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ランス ~another story~

作者:じーくw
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第3章 リーザス陥落
  第61話 魔人再来


 とりあえず、その後ラプの長老から聞いた場所にユニコーンが生息していると言う情報を聞き、スー自身もすぐ案内出来るとの事だった。
 案内役をしてくれるスーと共に、一行は、ユニコーンのいる場所、先へと進んでいった。

「ふん! 折角スーを立派なレディとして教育をしてやろうとしたのに!」

 その道中の事、ランスは ぷんぷんとまだ怒っている様だ。
 スー自身も、志津香から直ぐに教えてもらった事で、簡単に男に気を許さない事、抱かれない事を守っている為、ランスの言葉に簡単に乗られたりしなかった。強引に行こうものなら、あっという間に 志津香の粘着地面にくっつけられてしまうのだ。 ランス相手に 何度も何度もしている為か 志津香の魔法はどんどん成長していっている。……ランスも喰らい続けていて、耐性が出来たか? と思えば それをも上回る粘着地面の粘着力だから、結局は殆ど抵抗が出来ないのである。

「ツマリ、ユーリニモ、トイウワケカ? シヅカ」
「ん? 何の事?」
「ンー シヅカ、オトコニハ、簡単ニ ダカレルナ。ト、イッテイタ。ダカラ、ユーリモ。 ソレニ、チョーローモ、確カ イッテイタヨウナ……忘レタケド」
「……っっ!! と、当然よ。それに、スーは女の子なんだから、そんな事 簡単に言わない事。……判った?」
「スー、ワカッタ」
「よしっ」

 志津香は、やや慌てていたが……、スーはしっかり頷いたのを見て、ほっと胸をなでおろした。

 その後、志津香はスーの頭をそっと撫でる。スーは、初めこそびっくりしていたが、撫でられる事は初めてであり、気持ちいいのか 気持ちよさそうに目を細めていた。

「ふん! あんなガキに抱かれるなどとはオレ様が許さんわ! まずは、オレ様との教育を受講するのだー!!」
「粘着地面」
「んがっ」

 ランスは、諦めず襲おうとするが……、それを志津香はさせない。
 普段のランスであれば、ランス・欲求メーターが振り切っているのは目に見えており、今よりも もっと面倒くさい事になるんだが、今は違うのだ。傍でやり取りを見ていたユーリはと言うと。

「はぁ……、昨日も面倒だったけど、ちゃんとかけてて良かったな」

 ため息を吐いていた。
 あの性欲魔が、そこまで強引ではないのは勿論ユーリがかけた幻覚魔法のおかげなのであり、ハンティには感謝してもしきれないのである。……ランスは別の様だが 当然ながら抱く行為と言うのは、体力が少なからず減ってしまい、所構わずしてたら、はっきり言って危ないのだ。

 だけど、これは 視て覚えた魔法であり、年季が立っている訳でもないから……、正直結構疲れる、とも思っていた。

「ぐむむむ……、おい、シィル!!」
「は、はい! ランス様!!」
「ええい! さっさとこれを外せ!」
「あ、あぅ……、わ、判りました……」

 粘着地面の粘着度は、使用者の魔力に比例して増してゆく。

 志津香程の魔法使いであれば、その粘着力は凶悪の一言だ。でも、志津香はシィルには優しいから、それとなく、彼女に合わせて魔法を解いていたりもしているのだった。


 一方、かなみはスーにある事を教えていた。それは、普通の女の子なら、誰もが思ってる事。そう信じている事。

「そ、そうだよ? それにスーちゃん。志津香の言うとおり、スーちゃんは女の子なんだから、そ、その……初めては好きな人と、なのっ」

 かなみも、顔を真っ赤にさせながら力説している。スーは、頭を右45度に傾ける。

「好キ? 好キナヒト……、ラプハ ミンナスキ!」
「ん、んっと、そう言う好き~じゃなくて………あ、あぅ……///」
「???」

 上手く説明が出来ず、オロオロしてしまうかなみ。こんな時に、こんな所でするような話じゃないだろうに。

「はぁ、ほら。さっさと行くぞ。今講義を開催してる場合じゃないだろ?」
「は、はうっ!!!」

 かなみは、ユーリの一言で、びくっ!!っと身体を震わせていた。

 とりあえず、スーの案内の元、先へと進む。

 かなみは ややげんなりとしていた。恥ずかしい台詞を言ってしまった……、と言う事もあるけれど、ユーリに一蹴されてしまった事もあるだろう。必死に頭の中で思い描いていたのに……、と。

「はは! まぁ、頑張んなって、かなみっ!」
「ひゃうっ!?」

 そんな時だ。
 背中に軽い衝撃が走った。かなみの後ろを歩いていたミリからだった。訊かれたら不味い相手は、沢山いる。……その中でもとりわけ ロゼ・ミリは要注意人物だ。

