ハイスクールD×D 新訳 更新停止
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第5章
冥界合宿のヘルキャット
第97話 夏休み、冥界へGO!
前書き
今回から第5章スタートです。
「………なんだよ……これ……?」
ふと気が付くと、俺は何故か真っ黒な空間にいた。
しかし、暗い訳でもなく、目は鮮明に見えていた。
だが正直、そんな事はどうでも良くなってきていた。
「………みんな……!」
俺の眼前には血まみれでボロボロのオカルト研究部の部員が倒れており、皆、息をしていなかった。
「ッ!?」
そこに千秋とイッセーがいない事に気付いた俺は焦燥感に囚われながら辺りを見渡して二人を探す。
「やあ、Boy♪」
「ッ!」
突然掛けられた声に体を強ばらせながらも声のした方を向く!
「っ……レイドゥン……!」
そこにはレイドゥンがおり、奴の足下には兄貴、姉貴、千秋、イッセーが倒れていた!
部員のみんなと同様に血まみれでボロボロだったが、微かに息はしていた。だが、そんな事は意味が無かった。
レイドゥンがやろうと思えばいつでも四人の命は奪われてしまうのだから。
「ふぅ、士騎冬夜は期待ハズレだったよ……。士騎千春と士騎千秋も兵藤一誠に危機が訪れればなにかかしらの変化をすると思ったが、こちらも期待ハズレだったよ。さて……」
やめろ……。
「君はどうなのかな、士騎明日夏君?」
やめろ……!
「君の守りたい物を全て壊した時、君にはどんな変化が生じるのかな?」
やめろ!
「少しは期待させてもらうよ」
やめろッ!
「では…」
奴の手が振り上げられる!
「レイドゥゥウウウウウウウンッ!!!!!!」
━○●○━
「ハッ!?」
目が覚めると、そこはいつも目にする自室だった。
「はぁ…はぁ…はぁ……夢…か……?」
体を起こし、さっきまで見ていた光景が夢である事を認識する。
「チッ……酷ぇ夢だ……」
いや、ヘタをすれば現実にそうなるかもしれない事でもあった。
『ずいぶんとうなされてたなぁ』
「……ドレイクか……。……悪いが、お前のおふざけに付き合う気は無い……」
ドレイクにそう言い、そのまま部屋を出て洗面台に向かう。
「……酷ぇ顔だ……」
洗面台に着き、鏡を見ると大分青ざめた様子の自分の顔が写っていた。
俺はとりあえず、冷たい水で顔を濯いだ後、洗面台に頭を突っ込んで頭から蛇口から出ている水を被る。
「ふぅ……」
大分すっきりした俺は蛇口を止め、持ってきたタオルで頭と顔を拭き、洗面台を後にする。
歩きながら先程見た夢の事を思い出す。
「……絶対に現実になんかにはしねぇ……!」
別に奴をこの手でなにがなんでも仕留めたいとは思わねえ。どこの誰が奴を仕留めようがそれも構いはしねえ。だが、奴が俺の日常に介入するのなら容赦はしねえ!
例え……刺し違えてでもな……!
もっとも、今の俺と奴との実力差は歴然だ。
その為にも強くなる!
『だから俺の力はもう遠慮無く使うってか?』
ああ、そのつもりだ。
部長の婚約パーティー襲撃の時に使って以来、感情が昂った時や危機的な状況になった時に咄嗟だったり、無意識に使ったりはしたが、進んでこいつの力を使おうとした事は無かった。
ドレイクにはもう介入する事は無いと言われたが、初めて力を発現させた際のドレイクの介入で俺に必要以上にできた警戒と、なにより俺の意地で素直に使おうとは思えなかった。
だが、レイドゥンを相手にするにはそんな意地は邪魔なだけだ。使える物は全て使わないと奴と戦う事すらできないだろう。
だから、こんな意地は捨てる。
そして、こいつの力を完璧に使いこなす。その為にもあいつ、堕天使総督アザゼル、俺達オカルト研究部の顧問となったあいつを頼る。
神器に造詣が深いあいつなら、こいつを使いこなす為の足掛かりになるだろう。
「ふぅ……」
やる事を決め、少し頭をスッキリさせようと外の空気を吸う為に外に出る。
「…………」
そこで俺の目に入ったのは、明らかにこんな一般的な住宅街から浮いた存在である大豪邸だった。しかも、豪邸が建っている場所は俺の家の向かい、つまりイッセーの家が建っていた場所だった。
いや、正確にはイッセーの家を中心にした隣近所の敷地全体を使って建っていた。
「…………」
夢かと思い、頬を割と全力で抓るが、残念ながら痛みがあったので、これは現実だった。
『ここはあれじゃねえか?お決まりのセリフを叫ぶところじゃねえか?』
安心しろ、相応しい奴がその内叫ぶだろ。
案の定、入口と思しき扉からイッセーが飛び出て、豪邸の全容を視界に捉えるなり叫ぶ。
「なんじゃこりゃぁぁぁあああああっ!?!?」
……ほらな。
━○●○━
あの後、おじさんとおばさんに朝食の場に招待された俺はお言葉に甘え、新兵藤家の朝食の場にいた。
千秋が兵藤家に住む事になって、一人は寂しいだろうからと今日に限らず、これからも毎日来て良いとおじさんとおばさんに言われ、せっかくの好意を無下にするのもあれだったので、その好意に甘えさせてもらう事にした。
まあ、昔はよくご一緒させてもらっていたしな。
「いやー、驚いたよぉ。我が家がいきなり地上六階地下三階になるとはねぇ」
おじさんがご飯を口に運びながら、朗らかに言う。
「リアスさんのお父さんが建築関係のお仕事もされてるらしくてね、モデルハウスとしてリフォームしてくださったんだ」
いや、おじさん、もはやリフォームと言うレベルを超えてると思うんですが?
