戦国異伝
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第二百二十八話 二つの策その十
「あの時もな」
「矛を収め逆に我等を攻めてきた」
「我等に気付いておるのか」
「まさか」
こうした考えも出て来た。
「あの三人は我等と結託していると見てか」
「追い出したのか」
「妙に家臣達も動かしておるし」
「まさか我等を探っておるのか」
「その動きを」
「いかんな」
老人の声がここで言った。
「この流れは」
「長老もそう思われますか」
「やはり」
「織田信長の近頃の動きは」
「その様に」
「あの者、若しやな」
老人の声は闇の中で言った。
「我等に気付いてな」
「そして、ですか」
「そのうえで動いておる」
「左様ですか」
「近頃は」
「そうではないか、ではな」
老人の声は焦っているものだった。
そしてだ、こう周りに言った。
「急がねばならぬやも知れぬ」
「ではやはり」
「兵を起こしますか」
「既に用意は出来ていますが」
「それでは」
「いよいよ」
「ただ兵を起こすだけではない」
老人の声は周りにさらに言った。
「あの者を消す」
「織田信長を」
「あの者自身を」
「そうされるのですか」
「ここは」
「うむ、これまではその周りを狙っていたが」
これからはというのだ。
「あの者を直接じゃ」
「狙いそして」
「消す」
「そうされるのですな」
「では刺客を」
一人がここで老人の声に問うた。
「使われますか」
「これまで多くしてきた様にか」
「源頼朝、足利義満にした様に」
「いや、あの二人には通じたが」
その刺客がというのだ。
「おそらく織田信長には通じぬ」
「あの者にはでか」
「守りが固い、だからな」
「刺客を送ろうともですか」
「防がれる、それは出来ぬ」
「しないのではなく」
「そうじゃ、出来ぬ」
こちらになるというのだ。
「残念じゃがな」
「ではどうされますか」
「兵で滅ぼす、しかし織田信長を討つのは我等の兵ではない」
老人の声はこうも言った。
「別の兵を使う」
「と、いいますと」
「どの兵を使われるのでしょうか」
「ここは一体」
「どの家の兵を」
「それはその時に決める、しかし目星はつけておる」
おおよそのところというのだ。
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