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逆襲のアムロ

作者:norakuro2015
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12話 満ちた時の果てに・・・ 11.20

 
前書き

 

 
* インド カンプル市 11.20 11:00


インドのカンプル市は有数の工業都市であり、インドでも指折りの大都市であった。鉄道網、学問の研究機関等も充実し、駅前周辺にはタワーマンションやショッピングモールが立ち並び、その傍には連邦政府公営の広大な公園が横たわっている。

待ち往くひとたちは皆裕福そうな人たちで休日になると繁華街の通り、ショッピングモールや公園等は子供連れやカップルで賑わいを見せていた。

そんな一見華やかさを見せる表と反対に路地に入ると貧困で喘ぐ老若男女が地べたに座り込み、物乞いをしてる者もいれば、料理屋から出たごみ箱を漁り、飢えを凌ぐ者がいた。

連邦政府の強引な市場強化による弊害だった。富裕層の多くは選挙での候補者を自分寄りの都合の良い人を立てて、その人が当選を果たし富裕層のための政策を実施していく。

力無き者は全て行政代執行により、淘汰されていった。役所も地元企業との癒着で腐りきり、弱肉強食の時代そのものをこの街は投影していた。そして、近くには連邦のマドラス基地があった。よってここでは戦争の被害が少ない。

道々に動かなくなった小さな子が横たわっていたり、生活の不満からギャングになり、弱い貧困の老人をリンチしたり、窃盗、強盗を働くものもいた。

スラム街に行けば、風俗や違法ギャンブルなど非合法な商売をするものが多くいた。働き手については地方より売り飛ばされたり、誘拐された子も少なくない。

そんな裏の顔を見せる街にシャアは宿を取り滞在していた。

恰好もスーツを着込み付け慣れていた仮面も取り、素顔で行動していた。
この街にシャアは思うところがあった。全ては勘であったが。

表向きの街の顔は大体見回った。成果としてシャアの満足するものは得られなかった。
すると自ずと裏の街の方となる。

シャアはガルマの下から出立する際に2つ身分証を渡されていた。
1つは民間人用。民間機での移動に役立つ身分証だった。
もう一つは連邦軍の軍籍証明だった。

両方とも人物が実在しているが既に行方不明のため、裏ルートより金を積んで入手したものでガルマは「戦時下故疑われないように動く必要があるだろう。気にせずもってけ」と言った。シャアも同感だった。


昼近くのスラム街を歩くが、ほとんどの店が閉めていて得られる情報は少なかった。


「ふう、中々暑いな・・・11月でも20℃もあるのではな」


シャアはジャケットを脱ぎ肩に掛けていた。
通る道の隅には体を寄り添って震えている姉妹らしき少女がいた。
シャアがその子たちを見下ろすと、その姉妹はビクッと反応して怯えていた。


「・・・お・・・お願い・・・です・・・触れないでください・・・」


シャアは悲しんだ。そして憤りを覚えた。連邦政府に対して。
政治の腐敗で戦争でこのような現状がこの姉妹たちにも降りかかったのだろう。
地方の状態はもっと酷い。

この地球に残った貧困層の移民を実施し、コロニーで特権階級に支配されないような環境、行政の体制を作り、できるだけ皆が笑える社会を実現できればとシャアは思う。

全員が幸せになるとは驕りだ。この姉妹の笑顔が見れるくらいは実現できても良いのではないか。
アムロの言葉も響いていた。1人でできることには限界がある。周囲の協力を求めればより大きなことができると。


「ああ、そうだな。この戦争や連邦政府、ジオンなど、括りが大きすぎるのだ。私ひとりではどうにもならない。有志、同志を見つけてやることだ」


シャアは自問自答をスラム街の現状を歩き把握しながら、市街地へ戻っていった。

この頃のシャアは冷静そのものだった。父の思想(父としては余りに失格だったが)、彼の政治活動はこの戦争の引き金になるくらい大義があった。

シャアは思想を受け継ぐ一人のスペースノイドであり、地球の特権階級に支配される抑圧される人々を一人でも救いたいと思った。戦争や闘争という手段は害でしかない。それをして手をこまねいている間に貧困層の不幸が増えていく。

政治手段で少しずつ訴えながらも、民間と協力して1日でも早く彼らを宇宙に上げる。
国の力は人口だ。マンパワーなくして発展成長なども見込めない。貧困層も環境を用意し結託すれば彼らなりに生活圏を作り上げるだろう。

