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とあるの世界で何をするのか

作者:神代騎龍
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第四十二話  佐天さん倒れる


 トリックアート達を白井さんが捕まえた翌日、俺は白井さんから風紀委員(ジャッジメント)177支部に呼び出された為、騎龍の姿で支部に来ていた。

「それで、神代さんはどうやってレベルアッパーを入手したんですの?」

 支部へ到着早々、白井さんから尋ねられる。白井さんと御坂さんの二人は未だに、俺が男の時でも女の時でも「神代さん」呼びだ。そして白井さんが俺を呼び出した理由は、レベルアッパーを佐天さんが持っているということを昨日俺がはぐらかしていたので、レベルアッパーの入手経路を確認するためということだろう。

「あー、それは重福さんが持ってたやつらしいよ」

「重福って……あの、常盤台狩りの眉毛女ですの?」

 俺が答えると白井さんはすぐに確認してくる。よく俺も「常盤台狩りの眉毛女」と言っていたのだが、どうやらそれは白井さんの台詞だったらしい。恐らくアニメでも白井さんがそう言っていて、それが記憶に残っていたのだろう。

「そうだよ。あの一件の後から、俺も佐天さんも手紙による文通はしてたんだけど、佐天さんにはメールが送られてきたらしくて、その中に添付ファイルとして入ってたんだって。まあ、重福さんからメールを貰ったのは結構前だったらしいんだけど、急に手紙じゃ無くてメールが来たのを不審に思ってしばらくは開けなかったみたい。けど昨日、重福さんもレベルアッパー使用者っぽいっていう話をしてたのを思い出して、それで開けてみたら入ってたって言ってたよ」

 ここでようやく俺は佐天さんの名前を出す。昨日は意図的に佐天さんの名前を出さないようにしていたわけだが、今日ならもう名前を出しても大丈夫だろう。それに昨日、俺がはぐらかしていたことを悟られないようにするためという意図もある。

「そ……それでは、レベルアッパーは佐天さんが持ってるんですの?」

「うん。今もまだ持ってるはず。まー、消してるかもしれないけどね」

 新たに出てくる白井さんの疑問にもすぐに答える。もし佐天さんがレベルアッパーを使うとするならば時期的にはすでに使っているはずだし、使っていないのであればもうデータは削除されているかもしれないからだ。

「だったらなぜ佐天さんは直接初春に渡さなかったんですの?」

「やっぱりレベルアッパー使ってみたい願望があったんじゃ無いかなぁ。レベルアッパーが危ないものっていうのは分かってると思うけど、それでもレベルアッパーに手を出してみたいと思うぐらいには能力に憬れてるんだろうね」

 昨日俺が佐天さんに聞いて確かめた部分は、やはり白井さんも疑問に思ったのだろう。この答えに関しては俺も推測の域を出ないので、はっきりと言い切ることができないわけだが、それでも大方間違ってないだろうとは思っている。

「それで初春の所へ持って行くのを躊躇った……と?」

「そんな所じゃないかな。ところで、当の初春さんは?」

 俺の言いたいことを何となく理解したらしい白井さんに答えつつ、丁度名前が出てきた初春さんの行方を白井さんに尋ねる。

「今は木山先生の所へ向かってる途中だと思いますの」

「あー、そうなんだ。初春さん一人で脱ぎ女に対処できると思う?」

 初春さんが木山先生のところへ行っていると言うことは、そろそろカエル顔の医者(ヘブンキャンセラー)に脳波パターンの話を聞いて木山先生を割り出す作業に入るのだろうと思ったので、特に考えず無駄話を振ってみる。

「あ……いや、しかし、あの方も常に脱いでいるわけではありませんし、研究所の中なら特に暑くなるような事は無いと思いますの」

「まー、基本的には大丈夫だと思うけどねぇ……」

 一瞬白井さんが止まったものの、冷静に考えれば意味もなく脱ぎ出す人ではないという結論に至ったようである。それはあながち間違ってもないのだが、白井さんは停電中で暑い病院内での『脱ぎ女』しか知らないので仕方がないのかもしれない。アニメのようにファミレスでも脱ぎだしていたなら、もう少し不安が強まっていたかもしれないのだが……。

