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首なし屋敷

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6部分:第六章


第六章

「それだけだ」
「事実をか」
「もう一つ事実を言おう」
 神父は一歩前に出た。
 そのうえでだ。隣にいる少年に対して告げた。
「ヴァシェ」
「はい」
「左に行け」
 そうしろというのである。
「私は右に行く」
「右にですか」
「そうだ、右だ」
 彼はそこだというのだ。
「左右から攻めるとしよう」
「わかりました、それでは」
 少年は彼のその言葉に素直に頷いてみせた。
 そのうえでだ。二人はそれぞれ左右に動いた。そのうえで司教のそれぞれ斜め前に位置してそのうえで構えるのだった。
「行くぞ」
「覚悟して下さい」
「ふん」
 司教は構えたその二人にだ。どす黒い笑みを浮かべて返すのだった。
「私はあの時とは違う」
「違うな。確かにな」
「貴様のことはわかった」
 これは司教の言葉だ。
「あの時でな」
「わかったというのか」
「首を斬られたあの怨みと共にだ」
 声に怨恨がはっきりと出ていた。
「それははっきりとだ」
「だから違うというのだな」
「そうだ。今度は貴様を斬る」
 鎌が光った。禍々しい輝きを闇の中に見せる。
「その首をだ」
「ならそうしてみるがいい」
 神父はその司教を前にして悠然と告げてみせた。
「私を倒せるというのならだ」
「行くぞ」
 司教は音もなく動いた。まずは一歩前に出た。
 そうしてだ。その鎌を動かしてきたのだ。
「神父様」
「わかっている」
 ヴァシェに対して落ち着いた声で告げた。
「来るな」
「はい、どうされますか」
「どうするもこうするもない」
「といいますと」
「倒すだけだ」
 それだけだと。やはり落ち着いた声だった。
「この悪霊をだ」
「左様ですか。それでは」
「いつも通りだ」
 今度の言葉は素っ気無いものだった。
「いつも通りに行くぞ」
「そうですか。いつも通りに」
「わかった」
 またヴァシェに対して告げてみせた。
「これで」
「よく。それでは」
 こうしてだった。まずヴァシェが動いた。彼は自分の場所から司教に対して攻撃を仕掛けた。その首を持っている右脇にだ。
「来ただと」
「僕もいるんだ」
 こう言ってだ。その右手から剣を出してきた。
 それで司教の首を貫こうとする。しかしだった。
「させん」
 司教はすぐにその左手に持っている鎌を動かした。それで迫るヴァシェのその剣を払ってみせたのである。その動きは速かった。
「その程度の攻撃で私は倒せん」
「確かにね」
 ヴァシェもそれは認めた。横からの一撃が彼を襲ったがそれは上に跳んでかわした。
 
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