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戦国異伝

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第二百二十九話 隠されていたものその四

「それで成敗されたという」
「そうだったのですか」
「以降もじゃ、平清盛、源頼朝、親鸞や法然や日蓮の上人達もな」
「では先の空海、最澄上人も」
「その通りじゃ、言い忘れたがな」
「そうでしたか、まつろわぬ者達と」
「南朝も北朝もじゃ、互いに争っておったが」
 しかしというのだ。
「共にまつろわぬ者達と戦っておった」
「室町幕府も」
「どうやら足利義満公、義教公はあの者達に殺されておるな」
「そういえば義満公は」
「急死じゃったな」
「あの急死は実は、だったのですか」
「まつろわぬ者達に毒か何かを盛られてな」
 そのうえでというのだ。
「殺された、義教公もな」
「赤松家に弑逆されましたが」
「赤松家を勘十郎の時の様に操ってらしいのう」
「でしたか」
「まつろわぬ者達は泰平を嫌い争いを好むという」
「そういえばどの方も泰平を愛されていましたな」
 信長が挙げた多くの者達はだ。
「天下のそれを」
「そうじゃな、しかしじゃ」
「まつろわぬ者達は」
「その教えの中に争いを好むとある、自身も争い世を乱し荒れるのを見てもな」
「楽しむと」
「戦乱を好むという」
「では」
 平手はここまで聞いて察した。
「織田家に何かをしておるのは」
「天下泰平になってもらっては困るからじゃ」
 その者達がというのだ。
「だからじゃ」
「何かと裏で動いていましたか」
「仕掛けてのう」
「そうだったのですか」
「残念ながらわしの思った通りじゃった」
 信長は顔を顰めさせてこうも言った。
「そうした者達が天下の裏におった」
「そして天下に害を為そうとしている」
「そういうことじゃ」
「その為にですな」
「わしの命も狙っておるわ」
 これは信長の読みだ。
「間違いなくな」
「だからですか」
「備えておるのじゃ」
 事前に慎重にその準備を行ってだ。
「そしてな」
「あえてですか」
「虎穴に入る」
 ここでもこう言うのだった。
「わかったな」
「さすれば」
「では安土を頼む」
 また告げた幸村だった。
「よいな」
「はい、ただ上様」
「どうした?」
「都に入られるとのことですが」
「何かあったのか」
「どうも我等の話はここだけのものですが」
「帰蝶が気付いたか」
 信長は笑って言った。
「そうじゃな」
「おわかりですか」
「あ奴は勘がいい」
 それ故にというのだ。
「わしが隠してもすぐに察する」
「では」
「ふむ、あ奴には黙っておるつもりじゃったが」
 しかしと言う信長だった。 
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