ウイングマン バルーンプラス編
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2 反撃開始!
1.
バルーンプラスは少しフラフラになりながら立ち上がった。
アオイの目算通り、確かに今の攻撃はかなり効いているようだった。
きちんと立ってはいられないように見える。
今までの俊敏な動きから、結構な強敵かと思っていたのだが、どうもそうではないようだ。
一発の攻撃を受けただけでこれだけダメージを受けたのなら、的確に攻撃できれば、早く決着できるのではないかとアオイは考えた。
ダメージを受けているこのタイミングに勝負をかければ短時間に倒せることができるんじゃないか。
「今こそ一気に勝負をかけるタイミングよ!」
そう叫んで桃子と美紅に総攻撃を喚起した。
アオイは胸を隠すのをやめ、バルーンプラスに攻撃に打って出たのだ。
「うおおおおっ!」
ギャラリーは再び晒されたアオイの胸に、歓声を上げた。
特に男子の視線はアオイの胸に釘付けだ。
「アオイさん!?」
桃子も美紅も総攻撃の準備よりも、アオイの行動に驚いた。
アオイは両手の銃を構えるように前に伸ばし、狙いを定める。
バンッ!
バルーンプラスはその攻撃を避けたが、今までの俊敏さはなかった。
ダメージの影響が感じられた。
一瞬固まっていた桃子だったが、アオイの大胆な行動の意図を理解した。
「短期決戦で勝負を決めることにしたのね!」
それならと、自分も攻撃に加わった。
そして美紅もだ。
さすがにアオイのように胸を隠さず戦うような大胆な行動はできない。
しかし、もう立ち上がって動ける状態にはなっている。片手でも戦力にはなれるはずだ。
「今なら! 3人で攻撃すれば、かならず倒せるわ!」
バルーンプラスとてただ攻撃に対して手をこまねいているわけにはいかなかった。
このまま3人から総攻撃をされるのは分が悪い。ダメージも受けているし、防戦に徹していてもいつまで持つかわからない。
また戦力を分散しないとやられてしまう。
開き直って胸も隠さず戦うアオイやパンツを丸出しで動き回って戦う桃子に比べると、片手で胸を隠して戦う美紅は一番のウイークポイントに見えた。
実際、左手で胸を隠す美紅は攻撃に恥じらいを感じながらやっていた。
バルーンプラスはそこに勝機を見出した。
桃子に向かうと見せかけて、いきなり美紅を狙ったのだ。
その動きは美紅にとってまったくの予想外だった。
最初の攻撃はなんとか避けることができたが、バランスを崩してしまった。
美紅は隠していた手がずれて、一瞬だが胸をがこぼれた。
「やん!」
すぐに胸を隠したが、今回は多くのギャラリーの視線が美紅の方に集中していた。その決定的瞬間に、大きな歓声が上がった。
さっきまではほとんど注目されていなかった美紅だったが、バルーンプラスの攻撃を追いかけて視線を美紅に移した人間が多くいたのだった。
「なんでみんなこっち見てるの~っ!?」
美紅は泣きそうになった。
次にバルーンプラスはアオイに刃を向けた。
しかしこれも作戦だった。
アオイを攻撃すると見せかけて、また美紅に攻撃を仕掛けてきた。
「きゃっ!」
しかし、ここは美紅も注意していた。連続して狙ってくるとまでは考えていなかったが、狙われても大丈夫な覚悟はしていたのだ。
さすがに今度、スカートを消されてしまっては、パンツ一丁だ。
こんなに多くの人の前でそんな姿を晒してしまっては、清純派の美紅としてはダメージは計り知れない。
それでも、今のアオイと同じ状態に近いが、美紅のパンツはコスチュームではなく、完全に私物、自前なのだ。さすがにその恥ずかしさはレベルが違う。
ただ、アオイは今、胸を晒して戦っているわけだから、コスチュームの問題どころではないのだけれど。
バルーンプラスのパンチが空を切った。
美紅は必死だった。
バルーンプラスは下半身辺りを狙ってきたのだ。
美紅の下のコスチュームはプリーツスカートだ。桃子のタイトスカートとは違ってひらひらと舞って広がる分、敵からは狙いやすかった。
