ハイスクールD×D~黒衣の神皇帝~ 再編集版
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
学園祭のライオンハート
眠りの病
俺と華佗とリアスは、冥界シトリー領に来ていた。シトリー領に来るのは初めてだけど、何故華佗を連れて来たかは未来予知とアスモデウスとヴェネラナからの情報分析した結果である。何でもサイラオーグの母親が、病でシトリー領のある病院で入院していると言う。ヴェネラナからも同じで、ぜひ絶大な回復魔力で回復させてほしいとの事だ。
現在人間界で、鍼治療を主にしているクリニックで働いている華佗に頼んで来てもらった。今は自然豊かな林道をリムジンが走っているが、後部座席に俺と華佗とリアスが座っている。華佗に関しては事前に説明を受けたリアスだったので、俺と一緒に隣に座っている。何せ三国志のあの華佗で、桃香達と同じ世界にいた大陸一の医師。五斗米道の継承者である。
「今回の件はヴェネラナから聞いているが、シトリー領に入ったのは初めてだな」
「シトリー領は、数ある上級悪魔の領土の中でも自然保護区が多い所でもあるから今度ソーナと一緒に行きましょうよ。ここは美しい景観の場所が沢山あるし、この前の事もあったからね」
そんで医療機関が充実しているが、そして今向かってるのは冥界でも名立たる病院だ。サイラオーグの執事が折り入って話があると言うのは、グレモリー家に伝えてきたそうだがヴェネラナはバアル家の出だからな。その縁があって話を受託したのだろう。リムジンで進む事、数十分で病院に着いてから俺達は降りた。
「お待ちしておりましたが、そちらの方は?」
「こいつは華佗、俺の仲間で恐らく人間界一の名医だ」
「おいおい、過大評価するなよ一誠」
「これは失礼致しました、ささこちらへどうぞ」
恐らく俺とリアスしか来ないと思ったのだろうが、俺らの仲間で名医だと言うと快く歓迎された感じだった。広い院内を進んでからエレベーターに乗り込んだ。
「一誠、私の母がバアル家の出である事は知っているわよね?」
「ああ、サイラオーグとは従兄妹なんだろう」
「ええそうよ。ウチの母はサイラオーグのお父様、バアル家現当主の姉で腹違いだけれどね。サイラオーグのお父様が本妻の息子で、私の母が第二夫人の娘なのよ。サイラオーグのお母様は『元七十二柱』であり、上級悪魔の一族ウァブラ家の出であるの。獅子を司る偉大な名家」
腹違いの姉も知っていたので無言で頷きながら話を聞いていたが、バアル家現当主とヴェネラナは姉弟に本妻と第二夫人とは一夫多妻制なのか?サイラオーグらしい血筋とも言える家だな、獅子を司る名家って言うのは。会話してるとエレベーターが上階に止まる、扉を抜けると病室のフロアだった。更に進む事、数分で執事に連れられてある部屋前に到着した。
「ここでございますリアス様、黒鐵様」
入ると個室のベッドにキレイな女性が眠っていたが、呼吸器を装着しているとなると生命維持装置で延命処置されていると言う事か。
「・・・・ごきげんよう、小母様」
俺が持っていた花束を受け取りながら、執事は言う。
「黒鐵様、この方はミスラ・バアル様。サイラオーグ様の母君でございます」
やはりか・・・・アスモデウスの情報通りだな。病までは知らないが、気配だけで衰弱してるな。
「今日、ここへお呼びしたのは他でもありません。リアス様、黒鐵様、どうかこの方を。ミスラ様を目覚めさせる為にご助力願えないでしょうか?」
「少しばかり事情を窺ってもいいかな?リアス」
「ええ。一誠も知ってるかもしれないけど、私らが知っている事を話すわ」
一組の母子が辿った激動の運命であるが、サイラオーグはバアル当主の父親と獅子を司る名家ウァブラの母親の間に生まれた。次期当主が生まれたと大変喜んだが、ここからは余りにも残酷な話となる。
