逆襲のアムロ
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18話 裏の読み合い 3.7
前書き
更新が滞ってしまいました。
* 地球軌道上 アルビオン艦橋 3.7 13:00
ガトーの宇宙進出に遅れること半日余り、シナプス隊もトリントン基地より宇宙へと打ち上げられていた。もはやガトーの信号は途絶え、アルビオンの進路はアナハイムの要請により、月へと取っていた。
シナプスは周囲の哨戒を怠ることなく指令を出した。
「レーダー監視、索敵、宇宙には様々なデブリもある。ここが連邦の勢力圏内だと思っても油断するな。現にトリントンへ攻撃されているのだからな」
シナプスの隣に立っていたバニングがその指示についてぼやいた。
「全く・・・敵味方あったもんじゃない。今の状況ならいつでも後ろから撃たれてもおかしくない」
その意見にシナプスが同意した。
「そうだな。ブレックス准将と私と意見が一致している。何か作為的な事が起きている。つまりはあのガンダム2号機も連邦の誰かが、どこかで使用することを見込んでのことだ。そして、それを敵の手に渡した」
アムロはバニングのすぐ傍にいた。そして、2人の話について深く考えていた。
「(あの時、捉えようとした2号機には既に核が搭載されていた。もし、知らずにビーム兵器で攻撃していたら我々は消滅していたかもしれない。・・・さて、過ぎたことだ。何処で誰に対して効果的に使われるかだな)」
アムロはシナプスに今までの経緯と連邦の状態を一から洗った方が良いと提案した。
「今の連邦はまだ正規の軍人派閥の力が強い。派閥闘争も一番の障害はそこにあることは誰でも分かる。こういう闘争は利権と金だからな」
アムロの意見に2人とも頷いた。
「そうだな。軍部での闘争要因など、利権と金に操られているものたちだからな。コリニー将軍はレビル将軍の暗殺の黒幕とも言われているが・・・」
シナプスが軍部で噂されている話を持ち出すと、バニングが更に別の人物の話を乗せてきた。
「ゴップ議員もそうだ。軍部出身で、軍事産業からの支援が厚いと聞く。ここ数年の冷戦のような状態に業界から圧力があったとも・・・」
アムロは自分で挙げた意見について反論をしていた。
「しかし、まだジオンの脅威が残っているにも関わらず、正規軍をわざわざ取り除くと言う暴挙にでるのか?何かそれに代わるものが無いと自分の首を絞めるようなものだ」
バニングがアムロの言うことを含め、流れ良く状況を組み立てた。
「つまりはジオンの脅威に屈することなく、連邦軍が壊滅的になっても、それで利益を得る。それを連邦が誘導している?馬鹿々々しい。論理が破綻している」
シナプスはバニングの言った状況をあながち嘘ではないと言った。
「トリントンの件含め、仕掛けてきている者たちは我々のような敵を葬ろうとしている。彼らにとって、反抗するなら味方は少なくても良いと考えているみたいだ」
アムロは顎に手をやり、シナプスの話したことにこう返した。
「軍縮が望みなのか」
「正規軍派閥の解体だ。より彼らのやり易いようにしたいのだろう。正規軍が何らかの形で大敗を期すれば、第2次ビンソン計画は失敗、正規軍派閥は発言力を失うだろう」
「じゃあ、その時に表舞台に出る奴が首謀者なわけだな」
アムロはそう述べると、バニングが破綻した論理の一番頭を気にしていた。
「しかし、ジオンの脅威に屈しないとは如何なものだ?現に我々はソーラレイに屈している」
2人とも頷いた。そしてシナプスが話を締めた。
「その首謀者とやらには切り札があると考えてよいだろう」
* ジオン公国 サイド3 ズムシテイ 総帥執務室 同日 15:00
ギレンは各方面から満面無く来る稟議決裁の山を処理していた。
彼の普段の仕事の大部分がそれである。
その最中、デラーズより光速通信がギレンに掛かってきた。
「なんだ、デラーズよ」
通信画面にデラーズが載っていても、ギレンは見向きもせず、稟議書に目を通していた。
「お忙しいところ失礼致します閣下。先ほどガンダムが当方拠点「茨の園」に到着致しました」
その報告を聞くと、ギレンはペンを止め、デラーズの通信画面に目を落とした。
