普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ソードアート・オンライン】編
108 そのスキルは
SIDE 《Kirito》
ティーチがかの≪血盟騎士団≫と同盟を結んでから一週間が経過しようとしていた。……〝≪血盟騎士団≫との同盟〟──と言えばやたら大仰なのだが、そう大したものでも無い。ティーチから聞いていた詳しい同盟内容は大きく3つ。
・〝双ギルド間の攻略情報のやり取りの迅速化〟
・〝アイテムのやり取りの融通化〟
・〝双ギルド間の人員の出向〟
これらがティーチがヒースクリフとの談合で決めた事だそうだ。俺達も、メンバーの遣り繰りがアレだったのですんなり了解した。他にも〝月1で、双ギルド間でデュエル大会の開催〟とな取り決めもあったらしいが、ティーチから聞いている限りは上の3点が大きな取り決め内容だった。
今回のギルド間同盟にさしあたっての≪血盟騎士団≫の反応はまちまちで、ヒースクリフの言葉をティーチ伝いに聞いた事だが≪血盟騎士団≫でも、俺達のギルド──≪異界竜騎士団≫との同盟を大まかな人数は合意を示しているとの事。
……〝大まか〟にならなかった人達──言い替えるのなら少数派は、所謂〝ヒースクリフマンセー〟であり、〝団長さえ居れば、≪異界竜騎士団≫の力なんか必要ない〟と云うスタンスを改めず、何やら諍いの種になりそうに思えた。
閑話休題。
「キリトさん、アスナさん、今日は本当にありがとうございましたっ」
「「「「ありがとうございました」」」」
〝アイテムのやり取りの融通化〟の口約で──素材アイテムを集める為、俺とアスナは下層に降りていた。……下層に降りていたのは良かったのだが、途中である5人のパーティー──かと思いきや構成人数が5人の小規模ギルドがモンスターに追われていたのを俺とアスナが介入したのだ。
≪月夜の黒猫団≫──と、自らのギルド名をケイタは名乗った。
……それでギルドマスターであるケイタから〝1杯奢らせてくれよ〟みたいに言われて、≪月夜の黒猫団≫が塒にしていたであろう宿に連れていかれ、開口一番、そうケイタから──続いて他の〝黒猫団〟のメンバーからもお礼を言われた次第だった。
「いや、俺達もまぁまぁ暇だったからな。……な、アスナ?」
「はい、大事に至らなくて幸いでした」
〝素材アイテムくらい自分のツテで集めろ〟──とも思わなくも無いが、今日はよく組むペア──俺とアスナのペアが今日1日丸々暇だったので、同じく暇をもて余している体のアスナを連れ出したのだった。
……悲しい事に、15歳になったばかりの俺だが〝この世界〟に来てからはすっかりと仕事中毒になってしまったらしい。……〝元の生活習慣に戻れるか〟──と云うのが最近の俺の懸念だったりする。
閑話休題。
ケイタのお礼をアスナと頷き合いながらはぐらかす。……こうしてケイタ達にお呼ばれしているが、そもそもな話、下層に降りて来ていたのは素材アイテムを集める為なので、そろそろ素材集めに戻りたいところだった。
「……あの、いきなりのマナー違反承知な質問なんですが、二人のレベルを聞いても良いですか? ……さっきの戦闘を見てたら、〝かなり上の層の人だな〟──と思っただけなので、無理にはお伺いしません」
(困ったな…)
ケイタからの耳の痛い質問。アスナに〝良いはぐらかし方は無いか〟──とアイコンタクトを取ろうとアスナを見やれば、アスナもまた困った様な顔をしていた。……それもそうだろう、俺達──もとい、高レベルのプレイヤーが下層の狩場を荒らすのは、あまり褒められたプレイじゃないのだから。
「ケイタ、敬語は要らないよ。……でもアスナの呼び方はアスナに聞いてくれ」
「うん、私はアスナで結構ですよ? ……あ、私の言葉遣いは気にしないで下さい。一定以上の距離が空いてると敬語なっちゃうのは癖なので」
「……ありがとう、キリトにアスナ…さん…」
(アスナ…さん、って…。……くくっ…)
ケイタは俺への敬称を外したがアスナの場合は収まりが悪かったのか、後から敬称が付いたので少し可笑しかったので内心で苦笑。アスナにはその苦笑を気付かれた様で、その美貌とは反対の感情を──恐怖を抱かされる様な視線が俺へと突き刺さる。
「……で、レベルの話だったっけ。……俺のレベルは45」
「「「「「……よ、よ、45ぉぉっ!?」」」」」
現在のレベルを発表すると、パーティーの皆から五者五様に驚き、大人しそうな少女──サチからも驚愕の声が飛んでくる。そして、アスナからは〝恐怖を抱かされる様な視線〟から一変、〝あ、バラしちゃった〟みたい視線が飛んでくる様になった。
「どうしてそんな高レベルの人が…。……もしかしてアスナ…さんのレベリングの手伝い?」
「いや、アスナも結構な高レベルだからレベリングってわけじゃないんだ。……下層に降りて来た理由を平たく言えば、素材アイテム集めかな」
「ああ、素材アイテムで…」
そこでアスナが場を繋ぐ様に「ちなみに私は43です」と自分のレベルを暴露する。……それでまた〝黒猫団〟の皆が──殊更サチが驚いた様相を見せた。
……何しろ、サチとアスナは見た目は1~2つくらいしか変わらない──それもアスナの方が年下の様すらも思えるので、サチにもアスナに対して含むところはあるらしい。
……尤も、≪DDD≫にはリーファやシリカと云った、アスナよりも年下の少女が居て、更には前線──ないしは最前線で剣を振るっているのだが、そこを持ち出さないのはご愛敬だろう。
閑話休題。
