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MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士

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029話

「ガリアン、自分はあんたが許せへん!ルベリアを捨ててチェスの駒に成り下がったアンタがな!!」
「成り下がったのではない、成り上がったのだ!」
「やかましいわ!!」

ぶつけ合う言葉と得物、嘗ての盗賊ギルドルベリアガリアン(ボス)と今のナナシ(ボス)。剣とグリフィンランスが甲高い音を立てながらぶつかり合う。

「ワイを助けたのもアンタのシナリオの内なのは理解出来た、だからこそやっ!!」
「なんだとっ!」
「皆でワイワイしたのも宝を見つけて騒いでた時もあんたは本当に嬉しそうやった!それよりも力のほうが良いって言うのか!!」

ナナシの記憶に焼きついているガリアンの笑顔、仲間と共に悦び嬉しさを分かち合っていたあれさえも力という甘美な味には敵わないというのかそれほどまでにチェスの駒という誘惑に負けたのか。

「フッ確かにあの喜びや嬉しさも悪くはなかったがそれ以上にだ、力という物は私を満たしてくれたのだ。全く持って素晴らしいぞ力というのは!!」
「ホンマにゲッスい台詞やのぉ、ならアンタは自分が倒すで!」
「やれる物ならなぁ!!」

激しさを増していく槍と剣の攻防、互いに互いの強さを良く知っている故に戦いは膠着していく。同じ雷使いである同じギルドのボス同士。共通点(似た者)同士の戦いは中々前へと進まなかった。

「エレクトリック、アイッ!!」
「無駄だと解らんか!!」

天から雷を降り注がせるナナシだがその雷は剣へと吸収され無意味どころか相手の力を強化させてしまった。ガリアンが使用している剣はネイチャーARM"避雷剣"。雷を吸収する性質を持ち雷を食わせれば喰わせるほどの力を増していく対雷使いのARM。明らかにナナシのエレクトリック・アイを完全に無効化するための物。

「ああ解っとる、だが動きは止まるさかい無駄やないで!」
「なっ!?」

雷を使えば使うほどに相手は強化されていく事は重々承知しているがそれ以上に雷を喰わせる事に集中する為に動きは止まる。ピンチをチャンスへと変えたナナシはグリフィンランスでガリアンの身体を大きく切り裂く。服を切り裂く肉を削った感触が伝わり血が滴っている。

「やってくれたなナナシ………だがそうだ、そうでなくては面白くない!もっともっとだ、更に強い力をぶつけ合おうではないか!!!エレクトリック・フェザー!!」
「また雷かいな!」

ナナシの周囲にはらはらと舞っている鳥の羽が纏っているのは強力な雷、空気から伝わる雷の威力を感じ取り再び地面へと槍を突き刺し避雷針にして攻撃を無効化するがガリアンはその隙を付いて雷を喰らい強力となった避雷剣で斬りつけてくる。

「……まさか止めるとはな」
「残念やったのぅ、こっそりやってたジークとの打ち合いが役に立ったわ。バルムンクの方が何倍も重い一撃や」

伸ばされた避雷剣、雷をその身で食らい続け肥大した力でナナシの身体を食らおうとしたがそれが止まった。ナナシの両手が避雷剣を強く挟み込み完全に静止させていた。真剣白羽取り、それも雷が迸っている剣を掴み取るという化け物染みた無茶を可能としたナナシにガリアンは驚きと同時に戦慄を覚えた。確かにこの男はルベリアのボスとして相応しい素質と力を持っていたが此処まで強くなっているのは予想外だった。

「そして行くでカルデアで貰ったARM!ネイチャーARM エレクトリックチャージ、はぁっ!」
「がぁっ!?」

ARMを発動したと同時にガリアンを足蹴りしたナナシ、だがその威力があからさまに異常なレベルであった。たった一撃、たった一撃だったのにガリアンの身体は軋むほどの威力を発揮していた。

「な、ンダこれは………!?」
「ネイチャーARM エレクトリックチャージや。雷で筋肉を刺激して身体能力を底上げするんや、元々自分は力強かったさかい恩恵は大きいで!!」
「っ!?」