1日1食パンのみが3食パンのみになる。それぐらいの進歩でもいいのだ。そのうちステーキを食べれるようになるだろう。

それを切り捨てている今の連邦には到底叶わぬ願いだ。どうしても数字だけを見てしまう。合理的だがそれはこのような人たちを見ない振りをしている。人類の革新、あらゆる可能性を自分たちで目を摘んでいる。

気持ちはわからないことでもない。特権は人の心を腐らせ、保身に走らす。政治家は表向きは公明正大でなくてはならないが、スポンサーがこれもまた保守的な富裕層が多い。

貧困に陥ったひとたちは戸籍も失われ、選挙もまともにいけない現状である。そしてそれを取り扱わない行政。悪循環だった。

シャアもその辺はある程度無視を決め込むと考えた。何せ規模が規模だ。貧困層だろうが特権階級、富裕層だろうが両者とも億単位の数だ。それらを説得するのは並大抵のことでない。


「この休暇を終えたら、ガルマにでも相談するか」


シャアはそう思い、道中昼間から開いているバーにより、ビールを1杯頼んだ。


「へい、お待ちどう。あんたここの人じゃないね」


「ん?どうしてわかる」


「この辺はまあ良くてもまだ日雇いの労働者のたまり場だからさ。それなのにそんな身なり良いスーツの方が余り来るような店じゃない。昼間だからこうお客も少ないが、夜はあまり顔を出さない方がいいよ。その辺の客引きにカモにされる」



「なるほど。ここならカモにされやすいのか」


シャアはマスターの言葉にいいことを聞いたと思った。
シャアは新聞を取り、現在の状況を把握した。


「ほう、ガルマは頑張っているみたいだな。・・・オデッサが陥落したか。・・・ほぼ連邦がまた地球を奪還したわけだ」


シャアはビールを飲みながら呟いていた。その呟きにマスターが反応した。


「そうさ。また連邦の良くない時代が来るよ。私ら低所得層はジオンにちっとは期待していたんだ。しかし、弱肉強食。連邦にはジオンも勝てなかった。あーあ。私もコロニーに上がり損ねた口だよ。その当時いろんな情報が交錯してて、話聞く限りだと宇宙の方がまだ良いらしいね」


「そうかもしれん」


シャアは一言で感想を述べ、勘定をして「また夜来る」と言い、その場を去った。



* マドラス基地 グレイファントム艦橋 同日 11:10


ブライトたちはマドラス基地に到着した。そこにはウッデイ大尉も到着しており、ジャブローからの指令書を携えていた。


「貴官らグレイファントム隊に3ヵ月の休暇を命ずる。連戦の疲れを癒してくれ。尚、身勝手な軍事行動は慎むように。但し、基地の危機に応じてはそれは範囲外とする。以上だ」


グレイファントム艦橋に訪れていたウッデイはブライトたちに命令書を渡した。
ブライトもアムロも戦線に立つことができない、ジャブローから許可が出ないことには。
ほぼ謹慎処分みたいなものだと皆考えた。


「そんなに厄介に思われたんですかね」


カイがぼやいた。セイラも「なぜかしら」と考えた。それについてマチルダが答えた。


「今の連邦は派閥闘争の真っ最中です。箝口令を言い渡しますが、レビル将軍は謀殺されたと見て良いでしょう。その現場にいたグレイファントムを始めとするレビル本隊面々は皆同じような休暇を取らされています」


ウッデイもマチルダの意見に同調し述べた。


「そう、連中はその間に地盤を強化し、戦争も終わらせることができると踏んでいる。全く嫌気が指す」


「そうですか・・・」


ブライトはげんなりしていた。アムロはブライトに声を掛けた。


「まあ、艦長も色々あって、他の皆も疲れている。まさか何の考えもなく動いて処罰される訳にもいかないだろう。息抜きをするしかない。時期を待つんだよ」


「そうか・・・そうだな」


ブライトはアムロの言うことは最もだと思い気持ちを切り替え、全クルーに休暇の伝達をした。
ブライトは今まで長い休暇を取ったことがないのでどうしようかと迷ったが、リュウが誘ってきた。