Before&Afterの差が激し過ぎる…と言うか、もはや兵藤家の原型が無い。
「まさか寝ている間に工事が済んじゃうんなんて思わなかったわぁ」
そこからもうおかしいんだが、悪魔の力を使えば造作も無い事なんだろうな。
ちなみに隣近所の方々は好条件の土地が手に入ったとかでそっちに移り住んだみたいだが、十中八九それも悪魔の力なんだろうな。
「台所も広くて、お料理の腕も上がりそう♪」
確かにあの充実ぶりは見事な物だった。兄貴が見たら興奮しそうだな。
かく言う俺も少しテンションが上がった。
「いやぁ、母さんの料理はいつでも一番だよ♪」
「いやぁねえ、父さんったらぁ♪ほら、みんなもいるんだからぁ♪」
我が家が豪邸になった事で舞い上がっているのか、仲睦まじいやり取りをする兵藤夫妻…と言うか、適応力が半端無いな二人とも。
━○●○━
「いよいよ明日から夏休み!!」
「おお!紳士の夏!日本の夏だぁ!!」
「夏と言えば海にプールにナンパ!俺のスカウターも磨きが掛かるぜ!」
いよいよ訪れたこの時に松田、元浜と共にテンションを上げる!
フフフ、今年の夏こそは彼女を作って、エロエロな夏休みをエンジョイするぜ!
って、彼女か……いたにはいたけど、その元カノに殺されちまったんだよな……。
「明日夏、お前も来るか?」
俺が明日夏の事も誘おうとすると、松田、元浜が「明日夏に来られたら全部そいつに持ってかれる!」「イケメン死ね!」なんて否定的な反応をされたが、すぐに「まあでも、女が集中するのも事実」「一緒にいれば、お零れにあずかれるかもしれん」なんて結局OKした。後は明日夏の答えだけど?
「………………悪い。せっかくだが、今回は遠慮する……」
しばらく間を置いてから断られてしまう。
どうにも、最近の明日夏はどこか付き合いが悪い。
いや、原因は明白なんだけどな。
レイドゥン・フォビダー、先日の会談のテロの際に現れた男でなんかとてつもなく悪い事をしてる奴みたいなんだけど、今はその事は置いておくとして、そいつによって、明日夏達の両親は殺された。しかも、気まぐれとか、暇潰しとか言う理由にさえなっていない理由でだ。
そいつに会った事が原因なんだろう。まあ、親の仇なんだから当然だよな。
思わず、明日夏が木場みたいに復讐に走って暴走するんじゃないかって心配したけど、そんな様子は見せないし、本人も木場みたいにはならないって言ってた。
だけど、なんか余裕無さそうな感じなんだよな。周りのみんなには気付かせない様にしてるけど、付き合いが長い俺には気付く事ができた。
このままだと、木場以上に危なっかしいんじゃないかとさえ思えてならない。
「ねえ〜ねえ〜、何の話してるの〜?」
と、そこへ、鶇さんがアーシア達を引き連れてやって来た。
「どうせ、変態トリオが虚しい夏の計画でも建ててるんでしょ」
「なにぃ!」
「誰が変態トリオか!」
「消えろ、桐生藍華!?メガネ属性は元浜で間に合ってんだぁ!」
「フン、そんな変態メガネと一緒にしないでくれる?属性が穢れる」
「なにをッ!?」
「元浜のメガネはな、女子の身体のサイズを瞬時に数値化できるんだぞ!」
それを聞いて、桐生がメガネをイヤらしく光らせる。
「フン、その能力があんただけの物だとでも?」
「「「なっ!?」」」
「ま、まさか!?」
「貴様もスカウターを!?」
唐突に桐生が俺達の股間の方に視線を向ける!