「そうか。星の屑の一つが成った訳だな。企業間通じてだが、互いの手の内をある程度明かされるのは、少々草臥れる。裏の裏、先の先まで読み切れないと、損をする」
「そうですな。我々はまさにポーカーの最中です。相手のブラフか本気かを読み合う。賭け事にしろ、乗せたチップが命を伴います」
「うむ。我々の作戦は月へのコロニー落としというカードを相手に見せている。しかし、実際は地球なんだがな。相手は我々にルナツーで行われる第2次ビンソン計画を破綻させて欲しい、という要望をカードで突き付けてきた」
デラーズはギレンの話におかしいと考え込んだ。その思案顔にギレンが笑った。
「ハハハ、そうだろう。何故奴らがわざわざ首元を締めるようなことをするのか?話に聞くと、奴らは派閥争いしているそうだ。この私が健在なのにも関わらず。バカな話だ。私を侮るにしてもいい加減にして欲しいものだ」
デラーズはギレンの言うことに賛同した。
「おっしゃるとおりです。閣下を駒に使うなど、愚かな者どもです」
「と、普通なら思うだろう」
「はっ?」
デラーズはギレンの言葉にちょっと驚きを見せた。
「策士、策に溺れる。溺れぬように泳ぎ切りたいものだ。そこまで読み切らねば戦いには勝てん。そこまでして、奴らは私に挑戦、いや駒に扱おうとする気だ」
ギレンは一つ間を置いてから話始めた。
「貴様らの働きの後、私は第2次ブリディッシュ作戦に移る。これは奴らも知る既定路線だ。企業間でもフォン・ブラウンへのコロニー落としで市場は荒れるだろう。奴らもそれで利鞘を考えている。しかし、奴らは安全だ。本当は地球なのだからな」
「はっ」
「そして連邦の奴らもそれを既に看破していると考えて良いだろう。我々にはソーラレイとこの3年で配備された大艦隊がある。今回で宇宙の覇権を牛耳る好機でもある」
「正に好機ですな」
「そうだ。その好機で奴らの思惑も露見するだろう」
そう言うと、ギレンはデラーズとの通信を終え、再び書類に目を通し始めた。
* ルナツー 司令部 同日 16:00
ワイアットは皆が忙しく動く最中、自前の紅茶セットで優雅にお茶を嗜んでいた。
第2次ビンソン計画の最終段階。宇宙艦隊再建がここルナツーで2ヵ月後に行われることになっていた。
「ふう・・・あのソロモンから3年か・・・ようやくここまでまた辿り着いた」
ワイアットは遠くを見ていた。あの敗戦から、様々な困難を乗り越えて、その当時以上の戦力を持って宇宙艦隊の総司令として着任した自分に感慨深く思っていた。
ワイアットの下へ着々と報告が来ていた。観艦式の日程とその後のジオンの攻略についてであった。
その中にジャミトフより使いで来ていたバスクがワイアットと会談をしていた。
「将軍。ジャミトフ提督より代わって御礼のご挨拶にと参りました。この度はおめでとうございます」
バスクは満面の笑みでワイアットを称えた。ワイアットは機嫌よく、それに返答した。
「ありがとうバスク君。時に、今後のジオン攻略についてだが・・・」
「はっ。将軍の奇策、誠素晴らしく思っております。あのソーラレイを石ころで粉砕などと」
ワイアットはティーカップに口を付けてから、話し始めた。
「いや、あんなもの誰でも考えれることだ。今まで考えていても、それを実行する力がなかった。宇宙に浮いている実弾兵器、デブリもそうだが、あの固定砲台に対して攻略など、四方八方から小惑星をぶつけてやればよい」
「はっ、慧眼恐れ入ります」
「うむ。例え可動式だとしても、目標があのサイズだ。避け切れないだろう」
ワイアットはバスクを下がらせ、再び紅茶を嗜んでいた。
バスクは自身の艦に戻り、ワイアットの作戦を実行するように見せかけ、ルナツーから離れていった。
艦内の自室にてジャミトフと通信で会話をしていた。
「・・・だそうです。いかがしますか閣下」
「ワイアットめ。中々できる奴じゃないか。ならば、ここでやはり葬るのが必然だな」
ジャミトフは微笑を浮かべ、バスクへ指示を出した。
「バスクよ。ワイアットの作戦はそのまま実行しろ。成功の可否がどうでもよい」
「はっ」
「我々もその成功の可否でグリプス2についても改善せねばならぬかもしれぬ。一体どれぐらいの戦力で無力化されてしまうのか」