「おや、その初春からですの」

「木山先生が脱ぎだしたって?」

 白井さんのケータイに電話がかかってきてそれが初春さんからだと分かったので、俺はまた悪乗りして軽口を叩いていた。

「まさかそんなことは……もしもし、初春……え? 佐天さんが!? それで……ええ、分かりましたわ。神代さん、佐天さんがレベルアッパーを使ったようですの! すぐに病院へ急ぎますわよ!」

「えっ!? あ……うんっ!」

 ケータイで初春さんと話し始めた白井さんの言葉に「佐天さん」の名前が出てきたので嫌な予感が頭の中をよぎる。その予感は間違っていなかったらしくすぐに白井さんが教えてくれたのだが、現状で佐天さんがレベルアッパーを使うことなどまずないだろうと思っていたので、白井さんからの呼びかけにすぐに反応できなかった。





 初春さんからの電話の直後、白井さんのケータイに丁度御坂さんから電話が掛かって来たので佐天さんのことを伝え、佐天さんの様子を見るために皆で病院へ行くことになった。白井さんは御坂さんを迎えに行き、俺はタクシーを捕まえて病院へ向かうことになったのだが、タクシーがなかなか捕まらなかったので作成空間から取り出した自分の車で向かうことにする。

 俺自身、元の世界では免許も取ったし車も運転していた上に、かなり前の世界になるがグランツーリスモっぽい自動車レースの世界でレースをしていた経験もあるので、車の操作に困るようなことはない。困ることを強いて挙げるとすればこの世界の免許がないことと、身長に応じてかなり視点が低くなっていることぐらいだろうか。

 病院までは何とかアンチスキルなどに見つかることもなく到着し、裏手の駐車場で車を作成空間に戻すと佐天さんの病室に向かう。病室の場所は予め初春さんに聞いてあるので直接向かっている。

「佐天さん……」

 病室に到着すると、白井さんに連れられて先に到着していた御坂さんが呆然とつぶやいていた。

「アケミさんにむーちゃん、マコちんも居るのか……」

 病室は4人部屋で、佐天さんの他にはアケミさん、むーちゃん、マコちんの3人も寝かされている。佐天さんがレベルアッパーを使っているのだから、アニメ同様この三人も一緒に使ったということなのだろう。

「何でこんなことに……」

「ちょっとアンタ! 何で佐天さんにレベルアッパー使うなって言わなかったのよ!?」

 白井さんがつぶやくと御坂さんが俺に掴み掛かってきた。

「言わなくても使うことないだろうって思ってた……」

 これに関しては俺の見込みが甘かったと言わざるを得ない。確かに可能性としてはかなり低いと思っていたのだが、それでも可能性があるとは考えていたのだ。しかし、佐天さんが使いたいと思っているなら使わせても良いと思っていたのも事実である。佐天さんが使いたいと思っているのに無理矢理使わせない方向へ持って行くと、佐天さんの心の闇が今後どういう方向へ向かっていくか全然想像できなかったからだ。

(わたくし)も昨日の内にレベルアッパーの入手先をちゃんと聞いておくべきでしたわ」

「まさか意識不明になると分かっても使うとは思わなかった」

 白井さんの後に俺もつぶやく。佐天さんがレベルアッパーを使いたくなくなるようにいろいろと誘導してきたつもりだったが、それよりも佐天さんの能力を使いたいという気持ちのほうが上回ったのだろう。

