戦国異伝
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第二百二十九話 隠されていたものその二
「それ故に安土に行きたい」
「では」
「これからその用意を」
「したい、書も持って行く」
本間家の者達にも言うのだった、顕如は実際に安土に行く用意に入った。その頃あちこちに行っている者達が次々に恐ろしい事実を知っていった。
林は都でだ、密かに彼のところに来た者達に対して話していた。一応は隠居して都の片隅の屋敷にいるがだ。
その屋敷にだ、夜遅く来た者達に自身の部屋で話したのだ。
「朝廷、それに南禅寺じゃが」
「朝廷だけでなく南禅寺もですか」
「あの寺にも」
「あの寺の先の住職である崇伝殿もじゃ」
この彼もというのだ。
「怪しい、それで調べたところ」
「まさか崇伝殿が」
「あの方もですか」
「怪しいと言われていましたが」
「やはり」
「朝廷の高田殿と会われてじゃ」
そして、というのだ。
「何かと寺に得体の知れぬ坊主達を入れてな」
「上様にですか」
「害をなしていましたか」
「そうじゃ、そして朝廷にお願いしてその奥の蔵書を読ませて頂いたところ」
これは林だから出来たことだ、織田家の中でもとりわけ朝廷としたしく多く公暁とも付き合いのある彼だからだ。
「この国の裏には怪しい者達が古来からおってじゃ」
「その者達とですか」
「朝廷も戦ってきたのですか」
「そうなのですか」
「そうじゃ、そして高田殿はな」
その彼はというと。
「闇の衣じゃったな」
「確かに。あの方の衣は」
「それに烏帽子も牛車も」
「何もかもがです」
「闇の色です」
「あれを見るとな」
どうにもというのだ。
「怪しいと思って密かに調べたが」
「まさか」
「あの方がその」
「まつろわぬ」
「その様じゃ、南禅寺の方もな」
崇伝、彼もというのだ。
「あとどうも天海という坊主は尋常な者もな」
「あの者もですか」
「齢百二十歳といいますが」
「それだけでも怪しいですが」
「あの者もですか」
「まつろわぬ者ですか」
「その様じゃ、高田家に闇の衣の者達が出入りしてな」
そしてというのである。
「崇伝、天海のところにもな」
「その者達が出入りし」
「あの坊主達も闇の法衣でしたからな」
「ならば」
「朝廷の秘蔵の書にはまつろわぬ者は闇と書いてあった」
「闇、ですか」
「まさにその闇ですか」
「朝廷でも秘蔵の中の秘蔵の書、言うならば記紀の隠されたことを書いてあるもの」
それが林が読ませてもらった書だというのだ。
「帝ですら滅多に読めぬまでのな」
「それをですか」
「あえて読ませて頂いたのですか」
「どうも帝がお許しになられた様じゃ」
林とて帝と信長の間の話のことは知らない、だからこの辺りの事情は知らずにこう考えているのである。
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