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神の贖罪

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12部分:第十二章


第十二章

 戦いは多くの援けと様々な宝を駆使した三人の勝利に終わった。残ったフォウォールはミズケーナと彼の三人の息子達だけであった。
「まさかここまでやるとはな」
「残ったのは我等だけか」
「しかしだ」
 山の様に巨大なミズケーナの前に三人の息子達が立っていた。
「我等は今まで敗れたことはない」
「だからだ。最早これ以上は」
「好きにはさせぬ」
「それはもうわかっていることだ」
 ブリアンは彼等を見据えて言い返した。彼等は馬や船から降りてはいるが武器はまだ手に持っている。周りでは龍や王達、騎士達が戦いの行方を見守っている。
「どうなる?」
「大丈夫か?」
「いや、ここは信じるのだ」
 龍が心配する王や騎士達に対して言う。
「彼等をな。ここは」
「そうですね。ここは」
「それしかありません」
 乙女達と妖精達が龍のこの言葉に頷いた。
「今は。それしか」
「信じましょう」
「そういうことだ。あの三人ならばだ」
 龍は彼等を信じていた。
「やってくれる。待つか」
「そうですね。彼等の勝利を」
「そして雄叫びを」
 三人は彼等の信頼を受けて今ミズケーナ、そして三人の息子達と対峙する。まず動いたのは息子達だった。三人はそれを受けて立つ。
 戦いはそれぞれ数百合に及んだ。だがそれでも決着はつかない。だがまずブリアンが相手の一瞬の隙をついた。その槍を繰り出したのだ。
「今だ!」
「むっ!」
「これで・・・・・・終わりだ!」
 その槍は相手の喉を深々と突き刺した。これでまず一人だった。
「勝ったぞ!」
「よし、兄者!」
「ならば我等も!」
 ヨッハルとヨッハルヴァは彼の勝利にその闘志をあげた。そしてそれぞれが手に持っているその焼き串と剣を振るった。それが勝利の一撃になった。
 これでまず息子達を倒した。しかしまだ最後の大物が残っていた。それはミズケーナ、雲に届かんばかりの巨体をそこに見せて立っていた。
「でかい・・・・・・」
「何という大きさだ」
 ヨッハルとヨッハルヴァはまずその巨大さに気圧されていた。
「最後の最後で」
「この様な相手か」
「大丈夫だ」
 しかしブリアンはそのミズケーナを見上げつつ二人の弟達に対して告げた。
「勝てる。我々はな」
「勝てるのか」
「そうだ。これだ」
 こう言って自分が右手に持つその槍を掲げてみせた。
「この槍なら勝てる」
「そうか。それならばそれで」
「頼むぞ、兄者」
「うむ。まずはだ」
 ここで彼は角笛を吹いた。すると子犬と馬車がブリアンの下に来たのだった。
「この者達を使う」
「子犬と馬車をか」
「その通りだ。これならな」
 まずは馬車に乗った。そして子犬に対して命じた。
「足元を攻めてくれ」
 これが子犬に対する命令だった。子犬は頷くとそのままミズケーナの足元を攻めだす。ミズケーナはそれに気を取られブリアンへの注意を拡散させた。
「御前達は左右からだ」
「左右からか」
「そうだ。ヨッハルは右だ」
 まずはヨッハルに対して命じた。
「ヨッハルヴァは左だ。いいな」
「わかった」
「それではな」
「左右から攻めてくれ。子犬と共同してな」
 こうも告げる。そうして一気に攻めさせる。だがミズケーナは二人と子犬の攻撃を受けても全く動じていない。互角以上にさえ渡り合っている。
「やはり難しいか」
 龍は彼等の闘いを見て呟く。
「あの巨人に勝つのは」
 彼等はミズケーナに押されていた。しかしここでブリアンが馬車を動かした。何と馬車はここで空を駆ったのだった。天高く舞っている。
「これならばだ。勝てる!」
「よし、兄者!」
「行け!」
 弟達は顔を見上げて長兄の動きを見守っていた。
「今その槍を!」
「巨人に!」
「受けよ!」
 天高く馬車を駆るブリアンは右手の槍を投げる動作に入った。そしてそのまま投げるのだった。
「この槍で。全てが終わる!」
 叫びそれと共に投げた。槍は凄まじい唸り声をあげ一直線に巨人の喉に突き進む。そして槍はそのままに巨人の眉間を貫いた。槍に貫かれた巨人は動きを止めた。それからゆっくりと後ろに崩れ落ち鈍く大きな音を立てて倒れ伏し動かなくなってしまった。
「終わったな」
「うむ」
 ブリアンは馬車に降りた。そして三人で静かに話すのだった。
「これでな。全ては終わった」
「全ての責務がな」
「そうだ。これでだ」
 また三人で言い合う。
「これでな。終わった」
「帰れるのだな」
 ヨッハルヴァが言う。
「これでな」
「そうだ。帰ろう」
 ヨッハルが二人の兄弟に話す。
「トゥアハー=デ=ダナーンにな」
「その前にだ」
 ブリアンがここで弟達に言う。
「やることがある」
「やること!?」
「それは一体」
「何だというのだ?」
 弟達は怪訝な顔で長兄に問うた。
 
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