ポケットモンスター 急がば回れ
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20 ポケモンタワー 2
サカキ「お前のスリーパーが喰ったピカチュウの夢はそんなに恐ろしいものだったのか」
ナツメ「はい、奴が只者ではないことは確かです」
サカキ「お前の張ったバリアーを突破してヤマブキに来るくらいだからな」
ナツメ「それから、面白いことがもう一つ」
サカキ「何だ」
ナツメ「少年と行動を共にしている少女。
あれはおそらく被験体の夫婦の娘かと思われます。
イミテという少女と外見が酷似、性格は正反対、テレパシーでも過去は探れませんでした」
サカキ「……ほう。
過去のデータと一致している。
奴らは今どこにいる?」
エリカは端末を取り出す。
エリカ「シオンタウンにおります」
サカキ「シオンか。
挨拶代わりだ……行け、ミュウツー」
鎧のようなものに身をまとった人型のポケモンが現れる。
重量感のある体をゆっくりと浮上させ、シルフカンパニーの屋上に立つ。
東の空を見つめるとジェット機のような速さで飛び立った。
ブルー「えっ? あたしがインターン?」
イエロー「って、オーキド博士が言ってたよ」
ブルー「そっか……なんだか実感わかないなー」
イエロー「こんなド田舎さっさと出ていきたいって言ってたじゃないか」
ブルー「いざ出ていくと決まるとね」
イエロー「ここに引っ越してくる前はどうしてたの?」
ブルー「それが全然覚えてないのよね。
あたし、家族のことも覚えてないし。
ポケモンのこともよくわからないし。
今はオーキド博士の世話になってるからいいけど」
イエロー「そうなんだ……」
ブルー「進路を考えると不安を覚える年頃よね。
ポケモンに夢中になってるあんたたちが羨ましいわよまったく」
イエロー「あはははは……」
ブルー「ゲンガー、シャドーボールよ!」
イエロー「えっ?」
シャドーボールはゴースを貫いてガスを切り裂いていく。
ブルー「あんたたち、なに呑気に寝てんのよ」
催眠術を受けたグリーンとイエローを叩き起こす。
イエロー「あれ、ブルー? ここは……?」
ブルー「ポケモンタワーに決まってるじゃない。
寝ぼけてるんじゃないわよ。あたしを置いてったくせに」
グリーン「どうやらあのゴースに催眠術をかけられていたようだな」
イエロー「そうだ、あのゴースは?」
ブルー「あたしのゲンガーがやっつけたわよ」
グリーン「お前が?」
イエロー「同じゴーストタイプだから進化してるぶん力が勝ったんだね。
ありがとうブルー」
グリーン「ちっ……
さっさと出ようぜこんなとこ」
イエロー「行くよ、起きてピカチュウ」
ピカチュウ「ピカ?」
3人とピカチュウは外に出る。
グリーン「ところでお前ら、どうやってここまで来たんだ?
俺がせっかく通せんぼしてやったのによー」
イエロー「ピカチュウのテレポートでヤマブキまで来たんだ」
ピカチュウ「ピカ」
グリーン「テレポートか。便利な技を覚えてやがる。
でもなんでヤマブキなんだよ」
イエロー「最後に立ち寄ったポケモンセンターだからね」
ブルー「でもロケット団だらけで観光どころじゃなかったわよ」
グリーン「ヤマブキにもロケット団か。
あちこちにいやがる……カントーはどうなってんだ?」
ブルー「ロケット団、ここにもいるの?」
グリーン「レッドの奴がとっくに追っ払ったらしいぜ」
ブルー「ふーん……
じゃああれは?」
イエロー「えっ?」
グリーン「何だ?」
ブルーは空を指さす。
上空の彼方に何かが浮かんでいるのが見える。
目を凝らすと、それが人型であるのがわかる。
グリーン「ポケモンか?」
ピカチュウ「ピカ!」
イエロー「えっ? 逃げろって?」
ピカチュウがそれに向かって一直線に飛んでいく。
ブルー「飛んだ!? 風船もつけてないのにあんな遠くまで!」
ピカチュウはそのポケモンに何か話しかけている。
相手は聞く耳持たず攻撃を仕掛ける。
連続で発射される弾のようなものをかわしながら必死に訴えかける。
流れ弾が海に落ち、巨大な水柱を立てて爆発する。
滑空や宙返りでかわしていたが、ついに1発がピカチュウを捉える。
ポケモンタワーの壁面に直撃し、爆発する。
イエロー「ピカチュウ!」
瓦礫と共に落ちてくるピカチュウを助けるためにイエローは駆けていく。
グリーン「待て、イエロー!」
ブルー「危ない!」
1人の老人がやって来る。
フジ「君たち、早く逃げなさい!」
グリーン「でもイエローが……!」
フジ「私が何とかする! 君たちは早く逃げなさい!」
この老人は誰だろうと考えている余裕などない。
フジ「やめるんじゃ、ミュウツー!」
グリーン「ミュウツー?」
ミュウツーと呼ばれたそのポケモンは止めるどころか、更に強力な攻撃にかかる。
体全体から放出される衝撃波はシオンタウンごと押し潰していく。
建物は軋む音を立てて崩壊し、地面には亀裂が走っていく。
グリーン「やばいっ! 逃げるぞブルー!」
ブルー「イエロー!」
グリーン「あのじーさんに任せるしかない!
フーディン、テレポート!」
グリーンとブルーはシオンタウンから脱出した。
微かな空気の震えがヤマブキシティに伝わってくる。
サカキ「終わったか」
ナツメ「これでよろしいのですか?
シオンタウンにはあのフジ博士が住んでいると聞きましたが」
サカキ「あのピカチュウが見つかった時点で既に用済みだ。
まあ、正確にはピカチュウではないがな」
ナツメ「えっ?」
サカキ「それより気になるのは、我がロケット団のアジトとポケモンタワーでの計画を潰してくれたあの赤い帽子をかぶった少年……」
シルフカンパニーの最上階、社長室の扉が開く。
サカキ「やはりここにも来たか」
レッド「…………」
サカキ「噂どおり無口な奴だ。
言葉など無用というわけか。
いいだろう……大人の世界に口を、ではなく手を出すと痛い目にあうということを教えてやる!」
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