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オズのポリクローム

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第八幕その三

「はじめて見た時どんなに嬉しかったのか」
「そこが違うのよね」
 ナターシャは今度はサラダを食べつつ言いました。
「ロシアとブラジルだと」
「本当に違うよね」
「私は暑い場所の果物が大好きで」
「僕は雪が大好きでね」
「それぞれね」
「好きなものが違うね」
「そこにないものを人は欲しがるんだ」
 魔法使いがここでこう言いました。
「だから二人もなんだよ」
「暑い国の果物が好きで」
「雪が好きなんですね」
「そうだよ、けれどあるとね」
 そして持っていると、というのです。
「人はおおむね欲しくなくなるものだよ」
「けれど中にはね」 
 ここでトトが言う人はといいますと。
「かつてのラゲドー王みたいな人もいるからね」
「あっ、前のノーム王だよね」
「そう、今は別の人が王様だけれど」
 トトはジョージに答えました。
「あの人はオズの国の全てを手に入れたかったんだ」
「それで悪巧みもしてね」
「オズの国が危なかったんだ」
「マボロシ族とかと手を結んでね」
「あの時は忘却の泉があって助かったよ」
 まさにあの泉のお陰だったというのです。
「若しなかったらね」
「大変なことになっていたね」
「そうなっていたよ、あの王様は本当に欲張りだったから」
 トトから見てもです。
「中にはそうした人もいるんだよ」
「そうだよね、あの人は困った人だよね」
「今は王様だった時のことを忘れて気楽に過ごしているけれどね」
「オズの国でね」
「ノームの人達も変わったしね」
「そもそもノームは」
 ここでポリクロームも言いました。
「元々地の中に住んでいて」
「地の精霊と言うべき人達だよ」
 魔法使いがポリクロームに答えました、テリーヌをフォークで取って食べながら。
「あの人達はね」
「そうよね、けれどどうしてあんなに意地悪だったのかしら」
「うん、それはね」
「それは?」
「持っていないと思い込んでいて妬んでいたんじゃないかな」
「宝石も金も銀も好きなだけ持っていたのに」
「けれどね」
「それでもなの」
「そう、ずっと地の中にいて日の光を浴びていなくて」
「今は浴びているわね」
「そうだけれどね」
 それでもというのです。
「ずっと違っていてね」
「お日様を見ていなくて」
「暗い世界しか持っていないと思っていて」
「それで性格がなのね」
「暗くなって歪んでしまっていたんだ」
「そうだったのね」
「それがね、外にも出て」
 王様が代わってからです。
「私達と付き合う様になって自分達のことがわかったんだ」
「ノームの人達自身が」
「そう、わかったんだ」
 それでというのです。
「自分達も持っているってことにね」
「持っていないんじゃなくて」
「彼等も持っているんだ」
「そのことがわかったから」
「だからあの人達は変わったんだ」
「私達みたいな心になったのね」
「そうだよ、素直で純粋な心になったんだ」
 そうした心になったというのです。 
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