ま、まさか!?
「フンフン、なるほどなるほどぉ♪」
「よ、よせ!?」
危機感を覚えて、両手で股間を隠すが、時既に遅かった!
「兵藤」
「な、なんだよ!?」
桐生が耳打ちしてくる。
「元浜以上の詳細なデータ!?」
「な、なぬ!?」
「おのれぇ!?」
俺達の驚愕なんてどこ吹く風の桐生はアーシアの方を向く!
「良かったわね、アーシア♪」
「はい?」
「兵藤一誠はそこそこあるわよ♪」
「はい?」
「そこそこ?そこそことは一体何がそこそこなんだ?」
「だから、ナニよ♪」
「バカッ!余計な事を吹き込むな!?」
「ついでだから、士騎君のも…んきゃっ!?」
調子に乗った桐生が今度は明日夏に矛先を向けようとした瞬間、明日夏の手に持つハリセンが強烈な音を立てて桐生の顔面に叩き込まれた。
━○●○━
「冥界に帰る!?」
放課後、みんなが部室に集まるなり部長がそう言った!?
「夏休みだし、故郷に帰るの。毎年の事なのよ…って、どうしたの、イッセー?」
部長の言葉を聞いた瞬間から俺は涙を流していた!
「……部長が突然帰るって言い出すから、俺を置いて帰っちゃうのかと思いましたよぉ……!」
「ウフ、そんな訳ないでしょ。貴方と私はこれから百年、千年単位で付き合うのだから、安心なさい。貴方を置いてなんかいかないわ」
苦笑しながら部長が俺のほっぺをさする。
「そう言う訳で明日から眷属のみんなで冥界に行くわ。長期旅行の準備をしてちょうだい」
「え?」
「私達もですか?」
「主と下僕なのだから同行は当然よ」
「生きているのに冥界に行けるなんて緊張します!死んだ気で行きたいと思います!」
アーシア、意味が全く分からないよ!
「主に支えていた身が地獄に送った者達と同じ世界に足を踏み入れるとわ。フン、悪魔になった元信者にはお似合いだね」
お前もお前でまた自虐的になりやがって……。
「え〜!?じゃあ、イッセー君とは当分会えないって事〜!?そんなのやだやだ〜!!」
眷属じゃない鶇さんがそうごねてきた。
「ウフ、良かったら、眷属じゃない貴方達も一緒にどうかしら?」
「行く〜行く〜!」
「行きまーす!」
部長の言葉に満面の笑顔で答える鶇さんと神楽。
千秋や燕ちゃんも同行の意思を見せる。
明日夏も言葉に甘えて来る意思を見せたけど、正直、他の四人に比べて反応が淡白だった。
「俺も冥界に行くぜ」
「アザゼル先生!?」
いつの間にか、部長席に先日から俺達オカルト研究部の顧問になった堕天使の総督のアザゼル先生がいた!
「貴方いつの間に!?」
「フン、俺の気配を感じられない様じゃ、やっぱり修行が足りない様だな」
アザゼル先生はやれやれと言った様子で息を吐いた。
とりあえず、松田と元浜に部活の合宿で海に行けない事をメールしておくか。
━○●○━
「冥界も列車で行くんですね」
俺達は今、冥界行きの列車に乗っていた。
普段使う最寄りの駅に行った時は「冥界に行くのになんで駅?」と首を傾げていたが、まさか冥界行き用のホームがあったなんて。しかも、二階建ての駅の地下にあった。
そして、そのホームに来た列車に乗って、現在に至る。
「新眷属の悪魔はこの正式なルートで入国する決まりなのですわ」
え、俺、前にグレイフィアさんの魔力でジャンプして来てしまったんですけど!?