「ひゃうっ! って、マジで可愛いな かなみも。へへ。どうだい? 今晩くらい一緒に……」
「や、やですっ!! な、何ですか!? ミリさんっ」
「いやぁ、オレってさぁ。可愛く悶えてる乙女な処女を見るとついな?」
「つつ、ついじゃないですっ! もうっ! ユーリさんにまた怒られちゃいます! 早くいきますよ!」

 かなみは、ぷんぷんと顔を赤くさせながら、そして怒りながら先へと進んでいった。

「うむうむ、今日もいつも通りだな!」
「はぁ……、あの超鈍感は」

 ミリは、最後尾でそう頷き。
 ちゃっかりまだいるフェリスは、悪魔とは言え一応女の子である事から、かなみに同情していた。

 フェリスの言っていた、『ユーリを見ていると、イラッとくる』と言うのは、本当に間違いなさそうである。勿論現時点(・・・)では……。


 そして、スーの案内で森の奥へと足を踏み入れる。

 人間は、滅多に入る事の無い森の最深部。人に踏み荒らされた形跡も全くない。目の前に広がる湖は、遠目で見ると空の色と全く同じであり、正に水色、と言った所だ。

「スー、ココデマッテル。ココニイル」
「ありがとう、スーちゃん」

 スーは、湖の入口付近で待ってるとの事。
 ……湖の様な場所は嫌いなのか?泳げなかったり……?とも想ったかなみだったけど、それは聞かないでおいた。

「うむ、本当に純粋な水色だな。シィル」

 湖を前にランスは、そう言い。シィルは更に湖に近づいた。水面を覗き込んで目を輝かせる。

「わっ、ランス様。お魚がはっきり見えてますっ! 本当に綺麗ですね。底まではっきり見えます」

 美しい風景にシィルは笑顔でそう言っていた。ピクニックに来た。とでも言わんばかりの感想だ。

「……ま、確かにね」
「うん。すごく綺麗」

 志津香とかなみも同意見だった。女の子なら、そう言う感性だろう。目を奪われる程の美しさ。……それは 老若男女問わず、と言ってもいい。

「ん。……これくらい綺麗な湖じゃないと、ユニコーンが住めない、と言うからな」
「へー、そうなんだな。流石冒険者」
「まぁ、これは 嗜みみたいなもんだ。オレ自身が拠点にしている所の傍にある森だし」

 ミリがそう言うと、ユーリは手をひらひらと振った。そんな時だ。

「ほら、いたぞ? ユニコーン。あそこだ」

 フェリスが、気がついた。湖の中に現れた存在。ユニコーンだ。湖の中で 水浴びをしながら遊んでいる。

「ほほぅ……、あれがユニコーンか。がはは! 可愛いじゃないか 女の子モンスターの中ではピカイチだ!」

 ランスは、鼻の下を伸ばしながら でへへ……と笑いながら見ている。シィルは 悲しそうに、かなみと志津香は呆れ顔で見ていた。ユニコーンは、どうやら皆には気づいていないようで、そのまま 湖の中で遊んでいた。魚とも戯れている様だ。
 幻想的で、随分と絵になる光景である。

「さぁ、ランス様、捕まえましょう」
「うむうむ。これも正義の為だ!仕方ないだろう! ぐふふ、密を大量に摂取してやるぜ」

 ランスは、両手をワキワキと動かしながら近づこうとするが、一先ず。

「まて。ランス」

 ユーリがそれを止める。
 ……ランスは、ユニコーンに関して、その特性を知らない様だ。このまま、行かせれば逃げられてしまい時間のロスになってしまう。

「何なんだ、今からいい所なのだ邪魔するな! さっさと捕まえないと逃げてしまうじゃないか」
「違う違う。少し訊け。ユニコーンは ランスが行った所で捕まえられないって。ランスに限らず、男が近づくとユニコーンは逃げる。……逃げると言うより、消えると言った方が正しい。女の子モンスターと言うがどちらかと言えば幻獣種。聖女の子モンスターに近い存在なのかもしれないからな」

 ユーリがそう言うと、その博識ぶりに皆が関心する様に見ていた。ランスはと言うと。

「ちっ、そういやそんな話聞いた事あるな。おい、シィル。お前が捕まえてこい」
「……ぁぅ」

 シィルは、何処となく赤くなって俯いた。どうやら、彼女も知っている様だ。あのユニコーンに接触する為の条件を。

「ん? どうしたのだ。女のお前なら、捕まえる事が出来るだろ? さっさとしないか」

 ランスがそう言及した所でシィルは、口を開いた。説明をしようと思ったが、ランスがシィルに言う方が早かった。

「……その、ダメなんです。ユニコーンは女の子は女の子でも、えっと、乙女にしか気を許さないんです」
「は? 乙女?」
「……その、処女の女の子ですよ。私は……私は違いますから」

 シィルが赤くなるのは、そこが理由である。自分から告白するのは……女の子として恥じらいがあるだろう。

「むぅ。それは仕方ないな。そういえば訊いてなかったな。お前らの中に、処女は? 手を上げろ」
「お、オレの事か?」
「貴様の何処が処女だ処女!! 馬鹿言うな!」

 ミリの馬鹿な発言は、ランスをもツッコませる程の破壊力の様だ。ランスの言葉で、おずおずと手をあげるのはかなみ、そして志津香。別に正直に手をあげなくても良かったのだが……、ここには ()がいるから。まだ、経験がない事を遠まわしに伝えたかったから、かなみも志津香も手を上げた。