魔力が無い悪魔でバアル家の特色である『消滅』の力を持っていなかったからである。代々当主は魔力に恵まれて『消滅』の力を持つ事が当然とされていた。サイラオーグはそれを持たずに生まれた為、失意にくれる父親は怒りの矛先を妻に向けた事でサイラオーグと母親は見捨てられた。
『我が一族が持つ滅びの力をどこにおいて、こんな欠陥品を産んだのだ!?』
とね。当時俺は眠っていた頃だった為、俺は強い権限力を持っていたがその権限を使わずに時間が経過してしまった。魔力と滅びを持たずに生まれた事で、欠陥品と言うレッテルを貼られた挙句の果てには『欠陥品を産んだバアル家の面汚し』と蔑まれていた。
「当時俺はまだグレモリー家と出会ってなかったからな。初めて会った後から知った時に、当時のバアル家は実に不愉快な者だと覚えたな。貴方含めたウァブラ家の従者達を除いて、ほとんどの輩が二人を侮蔑と差別を受けたと知った」
「まあ知って当然よね。一誠は全てを創ったとされる創造神黒鐵で、その時は母と出会っていなかったのだから。グレモリー家も噂を聞いて、母が小母様とサイラオーグをグレモリー領土に保護しようとしたけど、あちら側であるバアル家から強く拒否されてしまった」
「ヴェネラナ曰く、本筋の者でもなく嫁に行った者がバアル本家の事に口を出すな、だったか。グレモリーには滅びの力を色濃く受け継いだ事で、冥界で活躍したサーゼクスだったがバアル家にとっては面白くなかったと聞いている」
そんで大王であるバアル家は、世襲ではない現魔王を除けば家柄的にはトップに君臨する上級悪魔だからか。他の御家でも口出しは難しくオマケにプライドが高いから、周囲の目を気にするようになった。サイラオーグと母親が厄介者となってしまい、ウァブラ家が二人を帰還するよう求めたがバアル家からの返事は残酷で許す訳がない程だったと聞いている。
「バアル家はサイラオーグだけ渡さないと当主が言った事で、更に怒りを覚えたよ。いくら何でも酷な話だが、家の恥を外に出す訳にはいかないとの提案を飲める訳がないからな。このヒトを保護しなかったら、幼いサイラオーグは幽閉されて一人蔑まれて生きていく事だったからな」
「その通りでございます。ミスラ様は故郷の助力を断り、サイラオーグ様と私達一部の者を連れてバアル領の辺境へと移り住む事になったのです。そこならバアル家の目の届く位置であり、外部にサイラオーグ様を晒す事もありませんから」
そこから聞いた話だと、バアル家はバアル領の奥地に母子が移り住む事を許可した。家の援助無しだったので、田舎で暮らし始めたがそこでも苦労が絶えなかった。上流階級育ちだった為、助力無しでの田舎暮らしは辛い時もあったがサイラオーグを立派に育て上げた。時に厳しく時に優しく教育したが、本来魔力が無いに等しい悪魔は良い待遇を受ける事が出来ない。
田舎に移り住んでからも、サイラオーグは差別の対象となり同世代の下級・中級悪魔の子供達よりも魔力が劣っていたからいじめを受けていた。それでもこのヒトは泣いて帰って来るサイラオーグに強く言い聞かせた事で今に至るんだよな。魔力無しでも己の腕力のみで倒す体術のエキスパートとなったからな。
『サイラオーグ、あなたは魔力が無くとも立派な体があります。足りないと感じるのであれば、足りないモノを何かで補えなさい!腕力・知力・俊足、これを補えばあなたは誰が言われなくともバアル家の子です。例え魔力がなかろうと、滅びの力がなかろうと諦めなければいつか必ず勝てるから』
と母から教わったサイラオーグだったが、このヒトは裏では何度も謝り続けた。滅びの力を持たずに産ませた事で、サイラオーグが眠る横で何度も泣き続けていた。それを察したのか、ある日から泣くのを止めてから真正面に立ち向かう事にした。自分をバカにした者に、何度も倒れ続けながらも立ち上がり続けた結果とある夢を掲げた事で今のサイラオーグとも言えるかもしれん。
『実力があればどんな身の上の悪魔でも夢を叶える事の出来る冥界を作りたい』
