茂みの声
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2部分:第二章
第二章
「いい加減顧問をおろされるって話もあるんだがな。予算とスケジュール何とかしないと」
「じゃあおろされるわね」
福田は原田の今の言葉を聞いてあっさりと述べた。
「人の言うことなんて校長先生でも教育委員会でも聞かない人だから」
「まあそうだな。それでだ」
とりあえず顧問の先生の話は置いておいて録音の話に戻すのだった。
「天野、じゃあそれで行くんだな」
「ああ、やってみる」
「失敗したらクロスワードのアシスタント頼むわね」
「御前は少し勉強しろ、あと静脈は筋肉じゃないからな」
そんなことを言いながらまずは録音できる態勢を整えてから天野は学校の裏山の奥に向かった。原田と福田も一緒である。
「何か麻奈この山入るのはじめてね」
「御前街ばっかりだからな」
天野が中央にいて最新型の録音機を右手に持っている。右に原田が、左に福田がいる。その原田が天野を挟んで福田に声をかけていたのだ。山道はアスファルトではなく普通の土だ。石が時折見えており周りには木々が生い茂っている。淡い緑や枝の茶色が見える。
「たまには自然もいいぞ」
「純君ってアウトドアだったのね」
「そうだよ。知らなかったか」
「道理で街であまり見なかったから」
「山も結構いいぞ」
こう福田に対して言う。言いながら周りの木々を見回している。
「落ち着くからな」
「麻奈はクロスワードしてる時が一番落ち着くけれど」
「御前いい加減自分に嘘をつくの止めろよ」
今の福田の言葉には呆れた顔で突っ込みを入れる。
「クロスワード全然解けないだろうが」
「解いてるじゃない」
「一ページで一個いくかいかないかだろ」
つまりほぼ完全に解けないのだった。
「御前商業高校か」
「算盤得意だから」
「せめて最低限のテスト位通れよ、全く」
「カンで当たるから大丈夫よ」
「全く」
そんな話を三人でしながら裏山の茂みの中に入った。福田は道のところで待っていた。
「御前は入らないのか?」
「靴、そういうのじゃないから」
だから入らないというのだ。天野に対して答えていた。茂みは膝のところまで草が鬱蒼と生い茂っている。天野も原田もその草を足で掻き分けつつ中に入っていっていた。
「悪いけれどここで待たせてもらうわ」
「そうか」
「置く場所はもう見つけたの?」
「ああ、ここがいいな」
ふと茂みの真ん中に入った。そこは何故か草がまばらで尚且つ低かったのだ。
「ここに置くか」
「!?何かそこって」
福田はその場所を道から見てふと気付いた。
「そこだけ草がないわね」
「ああ、だから丁度いい」
天野はこう答えた。
「ここになら置けるな」
「そうだな。後は雨が降っても大丈夫なようにこの薄いビニールで包んで」
原田が録音機をビニールで包もうとする。しかしここで天野が言うのだった。
「いや、大丈夫だ」
「大丈夫!?」
「ああ、この録音機は防水だ」
こう原田に言うのだった。
「だから大丈夫だ」
「ああ、そういえばそうだったわね」
福田は今の天野の言葉であることを思い出した。
「高寺先生が買ったんだっけ。校長先生に一切話さずに」
「またか」
原田はその話を聞いて呆れた顔で声を出した。
「またそんなことやったのか、あの人」
「校長先生カンカンだったらしいわ。幾ら何でもそんなものいらないだろうって」
「俺もそう思う」
「俺もだ」
二人もこれに関しては校長先生に賛成した。
「冗談抜きであの人そのうち学校にいられなくなるだろ」
「何でもかんでも自分を押し通そうとするからな」
「そうね。教師としての才能と情熱と根気は凄いのにね」
「それでもな。あれはな」
原田は言う。
「無茶苦茶過ぎるさ。まあ録音はな」
ここでは話を録音に戻す。
「ここで本当にいいだろ」
「そうだな。じゃあ」
「けれど。何かそこって」
福田は二人がいるその草のない場所を見て言った。
「変な形してるわよね」
「変な形!?」
「そこだけ全然草ないじゃない」
まず言うのはそこだった。
「それに人型だし」
「そういえばそうだな」
「何かな」
「あからさまにおかしいけれど。そこに置くの?」
「ああ、そのつもりだ」
福田の言葉を聞いても天野の考えは変わらなかった。
「ここでいいだろ」
「俺もそれでいいと思う」
原田もまた考えを変えない。
「ここにな。置こう」
「そうだな。それじゃあ早速な」
「そこね。何か嫌な予感もするわね」
福田は二人が決めてもまだ怪訝な顔をしていた。
「流石に録音しただけで祟りとかはないと思うけれどね」
そうは言ったが結局それで納得することにした。こうして一日の間録音機が置かれ翌日それを拾い。まずは音が入っているかどうか放送部でチェックするのだった。
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