「ほうほう、丁度良かったではないか」

 ランスは、両手を腰に当てて笑う。

「ん、まあ そうだな」

 ユーリも頷いた。
 この奥まで来て、誰か、条件に合う人を探してきて、連れてきて……、となったらかなりの時間のロスになるだろう。

 まだ時間的にはそこまで切迫していない。レイラの事も 数日は猶予がある事は判っている。だけど、それでも 省略出来る時間を、無駄にするのは好ましくない。
 あと、条件を知っていたと言っても、事前に『処女だよな?』なんて聞ける筈もない。

 だからこそ、ユーリは ユニコーンについて、知っていたシィルには少なからず感謝もしていた。ランスも、多分今から町に戻って誰かを連れてくる、なんて面倒な事にならなくて良かった。と思っているだろう、と思っていたのだが。

「がはは! 今からオレ様が美味しく頂いてやろう! とーーっ!!」

 そこは、ランスだ。いつも通り、いつものノリで 志津香とかなみに、飛びかかっていったが。

「……粘着地面」

 志津香のカウンター魔法?で迎撃した。これも、いつも通りの光景である。

「んがっっ!!!」
「……はぁ。このバカ」

 志津香とかなみに飛びかかったランスだったが……、勿論志津香のカウンター・アタックの粘着地面。

 正直な所、対戦士最強の魔法じゃないか? とユーリは思えた。魔法も何度も喰らえば耐性が出来るのだが、全く追いついておらず、ランスの進撃を何度も防いでいるのだから。

「はぁ……、私の貞操、守れてて良かった」

 かなみは、ため息をし、安堵していた。

 この場では志津香のおかげで。そして、おそらく自分の貞操が無事なのは、間違いなく目の前の人のおかげ。

『リーザスを助けて』と、ユーリよりも前に ランスにまず言えば……、どうなってしまっていたか。……そして、何より ユーリが使うあの幻覚魔法が無ければ、どうなっていたか。感謝してもし足りなかった。

「良いねぇ。青春だねぇ……」
「ふん……っ」
「ああ、フェリスは違ったんだったな?」
「うるさい」

 何処か、不機嫌気味なフェリス。当然だろう。あの迷宮、ピラミッド迷宮での時、皆の前でヤられてしまったのだから。フェリスにとってみれば、アレからが悪夢の始まりだと言っていいだろう。

「はぁ、志津香、かなみ。頼むよ。ランスはこのままで良いから」
「誰がだコラっ! さっさと外せ!」
「馬鹿言うな。こんな所でお前に暴走されたら、捕まえるのも捕まえられん。ちょっとはおとなしくしてろっての。それとも、ランスは レイラが死んでも良いのか?」
「うぐ……おい! かなみ、志津香! あとでたっぷりと頂いてやるから、ありがたく思え」
「ぜ~~~ったいイヤっ!!」
「プチ炎の矢」

 2人からの返答は、拒絶と無慈悲の炎。

「うぎゃあちゃあああっ!!!」
「……動けない所で追い打ちとはエグい。あの粘着って可燃性じゃなかったっけ……」

 志津香の容赦ない炎(それでも小規模炎だが)を見て思わず苦言するユーリだった。

「じゃ、じゃあ。私とかなみで言ってくるわ」
「ああ、頼む。志津香、かなみ」
「ん。……(わたしは……ゆーと……は、初めてを……って、何をっ!)っっ///!!」

 志津香は、俯かせながらそう呟く。声は小さかったし、その表情から心の機微を読む……、なんて事ユーリに出来る訳もなく。

「ん? どうした?」
「何でもないっ!」
「?」

 志津香は、不機嫌になり かなみと共に向かっていった。

 ユーリとのやり取りを見ていたミリはニヤニヤと笑い、フェリスはやっぱりイラっとしていたのだった。




 とりあえず、万が一逃げられる事を考えて、志津香とかなみの2人繋りでユニコーンを捕獲する事にした。志津香が誘導し、素早いかなみがユニコーンを捕える。……色々とシミュレーションをしていた 志津香とかなみだったが、ユニコーンはなんの警戒もせずに近づいてきた。

「……ごめんね」

 姿形は、殆ど女の子のそれだ。いや、純粋で可愛い女の子。そんな子を騙して捕まえようとしているのだから、良心も痛む。……曾て、何の罪もない女の子たちを攫ってきたかなみだけど、こればかりは 本当に慣れる事はない。……慣れたくも無かった事だ。

「レイラさんの為、だから……。直ぐに解放するから」

 かなみは、ユニコーンの身体を抱きしめて、頭を撫でながらそう言っていた。

「ぐふふ、よしよしかなみ。よくやってるな? さーて、ユニコーンの蜜は 興奮させないと湧き出ないからな~。おい、シィル フラッパ草を探してこい」
「はい。ランス様」
「はぁ、そう言う類の情報は持ってるんだな……」