当時は実力社会だった悪魔業界で、上流階級とそれ以外で世界が違う。力を持っていたとしても出自によって、望める生き方を実現出来た者は少ない。古い家柄を持つ上級悪魔からの下級・中級悪魔への差別は、未だに残っているが俺らの未来にはそれを無くす動きを見せている。
この俺という存在があってからの冥界は変わりつつもあるが、古き仕来りを持つ者にとっては邪魔でしかない。サイラオーグが中級悪魔とまともに勝負が出来る頃、サイラオーグの母親に異変が起こった事でこのヒトは現在横になっている。
「悪魔がかかる病の一つで、症例は少ないけれどその病気にかかれば深い眠りになり目を覚まさなくなってしまう。そして徐々に体が衰弱して死に至るから、こうやって医療機関で人工的に生命維持装置を装着しなければ生きていられないのよ」
あらゆる方法を模索したが、治療方法が見つからずに眠り続けた。サイラオーグは前へと突き進んだ事だが、体を鍛え上げたサイラオーグは満を持してバアル家に帰還して、現当主と後妻の間に生まれた弟を実力で降ろさせて次期当主の座を得た。
ただしバアル家に帰還したサイラオーグでも、このヒトはバアル領の病院だと危険らしい。もしバアル領の病院だと、暗殺やら物騒な事があるのでここで眠っている。
「次期当主の座を奪われたその弟を始め、滅びの力を持たずに次期当主になったサイラオーグを疎む輩はバアル家周辺に多いからか。病気となったこのヒトは、動かない的になってしまうからソーナの伝手を頼ってシトリー領に移した。次期当主の権力争いが継続中で、いつ狙われるか分からんからな。そんで?俺らを呼んだ理由は何だ?」
俺がそう言ったので、執事が涙を拭きながら言った。
「今回お呼びしたのは他でもありません。ミスラ様のご病気の治療にご助力願えないでしょうか?黒鐵様ならどんな病でも治療出来ると聞いておりましたので、今回呼ばせてもらいました。担当医の了解は取っておりますので、有害ではない魔力ならば大丈夫かと」
俺と華佗は、すかさずサイラオーグの母親を見た。俺も医療に関しては心得はあるので、気や魔力で調べてみた。そしたら華佗が黄金の鍼での治療を試みるので、赤龍帝の籠手の倍加をしてからの譲渡を華佗にな。病魔を発見したので譲渡する倍加を待ち続けるのには、時間が掛かるので禁手化で一気に倍加して譲渡する事にした。
「ドライグ、今回は戦ではなくヒトを救う為の倍加だ。そして華佗に送る気に譲渡するぞ!」
『おうよ!話は聞いていたから問題ないぞ、加減無しで倍加と譲渡をしろ相棒!』
俺は華佗の背中に赤龍帝の贈り物からの回復の気を光速のように素早く送った。ちなみにリアスと執事は外に出てもらっている。
「ここか一誠!譲渡により、爆発的な気が来た事でこれなら病魔を追い払える!行くぞ!ここだ!元気になあれぇぇぇ!!!!」
個室は黄金に光り輝いたが、光が止むと今度は俺の出番となった。華佗が言うには病魔は消したが、あとは体を蝕んでいる魔力があるから何だと。俺は禁手化を解いてから倍加をさせてから片方の手に譲渡するように仕向けた。
譲渡先は片方の手に、神の力である回復+赤龍帝の籠手の譲渡でのパワーアップでミスラさんの体が光り輝いた。光が止むと、俺は汗を流してから患者を見たら目が開いたのだった。俺と華佗を見ると呼吸器をつけたままだったが、小声で話しかけて来た。
「あ、あなた達は誰ですか!それとここは?」
「ここはシトリー領の病院の中だ、初めましてかな。俺の名は兵藤一誠、またの名は創造神黒鐵と呼ばれている。こいつは俺の最高の名医である華佗で、あなたは眠りの病にかかっていた。だがもう安心してくれ、病は完治させた。もちろん医療費代何てもんはいらんよ、俺の友からの依頼だからな」
外にいるリアスと執事を呼ぼうとして部屋外に出たら、サイラオーグと大量の野次馬がいたので殺気を解放させて野次馬を追っ払った。サイラオーグも見舞いに来たら、リアスと執事がいたので何をしてる?と言った瞬間に黄金の光が部屋外まで漏れたようだ。サイラオーグは部屋に入ろうとしたが、俺と俺が呼んだ名医が治療中だと聞いてしばらく様子見をしてたそうだ。
