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ドーバ

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第二章

「国中に鉄道が敷かれててね」
「近代化されていてか」
「機械が揃ってて」
 キラは日本のことを熱く話した。
「何処でもすぐに行けて」
「そうした国にか」
「パプワニューギニアもなるべきなんだよ」
「古いものは全部消してか」
「そうしてね」
 是非にと言うのだった。
「もっといい国にならないと」
「そうか、近代化か」
「もっとね」
「それがいいんだな」
「お父さんはそう思わないの」
「どうだろうな」
 微妙な声での返事だった。
「それは」
「近代化がいいじゃない」
「そう思っていたさ、昔はな」
 彼もというのだ。
「俺も」
「じゃあ今は?」
「どうもな」 
 首を捻ってだ、彼は息子に答えた。
「そればかりじゃなくなったな」
「何で?」
「ここにいてもな」
 このポートモレスビーにというのだ。
「こうした生活ばかりじゃないって思う様になったんだよ」
「どうして?」
「我が国の話を聞いてな」 
 このパプワニューギニアの、というのだ。
「色々とな」
「パプワニューギニアの?」
「それで変わったんだよ」
「何かわからないけれど」
「わからなくてもな」
 それでもというのだ。
「今はな」
「それでもなんだ」
「まあ御前もそのうちわかるかもな」
「わかるっていうかそんなの有り得ないから」 
 キラはナブラにはっきりと言った。
「やっぱり近代化だよ」
「近代化か」
「そうだよ、それは」
 それこそというのだ。
「だって部族とか未開とかもう時代遅れだよ」
「新しい時代か」
「それに進まないとね」
 絶対にとだ、キラは何も疑うことなく行っていた。しかし。
 その彼はたまたまだ、街の商店街で面白いものを見た。それは肌が黄色く黒い髪と目の男がやっているコーナーだった。
 何か回る道具を机の上に置いていた、その道具を回せば玉が出る仕組みになっていた。彼はその道具を見て男に尋ねた。
「おじさん、それ何?」
「ああ、抽選をする道具だよ」
「抽選?」
「実は私日本から来たんだけれど」
「日本ってあの凄く近代的な」
「あはは、そう言ってくれるんだね」
 男はキラのその言葉に明るく笑って返した。
「結構あれなところもあるけれどね」
「そうかな」
「まあ日本から来たけれど」
「それでその回るのを持って来たんだ」
「これで抽選して」
 また話した男だった。
「当たったらいいことがあるよ」
「いいことって?」
「特賞は旅行だよ」
「それに当たったら旅行出来るんだ」
「ここからトロブリアンド諸島までね」
「トロブリアンドって確か」
 その名前を聞いてだ、キラはその顔を瞬時に曇らせて言った。
「あの未開の」
「いやいや、観光地だよ」
「何処が?」
「景色もいいしクラっていう独自の交易もあって」
「物々交換じゃない、そんなことは」 
 それこそというのだ。 
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