「そうですな。今回の作戦の艦隊規模は全体の三分の一になります。各方面からのアステロイド・ベルトからのゴミを収集してきております。それぞれに核パルスエンジンを載せている。ちょっとの軌道修正の攻撃ではビクともしないでしょう」
「確かにな。四方八方からの隕石攻撃。これを秘匿するにどれだけの苦労があったか計り知れないな。我が軍の動きはサイド3の更に外側を隠密に動いていた」
ジャミトフは沈黙をした。バスクはそれが話の終わりだと悟り、通信を切った。
* テンプテーション号内 3.9 11:00
連邦の強制退去により、グリーンノアから追い出されるようにして出てきた者たちが居た。
その中に、今年13歳になるカミーユ・ビダンが父親フランクリン、母親ヒルダと共にサイド6のインダストリアル1へ向かっていた。
カミーユの両親共に連邦の技師であった。そのため、連邦からの異動命令も伴っての移動でもあった。
その便には幼馴染のファ・ユイリィとその両親も乗っていた。
カミーユの両親は仮面夫婦であった。そのため、カミーユは性格的に繊細で感情のコントロールが難しかった。それをファは心配そうに見ては支えていた。
今回の移動にしても、仕事都合ということでカミーユは不満に思っていた。やることなすことがカミーユにとって不満でしか思わなかった。
その鬱憤が様々な方面への学術的なことや武術的なことに向いていた。そのため、周囲からは秀才として一目置かれていた。
カミーユがインダストリアル1に入港前に宇宙を窓より眺めていた。
その姿にファがカミーユに注意した。
「カミーユ!そろそろ着くわよ。席に戻らないと」
「分かってるよファ。ただ、この宇宙だけが僕を慰めてくれるんだ・・・」
ファはため息を付いて、カミーユの頭をポンと叩いた。
「な~にカッコよく黄昏ているの!私たちそんな年でもないでしょ」
「うるさいな。親父は不倫していて、母親は見て見ぬふり。最悪な環境だよ」
ファはカミーユの愚痴をいつも聞いていた。それにファはいつも気を使ってカミーユを慰めていた。
「うちの親もカミーユが一人の時は遊びにおいでっていってるよ。生憎、うちの親とカミーユの親は外面が良いから、融通が利く。親が自分たちで無責任で楽しんでいるんだから、カミーユももっと気楽な方に考えて、うちも含めて色々利用しちゃいなさいよ」
「ふん。ファはいつも物わかり良いように言う・・・」
「それが取り柄だからね」
そう話していると、入港のアナウンスが流れた。その放送を聞いた2人は自身の席へと戻っていった。
* アルビオン艦橋 同日 12:30
フォン・ブラウンを目前にして、敵襲の警報が出た。
艦橋が騒然となった。
シモンが索敵で敵を発見した。
「艦長!敵は単艦です。しかし、本艦よりも大型。砲撃来ます!」
砲撃がアルビオンを掠め、艦橋が激しい揺れを伴った。
それに対して、シナプスはモビルスーツ隊へ迎撃命令を出した。
「フォン・ブラウンの目前だ。本艦はその宙域まで到達すれば、そこは非戦闘地帯になる。敵は諦めるだろう。牽制で敵を迎撃する」
シナプスの指示でバニング達は急ぎ格納庫へ向かった。コウはガンダムに乗ろうとしたが、モーラに止められた。
「ウラキ少尉。こいつはダメだ」
コウはモーラの言い分に反論した。
「緊急発進なんだ。そこをどいてくれ!」
モーラは首を振った。
「こいつは宇宙換装していない。宇宙に出しても、ただの案山子にしかならない」
「そ・・・そんな・・・」
コウは戦えない悔しさで落ち込んでいると、バニングがコウの頭を拳でつつき、その反応でコウは振り返った。バニングがつついた手にバニングのジム・カスタムの認証キーがぶら下がっていた。
「ウラキ。これを使え」
「えっ・・・でも、大尉は?」
「今回は単艦での仕掛けらしい。それ程大した出番もないだろう。それに宇宙も体験した方が良い。ディーック!」
バニングは搭乗しようとしていたアレンに大声で呼び止めた。
「なんですか!隊長」
「ウラキの面倒を見てやってくれ」
「ん・・了解!少尉。早く来い」
コウはバニングにお礼を言い、認証キーを携え、ジム・カスタムに乗り込んだ。
