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戦国異伝

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第二百二十七話 荒木謀反その四

「支城も既になく」
「兵も少ないです」
「これではです」
「囲まれれば」
「終わりじゃな」
 信玄も即座の落城は間違いないと見てこう言った。
「この謀反はすぐに終わる、しかしな」
「荒木殿は何故謀反を起こされたのか」
「しかも不可解な動きばかりです」
「あの様な謀反を起こされたのか」
「全く以てわかりませぬ」
「荒木殿は出来た方ですが」
 馬場もここで言った。
「しかしその荒木殿が」
「この様な謀反なぞな」
「荒木殿がされるとも」
「全く思えぬな」
「そもそも荒木殿は上様に忠義を尽くしておられた筈」
「確かに。あの御仁の忠義もかなりのものであったな」
 飫富もここで言った。
「織田家の中で」
「左様、上様に摂津の国人から取り立ててもらい」
 馬場は飫富にも応えた。
「そのうえで織田家の重臣、二十万石の大身となられた方」
「官位も役職も相当なもの」
「上様への恩もご承知の筈」
「そこまであってな」
「上様に恩を感じられぬ筈もありませぬし」
「謀反なぞ起こしても意味がない」
「それがわからぬ荒木殿ではありませぬ」
 馬場もいぶかしみつつ言う。
「まして有岡城で謀反を起こすとすぐそこに大坂城と姫路城がある」
 原は織田家の要であるこの二つの城の名を出した、どちらの城も織田家の西国統治の要である。東国の江戸城、会津若松城と同じくだ。
「その二つの城にな」
「攻められますな」
 木曽も言う。
「それこそすぐに」
「考えれば考える程わからぬ」
「ううむ、どういうことか」 
 木曽も言うのだった、そして。 
 武田の系列の者達が首を傾げる中でだ、信玄は言った。
「何か上様にお考えがあるやもな、そしてな」
「荒木殿にもですか」
「あの方にも」
「そうじゃ、何かあるのか」
 信玄は考える顔で述べた。
「そうも思えてきたがな」
「では何をお考えか」
「そこを見極めることになりますか」
「我等にも出陣の要請が来るやも知れませぬが」
「その時は」
「うむ、その時は観ようぞ」 
 信長の考えもとだ、信玄は織田家の家臣となっていたがその考えは醒めたままだった。そしてそのうえでだった。
 信長は天下の主な将帥達に有岡城まで来る様に命じた、だが。
 連れて来るように言った兵達は少なかった、それでだ。
 元就は出陣の用意を整えてからだ、己の家臣だった今ではそれぞれ独立している大名達に述べたのだった。
「兵は五千」
「毛利の流れの者全て集めても」
「少ないですな」
「どうにも」
 隆元、元春、隆景の三人の息子達が父に答えた、その兵達を見つつ。
「上様の戦は兵を集めらることですが」
「まずは多くの兵を集められる」
「それからですが」
「しかしこの度はです」
「どうにも少ないですな」
「我等で五千とは」
「二万は出すと思っておった」
 毛利家だけでなくその系列の家全てというのだ。 
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