「サイラオーグ喜べ!お前の母親の意識は戻ったぞ。早く部屋に入ってくれ!」
俺が先導して入ると、上半身をゆっくり起こすミスラさんがいた。部屋外に待機していた医師や看護師も驚愕な顔をしていたが、ほとんどの者がまるで奇跡を起こしたかのように見ていた。サイラオーグは泣いていたので、俺と華佗は静かに部屋を去り休憩フロアに向かった。相当力を使ったし、華佗も久しぶりの強力な病魔だったと聞く。
「母上!サイラオーグです。お分かりになりますか」
「ええ分かりますよ。兵藤様には感謝をしなければなりません」
サイラオーグの頬は濡れていた、そして頬を撫でようとする母の手。震えるその手をサイラオーグの大きな手を取った。
「私の愛しいサイラオーグ。立派になりましたね」
その一言で大泣きしたサイラオーグ。そして一言言ったそうだ。
「まだまだです母上。元気になったら、家に帰りましょう。あの家に」
リアスも執事も泣いていたが、俺と華佗が立ち去った後も大泣きしていたサイラオーグらだった。俺達は飲み物を飲みながら休憩していたが、籠手の倍加と譲渡がなければ俺もしばらく眠っていたかもしれない。華佗は難易度が高かったが、俺が気を送ったお陰で病魔退散出来たんだとよ。とそこへリアスとサイラオーグが来たが、大泣きした証拠に目を真っ赤にしていた。
「兵藤一誠、礼を言わせてくれ。俺の母が目を覚めたのはお前達のお陰だ」
「病魔を消したのは華佗だ、俺は身体を蝕んでいた魔力を打ち消して体力を回復させただけだ」
「それでもだ、ありがとう。礼を言わせてくれ。兵藤に華佗」
「私からもお礼を言わせてもらうわ。冥界中の名医でも治療不可能とされていた病を治したんだから」
サイラオーグは礼を言った後、表情が変わった。次のゲームについてだろうがな。
「次のゲーム、本来ならば眠っているはずの母が目覚めたからな。やる気が更に出て来たぜ、本当ならリアスの眷属だったが上層部は黒神眷属なのだと聞いた」
「私らはとてもじゃないけどバアル眷属には勝てないわ。唯一『兵士』がいない眷属なのだから、それに一誠が今後バアル家について何か圧力をかけてくれるそうよ」
「七十二柱に連なる家で珍しくないが、次期当主を巡る権力争いに関連する事なのか?現代の大王家で起きた事を今更であるが、どう圧力をかけるのだ?」
「シトリー家とグレモリー家には世話となっているサイラオーグだが、圧力に関しては気にするな。今のバアル家は少しずつであるが、変わりつつあるからな」
圧力に関して質問してきたが、何も心配はいらないと言っといたがバアル家現当主に文句を言うつもりだ。今後ミスラさんが目覚めた時には、サイラオーグ周辺での差別を止めなければどうなるか?蒼い翼は政治や経済にも一言出せば、悪魔社会にも告げ口可能なのでな。
サイラオーグは肉体しかなくとも、負けた時に失うモノは最小限にするつもりだ。積み上げてきた物が崩れないように補強するし、勝ち続ける事こそが唯一の道だと言うのを無くす事もな。
「サイラオーグにはサイラオーグの人生があるが、バアル家に関しては告げ口として言っとく。それと次のゲームは手加減無用だ、前回は手加減だが今回は本気を見たい」
「いいだろう。本気の俺が必ず勝たせてもらうぞ、この拳でな。負けた事がない黒神眷属に敗北という字を刻ませてやる!」
「俺ら黒神眷属は負けを知らない強者達なのでな。今度こそ俺らの力を受け止めるように鍛えておけよ?」
「ハハハ、いいだろう。お前の本気を見させてもらう。今度のゲームは母も見てくれるからな」
そう言ってサイラオーグは、ミスラさんがいる病室に戻った。執事から感謝を貰った後に、リムジンで帰路についた。人間界に戻った俺は人間界本家に帰り、華佗は華佗のクリニックへ帰った。戻った後、自室のベッドの上で寝てしまった。相当魔力を使ったからな、こんなに疲れるのは久しぶりだなと思った俺であった。
ページ上へ戻る