魔法少女リリカルなのは~とある4人の転生者~
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序章
第1話 嗚呼、懐かしきかな子供時代
子供時代は人間ならば誰しも一度は通るものだろう。だが、2度目を経験するなど誰が考えただろうか。いや、ない。だが現在この俺、東堂朔也精神年齢18歳はまさしく二度目の子供時代を迎えている。某王様風にいうなら1度目があったのだから2度目があってもおかしくはないと言ったところか。
「暇」
まさしく、読んで字の通りやることが無くて暇だ。現在生まれて5年が経つが、遊びに行くでもなく家でごろごろしているだけだ。まぁ、あの生まれてから今までの暗黒の歴史に比べればマシというものだが。
「…出奔する。よし」
この退屈な生活から抜け出すためにも、行動を始める時が来たか。さて、玄関に…
「うん、今から公園に行くからそこまでしなくてもいいと思うんだよ」
ふと、背後に気配を感じて振り返る。
「あれ、ちぃさんどうしたの?」
いたのは、海外赴任中の両親に代わって保護者を務めている大学生の東堂千秋さん(通称:ちぃさん(20))だった。
「今、出奔だなんて言った子が首かしげて可愛らしく言っても説得力無いよ、朔也」
「男の子だから仕方ないんだよ」
「その年でそれを言ったらだめだと思うなあ」
「ん、ならば行動によって示そ…」
「ゴメンね!だから、ちょっと待っててね!今すぐ着替えてくるから」
「早着替えショーばりの速さを求める」
「それは、無茶振りだってー!」
叫びながらちぃさんは奥に走っていってしまった。まあ、目覚ましかけ忘れて寝坊したのが悪いな。
「ごめん、ごめん。お待たせ」
さっきまで着ていた緑のジャージから白のワンピースに着替えたちぃさんが戻ってきた。
うん、冗談で要求したのに本当にやってのけるこの人も大概チートなのかも知れない。
チートと言えば、
「今は、一つだけかぁ」
現在自覚できているのは例によって要求した身体能力のみ。そもそも、ノッポにデブが言っていた『なのは』なる者(物?)を俺は知らない。だから魔力云々言われてもまったく分からん。
「アレはアレでいまいち分からないし」
そして、一番不明だったのが幻術だ。使い方が分からん。ある日唐突に空中に『WORNING』とか表示されたときにはびっくりしたが簡単なチュートリアルだったようだ。やい、どうせならこの世界について説明しやがれ。…オホン、実際使ってみたがよく分からん。父親に使ってみたところ「ザンギョー」とか突然叫び出した。今頃は海外で体験中だろう。南無。兎にも角にも使い方が分からなかったのでしばらくは人相手に使わないことにした。
「どうしたの朔也?」
「なんでもないよちぃさん。ソレよりも早く行こう?」
いかんいかん、独り言になっていたようだ。
「うん、そうだね」
「で、どこ行くんだっけ?」
「公園行って、ケーキが食べられるところに行きまーす」
「無難だね」
「じゃあ、アマゾ…」
「いいコースだと思うなぁ。うん、楽しみだね!」
この人、イジられキャラだと思ってたけど時折重い反撃が返ってくることがここ一年で分かった。しかも、天然に近いというある意味性質の悪いタイプだ。
「それはそうと、ちぃさんそのカバンは何?」
「え゛?」
あ、固まった。
「何?」
「えっと、それはそのぉ…」
そのサイズのカバンに入るものと言えば…
「ビデオカメラとか?」
「ギクッ!」
ギクとか言う人初めて見た。
「こ、これは、朔也の公園デビューを記録して欲しいなんてお姉ちゃんに頼まれたわけじゃないんだよ!?」
あぁ、テンパってバラしちゃったんだ。しかも何故疑問系?しかし、わが母たる東堂千春(27)は何者なのだろうか。無駄に廃スペックなちぃさんがここまでおびえているとは。
「ああ、うん。それは仕方ないね」
「そうだよ、お姉ちゃんからの命れ…じゃなかった『お願い』なんだから仕方ないんだよ!」
ちぃさん、今命令って言おうとしてたよね?百歩譲って言い直したとしてもその『お願い』の単語の強調でフォローできてないよ。
「…なんかもうどうでもいいや。早く行こうちぃさん」
「応ともさ!『翠屋(・・)』が私を待っているぅぅぅぅぅ!」
「うん、張り切ってるのは分かったからちゃんと鍵閉めてから行こうか?」
「あ…」
本当になんとも締まらない人だった。
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「ちぃさん、コレどうすればいいと思う?」
「さすがに私もこの展開は予想してなかったなぁ」
アレからしばらくして公園に着いた。うん、着いたんだ。着いた、まではよかったんだけどさ…
「テメェ、俺のなのは(・・・)になに手ぇ出そうとしてんだ!」
「うるさいさ、何が“俺の”さ!人は物じゃないんさ!」
「2人とも、ちょっと…」
公園についてまず目に入ったのが一人の女の子を取り合う男子2人ってどうなんよ?