「ねえ、レベルアッパー使ったら意識不明になるのはほぼ確実っぽいって話、佐天さんには教えたの?」

「いや、昨日の話を聞いてれば分かるんじゃ……」

 俺のつぶやきを聞いた御坂さんが尋ねてくるので答えたが、頭の片隅に何か引っかかるものが残った。

「その話……した時にはまだ佐天さんと初春さん来てなかったわよね?」

 御坂さんから確認されて、俺の頭の片隅に引っかかっていたものがなんだったのかをはっきりと認識する。

「え……マジ?」

「マジですわ」

「やっぱり神代さんって抜けてるわねぇ」

 思わず聞き返してしまった俺に白井さんと御坂さんがあきれたような視線を向けてくる。

「やばい……これは何も言い返せない……」

 一昨日は同じことを言われてもそれなりに返せた言葉だったが、今日は完全にその通りなので言い返す言葉などあろうはずがなかった。





「君達、ちょっといいかな?」

 佐天さんの病室から出た所でカエル顔の医者から声をかけられる。

「え……はっ!? リアルゲコ太!」

「いやいやお姉様、それはないですの」

 振り向いた御坂さんがカエル顔の医者の顔に目一杯の反応を示しているが、そこに白井さんから冷静な突っ込みが入れられる。

「さて、これがレベルアッパー使用者の全脳波パターンだ。当然脳波は個人個人で違うから、同じ波形なんてあり得ないんだね。ところが……だ。レベルアッパー使用者にはある一定の脳波パターンがあることに気づいたんだよ」

 カエル顔の医者に促されて入った部屋でパソコンの画面を見せられ、画面に表示される脳波パターンについて説明された。やはり疑問に思うのは、この世界での脳波の扱い方である。元の世界ではリラックス状態や緊張状態を示すアルファー波やベーター波というものがあって、その人の状態によって脳波が変わり続けていたはずなのだ。まあ、アルファー波を出している人が皆同じ波形を出していたのかどうかも知らないし、そもそもアルファー波というものをこのような波形で見たことすらないわけだが……。

「どういうことですの?」

「つまり、誰か他人の脳波パターンで、無理矢理脳が動かされるようなことがあるとしたら、まず間違いなく人体に多大な影響が出るだろうねぇ」

 白井さんの疑問にカエル顔の医者が答える。確かに脳波というものが各人固定だったとして、それを無理矢理に変えられたのなら脳の働きに支障が出てもおかしくないだろう。

「AIM拡散力場によるネットワークを形成する為に、レベルアッパーで脳波パターンをいじる必要があったということかしら」

 カエル顔の医者の話を聞いた御坂さんがつぶやく。

「一体誰が何のつもりで……」

「僕は医師だ。ここに運び込まれた患者を治療するのは僕の仕事だが、レベルアッパーが何のために作られたかを調べるのは、君達の仕事だろう?」

 白井さんがつぶやいた疑問は特にカエル顔の医者に向けたものではなかったはずなのだが、カエル顔の医者もそれには答えていた。しかし、「君達」ということは俺と御坂さんも入っているというわけか。まあ、俺は勿論、御坂さんも当然やる気なのは間違いないだろう。

「そうですわね」

 白井さんは短く答えると、カエル顔の医者から脳波パターンのデータを受け取る。脳波についての見解が完全に違っていた為に、結局俺はここで何一つ発言することができなかったのだが、どうしても言わなければならないことが一つだけあった。

「俺もレベルアッパー使用者なんですけど、俺の脳波も調べて貰えませんか?」

「あ!」

「そう言えば……そうだったわね」

 俺の発言に白井さんと御坂さんが声を上げる。どうやら二人とも俺がレベルアッパー使用者だと言うことを忘れていたようだ。

「ほう、そればらば調べてみようじゃないか」

「お願いします」

 カエル顔の医者も俺のことが気になったらしく、椅子から立ち上がりながら了承してくれ、すぐに隣の部屋で俺の脳波を検査することになった。検査時間自体は数分といった所だろうか、電極を取り付けるとかそんなことをしなくても計測できるようだ。

「結論から言うと、君の脳波も他のレベルアッパー使用者と同じなんだね。意識不明にならずに生活できているという点については何とも言えないのだが……」

 また元の部屋に戻ってから、パソコンの画面で俺の脳波パターンを見ながらカエル顔の医者が説明してくれる。アニメの説明では、脳波パターンがプロトコルの役割だったはずだから、この世界でも同じだとするならば、俺が施した演算能力の使用制限は脳波パターンに全く影響を及ぼさないとみて良いのだろう。もし、アニメと設定が違っていたとしても、俺の脳波が他のレベルアッパー使用者と同じになっていて、尚且つ意識不明に陥らずに済んでいるという事実は変わりようがない。

「そうですか。ありがとうございました」

 こうして俺たちは病院を後にしたのである。





「特定の脳波パターンがはっきりしてるなら、その脳波パターンと一致する脳波パターンを元から持ってる人が一番怪しいって事よね?」

「そういう事になりますわね」

 病院からジャッジメントの177支部に戻り、御坂さんが推測したことを白井さんが肯定する。すでに俺からアイテムの二人にも連絡しているので、二人ともその内ここに来るだろう。

