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オズのポリクローム

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第十幕その十一

「なかったし」
「そもそもここに来ることだってね」
「最初考えていなかったわね」
「予定に入っていなかったね」
「だからなのね」
「オズマもお話しなかったのかもね」
「お空に行くことも少なかったし」
 今思えばです。
「だからなのね」
「オズマに悪気がないのは間違いないしね」
 このことは絶対にです、オズマはそうした意地悪や隠しごとをする娘ではありません。このことは確かです。
「だからこのことはいいとして」
「それじゃあ今は」
「うん、ここでね」
「団長さんにもお会いすればいいわね」
「そして中も見せてもらおう」
「お城の中も」
「ここを見てもね」
 波止場とその周りをです。
「緑の木々に草木に」
「お花も多いわね」
 色々な色のお花が沢山咲いています。
「それにお城も」
「うん、奇麗な石から造っていて」
「煉瓦もね」
「とても奇麗だよ」 
 白いその煉瓦達がです。
「そしてそこに苔があったり蔦があったり」
「それもいいわね」
「いや、まさにお空に浮かぶ」
「不思議のお城ね」
「そう言われますと気恥ずかしいです」
 天使さんのお一人が実際にこう言いました。
「褒められると」
「ただ事実を言ってるだけだけれど」
「それでもなのね」
「この島は私達の家です」
 天使さん達の、というのです。
「そのお家をあまり褒められますと」
「ううん、確かにね」
「私達も恥ずかしいわ」
「王宮のことを言われると」
「そうよね」
「それは私達も同じなので」
 だからというのです。
「あまり、です」
「わかったよ、じゃあね」
「これで止めるわ」
「その様にお願いします」
 こう言うのでした、そしてです。 
 実際にです、二人はお城のことを言うのを止めました。しかし。
 お城は確かに奇麗です、草木の間には兎や栗鼠、小鳥達もいます。彼等は天使さん達と楽しく戯れてもいます。
 苔や蔦が趣を醸し出している壁にです、屋根は先端が尖っていて十字架もあります。高く広くとても大きいです。
 そのお城を見ている皆にです、天使さん達はあらためて声をかけました。
「では」
「これから中に案内させてもらいます」
「こちらにどうぞ」
「はい、じゃあ」
「お願いします」
 五人が応えてでした、そうして。
 皆は天使さん達に案内されて城の中に向かうのでした。そこには臆病ライオンと腹ペコタイガー、それにトトもいます。
「いや、ここはね」
「天使さん達だけじゃなくて」
「他にも一杯いるね」
「色々な生きもの達が」
「そうね」
 ポリクロームは案内されて先を進みつつくるくると踊っています。
「ここはね」
「うん、栗鼠君や兎君に」
「小鳥さん達もいて」
「生きものも豊かだね」
「見て蝶々もいるわ」
 丁渡ポリクロームの傍にモンシロチョウが飛んできました。 
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