「何、正論ぶってんだモブが!」
年不相応なイケメン顔の金髪オッドアイと、
「正論ぶってんじゃなくて正論さ!」
さっきから聞き覚えのある“~さ”が口癖の若干ノッポ気味の赤毛少年と
「あぅ」
真ん中で右往左往している栗毛のツインテールの女の子。
「ふむ、なんか俺の公園デビュー以上に面白いものが取れそうだね。ちぃさん?」
「うんうん、同感同感」
とか言いながらもうすでにちぃさんカメラ回してるし。いつの間に抜いたんだ?反応できなかったぞ。さすが、廃スペック。
「って、あれ?」
ふと気づいたが、もう一人別の気配がするな。この体、筋力だけじゃなくて気配にも敏感だから隠れていても大体分かるんだよな。…なるほど。あの木の裏か。
「ちぃさん、ちょっと向こうまで行ってくるね」
「あぁ、うん。ここから出ないようにね?」
「ハーイ!」
とりあえず、巻き込まれないように言い争いの現場を迂回していき、木にたどり着く。
「こんなところで何してるんだ、フォース(・・・・)」
「なんだ、気づいてたんだね、サード(・・・)」
木の裏にいた先ほどの少女よりも薄い色の髪の少年…フォースに声をかける。と向こうもこちらの正体を当ててきた。
「それにしてもどうして僕のことがわかったんだい?」
「場所ってことなら気配の察知だが、正体に関してはアレをそんな観察するように見る早熟なガキはいない。それにあそこで口論してるのは口調と内容的に考えてファーストとセカンドだろ?そうなると消去法でお前になる」
「うん、すごいねサードは」
その素直な賞賛に誇っていいやら恥ずかしいやらで話題を変えることにする。
「その呼び方はよせ。今の俺は東堂朔也だ。こっちで呼べ」
「ああそうだね。ぼくは西島晴信。ハルでいいよ。サクヤ」
「で、ハルはなにしてたんだ?混ざりたいなら混ざればいいだろうに」
「別にそういうわけではないよ。というよりサクヤはもう分かってるんじゃないかな?」
質問に質問で返されたが、まあ俺も同じく観察に徹するつもりだったからな。
「おそらくセカンドと思われる奴がさっき口にした“なのは”という言葉、ありゃ、多分あの嬢ちゃんのことだろ?」
「そうだね。そして転生する前の彼の言葉にも“なのは”というワードがあった」
「この世界を知るセカンドが今必死になってるのを考えるとあの嬢ちゃんは十中八九、この世界における中心人物ってことになるな」
「この世界を知らない僕たちからしてみればこの世界を知る最も重要な情報のリソースになるね」
「そうなると、あの嬢ちゃんを中心に洗うのが得策ってところか?」
「そうだね。あ、それはそうとサクヤと一緒に来てたあの黒髪のおねーさん誰?」
ハルが突然話題を変えてちぃさんのほうを指す。ここから見えるのはポニーテールにしている俺とちぃさんの唯一の共通点である同じ黒髪くらいだ。
「俺の母親である東堂千春の妹の東堂千秋さん。通称ちぃさんだ。海外赴任中の両親のかわりに俺の面倒見てくれてる現役大学生」
「ふぅん、じゃあ挨拶してこようか?」
「そうするか、ってあれ?」
「あ!」
俺とハルが目の端に移ったものに意識が移る。
「行っちゃったね」
「処理オチしたんだろ。まあ、仕方ないか」
どうやらあの口論に耐え切れなくなったらしいなのはちゃんが逃走してしまった。
「ヤバッ、あいつらコッチくんぞ!!」
「アレは、ファーストだね」
うっかりしていた。逃走に気を取られすぎた所為か赤毛の少年がコッチに来ているのに気づくのが遅れてしまった。向こうはコッチに完全に気づいているようでまっすぐ向かってきた。幸いだったのは面倒くさそうなセカンドがさっさと立ち去ってくれたことか。
「こんなところでなにしてるんさ?」
「えっと…男女間の痴情の縺れの観察?」
「いや、それは普通の受け答えじゃないだろ」
「てか、おまえらもう十分に普通じゃないさ」
ハル…もう少しまともな答えはなかったのか?あと、ファースト。ソレどういう意味だ!
「出来心だったんです!」
「小学生にも満たない人間が痴情の縺れを出来心で観察するかっ!!」
「もう、疲れたさ。二人ともあのときの二人さ?」
心底疲れた顔でファーストが核心に迫ってくる。
「まあ、その通りだ。俺は東堂朔也。呼称はサードだ」
「僕は西島晴信。フォースだよ」
「俺は、南海海斗。ファーストさ」
「ああ、知ってるよ」「知ってたよ」
「なんでさ!?」
「や、その口癖聞けば名前は別にしても正体の当たりはつくだろ」
「分からないと思ってたんだ」
「ヒドイさっ!」
俺とハルのコンボに完全にフルボッコ状態のファースト。なんか哀愁漂ってきそうだ。まあ、いいか。それより本題だ。
「なあ、南海」
「海斗でいいさ。で、なにさ?」
「悪いんだが、」
「この世界のこと」
「教えてくれないか?」「教えてくれる?」
後書き
今回登場した主人公達すら超えていそうなチートなあの人の元ネタはシャイニングシリーズのあの謎多き女性錬金術師。主人公の名前とあわせると完璧(?)です。
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