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真田十勇士

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巻ノ二十一 浜松での出会いその十一

「あの御仁は敵にしてはならん」
「では家康様にですか」
「そうお話しますか」
「是非共ですな」
「真田は味方につけるべき」
「特に幸村殿は」
「そう思う、考えてもみよ」
 浪人は周りにこうも言った。
「あの御仁が上田からここに来るまであまり日が経っておらぬ」
「その間にあれだけの者達を家臣にし」
「しかも絶対の忠義を得ていますな」
「人は人を知る」
 その器に相応しい者をというのだ。
「天下の豪傑を十人も集められておる」
「我が十二神将に比肩するまでの」
「天下の豪傑をですな」
「集めた」
「僅かな時に」
「それだけでも凄い、しかも学もありじゃ」
 その意気に感じるという言葉をすぐに誰のものか言ったことだ。
「身のこなしを見るとな」
「武芸もですか」
「相当なものですか」
「剣に槍、それに忍術もじゃ」
 この技もというのだ。
「天下一品じゃ」
「そこまでですか」
「そこまでの御仁でしたか」
「軍略も相当なものであろうしな」
 浪人は幸村のそのことも指摘した。
「だからな」
「敵に回すと、ですか」
「その時はですか」
「徳川家にとって最悪の敵になる」
「それが間違いありませぬか」
「忍術はわしに匹敵するやもな」
 浪人は特にだった、幸村のそのことについて言った。
「それが特に気になった」
「何と、半蔵様にですか」
「匹敵するまでの忍術が備わっていますか」
「武士であるというのに」
「上田は険しい信濃にある」
 山の多いその国に、というのだ。
「そこで生まれ育ったからな」
「だからですか」
「あの御仁は忍術もですか」
「見事なものであり」
「それで、ですか」
「半蔵様にも匹敵する」
「わしにはわかる、あの御仁は天下でも指折りの忍の者でもある」
 こう言うのだった。
「獅子の様な方じゃ」
「真田家は赤ですな」
 周りの者の一人が言った。
「武田家の色をそのまま受け継いていて」
「そうじゃな、赤い獅子か」
「そうなりますか」
「まだ若いが獅子は獅子じゃ」
「それが真田幸村殿ですか」
「だからじゃ、家康様には申し上げる」
 家康のこともだ、彼は言ったのだった。
「何としてもじゃ」
「真田家と戦うべきではないと」
「その様にな、それとじゃが」
 ふとだ、浪人はここで周りの者達にこれまでとは違う表情を見せた。そのうえで彼等に対してこう言ったのだった。 
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