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DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
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歌は世に連れ世は歌に連れ

「何か凄い有名人ですね…乗っ取ろうと思えば、容易く乗っ取れますよリュカさん!」
以前この町の窮地を救った立役者は町長に並ぶ程の有名ぶりで、町行く人々から感謝の声をかけられ、エコナさんの屋敷(庁舎の様なもの)にも顔パスで入る事が出来る。

そんな師匠に弟子がからかいながら尊敬の念を現している。
「何でそんな面倒な事を…町なんて乗っ取ったら、自由に遊べなくなるじゃんか!」
子供みたいな言い訳で大人の事情を使えるお父さん…
だからウルフは尊敬してるんだろうなぁ…


屋敷内を彷徨くとオフィスの様な部屋があり、そこではエコナ町長と部下の人達がお仕事をしておりました。
「リュカはん!まさかこんなに早く来るとは…耳が早いなぁ…」
「は?耳が早いって?」
“手”の間違いでは?

エコナ町長は仕事の手を止め、お父さんに抱き付き意味不明な事を仰った。
因みにお兄ちゃんは「手が早いの間違いでは?」と言っちゃったけど、シカトこかれて話が進む。

「また惚けて!ウチが流した噂を耳にしたんやろ。ウチがイエローオーブを手に入れた、ちゅー噂を聞きつけたんやろ!せやから此処に来たんやろうに!」
しかもラッキーな事に、既にイエローオーブを入手済みで、その事と勘違いしていたみたいですわ。

「あ、あのね…違「そうなんだ!」
真面目っ子アルルさんの言葉を遮り、勘違いに乗っかってポイントを稼ぐは私のお父様…
「エコナがオーブを手に入れたと聞きつけ、ダッシュで此処まで飛んできたんだよ!」
「やっぱりー!ホンマ情報仕入れるのが早いわぁ~………ウチが噂を流し始めたんは、一昨日からなんや。流石リュカはんやね!」

「当然!何時もエコナの事を考えてたからね!エコナバーグの事には常に耳を傾けてたんだよ!」
「嬉しいわぁ~…だからリュカはん大好きや!」
もう私は何も言わない…

「(ゴホン!)エコナ様…仕事が滞ってますので、それくらいに…」
でも、それどころじゃない秘書さんは、遠慮がちにお二人の奇行を止めにはいる。
「あ…せやね………ゴメンなぁリュカはん。今夜はこの屋敷に泊まってや!その時にオーブは渡すから…それまで町でも観光しててや」
「うん。そうするよ…あの劇場がどうなってるのか気になるし」
「何処か気になる事があったら、遠慮無く言ってや!リュカはんの厳しい評価は、えらい為になるんやから!」





「よくもまぁ、いけしゃあしゃあと嘘が吐けますね!」
「別にいいじゃん!誰も困らないんだし…」
真面目っ子お義姉ちゃん、パパへと突っかかるの図。
でもパパへこたれない!
「でも………」

「それにエコナも喜んでたじゃん!それとも…『お前の事も、この町の事も全然気になどしていなかったが、情報が必要になり思い出したので此処へ来た!』って、言った方が良かった?」
「………もう!意地が悪いですねリュカさんは!」
昨日今日娘になったお嬢ちゃんには、その男を倒すのはまだまだムリだろう…





1ステージ2000ゴールドの歌手に、客一組50000ゴールド支払い、歌を披露した客には500000000ゴールド支払う必要が発生する劇場…それがエコナバーグ劇場!
今はこのシステム、なくなったのかな?

「随分と雰囲気が変わりましたね…」
【ちびっ子喉自慢大会】と書かれた看板と、私ぐらいのお子様達が一生懸命歌っているステージを見て、ハツキさんが呟いた。
【入場無料・飛び入り参加大歓迎】と書かれた看板もあり、以前の酒場を大きくした様なイメージはなくなっている。
「どうやら酒も置いてない様だね」
お酒が嫌いなお父さんは満足そうに見渡している。

「ようこそいらっしゃいましたリュカ様!どうぞご堪能していって下さい」
すると突然現れた愛想の良いオッサンに、馴れ馴れしく歓迎され戸惑う私達。
「あ…う、うん…そうする…」
あのお父さんが引いている…

「その節は大変失礼を致しました。リュカ様がエコナ様の大切なお人だとは知らなかった物で…ご無礼をお許し下さい」
どの節?
コイツ誰よ!?

「…お前、誰?」
私と違って遠慮がないお父さんは、気にすることなく失礼な言葉を吐き付ける。
「えぇ!!お忘れですか?私…以前はエコナ様の屋敷前で門番を務めておりました…お忘れですか?リュカ様が王様である事を知らずに、無礼な態度を取ってしまった門番を!」
全然記憶にねー…
「……………あぁ…そう言えば居たなぁ…忘れるも何も、記憶に残らねーよ!」
ここの新しい支配人のようだが、お父さんには覚えがある様だ…少しだけ。

「で、でも大盛況ですね、この劇場は!お子さん達の歌も凄く上手いし…支配人さんは良い手腕の持ち主の様だ!」
「ありがとうございます!折角出来上がった劇場ですからね…町民の活力になる様な使い方をと思いまして。それにこの町から未来のスーパースターが誕生するかもしれませんからね!」
ションボリ支配人のフォローをするのはお兄ちゃん。
支配人も嬉しそうに劇場の事を語ってる。