「あれは魔王が用意した物だから、特例扱いなってるだろ」
不安になってきた俺に明日夏が淡々と告げる。
「明日夏君の言う通り、その件は特例扱いになっていますわ」
朱乃さんの言葉を聞いて、安堵の息を吐く。
良かった、着いたら即お縄頂戴なんて事態になるんじゃないかって思ったよ…。
ふと見ると、明日夏が悪魔の駅員さんからもらった弁当に全く手を付けていなかった。ただボーッと窓の外の方を向いていた。
ああ言う時って、大抵なんかで思い詰めてるんだよな。
鶇さんと燕ちゃんの事を見て見ぬふりをしていた罪悪感から二人にどう接しようと悩んでいた時もあんな風にボーッとしていた。
やっぱり、最近の余裕の無い感じの様子と言い、レイドゥンの事で思い詰めてるんだよな、きっと。
本当に大丈夫なんだよな?
よく見ると、小猫ちゃんも弁当に全く手を付けずに俯いていた。ギャスパーも気になったのか声を掛けていた。
その様子が今の明日夏と重なって見えてしまった。
小猫ちゃんも最近はあんな風に俯いている事が多いし、エロエロな俺へのいつものツッコミも鋭さが弱かったし。
小猫ちゃんも一体どうしたってんだ?
━○●○━
『間もなく、グレモリー領に到着します』
お、いよいよ到着か!
長い事列車に揺らされていたが、ようやく到着のアナウンスが鳴った。
「ウフフ、窓の外をご覧なさい」
朱乃さんが俺に身を寄せながら言う!
思わずドギマギしながら、窓の外を見る。
さっきまで暗がりの空間しかなかった景色が一変し、雄大な景色が広がっていた!
「わあ!」
「この広大な土地が全て!?」
「ええ。グレモリー家の領地ですわ」
「こ、こんなに広いんですか!?」
「日本で言う所の本州くらいの広さがあるらしいよ」
ほ、本州ぅぅぅッ!?
「すげーな、明日夏!」
「ああ、そうだな」
思わず明日夏に振るが、この光景を見ても明日夏は淡々としていた。
いや、窓の外を見てはいるが、景色なんて全く見ていなかった。
……明日夏……。
「うわっ!?」
突然、物凄い揺れに襲われてしまう!?
「止まった!?」
ゼノヴィアの言う通り、列車が止まっていた。
さっきの揺れも列車が急に止まったせいだからだろう。
『緊急停止信号です』
アナウンスでも緊急の停止の旨を伝えていた。
「一体何が……?」
「近々お偉いさんが集まるからな。念には念をって事かもしれん」
困惑する俺達のいる車両にアザゼル先生と部長がやって来た。
「どうにも動きそうにねえな。ちょっと様子を見てくる。じゃあな」
そう言って、アザゼル先生は前の車両の方に向かってしまう。
「あの、お偉いさんって?」
「アースガルズの代表を加えて協議する予定なの」
「アース…ガルズ……?」
「所謂、北欧神話さ。悪魔、天使、堕天使の他にギリシャ神話のオリュンポスやアジア神話に属する須弥山、その他色々な勢力があるんだ」
「なるほど。ヴァーリを連れていった奴、孫悟空って言ってたもんな。あ、部長、じゃあ、協議ってのは『渦の団』と……」
「ええ。テロリスト対策よ。アースガルズを加えてのね」
俺の脳裏に白い鎧を着込んだ男の姿が浮かび上がる。
ヴァーリ、次こそは絶対に!
ふと、明日夏の方を見ると、さっきまでのボーッとした雰囲気は感じられず、明確な敵意を出していた!
レイドゥンも『渦の団』の一員なんだから当然か。
ブゥゥン!
『っ!?』
突然、外の景色が変わったと思った瞬間、俺達は外へ投げ出されていた!?
━○●○━
「……っつ…てぇ…って、どこだ!?」
目を覚ますと、俺達は見慣れない岩場にいた!
木場が声を荒らげながら言う。
「強制転移か!」
列車の中から強制的に転移させられたって事か!?
一体誰がこんな事を!?
「部長さんは!?」
「見当たりませんわね……」
「先生の姿も……」
何故か部長と先生の姿が無かった!
別の場所に転移されたのか!
「静かに!」
「何か来るぞ!」
ゼノヴィアと明日夏の言葉を聞くと同時に俺達は身構える!
すると、地響きを鳴らしながら、何かが近付いてきた。
大きく裂けた口、生え揃う凶暴そうな牙、威圧感を放つ二本の角、ぶっとい腕に脚、横に広がる両翼!
「ドラゴンッ!?」
後書き
今までルビの振り方が分からなかったけど、ようやく分かった(マニュアルに普通に書いてました……)ので、前よりはほんのちょっとだけ読みやすくなったと思います。
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