逆に言えば美紅にとっては、かなりの危険を伴っている。あの手に当たっただけで、コスチュームが消去されてしまうのだ。そこに細心の注意を払いながら攻撃をかわさなければいけなかった。
慎重にバルーンプラスの攻撃の先を読みながら必死に応戦していた。
一方、アオイはストレスを抱えていた。
胸を晒してまで攻撃に出たのに、バルーンプラスは逃げるばかりで致命傷どころか一撃を与えることすらできていないのだ。
追いかけるのに集中して自分が胸を大衆の前に晒していることも気にならなくなってきてはいたが、いい加減に決着をつけないと、との焦りもあった。
それにバルーンプラスは完全に狙いを美紅に定めていて、アオイの相手はしてくれない。
しかし、それは逆を言えば、今の状況がバルーンプラスにとってピンチの状況だからこその対応だとアオイは考えた。
「ここで一気に攻撃を仕掛けて、速攻で終わらせてやる!」
美紅も、しばらく応戦すると少しだが攻撃ができるようになってきた。
まだ荒いが、これに精度が加わってくれば、さすがにバルーンプラスもつらくなってくるのは明らかだ。
普段ならそうでもないが確実にダメージが効いている。アオイ、桃子の攻撃に正確さが増して来れば、やられるのも時間の問題だった。
だからこそ一番動けない美紅に攻撃の対象を定めていたのだ。
しかし、うまくいっていない。
そこで、バルーンプラスは作戦を変えた。
アオイが攻撃してくるのを見計らって、急遽、攻撃の矛先を変えたのだ。
ターゲットにされたアオイは完全に予想外の展開だった。
咄嗟に避けはしたが、バルーンプラスのパンチが、パンツの横をわずかに掠ってしまった。
バーン!
その音と共にアオイの下半身が白昼の下に曝け出された。
一瞬、何のことかわからなかったがギャラリーの歓声に我に返ったアオイは大騒ぎだ。
「きゃああああああああああっ!!!!?」
胸を見られても気にならなくなってきたアオイだったが、さすがに素っ裸ではいられなかった。
その場で股間を両手で押さえて、体を隠すようにしゃがみ込んだ。
「アオイさん!」
桃子はまさにバルーンプラスに攻撃をしようとしていたところだったが、その悲鳴に心配になって、アオイの方に視線を移した。
その瞬間に隙が生まれた。バルーンプラスはすかさずそこをついたのだ。
上半身にバルーンプラスのパンチが飛んできた。
咄嗟に避けようとしたが遅かった。
パンチは胸に命中し、バーンという破裂音と共に桃子は吹っ飛ばされた。
「おおおおおおっ!?」
年齢と身長を考えればはかなり豊満な桃子の胸は、ギャラリーの前に公開された。
「キターっ!」
これはまさに邪な思いを抱いて目を皿にこの戦いを見ていたギャラリーの願っていた展開だった。
桃子は一瞬、その衝撃で動けなくなり、胸を数秒間だったがおっぴろげに晒してしまったのだ。
「桃子ちゃん!?」
美紅の声が響いた。
完全に形成が逆転されたのだった。
2.
ウイングガールズ絶体絶命のピンチだ。
今まで主戦力として戦っていたアオイと桃子が、一瞬にして戦える状況ではなくなった。
バルーンプラスがダメージを受けているのは間違いではない。
しかし、今、戦えるのは美紅しかいない。しかも、片手で胸を隠した状態で。激しく動けば乳首がこぼれてしまうのではないか、という状況を気にしなければ戦えない状態だ。
とりあえずは逃げに徹しなければならない。
今は敵の攻撃がうまくいっている。ただ、逆に油断が出るタイミングでもある。
実際、自分たちも3人が戦える状況になったところで隙を作ってしまったために、今の状況に陥ってしまった。
それはつまり、逆を言えば、今こそが敵を倒す最大のチャンスになる可能性を秘めている、と美紅は考えた。
今までウイークポイントとして狙われていた美紅だったが、ウイングガールズの中で、一番、服に守られている。
下にはパンツとスカート、2枚の砦がある。
上半身は裸だが、片手で隠すことができている。
そして、今の敵の状況は、アオイ、桃子に対して最後の詰めをしようとしていたところだ。
背後がががら空きになっている。
それなら、ここで一気に片づけるしかない。
美紅はバルーンプラスの背後に素早く移動すると、後頭部を目がけて蹴りを入れた。
スカッ!
