虚空を照らす数多の光
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唯斗から見たその日の日常
昼休み、俺と太輔は向い合って昼飯を食べていた。
「へぇ。太輔って沙織のことが好きなんだ」
「うるせぇ。だったらなんだよ」
表情と声色を変えずに言葉を発する。
「だったらって、まぁ。付き合えるように協力してあげようかなって思って」
「いや、いいよ。下手にお前が割り込んで失敗した時リスクが倍加するから」
「へぇ」
「それに。俺、沙織の想い人のこと知っているから」
「誰々!?」
気になって身を乗り出して聞いてみた。
「いや、お前が気にすることでもないだろ」
「誰だ?基本的にあいつ男子と話したところ見たことないしなぁ。昔は遊んでいたけど、最近嫌われたっぽいし」
ひとりごとをブツブツつぶやいていると太輔に頭をどつかれた。
「いて!」
「じゃあ、協力してくれよ」
放送のコールがなる。
『掲示委員の人に連絡があります。一時半に印刷室に集まってください。繰り返します。掲示委員は一時半に印刷室の集まってください』
「あ。俺そういえば印刷委員だった」
俺は立ち上がる。その瞬間思い当たったことが脳裏によぎる。
「あ、そういえば沙織も掲示委員だ」
「そうか?」
「ああ。そうだ」
俺はスマホを眺める。
「今日明日って星が見やすい日だって言われているな」
「ああ。夜快晴になるそうだな」
「明日ちょっと沙織誘ってみるわ」
「お前が誘って応答するか?嫌われているんだろ?」
「そうだった。タイムラインは見れるからブロックはされてないにしろ、どうしたものか」
「沙織といつもいる歩乃に誘ってみたらどうだ?」
「なんでお前にアドバイスもらうんだろう?」
「俺の考えだが、疑われないように色々メンバー揃えて見たらどうだ?」
「疑われないためねぇ」
俺は文芸部の男子全員にLINEを送ってみた。
「一応男子と女子を均等に誘っておけ」
「そうだな」
「それから、お前。女子に過剰に拘り過ぎなんだよ!」
「そうですか」
そして俺は印刷室に入る。
メンバーは1人来なかったが、仕事は続行された。
その1人は沙織。LINEを送っても反応がないのは目に見えていた。直接誘ってみてはとも思ったが、それでは言語道断で断られるだろう。ただ、気になったことが有った。聞けるのであれば聞いておきたかった。
仕事が終わり、俺は通知が来ているLINEを開いた。
『必ずしも沙織たちが、星が見やすいって言う情報を持っていることを知らない。無理に話しかけるな』
2つに区切った吹き出しで送られてきた。
太輔は周りがしっかり見えているな。
ドアが開き、沙織の姿が見える。
「よっ。沙織」
「っち!」
舌打ちで返された?
「なんで目をそらすんだよ」
俺は彼女の方へ直進すると、落ちているちり紙に足を取られ、バランスを崩した。
「あ、えっと」
彼女を壁に叩きつけてしまった。
「あ、ごめん!」
「すまんやってしまった」
「へぇ。今の出来事。完全にラブコメじゃねーか!」
「よくやった!」
歩乃が太輔の隣にいた。
「歩乃?」
「あんたら面白そうな話してるんだね!」
「どうやら協力してくれるらしい」
「へぇ」
俺は太輔をまじまじと見る。
「私の作戦は。まず、沙織に太輔のことを意識させる」
「どうやって?」
俺は机に座る。
「そうね、私の好きな人とか行って沙織に篠崎のことを話題にだす」
「え?それじゃ逆効果じゃないか?」
「女の子は結構それだけで切欠になったりするの」
「それと、私からは明日あんたらが星を見に行くことを伏せておいて上げる。サプライズのほうがキュンと来るものなのよ」
「なぁ。どこまで気づいていた?」
太輔は歩乃に質問をする。落ち着いていながらも結構気が散っているようだ。
「私が気づいていたのは、唯斗に気がなくて、あんたが好きなことくらい。篠崎こそどうなの?」
「まぁ。望みが薄いことはわかっていた」
俺はその話についていけてない。
「唯斗。一応お前に行っておく。お前が誘った女子の殆どがお前に気心が在る。だからまぁ。誰かしらに告られるだろう」
「嘘だな」
「嘘と警戒するなら警戒すればいいさ」
後日。
「ねぇ。手紙入れた?」
「帰りに入れた」
「敢えてそれの主は唯斗であると伝えるわ」
「え?」
「そうすると彼女来るから」
「俺、嫌われてるんだぜ?」
「いいのいいの!」
「騙している感じがあまり好ましくないな」
太輔はつぶやく。
「今更よ。恋は女を盲目にするの。側面からの騙し打ちであの子を恋の病から救ってあげて」
歩乃は太輔に唱える。
放課後、女子しか集まらず多少焦ったが、帰り。
「なあ。唯斗」
「どうした?太輔?」
「俺がフラれたら慰めてくれ」
「成功するさ。俺が告白を断ればいいだけだ」
「気づいていたのか?」
「そこまで鈍感じゃねーよ。そうすれば幾らかいいだろ?」
俺達は夜道を歩き、星が見える絶景と呼ばれる場所に向かう。
俺と篠崎でシートを敷、寝っ転がる。すると女子税がこそこそ話していた。
「何話しているんだ?」
無視されてしまった。
「おい。いい加減お前らこっちに来いよ。星。綺麗だぜ」
すると突然、羽七は域を吸い込み、叫ぶ。
「高樹君!私。高樹君のこと好きです!付き合ってください!」
ずっと沙織が告白してくると思って答えを一つしか用意していなかった。とっさに出たのが心のなかで練習していたものが出てしまった。
「ごめん。俺、誰に告られても答えは同じだ」
「そんな!」
「相変わらず残酷なやつだ。お前。フッた相手に優しくするな」
「どうしたらいいんだ?」
本当だ。俺は羽七に告られて嬉しかったはずだった。でも断ってしまった。いいと言ってあげたかった。失敗した。
「まずその性格を直せ」
「え?」
「いい機会だ。言っておく。興味のない相手に過剰に拘り過ぎなんだよお前は。相手が意識することを知った上での行動だったら性格が悪いぜ」
太輔は言葉を発する。
「すまんな。みんな。今日来てもらったのは2つ理由があるんだ。一つはお前らが好いている。高樹唯斗を諦めてもらうために呼び出した」
そうだったのか。なるほど、だからあの時、均等に男女を誘えと言ったのか。相変わらず、周りをしっかり見ている奴だ。
突然沙織がかけ出した。
「あ!」
「唯斗まった!」
俺が走りだそうとすると歩乃は俺に足を駆けた。
「イタ!」
バランスを崩した。
「篠崎!走らないで。下手に追いかけないで」
「どうする!?」
「歩いてゆっくり行って!」
「え?」
「あの子の体力だとすぐ疲れる。そこを利用して止まったところに行く」
「分かった」
太輔はとことこと歩いて行った。
「本当にこれでいいのか?」
「正解よ。こうすれば絶対成功する」
「…」
「で、みんな。今日集まってもらった理由のもう一つは篠崎の恋を助太刀するためでした」
「そうだったのか」
「まいったな」
羽七と佳奈先輩は頭を抱えた。
「本当にごめんな。2人とも」
「だったらむしろ私を彼女にしたほうが確実じゃなかった?」
「そ、それは」
俺は答えられなかった。
「予想していない言葉が来ると普通ああなっちゃうのはわかるわ」
「でもなぁちょっとやだな」
「ごめん」
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