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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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GGO編
  九十二話 初心者

 
前書き
はい、どうも鳩麦です!

さて、今回は……第一回戦です!
といっても、まだまだ始めたばかりですので……ふふふ

では、どうぞ! 

 
準備期間終了と同時にリョウが転送されたステージは、夕刻、燃え上がるような橙色の空の下にある、港のコンテナターミナルの一部のような場所だった。

左側にはコンクリートで出来た埠頭と遠くに見えるコンテナ船。運搬用のガントリークレーンが廃棄され錆びてもなお立っている姿が正面に確認でき、右側には大型トラックに乗って此処まで運ばれて来たのか……あるいは輸送船に乗ってか……いずれかの理由によって此処に行き着き忘れられたのだろう。長さ十メートル以上はゆうに有りそうな大型のコンテナ達が山積みに置かれている。


ステージ“忘れられた埠頭”

「っとと……」
景色に一瞬見入ったリョウは、しかし直ぐに正面へ向き直る。取りあえず手近なコンテナに近寄ると、背中を押し付けるように影につく。

両の手で持ったXM29と、後ろ腰に付けたコンバットナイフ、右腰のホルスターに付けたDEの感触を、順繰りに確かめる。最後に腹に装備したチェスト・リグ内の弾薬を確かめると、一度息をついた。

「さって……」
意気込んで来たは良いものの、自分は銃対銃の戦闘では未だに素人だ。つまり、この大会の中で、これらの装備を使った自分の戦い方を組み立てて行かなければならない。

まず、アイリか此処に来るまでに説明してくれた予選のルールを、頭の中で反芻するように思い出す。

『ステージは一辺一キロの正方形だと思ってね。川とか谷とか、色んな物で区切られてるけど……一部のステージを除いて基本的にはそのルールには変わりはないよ!で……ステージその物の場所、時間、天気はランダム。直前まで名前以外の情報は無いから、名前で想像して装備なんかを切り替えていくの』
『負けても武器のドロップはしないから、安心して戦って良いよ!勝ったら、二回戦の相手が既に決まってればそのまま二回戦スタート!決まって無かったら後で行く待機ホールに転送されて、負けちゃったら……総督府の一階ホールに転送されます』

「何か質問はある!?」とやたらテンション高く訪ねてきた彼女の顔を思い出して、リョウは一人苦笑する。何というか、そういえばやたらとあの少女は面倒見が良い。

「ま、おかげで随分助かったけどよ」
言いながら、聞き耳のスキルを起動。先ずは相手の位置が分からなければどうにもならない。

波の音が最も大きく聞こえる。次に風。只それはあくまでもシステム上に規定されたパターン化した音に過ぎない。自分が探すのはもっと異質な音。移動し、固めの音……

「……いたな」
発見。右斜め後方距離は……

「200ってとこか?」
明らかに此方を探している。一定の距離を移動するごとに止まり、また動く。方向を変えて、また動く。

「案外走るのな……」
それなりに移動は早い。動きから察するに、どうにもこのフィールドはコンテナがある程度乱雑に並んでいると見える。

「ソナーじゃねえし、地形は分からんが……」
しかも自分で歩くとその音がでかい上に探知地点が移動するので殆ど探知にならない。

「んじゃま、試しにやってみますか」
なるたけ音を立てないように、ゆっくりとリョウは移動を始めた。

――――

その、数分後。

「……今っ」
コンテナの角を支点とするように、リョウは構えながら影から飛び出す。
丁度攻撃目標である、“鸚哥《インコ》”という何故漢字にしたのか分からない名前のプレイヤーは右側から左側のコンテナの影に移ろうとしており、相手までの間に遮蔽物は無い。

「っ!」
「ふっ!」
ガガガガガガガガッ!!と固い音を立てながら銃口から弾丸が飛び出す。引き金を引く直前『着弾予測円(バレッドサークル)』と呼ばれる、弾着地点を示す緑色の光円が、覗き込んだ照準装置の向こうに見える灰色の市街迷彩を着た男性プレイヤーの腹を中心に現れたが、しっかり相手は円の中に入っていた。これなら。