艦橋で通信士のピーター・スコットがモビルスーツ発進を促した。
「各機とも進路クリアです。敵は後背に付かれております。各員健闘を祈ります」
それを聞いた、モンシア、ベイト、アデルはカタパルトに乗り、宇宙へ飛び立っていった。
続いて、アレン、キース、コウという順番で宇宙へ飛び出していった。
一方、アルビオンに後背より追撃していたのはシーマの旗艦リリー・マルレーンであった。
リリー・マルレーンの艦橋は独特な雰囲気だった。
副官のデトローフ・コッセル大尉がアルビオンよりモビルスーツが6機出撃したと報告が入った。
シーマは持っていた扇子を勢いよく閉じ、命令を下した。
「よし!我が隊もモビルスーツ隊を出す。指揮は私が直々に取る」
「はっ!各モビルスーツ隊員。シーマ様に後れを取ることは許されん。急げ!」
コッセルが復唱し、隊員はモビルスーツデッキへ急いだ。
シーマも席より腰を上げ、ゆったりとした足取りで艦橋を後にしようとした。
コッセルはひとつ気がかりなことがあって、声を掛けた。
「あの試験機を使うつもりで」
その問いかけにシーマは笑みを浮かべて答えた。
「ああ。シロッコの土産な。あのモビルスーツは私の想いを汲んでくれると言っていた」
シーマの話し方にコッセルは少々陶酔気味のように感じた。しかし、それ以上は敢えて追求しなかった。すれば、叱責を被るからだ。
「分かりました。お気をつけて」
「フン。誰にモノを言っている」
シーマは上機嫌にそう言って、格納庫へ向かって行った。
シーマは実は月の裏のグラナダに行く用事があった。ギレンからの指示であったが、この艦でキシリアの護衛に付くという任務を請け負っていた。
近々、キシリア、そしてデギン公王共に、第2次ブリディッシュ作戦を行うという予定でギレンは組んでいた。そのため戦力の編制をするべく、軍にはア・バオア・クーへ招集を掛けていた。
新征という名の下で宇宙を手に入れるということで。
シーマはたまたま進路にアルビオンを発見したため、撃沈可能ならばと思い、攻撃を下していた。
先発のモンシア、ベイト、アデルはリリー・マルレーンからのゲルググJ部隊を捕捉した。
ベイトが2人に連絡を取った。
「よーし。いつも通りジェットストリームアタックでいくぞ」
モンシアはそれについて猛反論した。
「ベイト~。それは敵の技だぜ。第一オレらドムじゃない!」
ベイトはそんなモンシアの意見に呆れていた。
「バーカ。モノの例えだ。来たぞ。アデル!」
「はい。中心に打って散開させます」
ゲルググ部隊の中心に向かって、アデルはキャノン砲を打ち込む。すると、ゲルググ部隊は開花するように散開した。その1機に目がけて、モンシアとベイトが殺到した。
「これで2対1よ!」
ベイトがゲルググに向かってビームを打つ。ゲルググは少し掠め、バランスを崩した。その後背をモンシアがサーベルで斬りかかった。
「よし!もろたでー」
モンシアの一閃はゲルググの腕を切り落とした。咄嗟でゲルググは体を逸らしていた。
そして、今度はモンシアとベイトが散開したゲルググに襲われていた。
「こりゃ、敵わん!」
「ああ、数じゃ無理だ。一旦距離を取るぞ、モンシア、アデル!」
「了解です」
そして3人は少し距離を置き、互いにけん制し合いながら戦っていた。
次発のアレン部隊は先発の3人の宙域を避けるようにリリー・マルレーンへ攻撃を加えようとしていた。しかし、そこにもゲルググが立ち憚った。
しかし、ゲルググは1機だけだった。アレンは好機だと思い、コウ、キースに威嚇射撃と挟み込みで倒すと指示を出した。
「ウラキ少尉、キース少尉。数の上ではこちらが勝っている。勝負をかけるぞ」
「了解!」
「了解です」
キースがゲルググに砲撃し、ゲルググがそれを避け、コウとアレンも射撃でゲルググとの距離を詰めていった。そして、至近間近まで来た。
「(よし、取れる!)」
そう思ったアレンはサーベルを抜き、ゲルググに斬りかかった時、アレンの頭上より無数の射撃がアレンに注がれた。
「なっ・・・なんだと」
アレンは直撃こそ免れたが、ジムの片腕と片足を失っていた。
その射撃したモビルスーツがゲルググの前に現れた。
