普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ソードアート・オンライン】編
113 こっちはこっちで一件落着
前書き
今回もSEKKYOU要素があります。ご留意下さい。
SIDE 《Yuhno》
〝圏内事件〟が終了して、〝原作〟より一足早くキリトとアスナが恋人になった。……したのは良かったが、アスナは〝原作メインヒロイン〟だけあって──こういってはナルシストみたいてアレだが、アスナは美少女然としているので、当然それを快く思わない人間も居た。
……例えば、今ボクの前で嘆いている男──リュウの様に。
「……違う、こんなのは【SAO】じゃない…っ! 誰がこんなに壊した…っ! ……お前か、ユーノっ!」
「〝違う〟って…。それ、八つ当たり──もとい、自業自得って判って言ってる? ……もしそうなら〝あんな特典〟を望んでおいて、それはないんじゃない?」
リュウとは互いに転生者であると──または互いの〝特典〟を明かしあっていたりする。……リュウとの会話で〝原作メインヒロインの姉ってのもねぇ〟なんてうっかりこぼしてしまったので、転生者である事がバレてしまった。
「俺が何をしたと云うんだ…?」
「……〝主人公の抹消〟なんて望んで、リュウは〝原作通り〟にいくと思ってたの? ……それは無いとして、多少の差異は在ってしかるべきだよね。……と云うより、それならいっそ〝キリト〟に憑依とかでも良かったろうに…」
一気呵成に──まるで責める様に問い詰める。……しかしボクの言いたい事は終わっていない。矢継ぎ早に──やはり責めたてる様に問う。
「〝ユウキの生存〟だってそう。ユウキとアスナが出会わなければアスナはどうやってお母さんと向き合うの? ……え? リュウはボクに自分の望んだ事の尻拭いをさせるつもりじゃないよね?」
気になった点を指摘してやったら、リュウは目を点にする。
「……じゃあユーノは俺のやってきた事は無駄だったと…?」
「……言いにくいんだけどね。……だってリュウが神サマに変な注文をつけてなかったら、ボク〝達〟は多分ここに居なかっただろうし…。……キリトも〝原作〟通りに〝ビーター〟になっていただろうね。……リュウが見たかったのは〝そういう世界〟なんでしょ?」
それなら【ソードアート・オンライン】の〝原作〟を読んでいればいいのだ──が、リュウは〝登場人物〟の辿るべき来歴を塗り替えて、それどころか、〝登場人物〟──〝主人公〟に成り代わろうとしてしまった。
「……じゃあ、俺は宿に戻るよ。……今日は悪かったな…」
……ボクの言葉が余程ショックだったらしく、リュウはずん、と目に見えて肩を落としながら自分の塒へと戻って行く。……その時ボクは、真人君と──もとい、ティーチ君と会う約束をしていたので、リュウの表情に気付かなかった。
この時ボクがリュウに一言──「リュウもそろそろ〝この世界〟で生きてみたら?」とでも掛けるだけで、また違う結果になっていたかもしれないのに…。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE 《Teach》
「……で、何から話そうか…」
「ボクに聞いちゃうの、それ」
〝圏内事件〟から数日経過したオフ──攻略が休みの日。ユーノと腹を据えて話そうと、ユーノを誘ってデート擬きに繰り出したは良いが、俺の目論見は早くも頓挫していた。……どう話を切り出していいか判らなくなってしまった──とも云える。
……ちなみにユーノとちゃんと向き合う理由になったアスナだが、先日の〝圏内事件〟の後にめでたくキリトと交際することになったとか。今も甘々しい雰囲気を振り撒きながら迷宮区デートに勤しんでいるはずである。
閑話休題。
―……すっきりしたぁ。他人ならまだしも、自分を〝切開〟するなんてマゾい行為だと思っていたが、意外とやってみるもんだな。……ありがとう、アスナ。ユーノとは俺も、もう少し真剣に向き合ってみるよ―
……そう、キリトとアスナに宣言したものの、どう切り出して良いか判らなくなっていた。
(……ま、どうにかなるか)
「あー、もう単刀直入に聞こう。……ユーノ、君は俺と〝現実世界〟で会った事はあるか? ……正直に言えば、会ってたとしても覚えてないかもしれない。……その場合は謝るよ」
「……〝現実世界〟では会った事は無いかな」
(〝〝現実世界〟では〟──ん? ……〝では〟…?)