「ブライト艦長。我々で互いの顔見せの歓迎会していなかったじゃない。ここいらで一緒にやりましょう」


そのメンツは艦橋にいるほぼ全員だった。アムロは用事があると言って出席はしなかった。
ブライトは特別何もする予定もなかったため参加することになった。

アムロも艦を降りると、車に乗り込み自分の第6感に従い車を走らせて行った。


「(何かおかしい街の北の方からだ。しかも遠いな・・・。懐かしくも得体のしれないプレッシャーを感じる)」


アムロはインドを北に進路を取って、勘の赴くまま車を走らせた。



* カンプル市 スラム街 同日 20:00


シャアはまた例の飲み屋に戻ってきていた。店のマスターに言われ、少しラフな服装で来ていた。それでもまだ馴染めない浮いた格好だった。

案の定お金目当てな客引きや娼婦がシャアの下へ誘いに来た。
シャアは断り続け、バーの主人と話しながら飲んでいた。

すべては勘が頼りだった。あのアメリカの時の強い残留思念が頭から離れない。
その感覚がここの周囲を意識させていた。その目的のものに出くわしたとき自分がどうなるのか。
どう変わるのかわからないが、今の自分にそれが必要なことでもあるを思い込んでいた。

何かを成すためには何か突き抜けるような出来事がいる。今のシャアに足りないものだった。
行動しやることは認識しつつあるが、それをする上で覚悟を決めるものがこの街にあると。

すると、余りに見栄えしない女性の客引きがやって来た。


「ねえお兄さん。いい子が揃っているけどうちにこないかね」


シャアはその女性をみると驚いた。その女性の背後に青白いオーラのような幻覚をみた。
シャアは来るべき時が来たようだと思い、勘定をしてその女性に付いていくことにした。

それを見た店のマスターが注意した。


「旦那。そいつはやめておいたほうがいいぜ。あの女の商品はどれも非合法だ。見つかったらしょっぴかれるよ」


「そうなのか?」


シャアはマスターからの忠告を受けたがそれでも行くことを決めた。


「有難うマスター。私の目的のものは彼女が握っているみたいだ」


そう言ってシャアはその女性にある店に連れていってもらった。


スラム街でも奥の方、色々な腐臭でこの街のゴミ溜めと言えるような地区に案内された。
河のせせらぎが聞こえる。どうやらガンジス河の側らしい。

女性は店の中に案内すると、先に来ていた客が女性に不満を言ってきた。


「こんなできそこないをあてがうなんてお前どうかしてるぜ!もう2度と来るもんか!」


「ああ、そうかい。でもここで騒いだらアンタ命惜しくないんだねえ」


女性の脅しに客は血相を変えて、その場を走り去っていった。
シャアは苦笑した。女性に値段と商品について紹介してもらうと確かになと思った。

皆年もいかない子たちばかりでそれでいて平均相場の10倍をふっかけている。
興味本位で来た客の中には期待に添えなければ怒り出す者もいるだろう。


「で、どれにするかね」


女性はシャアに写真を見せた。しかしどれもピンと来なかった。
しかし、この建物は変だった。得体の知れないプレッシャーを感じた。


「主人。他にはいないのか?」


シャアはその女性に聞いた。女性は他ねえと考えこんだ。すると思いついたようでしかし首を横に振った。


「あー・・・いるが、アレはダメだ。連日評判悪くてな。ちょっと折檻している。お客が付いても上の空で何か変なものが見えるらしい。客が気味悪がってな。別のにしてもらえないかね」


女性は困った顔をしたが、シャアは引かなかった。


「どうかその子を紹介してもらえないか?」


「うーん・・・しかしねえ・・・」


女性が渋っているとシャアはポケットより白金の小さなインゴットを女性の前に出した。


「これは相場で貴方が提示する価格の10倍はある」


女性は目を輝かせ、シャアを折檻部屋へ案内した。

その折檻部屋には拷問道具が並べられ、褐色の肌をした少女がボロボロの衣類を纏い十字架に張り付けられてぐったりしていた。
その少女の肌には鞭の傷跡があった。女性はこう述べた。


「まあ、商品だからねえ。あまり傷ものにはしたくなくて。まあ3日間水しか与えていない、それとちょっと叩いた程度かな・・・」


シャアはその少女を見た。なんと汚い。トイレにも行かせてもらえていない折檻された少女の下は糞尿だらけだった。

しかし、シャアはその拷問器具から少女を解放してあげ、女性に風呂の用意を頼んだ。
少女は朦朧としていて、目が飛んでいたが生きているようだった。それを見たシャアは薬物を盛られているに違いないと思った。