深紅のモビルスーツであった。高出力のメイン・ブースターが2基目立つような仕様で、明らかに高機動性能のモビルスーツであった。
それに搭乗しているシーマは笑っていた。
「ハッハッハッハ。いいぞ。よく避け切った。もう少し遊べそうだな。シロッコめ。いい土産を置いていったもんだ」
アレンは残った手でサーベルを構えた。シーマもマシンガンをゲルググに預け、サーベルを抜いていた。
アレンはひしひしとプレッシャーを感じていた。この敵は只者でない。そう告げていた。アレンはコウとキースに帰投命令を出した。
「ウラキ少尉、キース少尉。ここは退け」
その命令にコウが反発した。
「何言っているんですか。その機体では相手は未確認のモビルスーツです。一見でも高機動性を兼ね備えています。中尉だけ残していくわけには・・・」
「バカ野郎ー。上官命令だ。これ以上聞き分けないと、ここでお前らを撃墜するぞ!」
アレンはサーベルを2人に向けた。その覚悟、気迫に2人とも息を飲んだ。
「わ・・・わかりました。帰投します」
「それでいい・・・」
そして、コウとキースはアレンを残して、アルビオンへ向かって行った。
アレンは望遠モニターを見た。モンシアたちも徐々にアルビオンへ帰投するような防衛線を敷いていた。
「さてと・・・」
アレンは再び、シーマに向き合った。シーマは感心した。
「へえ~、武士道極まりないねえ。男としての本懐でも果たすときなのかな~」
そうシーマが呟き終わると同時にアレンがシーマに斬りかかってきた。
シーマはそれを軽く交わした。アレンの側面にシーマが旋回するよう回り込むと頭上よりサーベルを振り下ろした。
アレンは戦場の勘からそれを見抜き、ジムを各部のスラスターによる軸回転させ、シーマの斬撃を躱した。至近距離になったシーマに目がけ、アレンはバルカン砲を食らわせた。
「なっ!」
シーマは衝撃により、後退した。シーマが再び前を向くと、そこにアレンがいない。
すると、足元から接近する警報が鳴り響いた。
「下かー!」
シーマはガーベラテトラのスラスターの出力を上げ、アレンからの攻撃を避けた。その動きを見たアレンは舌打ちした。
「っち。早すぎるな・・・」
シーマはガーベラテトラの機動性能を活かし、蝶のように舞い、蜂の様にアレンへ攻撃を加えていった。
「ぐおっ・・・」
アレンのジムがパーツ毎に少しずつ削られていった。そして気が付けば、胴体と頭のみとなっていた。
シーマは機動性能の負荷により、息を切らしていた。
「・・・ハア・・・ハア・・・全く・・・手強い相手だった・・・」
シーマはサーベルをアレンに目がけて振り下ろそうとしていた。
その時、シーマのサーベルの手に目がけてピンポイントに爆発が起きた。
「な・・・なんなんだ一体!」
シーマが動揺していると、そこに1機のジム・カスタムがやって来た。
アレンは誰がジムに乗っているかと問いかけた。その返答にアレンは安堵した。
「中尉。生きていたな。オレと一緒に帰投するぞ」
「ああ、ありがたい。レイ大尉」
シーマは怒りに震え、援護に来たアムロを逃がすまいともう片方の手でサーベルを握り、アムロへ斬りかかった。
「なめるなー!」
その怒涛の切り込みにアムロはライフルで、ガーベラテトラの接合部を全て一撃で打ち抜いた。
シーマは構えた動作のまま動きが取れずにアムロの前を勢いよく通過していった。
「な・・・なんだとおー」
シーマは動かないガーベラテトラを何とか持ち直して、リリー・マルレーンへ帰投して行った。
それを見届けたアムロはアレンに声を掛けた。
「全く。上官としての鑑だな中尉は・・・」
「あはは・・・カッコ悪いな・・・生きてしまった」
「フッ・・・何も恥ずかしがることでもない。ウラキ少尉とキース少尉が戻って来て、オレに救援を要請したんだ。ここに着いたときは間一髪だったな」
「まあ、助かった命だ。有り難く頂戴しましょう」
こうしてアルビオンは無事フォン・ブラウンへ入港を果たしたのであった。
後書き
・・・ということで、歓艦式は2か月後の5月7日になります。
それまでにコウを鍛えないと(笑)
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