戦国異伝
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第二百二十七話 荒木謀反その八
「あ奴の兵でな」
「確かに。青い旗はですな」
森も城を見て言う。
「本丸、そして城の要所を全て固めています」
「そうじゃな」
「そして城の他の場所は」
そこはだった。
「怪しい、あの旗ですか」
「御主ならわかるな」
「はい、近江での一向宗の旗ではありませぬか」
難しい顔での言葉だった。
「越前や紀伊でも見ましたが」
「一向宗の過激な者達の生き残りですか」
池田はこう考えた。
「それが十二郎殿の謀反に加わったのか」
「さてな、ではな」
「はい、これよりですな」
「城攻めですな」
「いや、違う」
信長は血気を見せた森と池田にすぐにこう返した。
「まずは人を送る」
「説得ですか」
「それを試みられますか」
「そうしようぞ」
思わせぶりな笑みでだ、信長は答えた。そしてだった。
黒田に顔を向けてだ、彼に言った。
「官兵衛、御主じゃ」
「はい、さすれば」
「十二郎のところに行け、そしてじゃ」
「そのうえで」
「後は頼んだぞ」
「後は、ですか」
「そうじゃ」
こうも言ったのだった、黒田に。
「わかったな」
「では上様」
「ここでは言うな」
その鋭さから察した黒田に口止めもした。
「よいな」
「畏まりました」
「ではな、行くのじゃ」
「さすれば」
こうしてだった、黒田はすぐに有岡城に入った。そして。
荒木と会う為に本丸の中を進んでいった、だがここで。
共にいる大谷にだ、こう言ったのだった。
「この度は」
「十二郎殿をですな」
「うむ、説得することはな」
そのことはというのだ。
「難しいであろうな」
「官兵衛殿でもですな」
「十二郎殿の謀反、訳がわからぬ」
黒田から見てもというのだ。
「どうもな」
「確かに、それは」
「桂松もじゃな」
「一族衆を離縁し害が及ばぬ様にしたのはわかるにしても」
「徹底し過ぎじゃな」
「家臣の方も去りたい者は去れと」
「そう言ってじゃったしな」
黒田はさらに話した。
「しかもな」
「はい、それだけでなく兵も」
「集めず支城を全て空にしてな」
「この有岡城だけで謀反を起こしましたから」
「わからぬ謀反じゃ」
「全く以て」
大谷も言うのだった。
「訳のわからぬ謀反です」
「そうじゃな、しかし」
「しかしですな」
「本陣と要所に精兵を置いたのはな」
「そのことはですな」
「理に適っておる」
「左様ですな」
このこと自体はいいとするのだった、彼等も。
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