「っち!」
「やろっ!」
しかしインコは瞬時にそこから飛びのくと、足にかすり、HPを二割ほど減らした何発かの衝撃を無視して、右側にダッシュ。リョウはそれを追って照準を動かすが……

『AGI寄りかよ……!』
相手方の動くスピードが速く、上手く当たらない。結果的にかすった数発の弾丸が更に二割ほどHPを削ったが、コンテナの影に相手が逃げ込む。そこで……

カチッ……

「ちっ!」
弾切れ。更に……

「くらえっ!」
「やだねっ!」
インコが体勢を立て直したのか銃口を此方に向けてきた。アサルトライフルだ。先程見たAKに似ているが、銃口の下にもう一つ、大きめの銃口が付いている。

『って、呑気に観察も出来ん!』
ババンッ!ババンッ!ババンッ!と、二回の銃声が立て続けに三回響く。跳びこんだコンテナの壁と、リョウが居たコンクリートの地面に二発ずつ、弾丸が命中する。

『二点バースト!?』
かなり高速の連射だ。発射された二発の弾丸の着弾点に殆どぶれが無い。三点バーストと、セミ、フルオートしか知らなかったリョウとしては始めてみる発射法だが、そうこう言っても居られない。
とりあえず隠れている間に弾倉《マガジン》を落とし、予備弾倉を叩きこもう……として……

ガツッ

『しくった!?』
まだ慣れていないせいか、あるいは柄にもなく緊張しているのか、上手く入れられずにミスる。しかも……

『?射撃が……』
こない。まだあちらはこっちが遮蔽物入ってから撃ったのを含めて10発12発しか撃っていない筈で、弾切れは無いはず……

『っ!shit!』
とっさに、直前見たインコの銃に付いた大きめの銃口を持つ装置……グレネードランチャーの事を思い出して、リョウはコンテナの反対側の地点へと走った。大股で一歩走ったか走って居ないか位の所で、リョウが先程まで隠れていた地点すぐ横の地面が爆発した。

「ぐぉっ……!」
凄まじい爆風と、飛んできた破片。爆炎によって、リョウは吹き飛ばされるように転がる。それによってHPが減り……

『マジか!?』
残り二割まで残量を減らされた。
いくらなんでも桁違いの威力だ。同じような爆発エフェクトでも、サラマンダーの基本爆裂魔法を三重……いや五重に喰らってもこうはならないだろう。上級スペルが直撃すれば話は違うだろうが、詠唱もなしでワンタッチでこれは……

『グレランこえぇ……』
地面に叩き付けられながらも受け身をとって転がり、爆発を受けた余波なのか、視界が少しぐらついたが其処は胆力で立ち上がる。
此方もおそらく爆発のせいだろう。耳鳴りがキーンと音を立てていて、外音を収集できない……しかし、

『影の位置は、よし』
今自分には、コンテナの影が掛かっている。つまり太陽はこのコンテナの向こう側にある。

『正直、まだよく分かってねぇけど……』
引き金の上にあるスイッチを指先で切り替える。同時に、覗き込んだ照準装置の中で、チチッと小さな音を立ててFCSが作動。ちなみにこの間、リョウの左手は通常弾のマガジンを入れていたのだが、落ち着いてやれば何てことのない作業だ。すんなり入った。

まあ何にせよ、これで準備よし。XM29(これ)の最大の特徴である、20㎜炸裂弾ランチャーは準備OKだ。次に、銃本体の左側についているボタンを押し込む。と、ピッという小さな電子音をたててレーザー照射が行われ、着弾地点までの距離が計られる。先程自分に向けて発射された炸裂弾が着弾した地点よりもやや手前。照準装置斜め上に表示された距離は7m。と言うかそんなに吹っ飛んだのか……。

ちなみにこのレーザーは可視光ではないため、あちらには赤外線暗視装置を付けるか太陽光で見えにくい筈の地面に付いた小さな点を見つけない限り気付かれる事は無いはずだ。

二つ目のボタンを押すと、装填されている20㎜弾にその距離が入力される。これで弾丸は、其処に到達するまでの自身が回転するであろう回数を勝手に計算する。それによって、弾丸は入力された距離……この場合、7m進んだ時点で自動的に起爆する。