 ランスとシィルの会話を聞いていてため息を吐くのはユーリ。横で聞いていたミリは、知らない名前の草だから。

「何なんだ? そのフラッパ草って言うのは」
「ん。聖の属性を持つ生物に対する性的興奮剤。所謂、媚薬。と言った所だ。蜜を取るにはその方が早いだろう」
「へぇ……、お? なら それをかなみや志津香に……」
「人間には効かん」
「なんだ、つまらないな……」

 ユーリの言葉にミリは、残念がっている。

「はぁ……、ランスとミリって何処か似てるな……」

 フェリスは、ミリとユーリのやり取りを見ていて、そう思わずにはいられなかった。……漸く気づいたのである。

 そして志津香とかなみはユニコーンを連れてきた。

 傍には、男もいるからか、ユニコーンは恥ずかしそうで、暗そうな表情をしていた。良心が痛むのは、仕方がないと思えるが。

「よーし、よくやったな! ぐふふ……、そろそろシィルがフラッパ草を取ってくる筈だからな。ぐふふ……」

 ランスはま~~ったくそうは思ってなさそうだ。かなみと志津香は、その草については知らなかったから、何の事か?と思っていたが。ユーリが説明。

「はぁ、媚薬の事だ。シィルちゃんが探しに行ってくれているよ。あるかどうかは知らないが……これだけの森だ。無い方が有り得ないだろう」

 ユーリの説明を聞いた志津香は、頷くと 呆れた表情を作る。

「そんな事だけはよく知ってるのね。知識が片寄りすぎ。……まぁ、ランスだし?」
「そーよね。ランスだし」

 志津香の言葉にかなみも頷く。そして、誰も否定などはしないのである。

「(ぐふふ、マリアから聞いていて良かったな。あんな可愛い女の子モンスターは滅多にいないぞ? あへあへにしてやろう……ぐふふ)」
「ランスさま~、フラッパ草ありました~!」

 そうしている内に、シィルが帰ってきた。その手にはフラッパ草が握られている。探すのにはあまり苦労はしなかった様で、幸いだった。

「がはは! よーし、ショウタイムだ~!」

 ランスは、シィルの手からフラッパ草を取ると、ぴょーんっ!と飛び上がりがらユニコーンに向かっていった。

「やれやれ……。まぁ こればかりは、な。人命がかかってるんだ。……悪いな。ユニコーン。少しだけでいい。我慢、してくれないか」

 ユーリは比較的、ユニコーンの傍に居たから、申し訳なさそうに謝ると、頭……、額を軽くひと撫でした。

「あっ……ぅ……」

 ユニコーンは、男に触れられた、と言うのに 驚く事なく そして表情も少しだけど綻んでいた。

「ちょっと!!」
「いたっ!? な、なんだよ」

 志津香の肘鉄を脇に喰らい、思わずむせてしまった。志津香はと言うと、じろりと睨んだあと。

「まさか、見てるつもりじゃないでしょうね……?」

 ユーリを射抜くかの様に、睨みつける。
 蜜を取る為に必要な事、すべき事は志津香も判っている。正直、相手はモンスターに分類するものだとしても、女の子同士でそんな事する趣味は無い。だけど、不本意だけどランスがいるから大丈夫なのだ。だから、ユーリはいなくても大丈夫なのだ。

「ユーリさん……」

 かなみも、何処か嫌そうに悲しそうにユーリを見ていた。ユーリは、2人の方を見てため息を吐くと。

「はいはい。……見てるつもりなんか、毛頭ないっていうか、ただ、オレは謝ってただけじゃないか」

 ユーリは、片手をあげて、ひらひらとさせると、後ろへと引っ込んでいった。ミリは、ショウを鑑賞したい!とかなんとかと言う事で、ここに残る。志津香とかなみは、ランスがやり過ぎる事を阻止!する為に一応ここにいる。フェリスは、興味ない。と言わんばかりにユーリについていった。一応ユーリが彼女を召喚したから、主従関係の観点で、ユーリの傍にいる義務がある様だから。

「ぁ……」

 ユニコーンは、これからされる事を判っているのか、判らないのか……。ただただ、名残惜しそうにユーリの方を見ていた。ランスはもう草を使っているのだけど、最後の最後、正気でいられる瞬間まで……。


「はぁ……、アイツって、ほんとどーして……」

 志津香は何処か、複雑そうで、色んな意味で複雑そうに見ていた。ユニコーンが見つめる先が、あのユーリだと判っていたから。

「ユーリさんって、本当に優しいから。……ヒトミちゃんを見てると、ほんとに……。だから、ユニコーンも……」
「まぁ、それはそうよね」

 かなみの言葉には志津香も素直に頷いた。

 ヒトミ……、彼女は元々は女の子モンスターだ。

 それも、超がつく程の希少種である《幸福きゃんきゃん》だ。恐らくは ユニコーンと同等かそれ以上。一度狩ることが出来れば その強さ、分相応の経験値を得る事が出来る。それは、どれだけのレベルを持っていても、才能限界値の上限に達していない限り、関係ない。

