首なし屋敷
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7部分:第七章
第七章
「僕では貴方を倒せない」
「そうだ。わかっているなら消えろ」
「だけれど僕だけじゃないよ」
ヴァシェはここでこう告げた。
「わかっているね」
「?そうか」
「そうだよ」
あらためて司教に告げた彼だった。
「ほら、神父様がおられるよ」
「くっ、それが狙いか」
「如何にも」
既にだ。神父は司教の間合いに入っていた。そうしてだ。
その銀の剣を司教の胸に突きたてた。剣の形は十字だった。
十字の剣は司教の胸を貫いた。一瞬であった。
一瞬で勝負はついた。それで終わりだった。
「うっ・・・・・・」
「例え貴様が悪霊になっていたとしても」
血は流れない。だが苦悶の声を漏らす彼にはっきりと告げた。
「これでは滅するな」
「何ということだ、私が」
「確かに私はあの時から変わっていないかも知れない」
神父自身もそれは認めた。
「だが」
「だが、か」
「今の私にはヴァシェがいる」
その彼に顔を向けての言葉である。
「だからだ。貴様に負けることは最初からないとわかっていた」
「その子供がいるからか」
「貴様は一人のままだ。だが私は二人になった」
司教にこうも告げた。
「そういうことだ」
「それでか。私にまた勝ったというのか」
「この世から消えるのだ」
また司教に告げた。
「いいな。それではだ」
「消える、この私が」
「人を殺め神の道から離れた異端の者」
司教に他ならなかった。胸を剣で貫かれ消えようとしている彼だ。
「これで消えるがいい」
「おのれ、神はまだ私を」
「神は望んではおられぬ」
今の言葉はこれであった。
「貴様の行いの様なものはだ」
「私は、まだ・・・・・・」
これが最後の言葉だった。司教は消えた。後に残ったのは静寂のみだった。その他には何一つとして残ってはいなかった。
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