仕方ないのでユーノに投げ遣りにながら単刀直入に訊いてみれば、どうにも要領を得ない答えが返ってきた。……〝では〟──と云うことは、ユーノからしたら俺と他の違う場面で会っている可能性があるという事。
「……ちょっと待ってくれ、整理するから」
(……〝他の場面〟──だがそれはどこだ? 〝他の場面〟〝他の場面〟〝他の場面〟〝他の場面〟〝他の場面〟〝他の場面〟…。……っ!? まさか…っ!?)
〝他の場面〟に──俺が今まで見てきたものや聞いてきたことに検索を掛けると〝とある想い出〟へと行き着いた。
―ボクの特典? 〝【烈火の炎】の八竜〟〝転生者の判別〟〝TS〟〝転生した真人君と同じくらいの年齢になれる〟あとは、〝真人君が転生した世界に転生してもえるように〟──だったかなぁ。……なんでそんなに落ち込んでるの?―
在りし日の語らい。……俺にとっては〝有り得て欲しくない事〟だった。
「……まさか、円…なの、か…?」
「……うん。そうだよ真人君…」
しかし〝それ〟を思いついてしまった以上は、聞かずには居られなくて、ユーノの口少なな肯定は──ユーノの、その無慈悲なる現実を思い知らされる答えは、俺の〝想い出〟を侵食するには充分だった。
〝想い出〟を記憶から引っ張り出していると、ある日の閨での枕語りを思い出してきた。
―ねぇ、サイト、もしボクとサイトが来世でも出逢えたらまたボクを愛してくれる? ……もちろん、〝ボクだけ〟じゃなくても良いから──想いを向けてくれるだけでも良いからさ―
(……そういう事か…っ)
それは閨で交わす、何でもない話だと思っていた。……が、円にはまた来世でも──俺からしたら今生でもまた逢えると、漫然と感じていたのだろう。……さらに記憶をほじくり返し、その時〝ユーノ〟にどう答えたか思い返してみる。
―……俺に男色のケは無いから、もしユーノが女に生まれていたら、きっとまた愛せるだろうな…―
(ああ…。判ったよ〝ユーノ〟)
身の振り方は決まった後はそれをユーノに伝えるだけだ。
「ユーノ──いや、円。今から語るのは全て事実だ。……それを念頭にして聞いてくれ。〝あれから〟俺に起こった事を…」
SIDE END
………。
……。
…。
SIDE 《Yuhno》
「……キリト、リーファと【ソードアート・オンライン】をプレイ。デスゲームに巻き込まれてからそう時間は経たず、1層の迷宮区でユーノと再会して──後はユーノも知っての通り…。……大体こんな感じか」
ティーチ君──真人君の一連の話はボクを驚愕させるには充分だった。……然もありなん。真人君はすでに〝再転生〟を経験していて、第二──それどころか第三の人生を歩んでいると云うのだから、その驚愕は一入だった。
……しかも真人君の語り振り見る限り、〝二次創作〟とかのアングラなネタにも詳しくなっている事にも驚かされた。……どうにも、神サマに教えられた[二次創作]とかの言葉を真人君なりに調べたらしい。
(……うん何を言ってるか判らなくなってきた──だからちょっと、整理してみようか)
・真人君は〝計2回の転生〟を経験していて〝前のボク〟とは夫婦として連れ添った経験があり──ボクの〝最期〟を看取ったが、ボクを看取った真人君の身体は老衰することなく、そのまま〝神サマ〟に再転生させてもらうまでの百数十年を生き続けてきたらしい。
・〝後に幻想郷に繋がる世界〟──〝原作前の【東方】の世界〟にて〝人間〟をやめてしまったらしく、〝この世界〟でも寿命では──もとい、〝老衰〟で死ぬ可能性はとても低いとの事。……かと云って〝老衰〟以外でも途轍もなく死ににくそうにも思えるのはボクだけだろうか。