少女は完全介護のままシャアに清潔にされ、新しいボロを着させた。
シャアはその少女が残留思念の原因だと思った。微かにだがこの子の周りに青白い光の幻覚が見え隠れしていた。ただ微弱だった。

シャアは少女をベットに寝かせると女性の下へ交渉しにいった。


「主人。あの少女を私にもらい受けたい」


「しかしねえ、一応商品なんで・・・」


「明日、今の白金の10倍するものをお持ちしよう。承諾すれば今紹介料で渡した同じものを手付で払うが・・・」


女性は二つ返事で承諾した。
そしてその夜。シャアはその少女を布で覆いおぶって自分の宿泊するホテルへ連れて帰って行った。


* カンプル市内 11.23 10:00


アムロは市街地を散策していた。休日だったのか人通りが激しく賑わいを見せていた。


「結構栄えた街だな」


アムロは露店でタコスを注文し食べ歩きながら散策していると、目の前に女性の衣類のメーカー袋を下げたシャアとばったり鉢合わせた。お互いに気が付き驚いた。


「驚いた・・・まさか君がこの街にいるとは・・・」


「ああ、オレもだ・・・」


アムロは紙袋をみて、女性ブランドのものと分かりシャアに質問した。


「しかし、シャアさんにそんな趣味があったとは・・・」


「フッ、私のではないよ。ある女性のためのものだ」


「そうか」


アムロがそう言うと、シャアは付け足し述べた。


「アムロ君。今の私は連邦軍大尉クワトロ・バジーナだ。その辺ご理解いただくよう宜しく頼む」


アムロは久々にその偽名を聞いた。この周辺はすべて連邦の管理下にあった。故にシャアは偽造の身分証が必要だった。最もその偽造は見破れない程の精度だった。


「わかりましたクワトロ大尉。それで聞いても良いかわかりませんが、どちらに行かれるのですか?」


「ああ、宿に戻ろうと思ってな。君も来るか?あれから私もいろいろ考えたのだが、君の助言もあって今までの自分とは変わった気がするよ。今後の指針も君の意見を多少なりとも参考にしたくてね」


「いいでしょう。休暇で暇ですから」


アムロはシャアの宿まで一緒に付いて行った。

シャアの泊まる宿は市内でも有数な高級ホテルであった。シャアはその部屋の上の階のツインルームを取っていた。当初はシングルだったが一人増えたためそこに移した。

アムロは横たわっている少女を見て驚いた。しかし、表立ってその表情を出さなかった。
シャアはその少女について話し始めた。


「ある娼婦宿で見つけた。この子は薬物を盛られていたらしい。私のつてで医者を探し、多少なりとも治療できたがすべてが非合法故に表立って入院もさせることができない。だからここで休んでいる」