 レベルと言うのは、その者のレベルが高ければ高いほど、そんな簡単にあがりはしない。
が、幸福きゃんきゃんの持つ経験値は、それをも可能にしてしまう。そんな女の子モンスター、狙う事はあっても助けたり……、ましてや仲間にするなんて考えられないのだ。
 だけど、ユーリは違ったんだ。

 志津香は、向こうへと歩いていくユーリの方に向いた。

「まぁ…ユーリだしね」
「うん」

 2人はそれだけで何処か納得していた。

――彼だから。彼は優しいから。

 それ以外に理由は要らないと、志津香もかなみも想っていた。


「ん……くぅ………」
「がはは! やわやわ~!」

 フラッパ草の独特の匂いに酔いしれてユニコーンは、冷静に考えが出来ずに転がっている。云わば、なすがまま……。ランスは、至るところにフラッパ草を擦りつける。すると、彼女の秘部からポツリポツリと蜜が煽れ出てくる。

「は、はぅ……、ひ、ひっ……くっ……ぅ、ぅん……っ」
「がはは! なかなか蜜が出ないなぁ? やはり ここはオレ様が一発やってやるか」
「だ、ダメですよ。ランス様。そんな事をすると、人間が混じってしまうと、ユニコーンの神聖性が無くなってしまって、効果が得られなくなってしまいますっ!」
「それに、人間のせ……、人間のそれは毒じゃないっ! そんな可哀相な事赦さないわよっ!!」

 シィルとかなみがランスを止めた。
 流石のランスも、レイラが助からなくなってしまっては意味も無いし、こんな可愛いユニコーンを死なせてしまうのは忍び無さ過ぎると言う事で。

「ちっ、つまらん!」

 やりたい!!と言う表情は伝わってくる程してるが……、兎も角諦めた様だ。フラッパ草で、イジメる行為はやめなかった様だけど。時間が掛かった様だが、一定量の蜜を集める事は出来た様だった。




 湖から少し離れた所で、ユーリは空を眺めていた。
 相当深い森だが、その木々の間から、薄らとだが、空を見る事は出来る。

――……この戦争は一体何処へ向かっている……のだろうか?

 ユーリは、それを考えていた。これまでであまり、考えてる時間は無かった
考える事よりもすべき事が多かったからだ。

 敵側には魔人がいる。

 人間よりも圧倒的な力を持っている魔人が……、それも少なくとも2人か、それ以上だ。

「(……アイゼルは、首謀者と言った感じはしない)」

 これまでに出会った魔人は、サテラとアイゼル。
 2人とも、色んな意味で厄介な相手だが裏で暗躍し、何かを成そうとしている様な動きは見られない。2人とも、ついでだから、やりたい事をやる。と言った感じだった。

 アイゼルは、だからこそ自分の目に適った女戦士を手中においたりしている。
 サテラは……、その言動からよく判る。幼さがそのまま残って魔人になった感じだ。性質の悪いガキ、と言ったところだろうか?……ガキと言う言葉はあまり使いたくないが。

「なぁ、ユーリ」
「ん?」

 傍に来ていたフェリスがユーリに声をかけた。

「アンタはなんでそう……」

 言いかけた所で、フェリスは止まった。

 色々と聞きたいこと、言いたいこともあった。人間と言う種族の汚さ、醜さ、それらは嫌というほど知っている。なのに、なぜこの男はこうなのだろう? 何で……、だろう?

 他人、人間は疎か、女の子モンスターにまで……。

 斯く言う自分も、ユーリの事をもう薄汚い人間だと思えなくなってしまっていた。そして、ユーリの傍にいる人間達の事も、知ることができた。……1人例外はいるが、それは置いといたとしても、人間はそれだけじゃないと言う事をしれたんだ。

「どうした? フェリス」

 ユーリは、黙っているフェリスに聞き返した。……その表情から、なんとなく読む事は出来ていた。

「いや……。別に……、あ、ああそうだ」

 フェリスは、聞く事を変えた。以前、ユーリが言っていた事を。

「アンタ、何で神と悪魔だったら、悪魔を取る……なんて言ったんだ?」

 フェリスが聞きたいことは、本当は違った。
 だけど、咄嗟に出た疑問だったけど、その内容は最初のそれに負けない位聴きたかった事でもあったんだ。

「………訊いていた、のか」

 ユーリは、その言葉を聴いて、表情を変えていた。聞きたい事がそれとは正直、思ってなかった。フェリスの表情は、かなみの表情によく似ていたから、聞きたい事はかなみのそれと似たようなモノだと思っていたから。

「普通の人間なら、それこそこの世界、人類の7割から8割は信者がいるAL教もあるし、神を取る、だろ? ……その他の人間も悪魔を好んでるヤツなんて1割どころか1部1厘だっていないだろうし。そう考えたら異端すぎるって思ってな」