更に、アスナだけではなくユーノとかもそうだが、≪DDD≫には〝綺麗どころ〟が多いので、1層で見捨ててしまったクラインが率いる≪風林火山≫を筆頭とする数多なる男性プレイヤーからのやっかみは凄い。
また閑話休題。
「そっかぁ…。45や43なら最前線に居るんだろうなぁ…。……それならうちのギルドに誘うのはムリかぁ…」
そうぼやくのケイタ。どうやらケイタはもの凄い皮算用をしてくれていたらしい。
……その後はアスナとサチが──俺とケイタがフレンド登録をしたり、今日集める筈だった素材アイテムを集めるのを〝黒猫団〟の皆にも手伝ってもらったりして、良い時間になった頃に解散した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……実はサチさんに見とれてたでしょ、キリト君」
「ナ、ナンノコトカナ…?」
実は、≪DDD≫──うちのギルドは【はじまりの街】に本拠を構えていたりする。
……しかし、【はじまりの街】だから──なのかは判らないが、【はじまりの街】を欲しているギルドも多くて、〝もの凄い倍率〟だったが、時に決闘、時に賄賂で、なんとか≪異界竜騎士団≫がおさえる事が出来たのだった。
閑話休題。
不穏な雰囲気を醸し出しているアスナの追及を適当にはぐらかしながら転移門に向かうのだった。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE 《Teach》
……〝光陰矢の如し〟とは正にこの事なのか、シリカが≪DDD≫に加入して早くも1年以上が経過していた。
シリカが入団して以来、ギルドメンバーは急速的に理想の人数──を超える人数が集まった。……俺が〝理想〟としていたの多くても2~3パーティー分の人数だったので、≪DDD≫には多数のアイドルプレイヤーが──アスナ、ユーノ、シリカ、リーファが居たのもあってか、人数は簡単に集まった。
採用の際、採用希望人数の10倍以上の人数が来たので、採用試験的なのを行い〝ふるい〟に掛けた。
……ちなみに採用基準は主に2通りで、〝職人系スキルをとっていて、かつ商売向きな人〟と〝実りの無いMobを〝虐殺〟出来る奴〟だった。
閑話休題。
そんなシリカだが、Mobを──レアモンスターである《フェザーリドラ》のテイムに成功して、通称されるところの〝ビーストテイマー〟になった。……が、それでシリカにも〝二つ名〟の様なものが付くようになったのは仕方ない事なのかもしれない。
シリカは俺のギルドに所属していて、シリカの所属しているギルド名──≪異界竜騎士団≫と云うギルド名も相俟ったのか、≪竜姫≫や≪竜使い≫やらと──それはもう色々な〝竜〟に準えられた名前で呼ばれる様になった。
―〝≪DDD≫に入れてもらえなかったら〟──と、フリーだった場合の事は考えたくありませんよぉ…―
とはシリカの言。……どうにも、シリカは持て囃されるのは嫌いじゃない──と俺は見るが、限度はあったらしい。
閑話休題。
現在の最前線は、≪血盟騎士団≫との同盟からいくらか層が解放された35層。……単純に考えたら、全体の3分の1以上が踏破されて喜ばしい事なのだが──そんな目下、俺は〝秘めておかなければならない事〟に頭を悩まされていた。
(……〝口止め料〟──そういうことか、茅場さん…)
ある日、スキル欄をスクロールしていると、〝見覚えの無いスキル〟が追加されてた。そのスキルの詳細を見てみると解放条件は不明で、情報屋が流している情報を見ても〝俺と同じスキルが解放されている〟という情報は、ついぞ見つからなかった。
……俺の頭を悩ましている〝秘めておかなければならない事〟。それは、〝ユニークスキル〟の発露だった。
そのスキルの名前は“無限槍”。
その性能は強力無比の一言で、〝無限〟とな──大仰な名前が付いている通り、性質からして〝〝事実上〟無限に攻撃が上がる〟。……しかし、その分デメリットも有るが、そのデメリットも俺からしたら微々たるものだった。
“無限槍”…それは〝Mobに与えたダメージによって攻撃力に青天井に上昇補正が掛けられていく〟と云う、空前絶後のエクストラスキルだった。……もちろん、デメリットもある。そのデメリットは〝ソードスキルを使うのが難しくなる〟と云うものだった。
・〝時間経過〟
・〝“無限槍”のソードスキルを使う〟
以上の二点で上昇補正が低下していくのがネックだった。先に述べた〝ソードスキルを使うのが難しくなる〟とはそう云うことだった。……更にデメリット──もとい、無い物ねだりなのだが、〝今のところ〟ではあるが“無限槍”には単発スキルしか無かったので、イマイチ火力不足も否めない。
……それでも〝双月流〟を──付け焼き刃程度とは云え、槍術を扱う事が出来る俺には“無限槍”と云うエクストラスキルは、まるで〝誂えられた〟かの様なスキルだった。
「行くか…」
Mobを相手に〝虐殺〟を終えた後、ギルドホームへ戻るのだった。
SIDE END
後書き
黒猫団は(一応)生存ルート。キリトがいないので原作みたいなハイレベリング&パワーレベリングは不可能なので。
……そもそも、例のトラップ部屋もリュウ君が前以て解除していたりしてなかったり…。
“無限槍”についての設定は自作のオリジナル。格ゲー風に云うなら「ゲージ(ダメージ)を溜めて(稼いで)、必殺オラァ!」──みたいな塩梅。
……今作でちゃんと発揮出来るかどうかは未明。
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