エースナンバー

「あの人についても」
「落合マネージャーとのことも」
「はい、聞いているだけで」
「そうですね、まあもう昔のことになっています」
「星野監督のことも」
「そうです、阪神や楽天で監督もしていて」
「中日だけの人じゃなくなっていますね」
　こうだ、川上は少し残念そうに述べた。
「どうにも」
「もうそうなっていますね」
「はい、ですが」
「それでもですね」
「あの人も二十番でした」
「中日のエースナンバーでしたね」
「それで巨人に特に向かっていって」
　それでとだ、住職は川上に楽しそうに話した。
「気迫も見せてくれました」
「その気迫がよかったんですよね」
「邪悪な巨人に果敢に向かっていって勝つ」
　これこそ野球の醍醐味だ、このことがわかっていない輩が天下に何と多いことか。それだけ戦後日本のモラルが荒廃していることの証左であろう。
「それがよかったんですよ」
「他のチームにも勝ってますよね」
「はい、しかしです」
「あの人は何といってもですね」
「そうです、巨人に向かっていってです」　
「そして勝っていた」
「それがよかったんですよ」
　焼き鳥を食べつつだ、住職は川上に話した。
「本当に」
「そうだったんですね」
「そうです、それで星野さんの後は」
「小松辰雄投手ですね」
「速球王です」
　住職は小松と聞いてすぐにこう言った。
「いや、凄い速球でしたよ」
「そうらしいですね」
「はい、あの人もいいピッチャーでした」
「二十番に相応しい人でしたね」
「あの人もそうでした」
　住職はその小松についても太鼓判を押した。
「最初は背番号は三十四でしたが」
「山本昌さんの」
「後で二十番を受け継いで」
「その二十番に相応しい活躍をしてくれた」
「立派な人でした」
「それでその小松さんの後は」
「韓国から来たストッパー」
　住職は満を持したという様な顔で川上に言った。
「宣銅烈投手」
「あの人でしたね」
「はい、あの人もです」　
　その宣銅烈もというのだ。
「よかったですね」
「ストレートも速くて高速スライダーもあって」
　川上も言う、その宣銅烈について。
「いいピッチャーでしたね」
「韓国から苦労して獲得した介がありましたね」
「二十番を任せる程に」
「ストッパーが二十番なのは少し、でしたけれど」
「そこは、ですね」
「エースですから」
　そこはどうしてもだった。
「やっぱり先発でないと」
「そこは違和感がありましたね」
「ですがストッパーとしては」
「佐々木投手や高津投手に負けていませんでした」
　このことについてはだった、その時の横浜やヤクルトを支えたストッパー達だ。どのピッチャーもかなりのものだった。
「九回にあの人が出て来ればでしたね」
「勝ちでした」
「それで、でしたね」
　二人でその宣銅烈のことも話すのだった。