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真田十勇士

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巻の十七 古都その四

「生きものは話を聞いたり伝えてもらったりな」
「それ位のことか」
「戦をするのは人じゃな」
「だからか」
「人であるわしがする」
「生きものは巻き込まぬか」
「そういうことじゃ」
 これが猿飛の生きものを使う術への考えでありやり方だった。
「そこは守る」
「そうなのじゃな」
「そういうことでな、それでな」
「御主は生きものは粗末にせぬか」
「そうしたことはせぬ、命は命じゃ」
 例え人でなくとも、というのだ。猿飛は海野に確かな顔で話した。
「爺様にも言われた、無闇な殺生や命を弄ぶ様なことはするなとな」
「命を弄ぶのは左道じゃ」
 穴山も忌々しげに言った。
「鉄砲も同じじゃ」
「そういえば御主もな」
「そうじゃ、撃つ時もな」
「一撃で苦しまずじゃな」
「そうしておる」
 穴山は望月に答えた。
「その様にな」
「そして遊びでも撃たぬな」
「そうじゃ」 
 そうしているとだ、穴山も確かな声で話した。
「そうしておる」
「それが正しいな」
「生きものをいたぶる趣味はない」
「そんなことをして何になるのか」
 由利もそれは同じ考えだった。
「命は同じじゃからな」
「この鹿達は人だったかも知れぬ」
 筧も鹿達、自分の周りに見つつ言った。
「そう考えるとな」
「軽々しく扱えぬな」
「あらゆる者は生まれ変わる」
 筧が言うのは仏教の考えであった。
「そう考えるとな」
「我等も今は人でもな」
「次の生ではわからぬ」
「畜生やも知れぬか」
「そうじゃ、そこはその時の徳の積み方次第じゃ」
 これも仏教の考えである、筧はその考えの下今語るのだった。
「それによってな」
「鹿にもなるな」
「他の生きものにもな」
「だからじゃな」
「命は粗末にしてはならん」
 それが人であろうと所謂畜生であろうと、というのだ。
「だからな」
「この者達も大事にせねばな」
「そういうことじゃ」
 筧は由利だけでなく他の同僚達にも語っていた、そしてだった。
 根津も己の腰の刀を見つつだ、こんなことを言った。
「刀は人を斬るもの、しかしな」
「それは戦や止むを得ぬ時じゃな」
「人を無闇に斬るのは邪剣じゃ」
 霧隠にも言うのだった。
「相手が獣にしても同じこと」
「命を無闇に奪う術ではないな」
「そうじゃ、わしは師にも言われた」
「剣はじゃな」
「無闇に斬るものではない」
 決して、というのだ。
「命は奪うものではないのじゃ」
「必要な時以外はな」
「わしもその考えじゃ、だからな」
「鹿達もじゃな」
「粗末にしたらいかん」
「その通りじゃな、獣も人も同じ」
「命ある者達じゃ」
 だからこそとだ、根津も言うのだった。
 その話をしつつだ、彼等は鹿達と遊んだ。そしてその後で春日大社に行ったがそこで幸村は家臣達にこう言った。 
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