「バンクの検索って脳波パターンでもできるの?」

 恐らくできるだろう事は分かっているのだが、俺も一応白井さんに聞いてみる。

「勿論ですわ。初春にバンクの検索をして貰えば……って、その初春が居ないんですの……」

「あー、そうだった」

 白井さんが答えてくれるが、バンクの検索ができる初春さんがこの場に居ないのでガックリとうなだれる。そしてその事については御坂さんも知っているようで、白井さんと一緒にうなだれていた。

「それで初春さんはやっぱり木山先生のところに?」

「ええ、そうですの。病院まで佐天さんに付き添ってからすぐに木山先生のところへ向かったそうですわ」

 初春さんの行方を一応白井さんに聞いてみるが、やはり木山先生のところへ行ったようである。

「初春さんが居ないと何ができないの?」

 この支部に来たときに紅茶を淹れに行っていた固法さんが戻ってきて聞いてくる。

「あ、どうも」

「あ、固法先輩。実は……」

 俺が紅茶を受け取っている間に白井さんが現状の説明をする。少なくとも脳波パターンはかなり有力な証拠になり得るのだから、早くバンクで検索を掛けたいといった感じである。

「なるほど。そういう事だったらバンクへのアクセスくらい認められるでしょうね」

 白井さんから説明を受けた固法さんは、そう言って自分のパソコンを操作し始めた。恐らくバンクを検索するための許可を取ったりしているのだろう。

「もしバンクにデータがなかったら?」

「大丈夫ですわ、お姉様。バンクには能力開発を受ける学生は勿論、病院の受診や職業適性テストを受けた大人のデータも保管されていますの」

 固法さんがパソコンを操作するのを眺めながら御坂さんが聞くと、白井さんが何故か自信満々に答えている。まあ、木山先生の脳波パターンなのだとしたら実際にバンクに登録されていて見つけられるのだろうが、そうでない可能性というのも考えられるのではないかと思って口を開く。

「AIM拡散力場でネットワークを作るために必要な波形の脳波になってるだけであって、誰かの脳波を使ってるわけじゃないって可能性もありそうだけど……」

「そうなると……お手上げですわね」

「AIM拡散力場のネットワークって?」

 俺の言葉に白井さんが首を振りながら肩をすくめると、固法さんがそれとは違う部分を聞いてきた。レベルアッパーがAIM拡散力場を使ってネットワークを形成している可能性が高いというのは、数日前に木山先生と話し合いをしたときに白井さんや初春さんも居て知っているはずなのに、ジャッジメントとして情報を共有することはしてないのだろうか。

「レベルアッパー使用者のAIM拡散力場が何かしらの繋がりを持ってるらしいので、恐らくネットワークを構築して他人の演算能力を使ってるのではないかっていう話になってるんですけど、知らないんですか?」

「ええ、レベルアッパー使用者が暴れ回ってるって言う報告は受けてるけど、レベルアッパーそのものに関しては特に何も……」

 聞いてみるとやはりジャッジメントの情報共有は出来てないようである。

「意識不明になる点は?」

「それは報告を受けているわ。レベルアッパーを使用したとみられる人たちが次々と倒れてるって……」

 どうやら実際に起こっていることに関してはちゃんと情報が入っているようなので、多分初春さんと白井さんの報告がなかったことが原因なのだろう。まだ確定かどうかが分からないことに関しては、二人とも報告して良いのか判断を迷ったといった所だろうか。

