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魔法を見て気付いた事
調子に乗ったようなエイダの掛け声とともに、金色の髪が軽やかになびき、そんな彼女をリリアが、
「ちょっとエイダ! また調子に乗るんじゃないの!」
「こんどこそ私は自分一人で勝利してやる!」
「そう言って何度……」
けれどリリアがエイダを捕まえる前に、エイダは先ほど作られた氷の壁のすぐ前まで来て、敵を見据えてから、
「“赤き炎は猛り、我を照らす。その炎はその身を映し高く燃え上がる”」
呟く言葉とともにエイダの片手に揺らめく赤い炎が浮かび上がる。
その炎は最初は手のひらよりも小さなものであったけれど、次第に野球ボールぐらいの大きさになって、それと同時にその炎が浮かび上がった手を後ろにして、
「“炎の連鎖”」
そう楽しそうに叫びながらその炎を全面に投げるように手を振る。
このままこの炎が野球ボールのように放物線を描いて飛んで行く光景が僕の頭に浮かぶけれど……そうはならなかった。
彼女が炎を全面に押し出すと共に炎が一気に膨れ上がる。
氷を溶かした時点では、彼女の身長の半分くらいだったが、そこから一気に何倍も膨れ上がりそのまま“白毛玉”に向かって飛んで行く。
まるでエイダの手から炎が噴射されているように見える。
それを見ながら僕は思った。
燃焼は、酸素と化合する反応だから、もしもこの“白毛玉”が風を操ると称して空気の内面を作り上げているのならば、この炎は消えてしまわないのだろうか、と思う。
酸素のない場所で炎は消えてしまう。
アルコールランプに火をつけて、けれど蓋をすると消えてしまうあの現象を思い描いたけれど、その炎はどうやら敵に届いたようだ。
「ぐぁああああああ」
呻くような声が聞こえる。
表面が燃えたらしく、何かが焦げるような匂いがした。
この怪物の周りには空気がないというのは別の理由、とも考えてもいいのだけれど。
――この炎というのは、これが存在するために酸素といったものが同時に供給されている? それを言うなら燃えるために気体などが存在していると見てもいい?
僕の家まだ電磁調理器ではなく、都市ガスを使っている。
ガスのほうが火力が強くていいと母が言っていて、家庭用のガスオーブンが火力が強いからほしいと言っていたのをふと思い出した。
それはいいとしてその気体に火をいつけて炎を生じさせているわけで、そうなってくると生じている魔法はよくよく考えるとどうなっているのだろうと思う。
もしかしたならそれほど深く考えず、こうなったら出来たといった経験則の蓄積により殆どが魔法として成立しているのかもしれない。
僕が思っている以上にこの魔法を“使う”という行為は難しいのかもしれない。
そしてだからこそこの世界で訓練という名で魔法を使えるようになっている人達のように、僕はうまく魔法が使えないのかもしれない。
ふと僕はそんな仮説が頭の中に浮かび上がるけれど、そこでドヤ顔下エイダの顔が真っ青になった。
「な、なんで、ほとんど効いていない……」
エイダがそう呟くと同時に、穴の開けられた氷の壁が金色の触手で破壊されたのだった。
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