美紅の渾身のキックは空振りに終わった。
「よく頑張ったな」
バルーンプラスは不敵な笑みを浮かべながら、そう言った。
「えっ!?」
美紅の作戦は完全に感づかれていたのだった。
「ただ、こっちの方が上手だっただけだ」
そう言うと渾身のパンチを繰り出した。
バルーンプラスの攻撃は、空振りして無防備になった美紅の背後を襲った。
「裏をかくような奴には、特別なお仕置きだ」
渾身のパンチは完全に美紅のお尻に命中した。
パーン!
破裂音と共に美紅はバランスを崩した。
当然、スカートは吹っ飛んだ。
「おおおおおおおおっ!?」
ギャラリーは大喜びだ。それもただならない盛り上がりだった。
それも当然だ、今回消滅したのはスカートだけではなかった。
本当ならスカートの下にあったはずのパンツまで木端微塵に消えてしまったのだ。
美紅はステージの上でギャラリーを前にあろうことかお尻を突き出すような形で倒れてしまった。
「ぶはっ!」
ステージのすぐ下で美紅を追いかけていた見ていたギャラリーの目の前に、美紅の生尻が突き出された格好だ。彼らは鼻血を出してぶっ倒れた。
美紅は倒れたときに、スカートが消滅したことは理解していた。
もちろんパンツが見られる危険性は覚悟はして勝負に出たのだ。しかし、パンツを見られるにしてもギャラリーに向けて突き出すような形で倒れてしまったのは想定外だった。
そんな姿で見られることが強烈に恥ずかしくなって、慌てて手で隠そうとした。
ところが、さらに想定外の事態。
隠そうとした手がお尻に触れた瞬間、本来あるはずのもの感触がなかった。パンツに触れるはずなのに手が触れたのは生肌だった。
桃子とアオイの表情は完全に強張っていた。
それを見て美紅は絶望感に襲われた。今、自分に起きている最悪の事態に気が付いたのだ。
美紅は多くの人に恥ずかしいところをモロに見られてしまった。しかもお尻を突き出すような大胆な形で。
「いや~ん、こっち見ないでぇ~っ!」
慌ててお尻を手で隠した。
顔が、真っ赤になって涙が出てきた。
これでは美紅はとてもではないが、戦える状態ではなくなってしまった。
「ハハハハ。お前らいい晒しもんだな」
バルーンプラスは勝利を確信し、大笑いした。
ウイングガールズの3人は完全に戦意を喪失したかに見えた。
しかし、まだ勝負はついていない。
桃子は生パンを晒して戦った。美紅は片手で胸を隠して攻撃を仕掛けてきた。アオイは胸を晒してまで勝負に挑んだ。
その経験から、ちゃんと詰むまで戦いは終わっていないと肝に銘じた。
バルーンプラスは用心深く、桃子の前に立ちはだかった。
桃子は恐怖した。
「いや、こっち来ないで……」
顔は真っ青になった。左手で胸を隠しながら後ろずさった。
「桃子ちゃん!」
アオイは思わず叫んだ。
自分がウイングガールズの中で一番の年長者であり、健太がいないこの場では自分がしっかりしなければと考えていた。
その思いから声が出たのに、体が硬い。恥ずかしいからと言って、うずくまって一歩も動くことができない。
このまま桃子のピンチを、見過ごしていいわけはなかった。
アオイは勇気を振り絞って立ち上がった。
そして、バルーンプラスに体当たりをした。
この攻撃はバルーンプラスは想定していなかった。
牙をむいてくる可能性があるとすれば桃子だと思っていた。
だからこそ桃子に攻撃を仕掛けたのだった。
しかし、アオイの攻撃は一歩遅かった。
バルーンプラスはアオイの体当たりによってよろけて転がったが、その前に放ったパンチが桃子のパンツの横にわずかにかすってしまった。
バルーンプラスは体当たりの衝撃でステージの橋まで吹っ飛ばされ、壁に体をぶつけた。
それとパンという破裂音と共に桃子のパンツも消去された。
これでウイングガールズは3人ともが日中のデパートの屋上、多くのギャラリーの目の前で、素っ裸にされてしまったのだ。
「いや~ん」
桃子は右手で慌てて股間を隠した。
両手を塞がれた桃子もこれで戦うことができなくなってしまった。
だが、アオイの体当たりはバルーンプラスに大きなダメージを与えた。
「うっ!?」
吹っ飛ばされたバルーンプラスは、痛みに苦しみながら地べたを転がった。
アオイはそんな敵の前に仁王立ちをした。
