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異世界に呼ばれたら、魔法が使えるようになりました。

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道具を僕は手に入れた

 ちょっとドキドキしてしまったがそんな都合のいい展開にならず、それはそれで残念な気持ちに僕はなっていた。
 ただそこで、リリアがレイアに何かを渡すのを目撃する。
 リリアが持ってきたのは、四角い三つの物だがどれも茶色く濁っている。

「私はデキる子なので隠されていたそれらも全部見つけたわよ?」
「……ありがとうございます」
「どういたしまして。もう少し私のことも信用してよね」

 笑うリリアにレイアははいと小さく頷く。
 そこでレイアが自身の腰につけられたポシェットから何かをとりだした。
 折りたたまれた紙の様に見えたのだが、それを段々に広げていくと僕の背丈が一辺というような正方形のトレーシングペーパーのような薄い紙になる。

 その紙には黒い墨の様な物で大きな円と細かな文字? 模様?が描かれている。
 それを床において、先ほどの茶色い四角い物体を……よくよく見るとほんの少し色の差があるそれを、2つその紙の上に置く。
 なんだろうと僕が思ってそれをのぞこうと近づくと、

「颯太、危ないので離れてください」
「……はい」

 僕は言われた通りにその場から離れる。
 リリアもレイアの後ろで様子を見ている。
 そこでレイアが大きく息を吸い、

「“その形を留めし水は、ゆらゆらと揺れて変化し、一つを形作る。それは動かぬ雛形。けれど、いつかはその眠りは打ち破られん。時の影がさし、そはまた元へと戻る”」

 歌うように口づさむその言葉は歌っているように聞こえて僕はぼんやりと聞き惚れてしまう。
 と、全てを言い終えると同時に白い線のようなものが魔法陣に走り、それが魔法陣をなぞるように蠢いてその四角い何かに入り込む。
 ピキッと硝子にヒビの入る甲高い音が響いて、白い煙がその立方体から放出されて……やがて何かが落ちた音が聞こえる。

 白い煙が徐々に霧散して、その紙の上に何かが落ちてきたのかを見るとそこには、茶色い大きめのケースが2つほど。
 青いリボンと赤いリボンがそれぞれ結ばれている。
 その内の赤いリボンの方をレイアは手を出して持ち上げて、次に青い方を僕に指さし、

「颯太のものはこの青いリボンのケースです」
「縮小の魔法のようなものですか?」
「うん、隠しておくためにこうやって縮小していたのです。中には生活に必要そうなものや、偽造身分証明書などがはいっています」
「そうなんだでも偽造か……」

 この世界に僕は存在していなかったのでしかたがないとはいえ、何となくいけないことのような気がするが、状況が状況だけに仕方がない。
 むしろ何もなく、説明役すらもいないでい世界に放り出されることを考えれば破格の条件では有る。
 ただ、素直に受け入れるのはきついけれど。

 そこでリリアが、

「ふーん、異世界の人だからヘタをすると野蛮人だったりするのかな~と思っていたけれど大丈夫そうね」
「え? いえ、それを言うならこちらにきた僕は、野蛮人な異世界人ばかりじゃなくてよかったかなという所でしょうか」
「ある程度の文明レベルが貴方の世界は有るみたいね。倫理観もね」

 楽しそうに笑うリリア。
 よくわからないがどうやら僕は彼女に認められたようである。そこで、

「そういえば、強い魔力の反応を少し離れた場所で感じたのだけれど、レイア達、何かをやった?」

 そう僕達にリリアは聞いてきたのだった。 
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