手のなる方へ
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7部分:第七章
第七章
「もう全部食べたわね」
「皆よく食べたわね」
「美味しかったからね。けれどこれで終わりかしら」
「そうじゃないの?」
須美の返事はあまり深く考えたものではなかった。
「だって。お饅頭全部食べたし」
「これで終わりかしら」
「じゃあ私の家に来てね」
「ええ」
さっきの話に戻っていた。宿題の話だ。
「それでノート写させてね」
「わかったわ」
恭子は須美の言葉に頷いてみせた。
「間違っていたら御免ね」
「だからそれはいいんだって。写させてもらう立場は私なんだから」
そんな話をしながら解散の時を待っていた。ところが解散とはならずに。神主が部屋の中に入って来て彼女達に言うのであった。
「さて、と皆いいかな」
「はい」
「何ですか?」
「お饅頭は美味しかったかのう」
まずはにこにこと笑って皆に尋ねてきた。
「それはどうじゃったかな」
「はい、滅茶苦茶美味しかったです」
「どうも有り難うございます」
女の子達は一様に笑顔で彼に答えた。
「おかげで満足させてもらいました」
「またよかったら」
「うんうん、またな」
満面の笑顔で彼女達の言葉に応えていた。実に嬉しそうである。
「呼ぶからな。それでじゃ」
「はい」
ここで話が変わった。神主が変えてきたのである。
「皆、少しいいか」
「何ですか?」
「何かありますか?」
「うむ、実はな」
にこにこと笑ったうえでまた女の子達に述べるのであった。
「一つ遊びを用意しておるのじゃよ」
「遊び?」
「左様」
相変わらずの笑顔での返事だった。
「遊びをな。どうじゃ?」
「楽しいのよね」
「そうじゃ」
返事はそのままの調子であった。
「それも少しだけの間じゃ。どうじゃ?」
「そうよねえ」
「どうせ帰ってもね」
「そうそう」
皆顔を見合わせて言い合う。そのうえで考えるのだった。
「宿題するかゲームするだけだし」
「それだったら」
「全員参加じゃな」
「いいですか、それで」
「神主さんさえよかったら」
「よかったらというものではない」
神主は笑みをさらに深いものにさせて女の子達に答えるのだった。
「是非皆参加して欲しいのじゃよ、わしとしてはな」
「皆にですか」
「左様左様」
後ろで手を組んで楽しそうに笑っていた。
「それならばこそ価値があるからのう」
「何かしらね」
「さあ」
恭子と須美は神主のこれまでの話を聞いて顔を見合わせて話をするのだった。何をするのかよくわかってはいなかった。そしてそれは二人だけではなかった。皆だったのだ。
また女の子の一人が。神主に尋ねてきた。
「それで神主さん」
「今度は何かのう」
「何処でやるんですか?」
まずは場所を尋ねてきた。
「場所は」
「それに何をするんですか?」
他の一人も尋ねるのであった。
「よかったら教えてくれませんか?」
「場所は隣の部屋じゃ」
「隣の」
神主の家の奥である。そこはこの部屋と同じ程の大きさの部屋があるのだ。そこもまた畳の部屋でありそれもまた同じであった。
「そこでする」
「それで何するんですか?」
「皆がよく知ってるものじゃ」
今度はこう答えたのであった。
「それをするのじゃ」
「私達がよく知ってるものって」
「何かしら」
今の言葉を聞いてまた皆顔を見合わせて話をする。しかしどうにもわからないのであった。
「まあねえ。行くしかないわね」
「そうね。まずはね」
それでも誰も危ないことになるとは誰も思ってはいなかった。それは神主の人柄をよく知っているからだ。落ち着いて優しいその人柄をだ。
だから皆大人しく神主の言葉に従って隣の部屋に入った。部屋に入るとそこには。部屋の奥に一人の少女が静かに座っていた。
「!?あの娘って」
「何かしら」
皆まずはその娘を見て口を開いた。見れば上が白で下が赤の巫女の服を着ており髪はおかっぱであった。可愛らしい容姿だがそれは誰も知らない娘だった。
「誰かしら、あれ」
「さあ」
皆首を傾げるばかりであった。
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