「そ、そんな姿を晒して、お前は恥ずかしくないのか?」
アオイはもう何も隠していない。あられもない姿だ。
ただ、隠してしまうと、そこをつけ込まれえると考え、一切隠すのをやめた。
堂々と、腰に手を当てたポーズでにらみを利かせていた。
「恥ずかしいに決まってるでしょ!」
アオイの顔はこれ以上ないくらいに真っ赤だ。
しかし、隠すことはしない。
「でも、あなたにやりたい放題にされるのはもっと嫌なのっ!」
そして、蹴りを入れた。
バルーンプラスもすでにかなりダメージを受けている。瀕死と言ってもいいくらいだ。
次に攻撃を受ければ、それこそ動けなるかもしれないと、必死になって体を動かした。
攻撃第一弾は避けることができたが、すぐさま第2弾第3弾と放たれる。
這いつくばって死にもの狂いになりながらもバルーンプラスはなんとかその攻撃を避けきった。
アオイは一瞬動きを止めた。
バルーンプラスは決して強くはない。それに攻撃に対しての耐久性は極めて弱い。だが、このすばしっこさはやっかいだ。
すでにかなりのダメージは受けているものの、まだ、これだけ俊敏に動けるのだ。
今なら自分1人で頑張っても倒すことはできるかもしれないが、それでも時間がかどれぐらいかかるかわからない。
このまま長い時間、裸体を晒し続けて戦うのは、いくらアオイでも恥ずかしすぎる。
それに美紅と桃子をこのまま晒し者にしておくわけにもいかない。
そこでアオイに1つアイデアが浮かんだ。
アオイがバルーンプラスの動きを封じ、2人のどちらかに攻撃をしてもらう、というものだ。
この状況をいかに早く終わらせるか、それが今の戦いの一番の大命題だ。
そのために、2人にも多少の我慢を強いるかもしれないけれど、この方法がベストだ。
アオイは心を決め、バルーンプラスに飛びかかった。
しかし、やはり俊敏だ。
簡単に避けられてしまう。
もちろん、それはアオイも織り込み済みだった。
ただ、動ける範囲を確実に狭めていった。
そして、ステージ中央から客席に伸びる花道の真ん中で、なんとかバルーンプラスを捕まえることができた。
アオイとバルーンプラスには半径2メートルの円ができていた。
ギャラリーはこのわけのわからないショーの邪魔をしてはいけないとスペースをちゃんと開けてくれていた。
3.
「き、貴様ぁっ!?」
アオイはバルーンプラスの背後に回りがっちりと羽交い絞めにした。
この体制ではちょっとやそっとでは抜け出すことはできない。
バルーンプラスの背中にアオイの生乳が押し当てられている。
その直に感じるなんと言えないやわらかな感触に、この体制はこの体制でなかなかいいもんだと一瞬悦に入ってしまったが、今、そこにある危機を思い出した。
まさに絶体絶命のピンチなのだ。
あわてて暴れてみるががっちりはまっていて、身動きが取れなかった。
ただ、アオイもこの体制でいる限り攻撃はできない。
これで第一段階は成功した。
バルーンプラスの動きを止めたはいいが、果たして2人がバルーンプラスを攻撃をしてくれるのか。
そこはアオイにとっても心配ごとだった。
ダメージを与えるほどの攻撃をするには、当然――
「美紅ちゃん! 桃子ちゃん! どっちでもいいから、こいつをやっつけちゃって!」
アオイの言葉に2人は顔を見合わせた。
バルーンプラスは完全に動きを封じられている。しかし、必死にもがいている。
ディメンションビームで攻撃をするには的が定まりにくい。
アオイに当ててしまうかもしれない。それに、周りのギャラリーに被害を及ぼす可能性もある。もしものことを考えれば、直接的な攻撃をするしかない。
そのことは美紅も桃子も直感的に感じた。
バルーンプラスの様子から考えても、それほどの攻撃は必用ないように思えた。
あと一発完璧な攻撃を決めれば、それで決着がつけられる予感もあった。
最後のトドメを刺す。
その役目を果たすには、ギャラリーの前に自分の裸を晒さなければいけないのだ。
美紅と桃子はお互いに顔を見合わせた。
1人の攻撃でも大丈夫かもしれない――
しかし、それを相手に強いるのは美紅も桃子もはばかられた。
その気持ちが通じたのか2人は力強くうなづいた。
そして、意を決した美紅と桃子は、同時にばっと立ち上がった。
もちろん、どこも隠してはいない。
