戦国異伝
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第二百三十話 本能寺へその四
「我等にとっては」
「そうであればよいが」
「とにかくです」
また言う大久保だった。
「何がありましても我等がいますので」
「安心してよいのじゃな」
「左様です」
「そう言ってくれるか、ではな」
「何があろうとも」
「皆で駿府に帰ろうぞ」
こう話してだ、家康は意気揚々と駿府を出てまずは名古屋に向かった、そしてその名古屋の町を見てだった。
彼は唸ってだ、共にいる本多正信に言った。
「凄いのう」
「はい、城も見事ですが」
「それ以上にな」
「町がです」
その名古屋の町がというのだ。
「最早かつての清洲の時とはです」
「比べものにならぬな」
「岐阜を凌ぐやも知れませぬな」
「うむ、元々この国は豊かじゃ」
尾張はというのだ。
「土地は肥え水も多くな」
「人の行き来も盛んで」
「栄えやすかった、しかしな」
「前右府様が尾張を統一されて」
「それからな」
「善政を敷かれ」
「ここまでなった」
家康は感嘆して述べた。
「まさにな」
「ですな、前右府様は戦よりもです」
「政じゃ」
そちらに信長の本質があるというのだ。
「あの方は政が第一じゃ」
「その国を治められ」
「よき国にすることがな」
「あの方の望みですな」
「そうじゃ、だからな」
「この尾張もですな」
「こうしてじゃ」
豊かになったというのだ。
「そうなったわ」
「左様ですな」
「そうじゃ、しかし清洲城を支城としてな」
清洲城はまだある、しかし今やほんの出城の様な扱いだ。信長が尾張において拠点にしていた城ではあるがだ。
「あの城を築かれてからな」
「さらに栄えておりますな」
「まことに見事な城じゃ」
その名古屋城も見た、ここで。
「これだけの町を持つに相応しい」
「どうやらこの城は天下の守りの一つですな」
「そうじゃな、しかしな」
「それ以上にですな」
「うむ、政じゃ」
その為の城だというのだ。
「このことは安土も大坂も同じじゃ」
「そして江戸も」
「江戸にも大きな城を築かれたが」
その主な普請は家康と東国の大名達が行った、今や東国の中心になっているとさえ言っていい城である。
「あそこにもな」
「大きな町が出来てですな」
「東国の政もじゃ」
それもというのだ。
「橋に堤が出来てな」
「開墾も進んでおります」
「そして横浜、横須賀の港に南蛮船が来ておる」
その為に信長が開いたのだ。
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