三十五歳独身が
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第四章
「今回はです」
「はい、そちらとの協同での」
「既に連絡は」
「届いています」
奈良が微笑んで答えた。
「メールが」
「そうですか、では」
「詳しいお話をお願いします」
「わかりました」
仕事の話をさらにしていった。それが一段落したところで。
奈良はその村瀬という青年を手で指し示してだ、祐加奈に話した。
「以後はこの村瀬がです」
「今回の件のですね
「当社の担当となります」
八条百貨店の、というのだ。
「ですから今後はです」
「村瀬さんとですね」
「宜しくお願いします」
その村瀬も祐加奈に頭を下げてあらためて挨拶をしてきた、祐加奈も彼に応えてだった。
お互いの連絡先を教え合い握手もした、この時は何も思わず。
村瀬とは度々会い毎日話をしたがだ、それはあくまで仕事のことだった。それで祐加奈はお見合いと相談所の話を両方進めていた。
その中でだ、祐加奈は村瀬と百貨店で直接会って仕事の話をしていた、ここで。
その村瀬がだ、仕事が終わったところでこんなことを言って来た。
「これから予定は」
「夜のですか」
「何かありますか?」
「いえ、お仕事は終わりましたし」
それで、というのだった。
「これから二人で行きますか」
「二人で」
「お仕事の話以外にも」
「それ以外にもですか」
「お話したいことがありまして」
「と、いいますと」
「はい、その時に」
話すとだ、村瀬は自分の言葉にいぶかしむ祐加奈に答えた。
「お話します」
「そうですか」
「それでなのですが」
「はい、これからですね」
「丁度帰る時間ですし」
それで、というのだ。
「今から行きますか」
「それでどちらに」
「サッカーグラウンドです」
「あっ、今日は確か」
サッカーグラウンドと聞いてだ、祐加奈はすぐにはっとなった。
「試合でしたね」
「八条サッカーリーグの」
Jリーグとは別の日本のプロリーグである。
「それはどうですか?」
「サッカーね」
「お好きですか?」
「ええ、まあ」
祐加奈は村瀬に答えた。
「そっちもね」
「そうですか」
「野球は阪神、八条リーグだとブレーブスで」
「サッカーは、ですね」
「ハープルサンガ、八条サッカーだと大阪ブラックスよ」
そのチームのファンだというのだ。
「今日はブラックスの試合よね」
「ブラックスと広島ブルーソックスですね」
「そうよね、じゃあ」
「ブラックスの方行かれますか」
「行っていいの?私と」
「お誘いしてるの僕じゃないですか」
「それはそうだけれど」
それでもとだ、祐加奈は村瀬にいぶかしむ顔で返した。
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