「そうか・・・」


アムロは部屋の空いている椅子に腰を下ろし、その少女を見て安堵した。
シャアは見つけると思っていた。これはシャアは運命なんだなとアムロは感慨深く思っていた。

しばらく経つと少女は目を開けた。周りを見渡して隣にいたシャアに質問した。


「ここは・・・」


「・・・気が付いたか。ここは市内のインペリアルホテルの私の部屋だ。元々日本という国のホテル産業がこのカンプルへ支店として建てたらしいが・・・」


「そう・・・貴方は・・・」


「私はシャア・アズナブル。あの宿から君を買ったものだ」


「・・・そうですか」


少女は寝ながらシャアと会話を交わし、ゆっくりと体を起こした。そして改めて見回したら椅子に腰かけているアムロに気が付いた。アムロが少女が話す前に自己紹介をした。


「オレはアムロ・レイだ。この人の知り合いだ」


少女は少し間を置き、こくりと頷いた。


「・・・私はララァ・スンと言います」


ララァは2人に自己紹介をし、手のひらを返してスーッと前に出した。


「アムロさんもいらしていたなら手間が省けました。シャアさん、アムロさん。2人とも私の手をとってください。それで全てが分かります」


シャアとアムロは動揺した。ララァの言っていることが全く持って不明だった。
2人共互いを見て頷くとそーっとララァの手を取った。

するとララァから青白い発光が起こり部屋を包んだ。全ては一瞬の出来事だったが、シャアとアムロにはある3人の14年間の出来事を一気に頭の中へ流し込んだ。

シャアとアムロは慌ててララァから手を放し飛びのいた。
シャアもアムロも息を切らしていた。ララァだけは平然としていて微かに笑った。


「クスクス・・・お蔭様で私もいろいろ理解ができました。ありがとうアムロ、シャア」


そうララァが2人に伝えると、アムロが先に反応した。アムロはシャアに話した。


「シャアさん。先に言っておくけど、貴方もさっきのことは理解できなくても飲み込んだはずだ。だから少し確かめたいことあるからララァと話してもいいかな?」


「・・・ああ・・・そうだな。どうぞ」


「ありがとう・・・では、ララァ」


「はい」


「どうしてこうなった」


「・・・そうですね」


ララァは伏目がちでしばらく考え、そして答えた。


「きっかけは私の死でした。貴方たちの運命はそこで決まってしまったかもしれません。そしてあのサイコフレームという代物がこのような今を生んでしまったのだと思います」


シャアとアムロは黙って聞いていた。ララァは話を続けた。


「サイコフレームは人の想いを直接的に投影して、周囲に変化・影響を与えかねない不安定なものでした。共振が最高潮に達したとき一番近くにいた貴方たちの想いが私を生んでしまったのです。そして生まれた私は貴方たちをこの世界へ呼んでしまいました」


ララァは遠くを見るような目をして、一息をついた。


「アムロは奇跡的に貴方の器を見つけることができたみたい。でも、私は不安定でした。だから貴方たちと会うまで目覚めることができなかった。潜在的な部分で本当のララァに語り掛けることができたのだけど・・・」


「本当のララァ?」


アムロは首を傾げた。嘘も本当もララァは目の前にいる。それ以上もそれ以下もないと思った。
しかし、ララァは違うと言っている。ララァはその疑問にも答えた。


「私はアムロとシャアに作られた存在。本当のララァは私の心の中でキチンと生きている。例え私が消えたとしてもその経験は補完されて生き続けるのでたいして問題ではないわ」


「すると、オレは・・・本当のオレが心の中にいるのか・・・」


「そう・・・本当のアムロも貴方の中にいる」


ララァはアムロにそう告げた。アムロは天井を見上げ「そうか」と一言言った。
そしてララァはシャアに語り掛けた。


「でも、貴方は違うみたい。魂は同じだから貴方にも私が流し込んだ体験を飲み込めたと思うけど・・・」


シャアはララァの言うことに同意した。


「そうだな。私の先の14年間をララァに見せられたみたいだが、どうやらアレは私であって私でないな・・・」


シャアはため息をついて、話続けた。


「あのシャアはとても切ない。そして孤独だ。今の私にとって見ればあのシャアは在り得ない。決してそうなることはないだろう」


ララァもこくりと頷いた。


「そう。貴方はこの世界の本当のシャア。最初に強く感じたのは貴方の方だった。貴方は器だから探し易かった。色々過ちを犯さないように気が付いてからずっと見守っていた。でも途中で疑問を感じた。貴方は本当のシャアだったから。私が感じるにこの世界のどこかに救わなければならないもう一人のシャアがいると思うの」


「もう一人のシャア?」


アムロが反応した。ララァは再び頷く。


「そう。そして、そのシャアはとてつもなく不安定なものとなっている。何故ならば本来の器とは違う入れ物に入っていると感じるの。そしてその器には色々な14年間の不純物も混ざり合ってしまい、そのシャアが壊れてしまっていると思うの」


ララァは悲しそうな顔をした。そして話を続けた。


「私の願いは私たちの中で一番報われない人を救うこと。貴方たちが私を生んだ理由はシャアを私の手で包みこんで一緒に昇華すること。それで私たちのこの世界での役目が終わる。後は本来のアムロとララァに戻る。そしてこの世界は生き続ける」


アムロは自分がイレギュラーなのは知っていたが、その存在理由がララァからもたらされた。
そのことについてアムロはすぐには心の整理がつかないでいた。


 
 

 
後書き
*ごめんなさい。先に吐き出すものを吐いてしまいました(笑)

でも、物語は続きますので宜しくお願い致します。 
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