Sword Art Online 月に閃く魔剣士の刃
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15 鉄剣制裁
夜が明ける。地平線から日が昇り、日の光が辺りに溢れていく。
情報によって全て構成され、全てが架空であるはずのアインクラッドに置いてもそれは同じだった。
その朝日は見るものに感動と希望をもたらし、本来なら無反応であるNPCさえもその光を見て顔を綻ばせる。
しかし、それは必ずしも万人に訪れるものでもなかった。
「あ、アスナさん……?」
「何?」
「そろそろ勘弁を……」
「ダメ。まだ一勝もしてないでしょう?」
「ナハハハハハ。頑張るんだナ~」
始まりの街の中央広場にいるのはどれも3人。ボロボロになりながら慈悲を乞う少年と、噴水の縁に座って高みの見物を決め込んでいる少女、そして細剣片手に天子のような笑顔を浮かべている悪魔がいた。
勝利条件:初撃決着モードのデュエルにてアスナから一勝
アルゴ:12戦目にて達成。
キリト:現在進行中。現在57連敗中。
これが後に語り継がれる鉄剣正妻である。
「というか、なんでアルゴはそんな簡単に勝てたんだよ……」
「いくらアーちゃんでもAGI極振りかつβテスターだったオレっちは捉えられなかったってことだナ」
決まり手は雷牙。アルゴがリニアーの始動モーションを完璧に見切り、スキル発動を待たずに叩き込むという見事なものだった。
余談だが、アルゴは自分の作る攻略本作成の過程で掲載されているクエストの約7割を自らソロでクリアしている。残りの3割の内、1割は攻略組からの報告、残り2割はキリトを強制連行してのコンビプレイである。
情報屋という立ち位置のせいで誤解されやすいが、彼女の実力は攻略組と比べても上位に食い込み、実際に攻略組が明確に組織される前の初期の頃にはボス攻略にも参加していたのだ。
ちなみに戦闘スタイルはアイテムによる搦め手を駆使してAGI補正が最大限掛かった格闘スキルを叩き込むというもの。普段は隠蔽スキルを駆使しているが、戦闘自体は意外と武闘派なのだ。
「さあて、そろそろいきましょうか」
にっこり笑顔を崩さないまま、アスナはメニューウィンドウを開く仕草をしてそのまま操作を始める。
数秒後、キリトの手元には無情なデュエル申し込み画面が開かれていた。
「……」
がっくりと項垂れながら了承のボタンをタッチするキリト。
同時にポップアップで60秒のカウントダウンが表示された。互いに二足分程の距離を開けて相対する。
「そろそろ本気出さないの?」
「出さないも何も最初から本気だぞ……?」
「あらら、嘘は良くないよ~?」
やり取りの間ずっと笑顔を崩さないアスナに、キリトの背筋にゾクリとしたナニカが走る。
そんなこんなしてたら残りカウントが5を切り、システムがカウントを強調する。
「さて、そろそろ勝ってもらわないとなぁ」
グッと伸びをしながらアスナがぼやく。
――5
「微塵も勝たせる気なんかないだろ……。でもいい加減に勝たないとな」
それを見たキリトは、背中の剣を抜きつつ苦笑を浮かべた。
――4
「さあ、通算58試合目だナ」
相変わらず高みの見物を決め込んでいるアルゴがケラケラと笑った。
――3
「さて」
キリトが何気なく呟く。
だが、声には何処か重みが感じられ、挙動の端々から一種の圧力を放っている。俗に言う|重圧(プレッシャー)
――2
「じゃあ」
アスナも呼応したかのように呟く。
しかし、その声に含まれている怒気はキリトの放つ重圧に勝るとも劣らない。
――1
二人とも無言で構えた。
キリトは剣を体のやや後ろに流し、アスナは前方へ細剣を突き出しフェンシングにも似た構えだ。
そして、カウントダウンが消えた瞬間、
「行くぞっ!」
「行くよっ!」
後に閃光とまで称される超速の細剣と、同じく攻略組最強と謳われる剣士の剣が火花を散らした。
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