 フェリスの言い分も最もだ。
 AL教団事《ALICE教団》はこの世界でスタンダードな宗教でメジャーもメジャー。他にもJAPANでは、《天志教》と言う宗教がメジャーだが、それでも圧倒的なのはAL教だ。

「……でも、そう言う人間がいたって良いだろ? とは言っても、戦いになったりしたら、どっちでもオレは戦う。盲目に信じたりはしないからな。意に反する事であれば。 ……つまり、突き詰めて考えたら、どっちも同じだと言う事だ。だから、フェリスが訊くそれ程の事でもないさ。だがまぁ、……強いて言うならオレにも色々とあって、……価値観が変わった、と言ったところだな」

 ユーリは、そう答える。
 フェリスは、ふーん。と頷くとある事を思い出した。悪魔界で聞いて、そしてここで確認した事があったのだ。

「……そう言えば、あの悪魔の通路でリターン・デーモンをぶっ倒したって言ってたな」
「ああ、そう言う事もあったな。……悪魔だろうが神だろうが、あの手の者は正直、な。……とと、フェリスにすれば同族を手にかけた……って事なんだな。悪い」
「馬鹿言うなって。あんな奴ら、なんべんでも、寧ろ殺してたってOKだ! 正直、あいつら 嫌いだったし。悪魔の癖に 女女って煩かったし、私の力も下げられてたら下級悪魔って事で、色々とパシられそうになったんだから!」
「ああ、なるほど……」

 あの悪魔、リターンデーモンは、人間の女を好むし、何故かラレラレ石もあの同靴では多数あった。あの洞窟に人間の女が現れる事なんて、普通は無いし、どうやって、日頃の悪魔の欲求を解消しているのか?と思ったが、フェリスの様な下位悪魔を使うのだろう。
 ……色んな意味で性質が悪い。

「ま、ユーリがアイツ等ぶっ飛ばしてくれて、正直嬉しかったしね。スッキリした」
「はは、随分と仲間想いなんだな?」
「だから違う!」

 楽しそうに色々話している内に、一行が戻ってきた。
 ランスは、何処か不服そうだがある程度満足したのか、まんざらでもない顔をしていて。
かなみと志津香は、ため息を。ミリは十分と楽しんだ様で、笑っていた。

――……そして、ユーリ達を見て更にミリは笑う事になる。

「おいおい、こんな所で2人で乳繰り合っていたのか? ま~ 確かに青姦するにゃ、最適な場所だがな。モンスター共もいないし、それなりに明るいし」

 ミリのその言葉が爆弾だった。
 火種を呼ぶ~所ではなく、火薬庫に爆弾を放り投げたも同然だ。勿論、導火線に火を付けた状態で。

「なっ!!」
「ええっ!!?」
「なにぃぃぃ!!!! こらぁァ!! ユーリ!! 貴様、オレ様のフェリスにナニしてくれてるのだ!!!」

 志津香とかなみ、それだけでなくランスも。
 ミリの言葉にそのまま反応してしまっている3人。シィルだけが、ただただ苦笑いをしていた。

 志津香の踏み抜きやかなみも悲しそうな顔を見せて……。ランスも突撃してきたが、軽く回避しつつ何もしてない事を説明。フェリスも以下同文だった。

「ったく……」
「はぅ……」

 色々と辱めを受けてしまったのは女性陣だ。ミリがお腹をかかえて笑っているのを見て、漸く悟った様だった。

「はぁ。私とアイツはそんなんじゃないから、安心しろって。って言うか、お前らも私とアイツが契約する所見てなかったっけ?」
「あ、う、うん。でも……」
「ふんっ……」

 志津香はそっぽ向き、かなみは頭を掻いていた。ユーリ事になったら回りが見えなくなってしまうんだろう。視野も狭まるとか。

「はは、私も悪魔だが、女だしな。気持ちは判らなくもない。まぁ、頑張んなよ 2人とも」
「うぇ!?」
「ふ、ふんっ!」

 悪魔フェリスから応援された2人。複雑と言えばそうだが、それでも……。

――……かなみと志津香、フェリスは少し仲良くなった。


「それで、蜜はどうしたんだ? ユニコーンも」
「がはは! オレ様がたーっぷり出させてやって、感謝しながら帰っていったぞ!」
「……何馬鹿な事言ってんのよ。目を離した隙に逃げていったんじゃない」

 志津香のツッコミを聞き、ランスは不機嫌になる。

「だぁ!! お前たちがしっかりと見張らないからではないか!」
「馬鹿言ってんじゃないわよ。もう十分摂ったんだから良いじゃない」
「オレ様が気持ちよくしてやったのだ。なら、オレ様も1発、いや5発くらいは抜いてもらうのが普通だろう!」
「そんな普通しらないから」

 話を早々に終わらせた。そして、湖の入口にスーが待っていた。

「ア、ミンナ 戻ッテキタ。終ワッタ?」
「ああ。ありがとう、終わったよ」
「スー、良イコト、シタノ?」
「うん。案内してくれて、ありがとね?」

 かなみは、にこりと笑いながら、スーの頭を撫でた。スーは、はじめこそきょとんとしていたが。

「エヘヘ……」

 気持ちよさそうに、目を細めていた。

 