・〝二次創作云々~〟については多少精通しているが、【ソードアート・オンライン】──〝この世界〟についての情報は持って無い。……なので、〝原作主人公〟と兄弟になっていても──〝直葉〟が〝アインクラッド〟に居ても差異を感じていない。
(……大体こんなところかな…)
「……俺はさ…」
頭の中で今までの情報を整理していると、真人君が徐に口を開きだす。
「都合、百数十年を生きてるし──間違いなく膨大な時間を生きていく事になるからさ、〝どこぞの姫〟みたいに不老不死じゃないと、必ずと云って良いほど伴侶には先に逝かれてしまう。……だから、多分〝まともな恋愛〟はもう無理なんだよ」
「………」
そう語る真人君の顔はいっそ清々しくて、ボクは口を挟めなかった。
「〝前世〟では貴族として生きてて──本妻の他に妾も2人ほど居た。……もう俺の言いたい事が判るかもしれないが、貞操観念も常人のそれとはもう別だ」
……更に真人君はメニューを操作しながら紡ぐ。
「それでも良いなら──それでもユーノが俺を想ってくれるなら、また俺にユーノの最期を看取らせてくれないか?」
その、ある意味殺し文句とも取れる言葉と[《Teach》から結婚を申し込まれました。受諾しますか?]とあったので、ボクは迷う事なく[Yes]と表示されているコマンドをタップした。
「……はいっ! 不束者ですが宜しくお願いします」
今日は〝ボク〟の叶わない──叶わなくても構わないと半ば諦めていた初恋が実った、間違いなく人生最良の日となった。
………。
……。
…。
「ところで真人君──ティーチ君はさっき〝二次創作云々は一応調べた〟って言っていたけと、【ソードアート・オンライン】の〝原作〟は知っているの?」
「……知らないかな。ミネルヴァさん──俺を転生させた神からは〝この世界で本来死ぬべきでない人間が多数現れる〟って派遣社員みたいに送られてきただけだし。……十中八九、このデスゲームで死ぬんだろうな」
(……なるほど…)
真人君の呼び方を〝ティーチ君〟に戻し、気になっていた事を訊いてみたが──やはりと云うべきか、ティーチ君は〝この世界〟を知らなかった模様。……そこでリュウの転生とティーチ君の転生が関連し──また、ボクの転生が無関係でない事を悟った。
リュウが転生→ティーチ君が転生→ボクが転生の流れだと考えれば納得できる気がする。
「……〝茅場 晶彦がアインクラッドに潜んで居る〟って云ったらティーチ君はどう動く?」
「あー、ユーノは〝原作〟を知ってるのか…。……〝茅場さん〟──ヒースクリフの事ねぇ、今のところどうしょうも無いよ」
「ヒースクリフの正体を知ってるのっ!?」
〝勝てないよ〟と朗らかに語るティーチ君だったが、ティーチ君の言葉は看過する事は出来なかった。
「まぁ、な。〝現実世界〟でちょっとした知り合いになって、ヒースクリフにカマ掛けてみたら割りとあっさりと白状したよ。……まぁ、口止め料代わりなのか、ユニークスキルなんか押し付けられたけどな」
「………」
ティーチ君から語られる怒涛の衝撃の事実のバーゲンセール。……ボクはただただ閉口するしか無かった。
SIDE END
後書き
美少女(元男)からの言葉責め…。あると思います。
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