三十五歳独身が
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第七章
「ひょっとしたらよ」
「コーヒーもなのね」
「ええ、そうなるかもね」
微笑んで祐加奈に言うのだった、そして実際にだった。
村瀬からのプロポーズを受けた祐加奈はまた喫茶店で話した、今度はコーヒーではなくホットミルクを注文していた。
そのホットミルクを飲みつつだ、こう言ったのだった。
「今度もいきなりだったわ」
「あら、おめでとう」
「籍を入れてね」
「すぐね」
「そうよ、今回もいきなりだったわ」
「私の言った通りでしょ」
先日コーヒーを飲んでいた祐加奈に言った友人がにこりとして今日も言って来た。
「こうしたことはね」
「いきなりなのね」
「きたりするのよ」
「そういうことね、世の中は」
「だからね」
「ええ、三ヶ月よ」
笑顔でだ、祐加奈はこのことも言った。
「主人にも言ったら喜んでたわ」
「じゃあそっちもね」
「頑張るのよ」
「そうするわね」
無意識のうちに自分の腹部を触りながらだ、祐加奈は言った。そして産休を取って夫と同じ部屋に引っ越してからだった。祐加奈は男の子を産んで幸せな生活をはじめた。いきなりはじまったその生活を心からそうしたのだ。
三十五歳独身が 完
2015・9・24
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