 一行は早速町へと戻る事にした。レイラが待っているからだ。早く治療をしてあげる為に。そして、もう1人の事もある。

「レイラさんの事もそうだが、それとセルさんの所に行かないとな。スーの事しっかり見てくれるだろう」
「セルサン?」
「ああ、教会のシスター……ん。難しいかな。スーの事、面倒見てくれる人だよ。大丈夫、優しい人だ」
「ユーリト オナジクライ?」
「……ん、オレよりずっとずっとだ」
「ユーリヨリ、ズット?? …… ビックリダ」

 スーはそれを聞いて驚いていた。
 これまで、色々と世話を焼く内に、ユーリに心を開いたのだ。ユーリだけではなく、この場の殆ど皆。人間は敵だ、と言っていた彼女はすっかりと息を潜めている。
 ……一部例外はとりあえず置いといたとしても。

「ぐふふ、セルさんの処女もいただいていないからな。ついでに美味しく頂くとするか」
「馬鹿、アンタはそれしか頭にないのっ!」

 セルを襲う気マンマンのランスだった。苦言を呈しているのはかなみだ。それを聞いていたスーは、ランスに声を掛ける

「ソウイエバ チョーローガ 言ッテイタ。結婚スレバ 大丈夫 ダッテ。 ランス セルサント 結婚 スル?」

 スーは思い出す様にそう言っていた。
 ランスがしようとしていた教育は、ラプの長老にも言ってある。勿論、女性陣たちが阻止したから、未遂だったけど心配したラプの長老がスーに教えた様だ。……ある程度の事は判っているらしい。

「……おっと、急用が出来たな。と言うより早くレイラさんを助けなければならないから、さっさと行くぞ! スー。オレ様たちを最速でこの森から外へ出せ。色々とちょこまか動いていたから、出来るだろ?」
「ウン。コノアタリナラ 大丈夫」
「……そう言えば、そんな事出来たんだった」
「ええ、正直忘れてたわね」

 志津香とかなみも忘れてた。あれだけ、スーには逃げられたのに……。

「……そう、だったな。オレも忘れてたよ」

 ユーリも頭をかきながらそう言っていた。

「森を一直線に突き抜ける様な事ができたら、相当楽だな。この森は険しすぎるし」

 ミリは、そう呟く。
 撤退も攻め込みも両方が安易に出来る事だ。探りを入れる諜報にも、最大限に活用出来るだろう。だが、ユーリは首を振った。

「多分、それは無理だ。じゃないか? スー」
「ウン。ミラクルミー、コノ森ジャナイト」

 スーもも肯定した。
 スーが取り出したのはクルミのアイテム。どうやら 迷子になるのは、木々の幻覚が発生しているらしく、その多すぎる幻覚が人を迷わせている様だ。極めて実物に近い精度、自然が長年かけて生み出した代物な為、見破る事、突破する事が出来ない。だが、スーの持っているアイテムであれば、突破する事が出来る様だ。

「だが、森の中限定、って事でも、今は本当にありがたい。スー。宜しく頼めるか?」

 ユーリがそう言うとスーは、にこっ!と笑みを見せて両の拳を握った。

「スー! ガンバル!」
「おいこら! オレ様と反応が違うじゃないか!」
「人望の差じゃないの? 或いは器の違い?」
「やかましいわ、かなみ!!」
「ら、ランス様、落ち着いてくださいっ!」

 ランスの手をひょいひょいと躱しながらかなみはそう言う。シィルが抑えようとするけど、効果は今ひとつ……。かなみもランスも正直 煽られ耐性は、少ないのである。
 シィルの気苦労もまだまだ続くだろう……。

「ジャ、イクヨー! スー ノ ミラクルミー!」

 スーが力を入れた瞬間、周囲にあった筈の木々がまるで半透明になった。そして、普通であれば迂回しなければならない筈なのに、通り抜ける事が出来る。

 入り組んだ森の獣道でもなんのその。ものの数分、数秒で。

「ハイ、ツイタ!」

 森の入口についていた。

 これは、ミリの言うように便利だなぁ……と、皆 思わずにはいられなかった。















~アイスの町・武器屋~


 某時刻。武器屋のオヤジ事、オルガ・カーティスは束の間の平和? を味わっていた。

「はぁ、鬼畜の匂いがしねーから、アイツはこの町にゃ帰ってきてねーだろうな!」

 ゲラゲラ笑いながらそう言っている。
 ……独特な鼻を持っている様で精度は ばっちりの様だ。そのとおり、ランスはここにはいないのだから。ランスに斬られ、ユーリに殴り飛ばされてしまって、暫くは 店先に出られなかった様だが、何とか回復出来た様だ。ゴキブリの様な生命力の持ち主だ。

