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ドラゴンクエストⅤ〜イレギュラーな冒険譚〜

作者:むぎちゃ
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第五十二話 戦火を交えて

 
前書き
ついにこの小説も五十二話目だと思うと感慨深いです。 

 
 私は一先ず戦いをアベル達に任せて、ビアンカの元へと走った。
 拘束具をヒャドで切って、猿轡を外すとビアンカは焦点の合っていない目で私を見た。

「ミ……レイ……?」

 いつもの声とは全く違う、弱々しく枯れた声。ビアンカをこんなにまでしたジャミに対して更なる怒りを覚えつつも、私は頷いた。

「大丈夫、アベル達もいる。ビアンカは離れた所で休んで」

 アベル達の方を見ると、苦戦こそしてはいなけど全く相手に攻撃が届いていないという状況だった。
 早く加勢しに行かなきゃ。

「わかっ……た……わ」

 ビアンカはそれだけ言うと、直ぐに意識を失った。
 
「ミレイ殿。私がビアンカ殿を安全な所まで運びます」
「ありがとう、ピエール」

 ピエールに礼を言ってから、私は戦いに加わった。

「ほぅ、もう一人加わったか。だが所詮無駄なことだ。この俺には勝てまい」

 ジャミが私を見るなりそう言ったけど、わざわざ負けてあげる筋合いなんてどこにもない。

「私達が勝てないかどうか、戦ってから決めたら!」

 私は意識を集中して、メラゾーマをジャミに放った。
 確かにジャミは強い。何度も死線を潜り抜けた私だ、それがわからないわけじゃない。
 でも、私達だったらきっと勝てる。
 そう思っていた所で一つの不自然な事に気がついた。

 ジャミは全く見を守ろうとしていなかった。
 無防備なまま、ジャミにメラゾーマが直撃した。

 その瞬間、私は知った。
 何故ジャミが無防備だったのかを。

「どうした?折角のメラゾーマなのに全然俺の体に当たっていないぞ?」

 メラゾーマの炎はジャミの体の数センチ上を通っていた。
 それを見た時、私は一つの事に気がついた。

「まさか、バリア?」
「そう、正解だ」

 信じられなかった。信じられなかったから、気がついたら魔法を使っていた。

「メラゾーマ!ベギラゴン!バギクロス!コーラルレイン!ライデイン!マヒャド!」

 巨大な火球、地獄の火炎、竜巻、水流、裁きの雷、氷塊といった魔法の直撃を受けてもジャミは平然としていた。
 当たり前だ。
 体をバリアが覆っているんだから、何度魔法を使っても攻撃が通るわけないのに。

「無駄という事がわかっているのに思考停止して行動するとは、グランバニアの王と同じくらい愚かで哀れだな。
さて、『お返し』といくか」

 ジャミは嫌らしい笑みを浮かべると、魔法を唱えた。

「バギクロス!」

 ジャミの組み合わせた蹄からアベルや私と同じバギクロスが放たれた。
 でも、それは私達のとは全く違うバギクロスだった。
 
 ただただ、巨大で。
 ただただ、強くて。

 余りにものそのバギクロスの勢いが強かったから呆然としかけたけど、すぐに私はアベルに呼びかけた。

「アベル!相殺するためにバギクロスを!」
「わかった、ミレイ!」

 バギクロスに向き合って、魔力に意識を集中させた。
 さっきで大分使ってしまったけど、まだ十分魔法は使える。

「「バギクロス!」」

 アベルと私のバギクロスとジャミのバギクロスがぶつかり合った。
 流石に二つのバギクロスの直撃を受けて相殺できない訳がない。

 そんな私の願いはあっさりと叩き潰された。

 ジャミのバギクロスは最初こそ私達のバギクロスと拮抗していたけど、ジャミが少し魔力を込めた瞬間、私達のバギクロスは破壊された。
 バギクロス同士の激突は効果がなかった訳ではないらしく、さっきよりも威力が弱っていたように見えたけど、それでも十分強かった事には変わりなかった。

「ラリホーマ」

 ジャミのその言葉が聞こえた瞬間気がついたら私は床に寝ていて、意識が戻ってすぐ、体中に激痛が走っているのに気がついた。
 体が動かなかったから自分の体の様子がどうなっているのかはわからなかったけど、辺りを何とか見渡してみると、皆血まみれで床に倒れていた。

「無様だな、人間と人間に仲間する愚かな魔物達よ!
さぁ、これで終わりだ!」

 ジャミは私達を嘲笑うと、輝く息を吐き出した。
 迫り来る氷の刃と吹雪を見ながら私はぼんやりと思っていた。

 ごめんねビアンカ、ごめんね皆、ごめんねドリス、ごめんねデボラ、ごめんねヘンリー、ごめんねマイ、ごめんねレナ、ごめんなさい、お父さん、お母さんーー。

「やめなさい!ジャミ!」

 その時、ビアンカが両手を広げながら私達を庇うようにジャミの前に立ちふさがった。

「ビ……アン……カ?早……く逃げ……て」

 ここでビアンカまで死んじゃったら何もならないのに。
 
「あ……れ……?」

 私はいつまで経っても輝く息がこないのを不思議に思った。
 その答えは’すぐにわかった。

 ビアンカの体から放たれている青い光が輝く息をかき消したんだ。いや、消したのは輝く息だけじゃない。

「何故だ?何故ゲマ様から授かった俺のバリアが剥がされたのだ?お前は一体?」

 ビアンカの青い光はジャミのバリアも消してくれた。
 そして、私達の傷も魔力も回復してくれたんだ。

「皆、また戦えるわ!勝って、グランバニアに、戻……る……わよ……」

 ビアンカはそう言い残して、また気を失った。
 
「ビアンカ、ありがとう!」

 倒れかけたビアンカの体を支えながら私は言った。

「さぁ、行くぞ!ジャミ!」

 アベルがメタルキングの剣を構えて獰猛に吠えた。

「くそっ。バリアだけではなくゲマ様の力もかき消されたか!もう許さん、貴様ら全員血祭りにしてやるぞ!」

 ジャミがそう言っているけど、私は怖くない。
 もう、負けないから。

 私はグリンガムの鞭を勢いよく鳴らして、ジャミに立ち向かっていった。

 
 
 

 
後書き
さて、次の話でデモンズタワー編は終わり、その後は色々書いた後青年時代後半になります。
これからもよろしくお願いします。 
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