生まれたままの姿を大勢のギャラリーの前に晒した。
ギャラリーはそんな2人の大胆行動に大盛り上がりだ。
これで3人はすべてをオープンにした。
「美紅ちゃん、桃子ちゃん、早くトドメを刺して!」
アオイの言葉に反応した2人はすかさずジャンプをした。
そして、空中からバルーンプラスを目がけて2人は渾身のキックを放った。
これを失敗するわけにはいかない。
アオイが作ってくれた決定的なチャンスなのだ。
この好機を逸すればまたしばらくこんなに多くのギャラリーの前で晒し者にされなければならない
その思いが2人のキックに強力なパワーを与えた。
「みんな、離れて!」
2人のキックはバルーンプラスの胸元に命中した。
直前にアオイも慌てて飛び退いた。
2人の声に周りにいたギャラリーもパッと離れた。そして、バルーンプラスを中心にできていたスペースがさらに広がった。
衝撃音と共にバルーンプラスは噴煙に包まれた。
美紅と桃子はキックをした後、その勢いでジャンプをしてステージに着地した。
そして、アオイもその場に合流した。
勝負は決まった。
誰もがそう思った。決定的な一撃に見えた。
しかし、バルーンプラスも粘り強かった。
さっきの一撃でもやられてはいなかった。
噴煙に紛れ瀕死な状態になりながら、3人の前に姿を見せた。
這いつくばりながらの登場は、かなりのダメージを負っているのは見た目にもわかる。
そしてフラフラになりながらもステージに上がった。
「うおおおおおっ!」
ギャラリーも盛り上がった。
このショーのもう一盛り上がりを期待しての歓声だった。
ステージに上がるとバルーンプラスは3人の前にバタンと倒れこんだ。
最後の力を振り絞っそこまでやってきたのだ。
倒れたバルーンプラスは美紅、桃子、アオイの3人を見上げた。
そして……
ギャラリーは片津を飲んで状況を見守っていた。
3人もこの瀕死のバルーンプラスが何かできるとは思ってはいなかったが、それでもあれだけ粘り強かったのだ。次に何かを仕掛けてこないとは限らない。
とにかく警戒はしながら見守るしかできなかった。
一瞬、屋上が静まり返った。
しかし、1分くらい経過しても何も仕掛けてはこなかった。
嵐の前の静けさか、緊張感が漂っている。
そんな雰囲気にのまれ、3人は何もできずに立ち尽くしていた。
しかし、アオイがハッと気づいた。
「美紅ちゃん、桃子ちゃん!」
その声に2人も我に返った。
結局、バルーンプラスには攻撃を仕掛けるパワーは残っていないようだった。
「もう一度、今度はみんなで決めるわよ!」
アオイの掛け声に3人はジャンプした。そして、バルーンプラスに向けてキックを放った。
真正面から腹部にアオイの、左右から胸部に美紅と桃子のキックが命中した。
その勢いでバルーンプラスは吹っ飛ばされ、ステージ上の壁にぶつかった。
ドーン!
大きな振動がデパートの屋上に響いた。
そして粉塵が舞い、その中から、黒い影が立ち上がった。
「えっ!?」
アオイ、美紅、ももこは絶句した。
あんなにフラフラだったのに、まだ立ち上がる力があったのか……
3人は身構えた。
粉塵が収まるとそこには立ち上がったバルーンプラスの姿があったのだ。
「貴様の生乳、気持ちよかったぞ」
アオイを指差して、そう言い残すとバルーンプラスは爆発した。
「もう! いやらしいんだからっ!」
アオイは顔を真っ赤にした。
戦いの終結に、ギャラリーから歓声が上がった。
アオイたちは安堵し、喜びがあふれてきた。
ウイングマンがいなくてもプラス怪人をやっつけることができたのだ。
3人も強く自信を持った。
そして、ギャラリーもスタンディングオベーションで、このショーのフィナーレを讃えた。
そして、3人もその歓声に応えた。
3人は勝利に酔いしれていた。
そして、完全に今の自分たちの格好を忘れていた。
ギャラリーの声援に一通り応えると、3人でハイタッチをしようとした。
向かい合った瞬間、否が応でも相手の姿が目に入った。
その瞬間、自分たちが今、どんな恰好なのかに気づいた。
一糸まとわぬ全裸だったのだ。
「いや~ん、見ないでえ~」
3人ともステージ上で恥部を隠してしゃがみこんだ。
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