異世界に呼ばれたら、魔法が使えるようになりました。
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友達
途中でこの世界のお菓子である“ふわり”というものをレイアが買ってくれた。
揚げたてのドーナツに、赤、青、緑、黄色といった小さな粒状のアメがかけられたようなもので、けれど食感は綿菓子のようだった。
しかも口の中で綿菓子のようにとろけて、口いっぱいに果物の香りが広がる。
どうやらこの飴自体が果物のキャンディになっているようで、それらは僕の世界にある、ぶどうやりんご、いちご、グレープフルーツ、オレンジのようなみずみずしい香りがする。
初めて食べたけれどこんな美味しいお菓子は初めてだった。
我ながら食い意地が張っていると思うけれど、美味しいものは僕は大好きなので仕方がない。
そのうちこの世界でアルバイトのようなもの、冒険者の以来のようなものを受けて賞金を稼いでみたいと思う。
どうせ魔法が使えるのだから。
そこで僕は気付いた。
「そういえばこの世界って冒険者っているのかな? ほら、魔物を倒してお金を稼いできたり、森とかで必要な材料を採ってきたりとか」
「有りますよ。お城に既に偽造した冒険者証を作成しておいてありますので問題ありません」
「……偽造」
「……こう見えても姫ですので」
レイアの言葉に、確かにお姫様が城から抜けだして魔物と戦われては困るだろう。
でもそういえばこのレイアは僕と一緒に旅をしたいと言っていなかったか?
そう思ってそこで僕はレイアに聞こうとするが……レイアは立ち止まる。
まっすぐに目の前の城お見て何処か深刻そうな顔をして、
「失敗しました、私が颯太を呼び出したのがばれたのか、もしくは度に出ようとしたのがバレたかも」
そう呟くレイアの視線の先を僕が見ると、甲冑をつけた塀が大量に城の中で出て回っている。
ただそれを見て思うに僕は、
「レイアがあの爆音のするあれをやったら警戒しているとか?」
「いえ、あれは私がよく悪戯で使っていたものです。なのであんなふうに誰かを探して捕らえようとしているのはおかしいです。もしかしたなら図書館での件が伝わったのか……魔道書の奪い合いなんて時々あるので、大丈夫だろうと油断していたのが行けなかったのかもしれません」
「じゃあ、どうする?」
「そうですね……こうなったらこのまま旅に出てしまいましょうか。まさかこんなことになるとは思っていなかったので路銀は少ないですが、なんとかやりくりをして……」
そう話していると僕達の直ぐ側の藪が、ゴソゴソと動く。
何か得体のしれないケダモノでも出てくるのかと思って警戒していると、その藪からばっと黒い影が現れた。
「私でした~! 驚いた? 驚いた!」
そこにいたのは先程の魔法図書館であった銀髪の少女だった。
彼女はリリアと呼ばれていた少女だ。
そんな彼女はニヤァと笑い、
「家出する予定なんでしょう? 水臭いな、もう」
「いえ、そんな気は全然全くありません」
「うっふふ。必要な荷物が何処にあるのかというとベッドのしたというところかしら」
「……」
「昔からレイアはそこに物を隠すものね。いいわ、取ってきてあげる」
「……目的は何ですか?」
「家出って面白そうだから」
楽しそうに笑うリリア。
レイアは無感情にリリアを見ていたかと思えば、そこで深々とため息を付き、
「リリアはそういう人でしたね」
「そうそう、そういう人。だから先に行っていてちょうだい。勝手に追跡するから」
「……どれで」
「これで。昔レイアから貰ったでしょう?」
「まだ持っていたの?」
「もちろん」
リリアは自慢気に星形の石のついた金色の鎖のペンダントを見せる。
それにレイアは少し顔を赤くして、
「……分かりました。よろしく」
「任せておいて。後でね」
そう言ってかけていくリリアを見送った僕達は、そのままきびすを返して、町のほう、否、町のその先に向かって歩き出したのだった。
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