『頼むから勘でグレネード投げとか止めてくれな……』
入力した数値をそのままに、銃を水平にする。
おそらく、インコはまだ試合が終わって居ないことから、此方が生きている事には気が付いて居るはずだ。ならば後は、此方を追うか、回り込もうとするかの二択である。
しかし、回り込みの可能性は極めて低い。何しろリョウの後ろには約300m以上に渡ってコンテナが途切れなく並んでおり、仮に全速力でリョウが逃げているとすれば後ろから直接撃った方が早いのだ。あちらはAGI型なのだから、速さにも自信があるはずだし、彼に銃の知識があるなら、此方の得物を見た時点でリョウがSTRが高いことには気付いた筈である。

残り警戒すべきはFPSではお決まりの遮蔽物の向こうに投げるグレネードだが、おそらくAGI型の為だろう。腰にそれを釣っているようには、先程見た限りリョウには見えなかった。

そして待つこと数秒……

『……来たっ!』
コンテナの向こうに、影……あいての頭が見えた。恐らく素早く動いているのだろうそれは、あっと言う間に肩、胸、腹と影をさらして行き……遂に、足が見えた……ところで止まる。

『っと……バレたか?』
一瞬冷や汗が頬を伝った……ような感じがしたが、しかしゆっくり確実にインコはコンテナの端に近寄ってくる。影が、太ももを表し、膝を出し……

『行けっ!』
足首、足の先が見えたかと言うところで発砲。
予測線があちらに見えたのだろう。真っ直ぐに飛ぶ軌道を描いている線をみてあちらの歩みは止まった。が、銃弾と勘違いしたのか下がる気配はない。それを確認したとき、既にリョウは空中に居た。

バァン!と言う破裂音が、響き、インコの物であろうくぐもった声が聞こえる、と同時にリョウは叫ぶ。

「jump!」
ドウッ!と言う凄まじい音と共に、リョウの身体が空中を進む。足に取り付けた《六十九式脚部起動補助推進装置》が火を吹き、リョウを前方へと飛ばしたのだ。そうしてリョウはコンテナの上へと……

「って、何ィ!?」
それどころかコンテナを斜めに飛び越えてその向こう……インコが居るはずの場所まで吹っ飛ぶ。
真下に見えていたコンテナを越え、地面に倒れこむように居たインコと……目が合った。

リョウの思考が加速し、あらゆる物が、ゆっくりに見えた。
インコが銃を上げる。一撃目の後回復したのか彼のHPは残り一割五分。20㎜弾の威力が期待より低い……!
体制を崩しながらリョウは右手から手放しかけたXMを左手で引き金に指を掛け……二人同時に片手で発砲する。

ガガッ、ガガッ!
ガガガッ!
というそれぞれの銃声が響き、リョウの左手首に銃弾が掠り、インコの右肩に掠る。しかしインコにはもう一つ被害がでた。身体に当たりかけた弾丸をとっさに防ごうとしたのか、彼の銃が爆散したのだ。
HPはこれによって残り一ドット。地面に転がったリョウはそのまま跳ねるように起き上がり……取り落としたXMの代わりにDEを構えた。

――――

「……負けたな、やるな、姉ちゃん」
「そいつぁどうも……それと俺は男だ」
「え、マジ?」
ドガン!と言う音と共に、戦闘は決着した。

――――

「……とりあえずマガジンの入れ替えと……足のこいつ、威力見誤ってたな……ったくフリックの野郎……」

《コングラチュレーション》の文字が表示される夕焼けの空を眺めながら、リョウは小さく呟いた。
残るは四回。予選突破はまだまだ先だ。


リョウコウ
第三回バレット・オブ・バレッツ予選トーナメント第一回戦突破

試合時間 十九分二十六秒
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

すっごいグダグダでしたねw
銃VS銃の戦闘はまだまだリョウは初心者でして。まだキリトのように自分にあった戦い方が確立しきれておりません。
次回くらいからはまた変わってくるかな?


さて、此処で問題です!今回の対戦相手、インコさんが持っていた銃は何だったでしょう!?
いやまぁ、そんなに難しくない問題ですがw

多分少し調べれば出てくるかも……

ではっ! 
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