瞬時にしてナナシの姿が消える。ARMの恩恵を受けた事で身体能力が何倍にも上昇したナナシの速度は既に普通の人間の動体視力で追えないものになっており唯一それを見る事が出来ていたのはジークのみだった。

「オラオラオラオラオラオラッ!!」
「ぐっがぁあ!!ああああああ!!!」
「これで、仕舞いやぁ!!」

凄まじいパンチのラッシュを決めガリアンの身体は既に立っているのもやっとなほどに軋んでいた。だが後一歩で倒せるというところでナナシはARMを中断した。

「流石に、雷での筋肉活性には限界……があったようだな」
「そりゃそうや。雷で筋肉を刺激して活性化させるのもリスクがある。長い時間使こうとると身体がクラッシュしちまう。だから1分って決めとるんや」

それを聞きニヤリと笑う。流石にあんな状態でずっと戦ってられたら勝ち目は正直薄いがもうあの状態は発動できないと解れば勝ち目はある、指に新しくARMを付けナナシに宣言する。

「私は勝つ、お前にな!ガーディアンARM トルペディーネ!!」

召喚されるガーディアン。それは巨大な浮遊するエイのようなガーディアン、だがガリアンが使ってきた雷系統のARMの全てを遥かに超える雷エネルギーを感じ取ったナナシは素早くARMを取り出す。

「ならワイも宣言したるで、そのガーディアンを瞬殺したるわ」
「戯言を!!」
「ほないくで、貰った二つ目のARM。ジムノート!!」

ナナシも叫ぶ、そして魔力を放出しながら自らを守護する怪物を呼び出す。その際の魔力の影響か砂漠の天候は一気に悪化して行き雷雲で満たされていく。雷雲の中からぬらりと姿を見せたガーディアン、それは空を自由自在に泳ぐように這い回る鰻であった。

「ってナナシのガーディアンもでけええええええ!!?」
「これは見物だな、強力な雷系のガーディアンの対決だ」

「いけジムノートォ!!」
「迎え撃てトルぺディーネ!!」

同時に帯電を始める雷のガーディアン、背中にある口を開き体内で発生させた高圧電流を纏い突撃してくるトルぺディーネ。同時に槍の様に鋭く砥がれた雷撃をジムノートへと放出するがジムノートはそれを雷のような速度で回避し瞬間的にトルぺディーネへと巻きついた。

「な、なんと言う速度だ!?」
「やったれジムノート!エイヒレにしたれ!」

電気エイの身体を雷撃と共に締め上げながらその身体へと噛み付き雷撃を吸収する。必死に抵抗するもそれも空しくトルぺディーネの身体は崩壊していった。

「わ、私のトルぺディーネが………!!」
「ジムノート、とびっきりの雷をお見舞いしたれ!!」

敵ガーディアンの雷を吸収しきったジムノートがその口を開き自ら発生した雷にトルぺディーネの雷を上乗せした形で雷を発射した。避雷剣を掲げ雷の無効化を図るガリアン。

「無駄だ!雷などこの避雷剣の前では!!」
「さぁ~てそれはどうかのう?ウェポンとガーディアンが作り出す雷はレベルが違うで、特にあんたのガーディアンの力を得たジムノートは」

超高圧の電流が一気に避雷剣へと流れ込んでいく。雷を喰らい力を増していく避雷剣だが一度に喰える雷にも限界がありジムノートの雷撃はその量を超えており剣は一瞬で崩壊してしまう。

「ば、馬鹿なっ!?ガアアアアアアアアアアッ!!!!」

無効化し切れなかった雷撃が一気に身体に押し寄せ身体を焼いていく、激しい雷撃の嵐をまともに受けたガリアンはその力に耐え切る事が出来ずそのまま倒れ伏した。

「ホンマの強さは力やない。力が持つものが何かの為に命張ったろうって思いが強さになるんや。仲間を捨てたあんたにはそなんやもん、なかったやろ?」
「………立派なボスになったのだな………私の目に狂いはなかった……」

6thバトル、第5戦。ナナシVSガリアン
勝者、ナナシ。 
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