「俺がレベルアッパーを聞かされたってことは?」

「知っているわ。その施設へ白井さんが行ったことは報告を受けているもの」

 俺がレベルアッパー使用者だと言うこともすでに報告されているようである。

「取り敢えず白井さん」

「なんですの?」

 初春さんはここに居ないわけだが、取り敢えず白井さんには言っておいた方が良いだろう。

「未確定であっても、関連性を疑って木山先生の協力を仰いでるわけだから、固法さんにはちゃんと報告しとくべきだよ」

「それは初春が……」

 俺が注意すると白井さんは初春さんに責任転嫁しかけたが、何とか思いとどまったようである。

「初春さんにもちゃんと言っておいてください。固法さん」

 まあ、白井さんだけを責めるのも何か違うと思うので、初春さんの方は固法さんにお願いしておくことにした。

「ええ、分かったわ……あら、誰か来たようね」

 固法さんがうなずいた所で来客を知らせるブザーが鳴った。ちょっと早いような気もするが、気配からしてアイテムの二人が到着したようである。

「あ、絹旗さんと滝壺さんだったら通してください。一応俺や御坂さんと同じで、白井さんと初春さんの協力者ってことになるので」

「あら、そう。分かったわ」

 一応固法さんに二人の名前を伝えると、固法さんは来客用の入り口へ向かっていった。少しすると、かなり急いだ様子の滝壺さんが走ってきた。

「こうじろ、大変。昨日から急激にレベルアッパー使用者が増えてる」

『え!?』

 滝壺さんの慌てたような言葉に驚く。俺だけでなく、御坂さんや白井さんも相当驚いているようだ。

「どういうことなの?」

「ああ、滝壺さんはAIM拡散力場を見ることが出来る能力者なんです」

 絹旗さんと一緒に滝壺さんを追いかけてきた固法さんが聞いてくるので、俺はまず滝壺さんの能力から説明する。さっきまでレベルアッパーとAIM拡散力場の関係を話していた所なので、固法さんならこの説明で理解してもらえるだろう。

「なるほど。それで、どのくらい増えたのか分かるかしら?」

 固法さんは完全に仕事モードになって滝壺さんに尋ねる。これまでもレベルアッパー使用者が暴れ回ってかなりの被害を出しているので、レベルアッパー使用者が急激に増えたということはこれからの被害も急激に増える可能性があることを指しているためである。

「どのくらいって言うのは難しい。でも、昨日今日でそれまでの二倍にはなってると思う」

『そんなにっ!?』

 滝壺さんの話を聞いて全員が驚きの声を上げる。

(アリス、昨日と一昨日の木山先生の動きは?)

(特に動いたようには見えなかった。レベルアッパーのファイル自体にもここのところ触ってない)

 昨日今日で急激に増えたと言うことは木山先生が動いた可能性が高いと思ってアリスに確認するが、木山先生自体は動いてないようである。少なくとも陰でコソコソといった程度ではアリスを誤魔化せるはずもないので、木山先生は動いてないのだろう。当然、アリスの監視中であれば第三者に依頼をするという方法でも簡単に見抜けるはずなので、その方法を取っていたとすればアリスの監視がつく前と言うことになる。

(それなら今、ネット上に出回ってるレベルアッパーがどこにあるか分かる?)

 それまでネット上に公開されていたレベルアッパーについては、ジャッジメントやアンチスキルからサイト運営者に公開を停止するように通達が行っているはずなので、レベルアッパーが広まっているのなら新たにサイトが公開されたと考えるのが妥当だろう。

(ちょっと待ってて……あ、レベルアッパーで検索をすればすぐに出るところにある。少なくとも木山春生によるものではない。現時点で公開されている場所は38件、ダウンロードは全部で1万件近くになってる)

 すぐにアリスが確認してくれたが、どうやら想像以上にレベルアッパーが広まってしまっているようである。

「まずはレベルアッパーがどこから広まっているのかを確認しないと……」

「そうですわね」

 俺がアリスとの会話を終わらせた時には固法さんと白井さんが動き始めていた。

「ここに来る前に超確認しましたが、いくつかレベルアッパーを公開してるサイトがありましたよ」

「分かりましたわ。……何なんですの!? この数は……」

 絹旗さんからの情報提供に、パソコンで探していた白井さんがパソコン画面を見ながら声を上げる。

「レベルアッパーを持ってる誰かが拡散させたんだろうね」

 昨日から急激にと言う部分と、木山先生が関与していないという部分にどうしても引っかかるのだが、現時点で考えられるとすればこんなところだろうか。少なくとも、医者や看護師の苦労と、ジャッジメントやアンチスキルの仕事と、レベルアッパー使用者が暴れることによる被害者数や被害金額は、アニメとは比べものにならないほど増えそうである。……ついでにAIMバーストの強さも。
 
 

 
後書き
お読みいただいている皆様、ありがとうございます。
やっぱり佐天さんはレベルアッパーを使ってしまいました。
 
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