く起きるな」
「いつも通りです」
微笑んでの返事であった。
「そうさせて頂きます」
「ではな。共に休もうぞ」
「さすれば」
こうしてだった、信長は床に入り眠りに入った。帰蝶と共に。
その夜だ、猿飛は本能寺の屋根にいて周りを見ていた。他の十勇士の者達も共にいる。そこでだ。
都の北西の方を見てだ、彼はその目を鋭くさせて言った。
「騒がしいのう」
「うむ、丹波の方からな」
「何かが来ておるな」
「上様が言っておられたことじゃな」
すぐにだ、猿飛はこう察した。
「まさにな」
「都に来ておる」
こう言ったのは海野だった。
「そしてここに来る頃は」
「明け方か」
望月も言う。
「その頃じゃな」
「おそらくな、ではな」
「うむ、殿にお知らせしよう」
幸村にというのだ。
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