「そう言えばリュカ様は、大変歌がお上手と聞きます。やはり娘様も、お父様に似てお上手なのでしょうね…どうですか、飛び入り参加大歓迎ですので、御参加されてみては?」
「わ、私!?」
権力者に媚びを売りたい支配人…
突然のご指名に戸惑う私…
「いいじゃん!参加しちゃえば?」
人事の様に軽い口調のお父さん…
う~ん…ちょっと楽しそうねぇ…

「え~…でも~…こんなに可愛い私が参加したら、ファンがいっぱい出来ちゃうかも~!そのファンがイケメンだったりしたら、私困っちゃ~う!ウルフとどっちを選べば良いのか…私迷っちゃ~う!」
でも安易にOKしないのが良い女の条件。
勿体ぶって焦らしつつ、彼氏にヤキモチ焼かせちゃう!

「大丈夫!俺以上のイケメンなんてリュカさんくらいだ!迷う事はないさ!」
おっと~…随分と言う様になったもんだ。
でもナンバー1と言わない所がまだ甘い!

「それで………お嬢様、どういたしますか?」
う~ん…やっぱり権力者の娘として媚び諂われるのは気分がよい。
何の影響力もない小娘(わたし)に、恭しくする大人(しはいにん)を見て虚栄心急上昇!

「お父さん…私、お父さんの伴奏で歌いたいなぁ」
更なる満足度を味わう為に、私はお父さんへお願いをする。
「え、僕の伴奏で?………構わないけども、何を歌うのか分からないと…」
この町で知らない者は居ないお父さんと一緒に出れば、審査員達も気を使って私を優勝させるに違いない…

「大丈夫!きっと知ってますわ。私が誰より1番だっちゃ的な歌ですから!」
ちょっと乗り気なお父さんに、最後の一押し。
「あぁ…OK、それなら大丈夫!」
これで私の優勝は決まったも同然ね!




あと2人で私の出番…
ステージ横の待機所で、私は出番待ちをしている。
1人前の女の子は、極度の緊張で震えちゃっておりますよ。(笑)
こんな状態じゃまともに歌えないわね。

「お嬢ちゃん…もう少し、肩の力を抜いた方が良い。その方が可愛いよ」
こんな幼女も射程範囲内なのかと思う様に話しかけるお父さん…
「で、でも…し、失敗したら…」
どうせ私の優勝は決まってるのだから、放っておけばいいじゃない。

「失敗したって良いじゃないか!人間誰しもミスはある。でもね…失敗を味方に付ける事が出来るのは、誰にでも出来る事じゃない!」
「失敗を味方に…?」
「うん。歌ってる最中に間違えたら『テヘ♡』って感じで笑ってみせる。そうすれば、誰もミスったことは気にしないよ…むしろ『可愛い』って好印象になるね!だから、失敗したってどうってことないって気持ちで挑んでみなさい。自分の実力を出し切れるから」

格好いい大人の男性に的確なアドバイスをされ、身体の震えがなくなった女の子…
出番が回ってきてステージに上がり歌を披露する。
めちゃくちゃ上手い…
ヤバイ…実力じゃ勝てないわ…

「むぅ…結構なライバルじゃないですか!あのまま自滅を待てば良かったのに、アドバイスしてどうするんですか!」
「まぁまぁ…他者の自滅で勝つよりも、自身の実力で勝利する事が重要だよ!お父さんはマリーの為に、彼女の実力を引き出したんだ!」
勝てるわけねーべ!

「そんな事言って…お父さんの好みの女の子だったんですか?」
ま、まぁいい…どうせ今回は出来レース…
お父さんと一緒にステージに上がれば、否応なく私を優勝させるしかなくなるだろう…
「う~ん…10年後に口説こうかな?」
ホント…疲れる父親よね…



「お兄さん、ありがとうございます!!」
実力を出し切った先程の子が、お父さんの下へ来るなり抱き付いてお礼を述べてきた。
「別にお礼を言われる事ではないよ。…それに、お礼してくれるのなら、10年後にでもベッドの中「お父さん、行きますよ!」
まだ何も知らない少女に、非常識な事を言おうとする父…
私は慌てて遮りました。

ステージに上がり劇場内を見渡すと、客の数がハンパじゃなくなってる!
広い客席には立ち見客まで集まって…
さっきまではこんなに居なかったのに!?

あ、ステージ前には“人面蝶ズ”も居る。
あの支配人、町中に触れ回ったな!
優勝は決まってるけど、ちょっぴり緊張して来ちゃった…

「どうもこんにちは。私はマリー…今日は支配人さんの特別な計らいで、ピアノが上手いお父さんに演奏してもらって歌いたいと思います。歌う曲は、私のお母さんの心情を現している歌です。頑張りますので聞いて下さい!」
ここでヘタレるワケにはいきません!

私はお父さんに目で合図を送ると、『ラムのラ○ソング』を元気よく歌い出す。
コミカルな歌詞と、私の愛らしい振り付けに、観客は大盛り上がり!
うん。大丈夫…お父さんの威光があるのだから、絶対に優勝しておりますわ!



 
 

 
後書き
大分心の成長はしましたが、俗物感は抜けきらないマリーです。
でも人間らしい(特に小者)と思うので、私は大好きです。 
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