「……それにしても、ユーリの野郎。次会ったら倍返しにしてやろうか……。……た、多分無理か」

 殴られた時の形相、そして ランスに刺された時の恐怖がまだ残っている様だ。口では何とでも言えるのだが……、身体の髄にまで残っている、染み付いている為、実行には移す事が出来なさそうだった。
 だが、ほんのちょっぴり、反省もしている。聖武具シリーズを買い戻す為にしっかりと、金を持ってきたのがランスだけではなく、ユーリや傍の女の子いたから。

「聖武具なぁ、あんな高い代物を。一括で買ってくれて良かったっちゃあ、そうだが……。ま、アレがオレん家に無いし、もうここに来る事ァねぇだろうさ」

 やれやれ、と思いつつ入口を見た。
 厳重な合金で出来ている錠を設置している。鈍器でしばいても、剣で切りつけても壊れたりはしないだろう。もしも、客が来たら、ちゃんと姿を確認してから店内に入れる。
 ユーリやランスが来たら、速攻で居留守だ。
 
 お茶を口に含み、喉を鳴らしながら、ニヤニヤと笑っていた。

「まぁ、オレのセンサーに引っかからねぇ以上、連中がここに居る筈もねぇし、問題ねぇがn〝がっしゃぁっ!〟ぶーっ!!」

 それは突然だった。入口から物凄い音がしたのだ。慌てて入口の方を見てみると……。

 あの錠が、ひん曲がり、入口の扉も粉砕されていた。そこに居たのは3つの影。

「聞いたぞ。やはり、アイゼルの言う通り、あのバカが聖武具を持ってるんだな? それで間違いないんだな?」

 3つの影の正体は 赤く長い髪の女と、石の化物だった。

「うぇぇぇ??」

 訳が分からず、パニックに陥ってしまうオヤジ。それも無理もない事だろう。突然、入口をぶっ壊されたかと思えば、明らかに人間ではない化物がいたのだから。

「おい。お前」
「うええぃ??」
「こら、聴いてるのか? お前だ。さっきの話、本当だろうな?」
「うあぃ?」
「……ダメだ、コイツもバカだ。確か ランスってヤツもこの町だったし。この町の男はばかしかいないらしい。……い、いや。そうでもないか!! っと、イシス。こいつの目を覚まさしてやれ。殺すなよ? 確認しないといけないから」
「………」

 イシスは頷くと、オヤジを持ち上げた。そして。

〝ぶんぶんぶんぶん!!!〟

 思い切り揺する揺する。脳みそを回転させてあげようと、ぶんぶんと揺する揺する。

「あばばばばば!!!! ヤメヤメヤメヤメっっ!!!!」

 高速で揺すられた頭は、物凄く脳が揺れる。オヤジは気持ち悪くなり、げぇーっと吐いてしまっていた。

「うげっ! 汚っ!! コラ、サテラは 格好悪いのも、汚い物も嫌いなんだ! 次やると殺すからな。さっさと言え。ランスのバカがその武具を持ってるんだな?」
「おおおおおううううう、そそそ、そうだそうだ! や、やめてくれれれ!!!」

 イシスはずっと、揺すっているから、物凄く話しづらそうだ。

「はは。アイツだったか。よし判った。イシス、シーザー行くぞ。そんな汚いのは廃棄()てて」
「……」

 イシスはゆっくりと頷くと、オヤジをぽいっ!と放った。軽く放ったつもり……、っぽいが、ガーディアンの力は人間のそれとは比べ物にならない。

〝ばきばき! どがぁぁぁ!!!〟
「ぎぇぇぇぇ!!!」

 オヤジは、思い切り吹き飛んでいった。木で出来た家の壁を突き破り……、外へと。

「さぁ、行くぞ。目的は目の前だ」
「ハ!」
「………」

 シーザーとイシス、サテラ。現時点で最悪の相手に、確信されてしまった。いや アイゼルにバレた時点で、最早手遅れと言っていいだろう。



――……万を持して、魔人の魔の手が……直ぐ傍まで迫ってきた。




「……そ、それに アイツもいる筈だ。今度は……っ!」

 サテラは、ぐっと力を入れた。あの時、辛酸を嘗めさせられた相手を思い描きながら……。

「サテラサマ? 顔ガアカイデス。ダイジョウブデスカ?」

 シーザーが、サテラの顔を覗き込みながらそう聞いていた。サテラの顔は、シーザー達、ガーディアンにも判る程、赤く染まっていた。

「なな、何でもないっ!! さ、さっさと行くぞ! アイツがいる場所を突き止めるんだ!」
「ハイ」

 暗雲立ち込めるこの戦争。


 暗雲は、本当にいろんな意味(・・・・・・)で……、ユーリ達を待っていたのだった。





























〜モンスター紹介〜


□ ユニコーン

聖女の子モンスターに分類されていると言われている希少種の女の子モンスター。
ユニコーンが出す蜜を、投与すれば催眠、洗脳、等の異常をたちまち治す効力がある。
……ただし、人間が接触するには乙女で無ければならず、捕まえた後邪な男の精が触れてしまうと、蜜の効力も無くなってしまう。




 
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