戦国異伝
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第二百三十二話 本能寺においてその六
見せる信長もだ、確かな顔で彼等に話した。
「茶器だけではありませぬぞ」
「茶と水もでおじゃるな」
「淹れられる利休殿の腕も」
「どれもでおじゃるな」
「絶品でおじゃるな」
「都は水がよいです」
このことは非常によく知られている、山は紫であり水は何処までも澄んでいる。それがこの山城の国ひいては都なのだ。
「ですから、そして」
「そしてとは」
「まだ何かあるでおじゃるか」
「それがし今この国に茶を育てていますが」
栽培させてというのだ。
「その中で特上の茶が出来ました」
「何と、この山城は非常によい茶が採れるでおじゃるが」
「その中でもでおじゃるか」
「特上のお茶がでおじゃるか」
「出たでおじゃるか」
「そのお茶を常に朝廷に献上します」
笑ってこう約束した。
「楽しまれよ、その茶も」
「いや、それだけのお茶ならでおじゃる」
近衛が驚いた顔で言って来た。
「帝にもでおじゃる」
「はい、帝にもです」
「献上して頂けるでおじゃるか」
「そうさせて頂きます」
「有難いでおじゃる」
近衛は信長に感謝の意も述べた。
「帝も喜ばれるでおじゃる」
「帝には他にもです」
「献上して頂けると」
「それぞれの国からあがったものをです」
そういったものをというのだ。
「これからも」
「そうでおじゃるか」
「そして楽しんで頂きます」
「それは何よりでおじゃる」
「ではこれより」
「茶をでおじゃるな」
「お歴々に楽しんで頂きます」
こう公家達に言ってだった、信長は彼等を茶と菓子でもてなした。その菓子もまた絶品で公家達を唸らせた。
「ふむ、菓子も」
「いいでおじゃるな」
「美味でおじゃるよ」
「この甘さは」
「これは一体」
「砂糖を使っておりまする」
信長は舌鼓を打つ公家達に話した。
「菓子に」
「何と、砂糖を」
「砂糖を使われているとは」
「これはまた高価な」
「贅沢なことを」
「ははは、砂糖は琉球から交易で手に入り申す」
信長は驚く公家達に笑ってこうも話した。
「そしてやがては本朝でも植えてです」
「その砂糖をですか」
「作ると」
「そう申されるか」
「左様、そう考えておりまする」
「本朝で砂糖を作られるのか」
山科が信長のその言葉に驚いて問い返した。
「その様なことが出来るでおじゃるか」
「はい」
信長は静かにだ、山科に答えた。
「それもです」
「幾ら何でもそれは無理でおじゃらぬか」
「いえ、それもです」
「出来ると」
「そうしたものを植えれば、そうでなくともこれまでよりずっと安く手に入ります」
これまでは途方もなく高価だった砂糖がというのだ。
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